女の子の謎を解く

著者 :
  • 笠間書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784305709509

作品紹介・あらすじ

小説や漫画、ドラマ、映画、アイドルに描かれる「ヒロイン」を読み解き、今の世の中を考察!!

「なんで男女逆転モノって少女漫画に多いんだろう」「なんで姉妹キャラって基本的にお姉ちゃんのほうが落ち着いているんだろう」「なんで大人数のアイドルって流行ったんだろう」流行りだから…と片付けずその謎を深掘りすると、世間の深層心理も、私たちが抱えている問題も、その描かれ方がすべて伝えてくれる。注目の書評家・三宅香帆が、コンテンツにおける女の子を読み解き、世の中を考察します。

【目 次】
まえがき

第一部 女性キャラクターの謎を解く――ヒロイン論

○ヒロイン像も時代とともに変わっているの?―ヒロイン像の変遷
『源氏物語』『アラジン』『ルパン三世』『サード・ガール』『新世紀エヴァンゲリオン』『失恋ショコラティエ』『風の谷のナウシカ』『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』『風と共に去りぬ』

○人のケアにまわるキャラって、主人公になっているの?―ケアするヒロイン
『カードキャプターさくら』『タッチ』『ノルウェイの森』『逃げるは恥だが役に立つ』『ごちそうさん』『推し、燃ゆ』

○今もシンデレラストーリーって物語で描かれているの?―働くヒロイン
『シンデレラ』『あしながおじさん』『魔女の宅急便』『ブルックリン』『映像研には手を出すな!』

○なんで姉妹キャラクターは姉が落ち着いてて妹が元気なことが多いの?―姉妹ヒロインの比喩
『となりのトトロ』『アナと雪の女王』『分別と多感』『昏き目の暗殺者』

第二部 少女漫画の謎を解く――作品論

○なぜジブリには女の子が主人公の物語が多いの?―『トーマの心臓』論
『トーマの心臓』『魔女の宅急便』

○なぜ少女漫画ではしばしば男女逆転の物語が登場するの?―大奥論
 『日出処の天子』『侍女の物語』『大奥』

○なぜ「平成の少女漫画」のヒーローは弱いの?―平成少女漫画論
 『美少女戦士セーラームーン』『こどものおもちゃ』

第三部 女性の物語の謎を解く――テーマ論

○なぜ「娘の結婚」はホームドラマの題材になるの?―娘の結婚とホームドラマ
『細雪』『麦秋』『寺内貫太郎一家』

○なぜ2010年代になって大人数のアイドルが流行ったの?―2010年代アイドル論
AKB48、乃木坂46、欅坂46、日向坂46

○最近よく見る女性ふたりの主人公が活躍する物語って、何?―シスターフッドの変遷
『下妻物語』『君に届け』『涼宮ハルヒの憂鬱』『赤毛のアン』『アラサーちゃん』『裸一貫! つづ井さん』『凪のお暇』

○なんで最近、母娘について書く作家が増えているんでしょう?―母娘と父息子
『あまちゃん』『羊をめぐる冒険』『海辺のカフカ』『愛と幻想のファシズム』『かか』『イグアナの娘』『愛すべき娘たち』

あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』の三宅香帆さん最新本!
    今回も面白かったです。
    三宅さんの書評って私でも「解る!」という快感が味わえるから好きです。気のせいかもですが。

    この本は三部構成。
    一部はヒロインのキャラクターについて。
    二部はヒロインたちが登場する作品について。
    三部はヒロインたちの物語に通底するテーマについて。

    『アナ雪』や、AKBグループ、よしながふみや山岸涼子、萩尾望都、ジブリのヒロイン、最近の作品では宇佐見りん『推し、燃ゆ』『かか』などが引き合いに出されている。

    「この国は、少女が好きすぎる。そう思ったことが何度もある」p101には、力強く肯首したし、「平成の女の子は、弱い男の子に恋をした」p163にもハッとした。

    各論、冒頭部から心捕まれました。

  • 三宅香帆|note
    https://note.com/nyake/

    女の子の謎を解く | 笠間書院
    http://shop.kasamashoin.jp/bd/isbn/9784305709509/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      【書評】『女の子の謎を解く』 - 産経ニュース
      https://www.sankei.com/article/20211219-IQPLTF...
      【書評】『女の子の謎を解く』 - 産経ニュース
      https://www.sankei.com/article/20211219-IQPLTF6N4NMQ5OLGOQEJUWFZXU/
      2021/12/19
  •  フィクションとリアルを問わず、さまざまな「ヒロイン」が存在するが、彼女たちを語る言葉が少ないと著者は問う。果たして彼女らは何を担い、如何様に描かれ、どんな機能を果たしているのだろうか?

