- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296200917
作品紹介・あらすじ
営業利益率は脅威の55%超、社員の平均年間給与は2000万円超──。売上高は1兆円に満たないながらも日本の時価総額ランキングで第3位に入るのがキーエンスだ。日本を支えてきた製造業の弱体化が指摘される中、なぜキーエンスはこれだけの結果を残せるのか。その神髄は顧客の心をつかむ営業や商品開発、人材育成の仕組みにある。外部にほとんど明かされないキーエンスの正体に日経ビジネス記者が迫る。
感想・レビュー・書評
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ビジネス書は、すいびょうさんの本棚を見て、なければ読むというルーチンになっています(笑)
なので、最近、読む数が著しく減ってます…
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1.この本を選んだ目的
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最近、また、仕事を変えようと考えており、その時に人材コンサルに言われたのは、「あなたは深掘りが足らない」という指摘。なんでも出来るタイプなので、小手先で実行して、それで終わりにしてしまうのが、弱点ですとのこと…
そう、もっと、しっかり考えたい。
ということで、久々にビジネス書や、学習本を読まねばと、、、手にした一冊です。
キーエンスはハンディーターミナルの導入でお世話になっており、標準でついてるソフトを使って、ソフトを作っていた時もあります。給料すごいのは知っていたけど、取り組みまで目を向けたことがなかったので。
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2.概要
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この本はキーエンスに在籍していた人が書いたものではなく、外部の人が取材を通して書いたものです。
一つのことに絞ってキーエンスを紹介するのではなく、こんな取り組みをしています、というのを、全部上げていく感じの作品です。割と古い取り組みについても紹介されています。
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3.感想
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特別、驚きはなかったです。
吸い込まれるものがなかったな…
それこそ、ターゲットをしっかりしぼって、もっと、一つの点について記述した方が面白かったと思います。
例えば、毎日実施するロールプレイングについては、もっと具体的に、様々な例を用いて紹介してほしい。
それから、プロセス重視の評価手法についても、その内容をオープンにして、マネしようと思えば、その仕組みを導入できるぐらい、詳細に紹介してほしい。
財務諸表を確認すればわかるようなことなんか、いらなかったかもしれないですね。
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4.具体的にどのような点を学習したか?
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日々繰り返すことで成果を上げることに意識をむけなければいけないこと。
プレゼンといえないとしても人前で話すことや、ボードに書き込むこと、など、日々実行して、レビューをもらえれば、成長するし、間違いなく自身の成果につながるだろう。
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5.具体的にどのような行動をするか?
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その企業や自部署において、「毎日実施することで、利益を増やすことにつながるものは何か?」を、考えるようにする。そして、提案していく。
日々の生活においても、毎日することで、自分の目指すものに近づくことがないか考える。
