逆・タイムマシン経営論 近過去の歴史に学ぶ経営知

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296107339

作品紹介・あらすじ

「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」
経営を惑わす3つの「同時代性の罠」を回避せよ!
近過去の歴史を検証すれば、変わらない本質が浮かび上がる。
戦略思考と経営センスを磨く、「古くて新しい方法論」。
「ストーリーとしての競争戦略」の著者らの最新作!

これまで多くの企業が、日本より先を行く米国などのビジネスモデルを輸入する「タイムマシン経営」に活路を見いだしてきた。だが、それで経営の本質を磨き、本当に強い企業になれるのだろうか。むしろ、大切なのは技術革新への対応など過去の経営判断を振り返り、今の経営に生かす「逆・タイムマシン経営」だ。

そんな問題意識から、日本を代表する競争戦略研究の第一人者、一橋ビジネススクールの楠木建教授と、社史研究家の杉浦泰氏が手を組んだ。経営判断を惑わす様々な罠(わな=トラップ)はどこに潜んでいるのか。様々な企業の経営判断を当時のメディアの流布していた言説などと共に分析することで、世間の風潮に流されない本物の価値判断力を養う教科書「逆・タイムマシン経営論」を提供する。

経営判断を惑わす罠には、AIやIoT(モノのインターネット)といった「飛び道具トラップ」、今こそ社会が激変する時代だという「激動期トラップ」、遠い世界が良く見え、自分がいる近くの世界が悪く見える「遠近歪曲トラップ」の3つがある。こうした「同時代性の罠」に陥らないために、何が大事なのか──。近過去の歴史を検証し、「新しい経営知」を得るための方法論を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 経営判断を惑わす「飛び道具」「激動期」「遠近歪曲」といった3つの「罠=トラップ」を回避するために近過去の歴史を検証し、本質を知るというのが逆タイムマシン経営論です。

    罠にハマるメカニズムと駆動プロセスがわかりやすくまとまっていて、読みやすい本でした。

    遠近歪曲トラップや文脈思考が、こういった本で読む限りでは理解できるのですが、いざ自社にあてはめると知らないうちにバイアスがかかってしまいそうです。
    「破壊的イノベーション」を狙っているときにもこういったバイアスを意識しておかないと失敗しそうですね。

    また、最近話題の生成AIもシンギュラリティや「AIが人間の仕事を奪う」などと話題になっていますが、この本からすると「飛び道具トラップ」になりそうです。いろいろ飛びついて試してみましたが、便利だけどなくてもまぁ困らない。といったものに過ぎないです。生成AIブームはいつまで続くのか。。。

  • 楠木さんの本は、「ストーリーとしての競争戦略」に次いで、2冊目ですが、
    本のテーマとか文体から何というか"センス"のようなものを感じます。
    (大してセンスのない自分が言うのもどうかとは思うけど。)

    ※ストーリーとしての競争戦略
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4492532706#comment

    まず、選んだテーマがとてもユニーク。
    過去に流行った経営バズワードを今一度思い返して、
    検証してみるという企画はありそうでなかった企画。
    楠木さんらしいカジュアルな文体で、過去のバズワードが深掘りされていて、
    面白く、かつ、勉強になりながら、読み進めることができます。

    中には、自分がまだ経営の「ケ」の字も知らない頃のバズワードなんかが取り上げられていて、
    「へー、日経ビジネスにはこんな感じで取り上げられていたのね」というのもありましたが、
    バイアスを除いて客観的に物事を見る訓練にはなります。

    一方、著者も言っているとおり、ここで選ばれたバズワードも
    著者のバイアスを通じて選定されたものばかりで、
    実際にどれくらい日本人がバズワードに踊らされていたのかは、
    もう少し客観的に知りたかったとは思いました。

    今では、DXとかSDGsとか両利きの経営とか脱炭素とか…、
    ありとあらゆるバズワードが飛び交っていますが、
    将来にわたって生き残る本当のキーワードはどれなんでしょうか。

  • 2023年5月1日読了。日経ビジネスでよく連載を見かける、著者の標榜する「逆・タイムマシン経営」の勘所を伝える本。「飛び道具トラップ」「激動期トラップ」「遠近歪曲トラップ」の3分類はキャッチーで実に面白い。一時的に盛り上がったバズワードやスローガンたちから「乗り遅れるな!」のマスコミの大号令など、記憶に新しいものから自分の生まれる前から繰り返されてきた「○○崩壊論」など、過去を見ることで現在にあふれる情報をながめる立脚点を得る、という視点は実用的・必須のスキルだと思うし、何より「今流行っているこの事象が数年後にどう風化しているか・どうコクや旨味を出してくるか」を想像するのが楽しい。

