物語のカギ: 「読む」が10倍楽しくなる38のヒント

  • 笠間書院
3.64
  • (17)
  • (18)
  • (25)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 550
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784305709653

作品紹介・あらすじ

本の魅力をわかりやすく伝える書評動画で人気のYouTubeチャンネル「スケザネ図書館」。
その配信者である著者が、文学だけでなくマンガや映画まで幅広い「物語」へのあふれる愛を語りながら、より深く味わうための目のつけどころ=「カギ」をわかりやすく解説します。

小説・詩歌・マンガ・映画など幅広いジャンルを対象に、『走れメロス』、『アンナ・カレーニナ』といった名作文学から『呪術廻戦』(マンガ)、『ドライブ・マイ・カー』(映画)など近年の人気作まで、多種多様な作品をピックアップ。
それら具体例を紹介しながら紹介す「カギ」は、「語り手を信頼するな!(『日の名残り』)」、「比較・変遷をたどれ!(歌人・俵万智の作風の変化)」、「元ネタを探ろう(『ピーターパン』と『約束のネバーランド』)」など。
著者自身が物語の面白さに目覚めた経験談を交えながら、様々な角度から「物語」の楽しみ方を案内します。

ふだんあまり本を読まない人や、まだ読書に慣れていない中高生にこそ読んでもらいたい1冊です。

【目 次】
はじめに
序章 なんで物語を読むのか? 物語を味わうってどんなこと?
第一章 物語の基本的な仕組み
第二章 虫の視線で読んでみる
第三章 鳥の視点で読んでみる
第四章 理論を駆使してみる
第五章 能動的な読みの工夫
おわりに

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 書評系YouTuberスケザネこと渡辺祐真さんのデビュー作である本書は、読書をもっと深めたい方にはうってつけの本。
    本や映画やゲームなどの物語を「面白かった〜」「つまらん」「わかんない…」だけでは満足できないあなたに、スケザネさんが【物語を楽しめるカギ】を38個伝授してくれます。

    正直、そんなこと(…うすぼんやりと 笑)知ってたよ、というものや、既存の文学入門の本で読んでいたものもあったけれど、本書は、丁寧で分かりやすく、読みやすいです。

    読んでいて本書でも紹介されている三宅香帆さんの本を思い出した。ふたりは同世代で、本や読書が大好きな熱き批評家なこと、読書初心者のための本を出していること、あと、感覚がとても真っ当なことが共通点かな。

    本を楽しむためには、まず実人生をしっかり生きること、って、確か三宅さんも書かれていたよ。
    耳が痛いな、教えられたな、と、彼女の本を読んだときも思ったけど、今回も改めて教えられました。

    この本を読んでもっと物語を読んでみよう、と思ってくれたら本書の目的は達成、と、あとがきに書かれていた。
    私は本を読むモチベーションを大いに掻き立てられました。

    さて、手にしたカギを使って、次はどんな物語の読解の扉を開こうか。
    次はもっともっと物語を楽しめたらいいな。

  • 著者であるスケザネさんは、書評家でありながら自身のYouTubeチャンネルを運営するなど、様々な活動をされている。自分も、YouTubeを見て読書の参考にさせてもらっている。

    そんなスケザネさんの単著第1作目が本書である。本書では、物語の理解を広げるための38の方法が紹介されている。どれも納得のいくものばかりだが特に、「アンナ・カレーニナ」の脱構築による読解が印象に残る。

    折に触れて再読し、内容を身に付けたい。

  • 読書は好き。だけど、ストーリーを追うだけではもう楽しめない。もしくは、どう解釈すればよいのかわからない物語がある。もしくは、物語をすらりと読み解けない。具体的にどういう点に注意を払って読めばいいのか知りたい。

    本書は、そんな悩める子羊たちに、救いの手をさしのべる。


    ***

    そもそも、文学不要論を支持するひとに、物語を鑑賞する意味はあるのか?と聞かれたら、どう説明すればよいだろうか。

    ①物語は具体性がある。共感する物語は、自分の心に響き、深く刺さる。替えのきかない効果を発揮する。


    ②他人の視点で世界を眺められる。そうすれば、驚くほど異なる景色が広がる。
    また、自分と異なる価値観をもつ人の人生を追体験できる。
    (感情移入や理解できない作品、倫理的に許せない作品も読むのも大事)。


    ***


    では、物語から何を得られるのだろうか?


    ①教訓は得なくていい。非日常的な物語は、日常生活で埋もれてしまった感覚に揺さぶりをかける。


    ②世界を見ることの彩度を上げてくれる。

    →読後、今まで見えていなかったものが見えるようになったり、自分の考え方がわずかに変化していることに気づいたりということが、わたしも時々ある。


    ③分からないことに耐えて考え抜くことができるようになる。

    →世界はわからないことだらけだから、わからないことだらけの物語を読むこともまた必要なのだ。


    ***


    お次は読み方。ただストーリーを追うのではなく、具体的にどういう点に注意を払って読めばいいのかを、本書は丁寧に教えてくれる。

    以下は、本書で紹介された38個のカギのうち、特に印象に残ったカギ10個である。


    ①登場人物の誰に焦点を当てるのか?