とにかく、毎日やるのは大変だから、その先にあるものをイメージできるような目標を立てる。
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【キーエンスとは?】
センサー製造業で、時価総額15兆円、営業利益率50%、社員年俸2,000万円以上という驚異的な企業です。しかし、その経営や営業の方法は公式にはほとんど明かされていません。
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【キーエンスの強さを知る。書籍の概要】
そこで、日経の取材記録をまとめた書籍『キーエンス解剖』を読んでみました。非公式本とはいえ、キーエンスの内部事情や戦略を知る貴重な資料です。読まないともったないかも・・・です。
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【メインテーマ】
書籍の中で印象的だったのは、キーエンスの「ロジ」(ロジックの略)という考え方です。目的、目標、問題を明確にし、解決に向けて行動すること。その徹底ぶりは、取材記録からだけでも十分に読み取れます。
【具体例】
「ロジ」の実践法として、書籍では以下のような事例が紹介されています。
①「時間チャージ」
売上総利益/付加価値を全社員の総労働時間数で割った数値。時間当たりの稼ぎが過去と比較していいのか?悪いのか?が判断できる指標です。
②営業の仕事の流れ
外勤3営業日内勤2営業日のサイクルで、外勤では商談件数5から10社、内勤では電話商談件数50社以上をこなします。
商談議事は5分以内に記載し、正確に相手の状況や課題を把握します。1日の振り返りでは、共有ではなく、顧客の課題の特定や解決のための次回商談シナリオの確定をします。KPIはOB、商談件数、キーマン接触回数含めて20件以上を目指します。
ロープレは、新人は基本200営業日連続で、毎日18時以降10分行います。シナリオトークがあり、機能的価値よりも意味的価値(商談先における定量・定性メリット)を伝える練習です。
③質量チェックの仕組み
KPIの個人別順位をメール配信し、透明性を高めます。ハッピーコールでは、上司が商談先に電話して裏取りをします。内部監査では、マルサと呼ばれる社員が正しく行動しているかをチェックします。性弱説という考え方に基づいて、人は怠けるものだとして、厳しい管理を行います。
【ハッシュタグ】 #キーエンス #営業 #ロジ #書評 #ビジネス書 -
【感想】
サラタメさんの書評動画を見て興味が湧いた1冊。キーエンスの「30代で家が建ち、40代で墓が建つ」というキーワードは、ビジネスマンなら誰しも耳にしたことがあるのでは?
前述のキーワードと、ぶっちぎりの高年収である事以外、正直キーエンスって個人的に関わりがなく謎めいた企業でしたが、本書を読んでとても面白くて先進的な企業だなと思いました!
サラタメさんのYouTubeでも紹介していた「ロープレ千本ノック」「ハッピーコール」「アポ5件ないと外出できない」といったブラック寄りのところにも目が行ったが、個人的にやっぱり自分と違うなと感じたのは以下の2点。
1つ目は顧客訪問よりも社内にいる時間が長いこと。
キーエンスって神出鬼没で外回り営業に駆け回っているイメージが強かったが、週2回の社内日や学習(製品や市場について)など、結構「内勤」をする事が多いのだなと思った。
本書でも解説しているように、「よく勉強して、顧客に商品の良さを理解してもらう事に努める」といった点が新鮮だった。
僕はどうしても外を駆け回って量で行くタイプの営業なので、こういった"学習"に時間をもう少し割く必要があるなと参考になりました。
2つ目は、これはかなり個人的な意見ですが、「即納:全商品当日出荷、全商品在庫あり」という概念です。
僕自身メーカー業なのですが、欠品は本当に時間の無駄!!笑
というか、それ理由で逸した案件や既存取引先がどれだけ多い事か・・・
キャッシュフローという点において過剰に在庫しないのは企業の宿命なのですが、それ以上に失うモノが多いんよね。
なので、単純に「全商品当日出荷、全商品在庫あり」というシステムが羨ましいなと思いました。笑
また、あくまでもイメージですが、キーエンスの社員って一匹狼タイプが多いのかなと勝手に思っていました。
