病は気から、死は薬から 薬剤師・毒島花織の名推理 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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本棚登録 : 673
感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299026170

作品紹介・あらすじ

累計10万部突破の人気シリーズ最新刊!
鋭い洞察力と持ち前の真面目さで薬にまつわる事件を鮮やかに解決する、薬剤師の毒島(ぶすじま)さん。彼女に恋心を抱いているホテルマンの爽太は、自分の住所がわからなくなった宿泊客に認知症を疑う。持っていた鞄を検めると大量の薬が出てきて、何かの疾患を心配した爽太は毒島さんに相談すると、重大なことがわかって……。さらに、毒島さんの先輩で、東洋医学に詳しい空木という男性薬剤師が就職先を探しにやってきた。空木は毒島さんを「花織ちゃん」と呼び、ホテルの女性従業員達の胸を高鳴らせ、爽太は気が気じゃない……。

感想・レビュー・書評

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  • <薬剤師・毒島花織の名推理>シリーズ第四作。

    水尾爽太に恋のライバル出現?
    爽太が思いを寄せる(そしてそれが全く伝わらない)薬剤師・毒島花織が、かつて世話になったという元同僚・宇月啓介という見た目も中身も良い男が現れる。
    派遣の薬剤師という今どきの働き方だなという自由人っぽい宇月だが、漢方医学に詳しい。
    今回は毒島だけでなく宇月も加わってのトラブル解決になっている。

    ただ全体的には辛い話が多かった。
    認知症と窃盗症、更年期障害とマルチ商法、そして馬場の熟年結婚。
    人生の後半に差し掛かっている私にはとても切なく身につまされるような話で読んでいて辛くなった。
    爽太の同僚・落合の母なんて、傍から見ればこんなに心配してくれる娘さんがいて幸せではないかと思うのだけれど、たとえ家族であっても心身の辛さは共有出来ないし性格も考え方も違う。
    ましてや家族や頼れる人がそばにいない孤独から何かにすがりたくなったり思いつめたりということも理解できる。

    毎回思うのだけれど、このシリーズは表紙がやや損をしているように思う。作中の毒島はこんな冷たい印象はない。
    薬とそれを使う人のことを真摯に考え、薬のよりよい向き合い方や使い方について素人にも分かりやすく伝えようとしてくれている。

    そして宇月。表紙絵のスマートさと裏腹に大変な過去だった。そしてそのことが漢方医学の追究に繋がっていたとは。
    そもそも漢方医学が日本独自で発展したものということも知らなかった。漢方薬だろうがサプリメントだろうが食品だろうが、口に入るもの全て摂取量や摂取の仕方を間違えば悪い影響があることは分かっていたが、冷静に説明されると納得しやすい。

    それにしてもホテルともなれば様々な客が来る。確か第二作には無銭宿泊の客がいたが、今回も扱いに困る客が来る。先輩の笠井は早く追い出そうとするが、後輩の原木は心配して面倒を見ようとする。総支配人の高田も『ナイーブな問題だな』と弱った様子。結局は原木と爽太、そして毒島の頑張りで解決するが、何が正解かは分からない。こういうマニュアルにはない対応は今後も増えていくだろうか。

    馬場の結婚話が怖い話でなくて良かった。今後も健康に気を付けて人生を謳歌して欲しい。
    そして爽太と毒島の関係には少し変化があるか?

    ※シリーズ作品一覧
    全てレビュー投稿あり
    ①「薬も過ぎれば毒となる」
    ②「甲の薬は乙の毒」
    ③「毒をもって毒を制す」
    ④ 本作

  • シリーズ4作目。

    今回も薬剤師の毒島さんとホテルマンの水尾が、ホテル内での出来事で薬に纏わる難事件を解決する。

    それでもこのシリーズは、毒島さんの恩人だという男性、宇月さんが中心になってる感が、強めであった。
    なにしろ漢方に関する知識が半端ない。
    まさしく漢方医学のプロである。
    漢方って、中国古来のものと思っていたが、違っていたことに、そうなんだ…と。
    やはり、奥が深いなぁと思った。

    第一話 私は誰、ここはどこ?
    第二話 サプリメントと漢方薬
    第三話 秘密の花園

    特に第二話は、マルチ商法的な話でもあり、これは更年期障害の辛さを感じている女性なら簡単に手を出してしまいそうだなと思った。
    しんどい時に何気なく手を出してしまうサプリメントや漢方。
    医薬品では無いこのことばで、身体には優しいイメージがインプットされるのだ。
    そして、「水」。
    これは怪しいと思うのだが、もともと水なんてあんまし違いがわからない私には、意味はないのだが。
    だが、わからないでもないと思った。
    頭痛持ちである私は、『頭痛封じ守』が欲しいと思ったのだから。