    →主人公だけでなく、友人役や敵役、脇役などの視点で物語世界を眺めることで、新たな世界がひろがる。誰に焦点を当てるによって、まったく別のストーリーが浮かび上がる。


    ②語り手をうたがう

    →主人公の言葉を鵜呑みしていた。いつも自分を主人公に投影していたから、「信頼できない語り手」がいることを意識して読んだことがなかった。ストレートに読むとつまらない本が、主人公をうたがうことで輝きを帯びはじめる。


    ③その作品の舞台になった時代と書かれた時代の両方を押さえる。また、現代においてその作品がどのような意味をもつか考える。

    →時代背景は解説を読んで知ることのほうが多いかもしれない。舞台になった時代と書かれた時代が隔たっていれば、その間に価値観の変化や歴史的認識の修正があることもある。


    ④より多くの読み方を引き出す。

    →メタファー(比喩・暗喩)を読みとる。


    ⑤小道具に注目する。冒頭で出てきたものが最後にも出てくるなど。

    →「チェーホフの銃」という言葉を聞いたことがあるだろうか。冒頭で描写された銃が、結末で再び登場するように、何気ないアイテムが実は重要な意味をもっていることがある。何度もでてくるキーワードも注目に値する。


    ⑥物語に無意味な描写はない。

    →作者は何か意図があって、それを描いている。注意深い読者だけが気づくような何かを。


    ⑦結末まで読んだら、物語の頭に戻って、全体を考える。

    →ブログや読書会で他人に紹介する時は、特にこの方法が有効。


    ⑧自分の人生を投影して鑑賞する。

    →つまり、自分の人生や人生観を通して作品を読む。


    ⑨二項対立に注目する。または二項対立を脱構築する(ジャック・デリダの考え)=二項対立を崩す。

    →正反対の性質をもつもの、主人公とその友人の性格が対照的であったり、敵と味方であったり、そういったものにまず注目する。そして、その相反するもの同士のなかにも共通するテーマがあるかどうか考える。


    ⑩作品内にある言葉や表現を手掛かりに、作中で語られていないものに注目する

    →不在の人物、わざと隠された手がかり、など。それが語られていないのはなぜか?を考える。


    ***


    あたりまえのことだが、物語を鑑賞し、「面白かった!」「好き!」または「つまらなかった」「嫌い」という素朴な感想は大切だ。

    物語を読む時は、社会科学、自然科学、人文科学、古今東西の思想、自分の経験、あらゆる感情を総動員しよう。カギを暗記するのではなく、物語を味わうために、他の物語を味わうことも大切だ。

    この本で紹介されたカギを頭の片隅に置き、まずは物語をじっくり丁寧に読もう。

    偶然、ピタリと当てはまるカギ穴を見つけられたあなたは、この上なくしあわせ者だ。


    ***


    p26
    敢えて断言しますが、素晴らしい物語は、我々に自分事として感じさせてしまうパワーと説得力を秘めているものです。

    物語を読むとは、他者の価値観や視点を追体験しながら、自分を省みること。

    p106
    (ヨーロッパの)歴史的に考えると、大昔、芸術作品において誰それが創ったという作者の個性みたいなものは重視されませんでした。それは、神という大いなる存在の前にいるちっぽけな人間という意識があったのでしょう。しかし、歴史がくだりルネサンス期になると、神の絶対性は疑われ、反対に人間の万能性が強調されるようになります。そこで芸術家個人が注目されるようになったのです。だから、ルネサンス期になると、レオナルド・ダヴィンチとかラファエロとか、有名な芸術家の名前が急激に増えるのです。

  • 私は物語が好きだ。
    それは物語によって救われた経験や励まされた経験があるから。
    こんな気持ちを抱えているのは自分だけではないということを知ることができたから。
    それは自分がそこにある物語を読み解いたから得られたことでもあり、読み解くためのカギを持っていたからでもある。
    でも世の中にある物語の数は膨大で、その物語の数だけカギが存在する。
    私はもっと物語を読みたい、読み解きたい。そう思ったからこの本を手に取った。
    渡辺祐真さん(以下スケザネさん)は、じゃあ物語とは何ぞや?というところから解説をしてくれている。
    なるほど物語ってこういうものか、そう理解させてくれたうえで、すでに世の中で親しまれている名作に触れつつ物語を読むためのカギを解説してくれている。
    そのなかで私はこれは…!とツボを突かれたところがあったのだが、多いので2つだけ紹介させてもらいたい。