が、個人の売上・数字などの結果ではなく過程が評価されたり、自分の数字ではなく会社への貢献度が評価されているという点も、イメージと全然違いました。
やはり成長していて存続できる企業は、そのあたりの共通認識が社内でもしっかり統率されているんですね。
ウチの会社もそれを謳っていますが、僕は自分自身のエリアや数字の事しか常に頭にありません。笑
絶対に自分はキーエンスに入りませんし、キーエンスでやっていける自信なんて微塵もありませんが、参考になるマインドが多数ありましたので活用していきたいと思います。
顧客が気付いていない潜在需要を掘り出して製品を提案・・・これが出来るようになりたいものですね。
【抜粋】
1.キーエンスは、属人的な才能に頼っているのではない。
とにかくめちゃくちゃ働く。キーエンスは仕組みと、それをやり切る風土がすごい。
「人が成長し、成果を出すための仕組みを作り、その仕組みの中で社員たちが徹底的にやりきる」と言う組織の強さで、類を見ない高収益を実現
2.商談のレベルを引き上げる「ロープレ」1000本ノック
ロープレを実施するのは、新製品発表前などの特別なタイミングだけではない。
10〜15分ほどで手短に、では毎日のように繰り返すのがキーエンス流。まるで歯を磨くように当たり前にやる。
3.「商談から5分以内に書く」外報
営業担当者は商談の前と後に必ず外報を記入する。どんな準備をしたか。どこを訪問してたりとあったのか。そして反応はどうだったのか。
顧客とのやりとりをタブレットなどで入力し、上司と共有する
時間が経つと主観が強まったり、細かいことを書くのが億劫になったりする。
気づいたことをすぐに書き留めておけば、顧客が何を求めているのかが見えやすくなり、次の戦略を練るのにも役立つ。
4.営業だってソフトを組める。
キーエンスの社員は技術にも精通している。営業担当者でもちょっとしたソフト、プログラミングができる。
キーエンスは営業担当者がなるべく個人で、現場で解決することを強く意識付けられている。
5.営業は、顧客を訪問しているよりも社内にいる時間の方が長い。それだけよく勉強している。
これが、商品の良さを理解していただくことにつながっている。
6.全商品当日出荷、全商品在庫あり、「即納」
驚くべきは、カタログに掲載している商品すべてを即納の対象としていること。
10,000種以上ある製品の在庫を常時、例外なく持っていると言うのだ。
在庫が増えるとキャッシュフローが減少する上、売れなかった在庫を廉価で販売したり処分したりすると利益率の悪化を招く。
そのため「完全受注生産」と言う無駄な製品を作らずに済ますことを多くの製造業は重視してきたが、生産にかかる時間だけ顧客を待たせてしまうと言う課題がある。
キーエンスは、なぜ在庫を積むのか?
それは直近の利益よりも当日出荷が重要だと言う絶対的な優先順位があるからだ。
キーエンスだったらすぐに持ってきてくれると言う他社にない価値を守り続ければ、商品の売値を維持でき、それが長期的な利益率向上につながると言う発想だ。
7.なぜ徹底的にできるのか?
それは、「人は油断するし、ラクをしたいと考えるもの」という“性弱説”に基づいている。
だから、社員が何をしているのかをガラス張りにして、いい数字も悪い数字も見せる。
やるべきことを、手を抜かずにやり切ってもらうためだ。
【引用】
センサーを活用し、顧客の工場に対する生産改善をコンサルティングする事業
・30代で家が建ち、40代で墓が建つ。
とにかくめちゃくちゃ働く。
キーエンスは仕組みと、それをやり切る風土がすごい。後輩の指導もしっかりするから、人が育たないわけがない。
キーエンスは、属人的な才能に頼っているのではない。
人が成長し、成果を出すための仕組みを作り、その仕組みの中で社員たちが徹底的にやりきると言う組織の強さで類を見ない高収益を実現している。
p20
・訓練された営業担当者が常に需要を探り続け、チャンスと見たら電光石火で勝負をかける。
こんなシェア奪取劇が世界中で起きていることを、キーエンスの業績がはっきりと示している。
22年3月期の売上高は過去最高の7552億円で、10年前の4倍近くにまで拡大した。
営業利益も過去最高で、売り上げに対する営業利益の比率はメーカーとして脅威の55.4%に達する。
