ギケイキ2: 奈落への飛翔

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309027074

感想・レビュー・書評

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  • この前に読んで面白かったけれど解りづらかった「口訳古事記」に続いて同じ著者を味わいたくて「ギケイキ2」を読んでみた♪
    元の義経記さえよく知らないけれど、だからこそわりとすんなりと読めた。
    古事記の神話と違い大筋をみんなが知っている内容なので破調は同じだけど馴染み易くて抵抗感なく読了できました。

  • 敢えて町田訳風に言えば、この物語はマジでウケる。キレッキレ。
    源義経の一生を描いた室町時代成立の伝記文学「義経記(ぎけいき)」を、作家でパンク歌手でもある町田康さんがとことんパンクに、しかもかなーりお下品にリライトした異色の古典翻訳第2巻。
    本巻で描かれる場面は、平家打倒に燃える頼朝との謁見から、頼朝との不仲により京を追われて吉野で恋人の静と別れるまで。

    第1巻に引き続き、死んだ義経が、西暦二千年代の我々の常識と視点を持った上で一千年前の己の人生を回想するという異色の体裁で物語は語られる。

    義経以下、弁慶も頼朝も…すべての登場人物が、若干メンヘラ気のある「マイルドヤンキー」キャラ全開なのはもう慣れた。
    その上で読み進めたのだけど、西暦二千年以降の視点をもちながら義経が語る描写が、第1巻以上にいちいち大胆かつ秀逸すぎて、ウケる。
    それこそ本編の内容頭に入ってこなくなるくらい、ウケる。ダメじゃん、とも突っ込みたくなるけど。

    書き出しの「いまの国道1号線の原東町交差点のちょっと先で兄に追いついた」から始まり。
    あまりにエキセントリックな描写満載の全体から見れば、比較的大人しい言葉で語られてる頼朝との初対面シーンすら、他の人の翻訳と比べるとかなり攻めている。めっちゃパンク。
    「座って頼朝さんを見た。…えええええ?なんすか、これ。そう思うほどに顔が大きかった。けれども兄弟の初めての対面で、『顔、でかいですねえ』とか言ったら怒られるかもしれないので…」

    もう、ほんと笑う。
    あまりに大胆なヤンキーな言葉遣いと下ネタの満載具合に時々引いてしまいそうにもなったのだけど、それでも落ち始めた義経の悲哀も薄まることなくちゃんと表現されていて、次の第3巻もきっと目が離せない。

    繰り返すけど、お下品な表現が…はっきり言えば下ネタ描写がかなり多いので、人様にはちょっとすすめられないけど。
    こっそり読もう。

  • 活字を読むというより、ライブ感というか疾走感があって好き。
    ハピコアを爆音で流しながら読む。

  • 現代語訳版『義経記』を読んだ記憶が薄れないうちに…と思い、結局文庫化待ちきれなくて図書館で単行本借りてきちゃったのだけど来月文庫出るのね。まあいいや。2巻の義経は、頼朝と兄弟感動の再会を果たすも原典通り義経が大活躍する源平合戦はすっとばして、すでに不仲になった兄から義経が追討される展開となります。

    そしてやはり原典に忠実に、愛人引き連れて家臣の顰蹙を買い、途中で一応彼女らは返すものの静かだけは手元に置いたためやっぱり家臣から大ブーイング。ついにバッシングに耐えられなくなった義経は静と未練がましい別れの場面を繰り広げ、泣く泣く彼女を手放します。

    とはいえ恋愛部分はまあ枝葉で、本巻のハイライトは頼朝が送り込んだ刺客・土佐坊正尊との攻防でしょうか。下男の喜三太の大活躍、江田源三の最期、あと意外なくらい有能な片岡経春の活躍、そしてもちろん武蔵坊弁慶など、義経自身よりも郎党たちの優秀さが際立っているのも原典通り。

