- Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309025407
感想・レビュー・書評
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 ̄月は昨日とおなじ、ぎんなんのようにぷっくりとふくれて浮かんでいた。(P.16)
暮れかけた世界は、藍色とオレンジを水彩でまぜたみたいに、うつくしくにじんでいる。(P.67)
空にはぎんなんのように、不恰好に太った月がうかんでいた。あたりはすっかり夜だ。(P.81)
それなりに苦労のあとがある。歳月のすぎさりも。そして得体のしれない憂鬱をぶらさげて、ただじっとわたしのことを見る。(P.135)
海沿いの古いホテルで働くことになったみつみ。「人間はみな罪を犯して生きている」という頼子さんの言葉を信じ、行き場の無い感情を出さずにいる登場人物たちの閉塞感。みつみは母に全てを縛られて生きてきて、今度は自分が母になるという時、どんな母親を理想として思い描くのだろう。たんたんと、みつみのホテルで働き、あるカメラマンと出会い、不倫相手の家に行き、別れを告げる様子がえがかれている。かつて自分を縛りつけ、勝手に死んだ母。そして、頼子さんもまた、義母に虐げられ、夫にも手をあげられ、自分を守るために夫を殺していた。罪と許しという大きなテーマの中で隠していた、思い出さないようにしていた過去が明るみになった時、みつみと頼子さんの交わってはいけない運命が重なってしまう。女は唯一、子が産め、神聖な聖母のような描き方もされているが、子を守るためなら他人を殺すこともでき、強い生き物であり、男より執念深く、恐ろしい生き物でもある。自分が殺した女の横で出産をするという生と死の対比、死体から流れ出る血液の赤と、出産の赤の対比が美しくも残酷であり、インパクトのある終わり方で頭に残った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
舞台は東京から半日掛かる田舎の古ぼけた海辺のラブホテル「コート・ダジュール」
不倫相手の子供を身ごもり、一人で生む決意をした高橋 光海(たかはし みつみ)が主人公です。
凄く大きな出来事は起きないまま、ホテルに連泊しに来た客、カメラマンの石岡琢磨との出会いがあったり ホテルの一室で聖書の勉強会があったり、物語は淡々と過ぎて行きますが そこからは想像が付かなかった壮絶なラストが待っていました。
タイトルからイメージしたグロテスクな描写も少しあり、インパクトが残る作品でした。 -
何だろう、この最後の急展開は…。
読後がスッキリしない。 -
未婚の母になる決意をした光海が田舎のラブホテルで働く。上品で優しいオーナーの老婆は罪の許しを求め一室を教会とし、母による食の呪縛の元育った光海の事情の秘密は薄布を一枚一枚捲るように明らかになる。謎めいたどきどき。不倫の決着の熱。穏やかさが終盤でゆっくりと確実に崩れる緊張感。独特の説得力。結末は心配。
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女の人が色々出てくる。
変だったり大変だったりバカだったり。
読みやすかったけど、引っかかりはない。 -
朝井リョウの高校の同級生、中山咲さん。在学中に『ヘンリエッタ』で文学賞を受賞し、そのまま……その間に、朝井リョウは瞬く間に直木賞作家へ。『ヘンリエッタ』以降本が出なかったので、筆を折ったのかな、と思っていましたが、2冊目が出たのですね。ということで、手にとってみました。宗教的なにおいがする作品。救いはないですかね。装丁が名久井直子さんとは豪華だ。
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中山咲 著「血と肉」、2017.1発行。今年28歳の中山咲さん、初読み作家です。「血と肉」、この作品は純文学でしょうか、そんな気がします。次の作品、注目したくなりました。期待しています!
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変な本