コロナでの投資抑制の影響受けて一時足踏みしたものの、ほぼ右肩上がりで成長続けてきた
それも、営業利益率が50%前後と言う高い収益性を維持しながらだ。
p20
1974年の設立以来、主力にしてきたのはセンサーを中心とした業務用の電子機器。
製造現場で異常を発見したり、生産性を高めたりするために使うものだ。
工場の自動化(ファクトリーオートメーション)の進展とともに事業領域を広げ、バーコードなどを読み取るハンディーターミナルやロボットビジョン(ロボットと組み合わせて検査等に使うカメラシステム)などでも存在感を高めてきた。
商品はハイスペック一辺倒ではなく、意外なものを組み合わせる斬新なアイディアを特徴とするものも多い。
p40
・商談のレベルを引き上げる「ロープレ」1000本ノック
ロープレを実施するのは、新製品発表前などの特別なタイミングだけではない。
10〜15分ほどで手短に、では毎日のように繰り返すのがキーエンス流。まるで歯を磨くように当たり前にやる。
p45
週2日ほどの「社内日」は、例えば午前8時半に出社した後、午前中は電話やメール、オンライン面談などの顧客フォローをこなす。
午後は商品の提案や外出アポ取り、見積もり作成などに充てる。
電話は1日あたり30から80間ほどに及ぶ。
週3日ほどある「外出日」には、1日後から受験の後を詰め込むのが当たり前。5件以上ないとそもそも外出が許されない。
p47
・外報
営業担当者は商談の前と後に必ず外報を記入する。どんな準備をしたか。どこを訪問してたりとあったのか。そして反応はどうだったのか。
顧客とのやりとりをタブレットなどで入力し、上司と共有する
外報記入の暗黙のルールとして、「商談から5分以内に書く」というものがある。
時間が達人主観が強まったり、細かいことを書くのが億劫になったりするから。
気づいたことをすぐに書き留めておけば、顧客が何を求めているのかが見えやすくなり、次の戦略を練るのにも役立つ。
p62
・ハッピーコール
営業担当者の上司が、顧客に対してフォローの電話をかけることをそう呼んでいる。
部下がきちんと顧客のニーズを聞き出したのか、顧客にとって満足のいく提案ができたのかなどを確認するのが第一目的だ。
フォローのつもりでかけたハッピーコールで、営業担当者の「サボり」が発覚することも…
ハッピーコールを「監視」と捉えるか「サポート」と捉えるかは自分次第。
良いことも悪いことも上司はよく見ている。キーエンスでは、嘘をつかないことが最も大切。
p68
・営業だってソフトを組める。
キーエンスの社員は技術にも精通している。営業担当者でもちょっとしたソフト、プログラミングができる。
キーエンスは営業担当者がなるべく個人で、現場で解決することを強く意識付けられていると感じた。
p75
営業は、顧客を訪問しているよりも社内にいる時間の方が長い。それだけよく勉強しているのです。
これが、商品の良さを理解していただくことにつながっている。
p92
・顧客の「欲しい」それでは遅い。
顧客が欲しいと言うものは作らないと言う価値観。
どういう商品を開発するかを、お客さんから言われて決めているようでは、すでに遅いんです。
顧客の要望通りのものを作っても、付加価値は高くならない。
開発人は現在の市場の情報を把握した上で、顧客自身が気づいていないような潜在需要を掘り起こさないとダメです。
他人から依頼された仕事をせず、自分から問題を見つけ、解決方法を探るようにもっていくのが、経営の重要課題だと思っています。
p112
・全商品当日出荷、全商品在庫あり、「即納」
驚くべきは、カタログに掲載している商品すべてを即納の対象としていることだ。
キーエンスの商品は10,000種以上あるとされ、数千円から数万円の工場向けセンサーから1500万円ほどするマイクロスコープのような高価な商品まで幅広い。
それらの在庫を常時、例外なく持っていると言うのだ。
在庫が増えるとキャッシュフローが減少する上、売れなかった在庫を廉価で販売したり処分したりすると利益率の悪化を招く。
そのため「完全受注生産」と言う無駄な製品を作らずに済ますことを多くの製造業は重視してきたが、生産にかかる時間だけ顧客を待たせてしまうと言う課題がある。
キーエンスは、なぜ在庫を積むのか?
