ぼくは本当にいるのさ

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 98
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309027272

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  • いらないものなんてひとつもない。すべてがかけがえのない宝物。
    ずっと大切にしてきたセーラームーンのおもちゃや、イースターバニーのぬいぐるみを手放すことで、ゆうちゃんは透明になろうとしていた。

    すべてを引き取ってもらおうと訪れた骨董品屋でバイトすることになったが、オーナーはゆうちゃんのコレクションを受け取ってくれない。

    女児向けの玩具に熱狂するきもちわるいやつ、という烙印をいつからか押されていたゆうちゃん。
    2001年の家族との思い出を辿っていくなかで、ゆうちゃんは11歳に帰りたいと思う。しかし、ゆうちゃんは26歳の青年だ。

    古着屋のお姉さんは、ブロッサムの人形を買おうとするゆうちゃんに「見つけてくれてありがとう」と言う。人形がゆうちゃんに言っているのだ、と言う。
    2001年の、11歳の、あの日のゆうちゃんはとてもかわいいものを見つけることができた。幸せだった。
    そのことを思い出したゆうちゃんは透明になるのをやめた。

    ---------------------------------------

    ”普通の男の子になってほしい”と願う父親の気持ちもわかるし、ゆうちゃんと遊ぶのを禁止したさくちゃんの親の気持ちも理解できる。
    常識的な彼らの気持ちもわかるからこそ、ゆうちゃんがこれまで味わってきた苦しみは途方も無い大きさだったことが想像できる。好きなものを愛でたいだけなのに、たったそれだけのことがなかなか許されないなんてつらかっただろうな。

    女の子向けのおもちゃや可愛らしいものが好き、というだけで誰も傷つけているわけじゃないのに、異常者として扱われる悲しさ。そして、その悲しさにすら慣れてしまう虚しさ。

    ゆうちゃんが透明になるくらいなら、この世界全部が透明になってしまえばいいとすら思えた。

  • 【アヤちゃんがアヤちゃんを取り戻すエッセイ】
    文章がとても丁寧で、夢中で読み切ってしまった

  • 「ぼく」は透明になるために、自分の宝物たちを
    本当に文章がうまいなあ…
    もったいつけた表現を使うわけでもなし、クドクドしつこい描写があるわけでもないのに、その場の情景と「ぼく」の心情とが、過不足なくくっきりと伝わってくる。
    そして構成のうまさ。
    現在の居場所であるバイト先の骨董品屋と友人のめぐるとの場面、そして過去の回想とがスムースに繋がって流れていく。
    こんな文章力、どうやったら身につくんだろう?

  • 素晴らしかった。冒頭から共感し、上手いなと思いながら最後まで。アヤちゃん、すごいよ。

  • 痛々しいけど言葉選びが可愛い。キラキラしてる。まさに、くたびれちゃった女児用の玩具みたいだ。「きみの美しさには傷つくよ」とか、いちいちぐっとくる言葉が多くて、やっぱり言葉の人だなあと思う。でも本のこととか一切ふれてなくて、この人いったいなにで書くことを覚えたんだろうかと思う。

    読んでてどこまで事実なんだろうか?と思うことがたまにある。作者の友達はなんだか底抜けに明るい人が多くて、読んでてちょっと疲れる。笑。古道具屋のオーナーとの出会いの話がいちばん好きだった。ほんとうに慈しんで大事にしているんだな。自分はものにあまり思い入れがないけど、ものを大切にするっていいなあと思えた。

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著者プロフィール

1989年生まれ。エッセイスト。著書に『尼のような子』(祥伝社)『焦心日記』(河出書房新社)『果てしのない世界め』(平凡社)『ぼくは本当にいるのさ』(河出書房新社)『なまものを生きる』(双葉社)『ぼくの宝ばこ』(講談社)『ぼくをくるむ人生から、にげないでみた1年の記録』(双葉社)がある。

「2022年 『うまのこと(飛ぶ教室の本)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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