    今回も薬について考えることが多かった。
    自分でも良く知ってからでないと簡単に使用できないかもと思ったりした。

  • シリーズ4作目の3話からなる短編集です。

    毒島さんの恩人である漢方医学にも精通した薬剤師の宇月が新登場しました。

    認知症や健康食品のマルチ療法、有毒植物など身近なテーマだったし、漢方医学のプロの宇月が登場したことによって、西洋医学だけでは補えきれない分野の説明がわかりやすかったです。

    次も楽しみです。

  • クールな薬剤師・毒島さんシリーズ4作目。
    薬と毒を絡ませたミステリシリーズの根幹は安定のバッチリな仕上がり。認知症、サプリ&漢方薬、毒草と内容も豊富。
    で、今回は毒島さんに好意をよせる主人公のホテルマン水島の前に、毒島さんと曰くありげな関係の男性が登場。恋のライバル?楽しませていだきました。

  • シリーズをひとつ飛ばして読んでしまったようだが、短編ミステリーなので不都合はない。
    今回は、サプリメントや健康食品に関することが多く、これも身近な問題なので、興味をもって読めた。
    毒島さんの知り合いの薬剤師さんも現れたりして、なかなかおもしろかった。

  • 薬剤師毒島さんシリーズ4作目。今回は記憶喪失の女性の素性·マルチ商法絡みのサプリメントに嵌まった母を心配するフロントの落合さん·急に現れた馬場さんの婚約者!の謎を解いていく。コロナ禍も落ち着き、爽太もようやく毒島さんと直接会って一緒に謎に挑むのだが、今回は毒島さんの元同僚で色々お世話になったらしい宇月という男性が登場。謎が漢方やサプリメント関係なのでそちら方面に造詣が深い宇月が主体となって色々動くので、話自体は面白いけど毒島さんが宇月の推理の補強の立場というか少し後ろに下がった感があって残念。一話目は頑張っているけど二話目以降爽太も活躍が少なくて残念。しかし東洋医学の説明がかなり多いけどあれ皆ちゃんと読んでいるんだろうか。某資格持ちとしては気になる。

  • 2022年2月宝島社文庫刊。書き下ろし。私は誰,ここはどこ、サプリメントと漢方薬、秘密の花園、の3つの連作短編。前巻(毎月刊行だな)と同様なやや無理感のある展開だが、薬機法の話等、面白い話題で飽きない。薬剤師の毒島さんとホテルマンの爽太くんの関係はあいかわらず進展がないものの二人の関係は微笑ましい。

  • 気付けば、この作品もシリーズ4作目。
    薬剤師の毒島が、ホテルマンの爽太の持ち込む身近な謎に知識だけで解決していくと言う、何とも斬新なスタイルのシリーズだが、今作では毒島の恩人・宇月が登場し、西洋医療だけでなく、漢方や植物などの知識も盛り込まれていて、読み応え抜群!
    ホテルに現れた認知症の女性の持っていた薬から、身元を特定したり、爽太の同僚の母親が陥りそうになっていたマルチ商法を阻止したり、今回も毒島、そして宇月が大活躍。
    C型肝炎の治療が大変なこと、そして治療薬がとても高額なことをさらっと取り入れてくれたり、糖尿病の薬を例えに処方通りに飲まないことで起きる危険も、いろいろなところに盛り込んでいて、ミステリーとしても楽しめるし、薬に頼りがちな日常の話としても勉強になる。
    タイトルの「死は薬から」はちょっと過激な表現に思えるが、本当にそう思う。
    セルフメディケーションが認められる世の中だからこそ、こういう作品がもっといろんな人に読まれるといいのに・・・

  • 薬剤師・毒島さんが活躍するシリーズ。
    今回は、彼女の恩人という謎のイケメン・宇月が活躍する内容。

    ・私は誰、ここはどこ?
    ・サプリメントと漢方薬
    ・秘密の花園

    記憶喪失の女性が、なぜ高価な薬を捨てたのか?
    悪質なマルチ商法を、どう止めるのか?
    有毒植物ばかり育てる女性と、ホテルスタッフとの婚約騒動など。

    次回作にも期待です。

  • 【収録作品】私は誰、ここはどこ?/サプリメントと漢方薬/秘密の花園
     認知症の老女と高価な薬、マルチ商法にはまった母親、糖尿病にこだわる婚約者。
     認知症の話も、サプリメントのマルチ商法の話も、糖尿病の話も、身近なものなので、用心用心。

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著者プロフィール

1962年、千葉県生まれ。第7回『このミステリーがすごい!』大賞・優秀賞を受賞、『毒殺魔の教室』にて2009年デビュー。

「2020年 『甲の薬は乙の毒 薬剤師・毒島花織の名推理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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