それは直近の利益よりも当日出荷が重要だと言う絶対的な優先順位があるからだ。
キーエンスだったらすぐに持ってきてくれると言う他社にない価値を守り続ければ、商品の売値を維持でき、それが長期的な利益率向上につながると言う発想だ。
p134
給与をモチベーションにできる社員が多く、自然と業績を上げるための行動に移すため、さらに業績が上がり、給料が上がると言う好循環が継続している。
また、現状維持は悪いと言うフードのため、常にレベルアップをし続けたいと言う人材にとっては非常に働きがいのある会社。
p192
スーパーでお肉を焼いて売るように、技術営業が工場に来てデモをしてくれる。だからつい買ってしまう。
p198
単純に商品を紹介するスタンスだと門前払いになる。
だから、どれだけ具体的な提案をして、具体的な反応が得られるかが大事になる。
相手の話をよく聞いて、キーエンスが掲げる共通理念で勝負をしていく。
p235
・「製販一体」の価値
商品のことをよく知っている営業が顧客のコンサルティングをしながら、ニーズの裏にあるニーズを探る。
企画や開発はその情報を参考にしつつ、顧客に提供する付加価値を最も大きくすることを追求した商品を開発していく。
それが高い利益率の源泉だ。
p243
「普通じゃない」と感じる部分。
それは、仕組みを作ったら、その仕組みが役立つように本気で運用を徹底するという、「最後の数センチメートル」の差だ。
一言でいえば、手を抜かないのだ。そして、全員がそれをやる。
なぜ徹底的にできるのか?
それは、「人は油断するし、ラクをしたいと考えるもの」という“性弱説”に基づいている。
だから、社員が何をしているのかをガラス張りにして、いい数字も悪い数字も見せる。
やるべきことを、手を抜かずにやり切ってもらうためだ。 -
役割分担がとても明確。
その上で、フロントの営業はとても泥臭い昔ながらのスタイルを受けました。
一度、読んで良い本でした。 -
確かに、私の中の『キーエンス』という会社のイメージは平均年収2,000万円くらいという、ウン十年前に就職情報雑誌で読んだまま、途方も無い高給取りのよく分からない会社だ(ごめんなさい)というとんでもなく乏しい知識とイメージしか無く、しかも何故だか今の今までで調べよう・知りたいという機会も特にないままにいたという人生のエアーポケットみたいな存在でありました。
それが何故本書を手に取ったかと言えば、一番の理由は書店のめちゃくちゃ目立つ場所にたんと積まれていて興味が湧いたからであるが、次いでの理由は表紙の「平均年収2,200万円」との文言を見て‘私が学生時分から未だに給与水準が変わらないどころか上がっているってどういうこと??’というやっかみとも羨みともつかない下世話な野次馬根性が働いたからという低い志によるものであります。
自らが働くようになって2,000万円を稼げるようになることの意味というか大変さが実際感をもって受け止められるようになったから、ということもあるかなと思います。いずれにせよ興味本位ですね。
とにかく‘真’と‘実’を徹底的に重視する社風であるように思いました。社の内外向け問わず、良い成果も悪い成果も偽らず誇張せずにフィードバックし続ける事で次は更に最善のモアベターな手段を選択・発想する事が出来るという‘当たり前に最高の仕組み’を社員全員が弛まず実行する。そこにはメンツやプライドが挟まる余地はなくて‘最高の仕組み’を動かし続ける事こそが自分や顧客や社会にとっての最善手であるという確信と実行こそが『最強企業』の髄なのだというように私は理解しました。「正直者が馬鹿を見ない」を高次元で体現すること。
もちろん、そもそも社員それぞれの能力が高い事は間違いないでしょうが、その高い能力を持った人材を採れるということ自体、蓄積された採用データを真摯に分析し続けてきたからこその成果であり、そこにも‘最高の仕組み’に従い動くという基本規範が流れています。女性の働きやすさ・環境が未発達という指摘すらも、恐らくは‘最高の仕組み’が弾き出したキーエンスにとっての最善手ということなのだろうと思います。
是非ともビジネスパーソン、とりわけ組織やチームをマネジメントする立場の方であれば触れておきたい内容ではありますが、生半可に影響を受けて「よしお前ら、明日から分刻みの日報を提出しろ」と表面的な真似っこをし出す人が現れない事を祈ります。