    とはいえ語り口は相変わらずの町田節。現代的な比喩をまじえつつ、登場人物たちの会話はふざけちらかしつつ、物語の本質は外していないところが流石。面白くて爆笑しながら読了。とりあえず京都を落ちて(とは義経は認めないけれど)吉野に行くあたりまで。3巻で完結するかなあ。

  • なかなか素敵な本だな。町田さんのは苦手なやつもあって、躍動感が自分と合わなすぎて
    車酔いみたいになる時ぐあるが、この本は最初から最後まで非常に楽しく読めた。もう既に義経の話を扱った本は溢れていて、適当に出せば
    「頑張りましたね」的な評価は受けれると思うが、全くそういう本でなく。そもそも町田さん本人が人に比べられる人でなく。意外に、人物の感情の表現が繊細で、なんというのか、文章のちからづよさを感じた。

  •  1が異様にオモシロかったので2もすぐに読んだ。あいかわらずのリーダビリティの高さであっといういまに読了。鎌倉時代の話がこんなに楽しく感じられるのは加齢による効果もあると思うが間違いなく著者の筆致によるものだと二冊読んで痛感した。
     義経記の原作がどうなっているのか知らないのだけども、義経のエピソードで最も有名であろう一ノ谷の戦い、屋島の戦い、壇ノ浦の戦いといった数々の武勇伝は一つも詳細に語られていない。いずれも読みどころたくさん作れそうにも関わらず、本作では戦闘シーンよりも政治に拘泥する様がたくさん書かれている。(作品内で「戦闘シーンは結果的に自慢になってしまうから」とエクスキューズしていた)具体的には頼朝から敵対心を抱かれ戦争のきっかけを用意されて東の頼朝、西の義経という構図の戦争へと向かうにあたっての悲喜交々。まるで中間管理職のように頼朝と公家や天皇とのあいだで右往左往しつつ天下を取れないか模索している様をひたすら軽いノリで描いている。前作同様、現代に生きる義経の回顧録スタイルで語られている中で、徐々に後悔や「あのときはこう思っていた」という現在視点での感想が入ってきて、そこがアクセントになっていた。
     あいかわらずの関西弁と口語の文体で読み続けるうちに何かに似ているなと思ったら漫才コントだと気づいた。だからこそ読みやすいし文字にしたときにオモシロいボケがひたすら書かれてるので読んでいてずっと楽しい。これはもう町田康節としか言いようがなく圧倒的なエンターテイメントだと思う。3が出たばかりなので、このまま読めるのが楽しみ!

  • 町田康版「義経記」第二弾 
    壇ノ浦の戦いまで数行で終わらせて、腰越状のくだりから義経の都落ちまでが語れています。 
    まぁ、ヤンキー口調と菊門嗜好と小便漏らしのオンパレード 
    次はもういいかな(苦笑)
    「ぼくはひとりでも、ひとりでも多くの人間を射殺したい、と心の底から念願しているからさ。 なぜなら?」
    「なぜなら、戦争だからです」
    「僕も同じ意見だ。わかり合えてうれしいよ」

  • 本卷主要內容為:兄弟見面、討伐平家(略)、義經六條堀川館被賴朝派的土佐坊正尊偷襲、兄弟決裂後義經決定離開並取到宣旨打算到九州再起招集關西兵馬再戰、結果船遇上風暴又被沖回出發點、想上岸被包圍的住吉一戰、逃往吉野、終於下決心讓靜御前離開、靜御前被隨從拋棄一個人在山中尋路、到達藏王權現金峯山寺但被認出而被逮捕。

  • 古典が現代語で書き直されることはよくありますが、町田さんの読み下しは、すごく愉快。イキイキとした主人公の内面が、面白おかしく、だからこそ切羽詰まって伝わってきます。笑ってるうちに「なんで生きてるんだろ?」という根源的な問が内側から湧いてくるから不思議です。(『宇治拾遺物語』の「奇怪な鬼に瘤を除去される」もオススメです。)

    金広(図書館スタッフ)

    https://bit.ly/3amQq8J

  • 最高。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

町田康の作品

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