     本書は三部構成。ヒロイン論、作品論、テーマ論に分かれる。さらには具体的な問いかけを続けながら解を出してゆき、いわば帰納法的に論を重ねていくことになる。

     例えば一部では、「なんで姉妹キャラクターは姉が落ち着いてて妹が元気なことが多いの?」「今もシンデレラストーリーって物語で描かれているの?」。あるいは二部では「なぜ少女漫画ではしばしば男女逆転の物語が登場するの?」「なぜ『平成の少女漫画』のヒーローは弱いの?」など。

     それぞれの問いに対する解は本書の論に譲るが、この論述や問いの立て方から著者の挑戦的な試行が見え隠れしてはいないか。それは、素朴な問いを出発点に、平易な表現によって読者を「批評」の営みにまで導くこと。こう書くだけなら容易いが、実際には当然、難しい。

     おそらく著者にとって、批評的言語やフォーマットで論述するのは難しいことではないはずで。けれどひとたびそう語ってしまえば、批評の言葉は既存の読者あてに留まるばかりで、肝心のマンガやアニメの読み手にまで届かない。

     こうしてみると、まえがきの「もちろんあなたの性別や属性はなんら関係ない。ヒロインの次元も問わない」という言葉には相応の覚悟と論点が含まれているのではないか。皆が自分にとってのヒロインを語る言葉を増やすための道具立てに、著者は労を厭わない。解像度を落とさずに敷居を下げ、作品解説と批評を架橋しつつ両者の間を横切る獣道を進む。

     批評という営みをやさしく伝える、貴重な成果になっているのだろうな、と思います。何より、ヒロインたちの姿を令和に即した形で語り直すことに成功した一冊なのだろうと思えます。

  • Twitterで著者の「(萌えすぎて)絶対忘れない!妄想古文」の存在を知り、すごい書き手が現れたんだ、読みたいと思った。
    図書館で、読みたかった著者の本だと思い、借りた。ここまで若い方だと思ってなかった。

    「推し、燃ゆ」をケアの観点で読む。ふーん、こういう読み方ができるのかとすごく目が開かされた。
    その後もすでに読んだ本は、「こういう読み方ができるのか」と繰り返し思い、読んでいない本は読みたくなる。左端の注の「本稿に関係ないけど」この著者の作品で一番好きなのは〜だと書かれていると、とてもとても読みたくなる。

    長い歴史を持つ古典作品から学ぶことは当然ながら多いが、カジュアルな装いの、自分よりグッと若い書き手からもたくさん学ぶことができ、死ぬまで安心という感じだ。

  • 女の子の生きづらさはどうしてもある。
    「推し、燃ゆ」や「映像研には手を出すな!」などの新しい作品に言及されているのも良かった。
    「大奥」ほどの長編がただ一点を描くためだけにかかれてあたことは切実で差し迫ってくる。

  • アナとエルサ、サツキとメイの姉妹関係にはとても、興味があった。こどちゃが出てきて単に嬉しさを覚えた。

  • 女の子は謎のかたまり。

    ●女性キャラクターの謎を解く――ヒロイン論
    『キャンディキャンディ』も働くケアするヒロイン。『となりのトトロ』はカンタのばあちゃんの存在が大きいはず。そしてばあちゃんは働き者。『推し、燃ゆ』読まねばー!

    ●少女漫画の謎を解く――作品論
    「萩尾望都の描く少年は、ただ女性性を否定した性である」うぉー!本当だっ! 萩尾望都の”少年”の描き方と宮崎駿の”少女”の描き方の対比論は面白いなぁ。よしながふみの『大奥』読まないとなー。

    ●女性の物語の謎を解く――テーマ論
    1999年デビューの宇多田ヒカルや椎名林檎は、十代にも関わらず、アイドルではなく”アーティスト”として、圧倒的存在感と唯一無二の世界観で日本中を魅了した。世の男性達にとって、彼女二人は”畏怖”の存在だった? その裏返しとして「会いに行ける大人数のアイドル」が流行ったのではないだろうか?と私なりの考察。うーむ。
    シスターフッドの原型は、映画「テルマ&ルイーズ」だと思うが、これいかに?

    この一冊でその謎を解くことなんて不可能だ! 是非この続きの執筆を強く望みます!

  • 2022/04/28

    この本が売れたのはその時代だったから!という感じ。ほんとにこの著者好きすぎる。いつも楽しく読ませてもらってます。
    源氏物語から推し、燃ゆまで、時代を遡り場所をかえ、色々な物語のヒロインについて語られている本。紹介されている本全部読みたくなるしアイドルのところでは全部歌詞を見ながら聞きたくなった。(欅坂46だけはたしかになってなった。)鬼滅について書かれた本は多いと思うがつづ井さんについて語られた本は多くはないと思うのでとても嬉しい。
    新刊楽しみにしてます。

    p160
    私たちは子を産むためだけに生きているわけではない。もちろん子を作ることも人生の一部として存在する。でも子を産んだ人たちにとっても「そのために」人生が存在するわけじゃないだろう。そして子をつくっていない人が、そのことによって何かを否定されることもまた、あっていいはずがない。
    p217
    日本のホームドラマは、「家長を保つための犠牲になるのをやんわりと拒否するため、微笑んでいた娘たちの物語」とも読めるのである。

  • たまたまよしながふみの大奥を読み終えたタイミングで本書を読んだので、あの物語には産むことからの解放と言う意味があったと言う解説を読み、わたしが得られたカタルシスの意味が分かりスッキリした。
    ジブリの主人公に少女が多い理由も面白い。男は少女に、女は少年に自由を求めるあたり、無い物ねだりなのかもしれない。

  • 興味深いが、「今すぐ」読んでおきたいというものとは違っていた。ただ、手元に置いておいて、いつでも読める状態でありたいとは思った。

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著者プロフィール

1994年生まれ。高知県出身。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。大学院時代の専門は萬葉集。大学院在学中に書籍執筆を開始。現在は東京で会社員の傍ら、作家・書評家として活動中。
著書に『人生を狂わす名著50』(ライツ社)、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)、『副作用あります!? 人生おたすけ処方本』(幻冬舎)、『妄想とツッコミでよむ万葉集』(大和書房)、『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』(笠間書院)。ウェブメディアなどへの出演・連載多数。

「2021年 『女の子の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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