そのくらいの説得力と魅力を感じた一冊でした。
9刷
2023.11.7 -
キーエンスは、1974年に設立したFA(ファクトリー・オートメーション)用センサを中心に測定器や画像処理機器の企画・設計・開発・生産を行う会社。Key of Scienceからネーミングをしたようだ。
自動車や半導体、電子・電気機器、通信、機械、科学、薬品、食品など業界に捉われることなく事業を展開し、現在の取引先は全世界で30万社以上。「ものづくり」に携わるすべての企業に向け、生産性や品質の向上につながるソリューションを提案・提供している。
特徴は、設立から継続されている、常に生産現場の声に耳を傾け、課題を発見し、解決に導き付加価値の高い商品を提供する姿勢。
その背景には、深い知識を持った営業担当者(社員の半数近くが営業と言われる)が生産現場に足を運び、お客様の抱えている課題の、さらにその奥に隠れたニーズを発見し、その情報を社内で共有、開発に結びつけるというものがある。
また、即納やディーラーを介さない直販体制を取っていることもキーエンスの大きな特徴となっている。
これらの対応は、これと言って目新しいものではなく、どこの会社でもやろうと思えば出来るはずだが、恐らく社風がしっかり根づいていてぶれないことが、この会社を大きくしてきた要因なのかもしれない。
製品の粗利は、なんと8割を目標としているそうだが、他社にない付加価値と、直販や他の合理化などで、恐らくバランスある価格戦略を取っているのだろう。
22年3月期の社員平均収入は、驚きの2183万円!
それもそのはず、売上高営業利益率は、製造業ではぶっちぎりの55.4%(22年3月期。ちなみに製造業平均は21年度で5.2%)なのだ。
とにかく、困りごとやニーズを含めた顧客情報を、しっかり取り社内に共有する仕組みを持ち、それをやりきっていることがわかる。そしてそれには、優れた営業と商品企画がいることも。
成功する会社には、ちゃんと理由があるのね。
ただ、このような「美しい成功の秘訣本」には、ポジティブなことしか書かれないことが往々なので、手放しで称賛することは出来ないかな。
裏では泣いている人もいるだろうし、きれいごとでは済まないケースだってあるだろう。(SNSにもアップされている)
しかし、マネジメントをする人には、役立つ内容だと感じた。特に「目標意識、目的意識、問題意識を持って、常に前向きに行動する」という行動指針は、参考になるな。
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特定企業題材の書籍が出版されると、その企業の業績が怪しくなるというのはよくある話だが、キーエンス社についてはその心配はなさそうだ。
同社の仕組みは確かに優れているが、特に珍しいものではない。普通でないのは「全員で、本気で、運用を徹底する」という部分なのだ。これは企業文化そのものであり、そう簡単に真似ができることではない。
また、同社には「効果がないと判断したら、きちんとやめる文化がある」という。ビジネスパーソンならこれが如何に凄いことか分かるはずだ。
一読の価値ありと思うが、自社(自分)との差に愕然とするかも知れない。 -
当たり前とされることを当たり前にやる抜くこと。夢や理想を掲げるのも大事だが、基本を忠実に守る会社が正当に評価され、従業員は相応の対価を受け取り時価総額も高い。
アメリカや中国のIT大手企業に伍していく日本の勝ち筋はここなのではないかと感じた。
日経ビジネス、いい本出しましたね。自分も基本を疎かにしないよう肝に銘じました。 -
会社の先輩に渡された本書。
営業とは表面的に一通りの事を教えられて、あとは見様見真似で外に放り出され、与えられた環境で個人商店として売り上げを上げていくものとイメージが染みついていたが、まさに目からウロコ。
「優れたホームランバッターがいるというよりは、アベレージバッターを多く揃え、平均値を上げていく」その仕組みづくり。
それは、「報告」「プレゼン力の醸成」「顧客ニーズの把握」...
当たり前のことを、継続的に当たり前に運用していくその仕組みが必ず結果に結びついていく。
素晴らしい一冊。