  • 出来事を周りに流されず、時代の雰囲気に飲まれず正確に見抜くことが重要。そこには数々のバイアスがある。それを過去にさかのぼって検証してみようという本。

    言われてみると、横文字のキーワードで扇動するようなミスリードや、メディアが注目している事による過大評価、全く誤った論理だが刷り込まれてしまっているような「マジックワード」は溢れている。

    例えば、洗濯物を折りたたむロボット、ランドロイド。セグウェイ、3Dプリンターのように画期的な製品ではあるが、浸透しなかったもの。Googleグラスなど。見掛け倒しで実は生活に必要とはされていない商品。問題解決の押し売り。

    サブスクリプション、シェアリングエコノミー、DX、カーボンニュートラル。サブスクリプションなど、従来からあるビジネスモデルだ。こうした横文字によってビジネスを見誤ることがある。流行りものを取り入れたい。先進的だと。

    ただ、2006年Googleの副社長ヴィントンサーフは「新しい用語が登場するとそれぞれ違う定義を持つ人がたくさん出てきて、だからみんなどんな意味があるのかと興味を抱く。その言葉自体に大きな意味があるわけではないが」と。一旦、文脈剥離して新たな用語を用いるという、ある種の戦略だ。

    著者は、極め付けに少子高齢化に対し、かつては人口増こそ諸悪の根源として、日本もブラジルへ移民政策を取っていた事例を上げる。大衆に飲まれない、正しく事象を見抜く事が重要。斜に構えた姿勢、大いに共感する。

  • 【星3.5】
    AI・DXなどその時代ごとの雰囲気に流されず、物事の本質を掴むことが重要。そのためには近過去を紐解き、歴史から学ぶこと(逆タイムマシン)が効果的である。
    まとめるとそんな内容だと思う。
    1例として現在叫ばれている「少子化問題」について、一時代前は人口増加が問題視されていたことが書かれてある。

    おっしゃる通りであり、おかげで歴史を学ぶ意義を強く認識することができた。いい内容である。

    ただ、その内容に比しては本の量が多すぎると感じた。要は冗長感が強い。半分の100ページぐらいで十分ではないだろうか?
    あと、著者お得意の「ストーリー」の話も随所に出てきて話の纏まりも今一歩。

    いい内容の本だけにその点が残念。

  • 力がついたり、スキルアップにつながったりする本ではない。ズバリ教養の本。
    楠木さんの本はいつも教養に富んでいて、ビジネスマンとしての段階があがる。

    内容をまとめれば、
    同氏の『ストーリーとしての競争戦略』や『好き嫌いと経営』、
    リタマグレイスの『競争優位の終焉』同様に
    「絶対の経営論なんてないよね~」につきる。

    断片情報に興奮せず、多角的&歴史的にみてどうなんだというファクト+経験予測をしないと、すぐに「日本大激動」という見出しに騙される。一喜一憂するひとになるなよーって本。

  • 楠木建氏の文章はわかりやすい
    この手の本は読むのに時間がかかるかなと思っていたが、図や過去の記事の写真等があるので思ったより読みやすい

    逆・タイムマシンとは何か?
    今起きてる事象は新しい革命的なもので明日にでも今の生活が変わるのではないかと思わせる新聞・雑誌の記事に刺激的な文字が並ぶが、過去を見てみると同様な革命文字が並んでいる事から、ある程度の未来を推察するという内容

    言われてみれば、確かに❗️ということばかりだ
    派手な記事や、インパクト強めの未来予想に惑わされないよう気をつけて今後の行動を決めていかないと…と気付かせてくれる一冊

  • 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
    賢者に近づくために、まずは直近の歴史、ちょっとした前の事例から学びましょう、という提案。

  • 稼ぐ力の正体、自分ごとに落とし込む
    物事を見極める「眼」を持つために本を読め。
    勇気が出た。

  • 軽妙な語り口で論理明快で心地いい。近過去を俯瞰的に分析することで、飛び道具、いつでも激同期、遠近歪曲といったトラップにはまりやすい人間の心理もまた面白い。自分の会社もまた自分自身も、この罠にはまっていないか、俯瞰的に本質を見ぬく思考を身につけたい。

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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