量子コンピュータが本当にわかる! ― 第一線開発者がやさしく明かすしくみと可能性
- 技術評論社 (2020年2月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784297111359
作品紹介・あらすじ
東京大学大学院 工学系研究科 古澤明 教授 推薦!
「新進気鋭の量子コンピュータ研究者による画期的な本。
量子コンピュータの本質がわかる」
日本における数少ない量子コンピュータの開発者自身が、かみくだいたやさしい話し言葉でそのしくみから可能性までを明かす、量子コンピュータ読本の決定版!
Googleが「量子超越性」の実証を発表するなど、量子コンピュータ周辺のニュースが世間を騒がせるようになってきました。一方で、華々しい話を強調しすぎるあまり、量子コンピュータに得体のしれないひみつ道具のようなイメージが広がり、実体をきちんと知りたい人にとって必要な情報はあまり提供されていません。
本書は現場を知り尽くした開発者が、詳しく知りたい読者に向けて、量子コンピュータもあくまで現代のコンピュータの考え方をベースに発展させたコンピュータの一種であることや、どこにどう量子の性質が使われてどういう場合に計算が速くなるのかなどを、かみくだいて解説します。また、現在実際に開発が進められている量子コンピュータについて、その種類や長所・短所、将来の展望などを述べます。量子コンピュータに興味を持たれた方の、最初の1冊としておすすめです。
感想・レビュー・書評
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テレビの情報でしか知ることがなかった、量子コンピュータ。
なんだかよくわからない仕組みに魅了されて、近々完成されるかもしれない、というニュースに未来の社会を想像しながら過ごしていましたが、そもそも量子コンピュータとは何か?という疑問がこの本を読んだきっかけでした。
結論から述べますと、量子コンピュータが実用化されるのにはまだまだ程遠く、テレビで紹介されていることと、開発現場での状況は全く違うのだなぁという印象を持ちました。
そもそも通常のコンピュータには、電源をオンオフするスイッチのような機能を果たす、細かいトランジスタが集まってできたもの。
その役割を電子や陽子、中性子などの原子レベルの小ささのものを使ったものが量子コンピュータというそうです。
では量子を使うことで何が便利になるかというと、トランジスタを使った場合、0と1かのどちらかの信号しか流せないのに対し、0と1両方の電気信号を同時に流すことができるそう。
これが何が便利なのかというと、例えば4桁の暗証番号を0001から入力して解錠する場合、現在では高速で一つ一つの数字を当てはめて解いていきますが、これを量子コンピュータを使って解錠しようとすると、幾つもの番号を並列処理で当てはめていくことができます。
ただ、並列で当てはめるということは、通常よりもものすごく解くスピードが早くなるのでは?と思われるかも知れませんが、途中の計算が優秀でも、最後の回答がうまく出せないのが、現代の量子コンピュータの限界で、この辺りのことが、ものすごくわかりやすく書かれておりました。
量子コンピュータの基本的な仕組みから、技術、通常のコンピュータと比較して、何が得意か。
そして、今現在どこまで開発が進んでいるかなど、
量子コンピュータについての内容が、網羅的にぎっしりと詰まっています。
学生時代、思いっきり文系だった私でも、スラスラと読むことができたので、量子コンピュータに少しでも興味のある方は、ぜひ読んでみることをお勧めします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史とか哲学の本を読んでて疲れたので箸休めに読んでみた。
3、4年に1回はYouTubeにて2重スリット実験について観てたので量子に関する若干の知識はあったが、なぜ量子を応用すれば最強のコンピュータを作れるのかは分かってなかったので気になった。
量子コンピュータの強みは複数の状況を同時に存在させられるところにあると理解できた。
研究者ってすげーな。 -
副題にある通り、第一線で研究している著者が、ニュースなどで夢のコンピュータ、とか、万能感を煽る量子コンピュータに対し、そうではないよ、と実際的な解説をしてくれている本。Googleが最先端のスーパーコンピューターが1万年かかる問題を200秒で解いた等、巷のニュースに踊らされてはいけない、ということがよくわかりました。
そもそも量子コンピュータに限らず、コンピュータが苦手だったり、解けなかったりする問題もあるし、コンピュータの中でも量子コンピュータの方が有利な問題は、今のところ4つしかない、ということも初めて知りました。これから用途開発も必要ということなので、今ある量子コンピュータは「おもちゃみたいなもの」という解説にも納得。
「原理的に解ける」ことと「実際に解ける」ことは違う、という説明の際に出てきた組み合わせ最適問題や素因数分解は量子コンピュータが得意であることもよくわかりました。
著者は、量子コンピュータの代表的な4つの方式、すなわち超電導回路方式、イオン方式、半導体方式、光方式のうち、光方式を独自のアイデアで研究開発を進めているそうです。苦労して使った光回路の精度が足りなかったり、長い時間をかけて使った試作機が全く機能しなかったりと失敗もあるようですが、「工夫してモノ作りをしていくことに研究開発の醍醐味がある」というセリフには激しく同意します。現状、光量子コンピュータの実現にはまだまだ時間がかかりそうですが、デファクトスタンダードが海外勢に確立される前に、ぜひとも頑張っていただきたいと応援したくなる気持ちで本書を閉じました。 -
誤解していた。ポテンシャルは高いが、魔法のコンピュータというにはまだ早い。
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#図書館員の推し事(おしごと)企画/「ゆるコンピュータ科学ラジオ」を推す!
金沢大学附属図書館所在情報
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https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB29719262?caller=xc-search -
量子コンピュータに関する本を多数読んで(挫折して)きたが、その中でも分かりやすかった
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量子コンピュータのしくみが概念として理解できた。重ね合わせ状態の波の性質のままの情報を扱い、波の状態のまま干渉させることで求めたい情報ついての波の状態だけを増幅させた後に情報観測することで、多数の可能性の中から求めたい情報を古典的コンピュータよりも少ない計算回数で得られるもので、素因数分解や最適化問題、新物質の働きのシミュレーションなどについて古典的コンピュータをはるかに上回る効率的な計算を行えることが期待されている。
しかし、まだ数十個程度の量子ビットしか実現できておらず、100万~1億個の量子ビットが必要と言われている実用化にはまだ何度も技術的ブレークスルーが必要になる。 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50185188 -
光量子コンピュータ開発の研究に携わっている著者による入門書で,非専門家の疑問の多くに答えてくれている。