    『わからないことに耐えようーネガティブ・ケイパビリティ』

    序章のところなのだけど、ここではわからないことに耐える能力=ネガティブ・ケイパビリティについて書かれている。
    人間はわかりたがる生き物だが物語を読み解くためにはわからないことに耐え、考え抜くことが大切であると説いているのだけれど、正直ここは読んでいて一番「痛い痛い!」となりました。
    私は自分で言うのもあれなのですが知的好奇心がかなりある。
    すぐにネットで調べてしまうし、知りたいことが載っている本を探して読む。
    これどういうこと?っていう疑問を放っておかずにいられないのである。
    だからこそ物語に関してもこれってどういうこと?と思うと前のページを読み返す。
    そしてこういうことか、なるほどね!と着地点に降り立ちたくなるのだ。
    わかったふりをしてはいけないというスケザネさんの言葉がめちゃくちゃ沁みました。
    物語に対して傲慢になってはいけない。
    わかることを諦めず、わかったふりにならないように。
    もっとネガティブ・ケイパビリティを育てていこうと思いましたね…。

    もう一点は第二章から。

    『いや説明してくれればいいじゃん!』

    なんで文学はストレートに説明してくれないのか。
    これに対する答え(物語のカギの理由)をここでは解説している。
    いまはわかりやすいことが比較的求められている。
    わかりやすいことが正義で、それに人は食いつく。
    これはまあ現代人が忙しいとか娯楽コンテンツがたくさんあるとか色々理由はあると思うのだけど文学にまでわかりやすさが求められていることに暗澹たる気持ちになることがある。
    私は趣味で二次創作の小説を書いている。
    そのため趣味を創作としている人たちの悩みや疑問を解決するためのサイトとかにも出入りをしているのだけれど『もっと自分の小説を読んでもらいたい、どうすればいいか』という相談をけっこう目にする。
    すると回答は決まってこうだ。
    『平易な文章でわかりやすい内容にする』
    せ、切ねえ…。
    時代の流れだとわかっていてもわかりやすさが求められるの、切ない。
    先述した通り、私はわからないことがあるとわかりたくなってくるタイプである。
    そのために色々と調べたり、考えたりすることが大好きなのでこういう『わからない文学は求められない』という事象を目にすると胸が苦しくなる。
    もっとわかりづらいことに寛容になってほしい。
    これもある意味ではネガティブ・ケイパビリティへの耐性の低さなのだろうか。
    スケザネさんがここで書いていたように、自分のことでさえ正確に理解できないとかわかりやすさに慣れてしまうと人の気持を推し量ることは難しいというようなことが知られてほしいと思った。
    物語を読み解き、わからない感情を想像することは他者へのまなざしを優しいものにするのだと思うから。

    こういう本の読み方に関する本を読むと、読書欲みたいなものがむくむくと首をもたげてきますね。
    いま図書館から借りた本が6冊あるので早速取りかかります。
    本を読みたいけど読み方がわからないとか楽しみ方がわからない人はぜひ手にとってみてください。

  • 小説を読んで何かがバチーンとハマり「面白かった!」となるとき、どういうことが起きているのか、言語化されていておもしろかった

  •  現代にあって、こういう文学入門のような本を手にするのは誰なのだろうか。その問いを持続しながら読み進めた。
     研究者の卵か。教室で授業を行う者か。

     これで本当に深く読めたことになるのか。
     「これって斬新」という発見があまりなかったのは、半可通の年寄りには仕方のないことか。

     参考文献の内容を思いながら、本文への消化の仕方を味わうのが、一番楽しかったか。 

  • 「なるほど!」と納得することばっかり!
    面白いねー」だけではない物語の肝をどう読み解くか。比べたり並べたり、頭の中でどうやってこねくり回すか事細かに書いてあります。
    知らない本ばかりではなく、映画やアニメでも例えられているのでわかりやすかった!

  • 本や映画にある程度触れていくと、作品には「面白い」「面白くない」「好き」「嫌い」では測れない良さがあることはわかってくる。でも、それがなんなのかは上手く表現できない。そこで他の人はどうやって読み解くのか関心が出てくる。
    本の読み方の本はいろいろある。でも、文学理論の本は難しいし、作家の書いた読み方の本はその人なりのものでしかないんじゃないかと疑ってしまう。

    本書は文学理論や様々な人が提唱する読み方をざっと概観でき、かつ必要な時は読み方ガイドブックとして使うことができる。
    自分が無意識にしていた読み、全くしたことの無かった読み。深過ぎず浅過ぎず本格的な読みへの入門としてちょうどいいと思う。

  • 読了日 2022/10/29

    hontoの通販で買ってしばらく本棚においてあったのが、色んな人の読中・読了報告を見て気になり始めたので読了。
    本を、特に物語を、より深く、より多くの側面を捉えて読むためのカギを38個紹介した本。

    俺は詩歌を中心に読んでいるのだが、これらの鍵を使える鍵穴、鍵を知ったからこそ見えてくるものがあるなと思う。ちょっと意識して使ってみたいところ。

  • 38のカギでたくさんのヒントをくれた。
    カギ09のジャンル意識、鑑賞態度の切り替えはとても大切だと思った。
    俵万智さんの帯が目に入ったので手にとった本。

全37件中 1 - 10件を表示

渡辺祐真/スケザネの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×