- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296100071
作品紹介・あらすじ
2030年、世界で100兆円以上に達すると予測される
モビリティサービスの超有望市場「MaaS(Mobility as a Service、マース)」。
自動車メーカーだけではなく、鉄道やバス、タクシーといった公共交通、
シェアリングビジネス、配車サービスをも巻き込む
「『100年に一度』のゲームチェンジ」で生き残る秘策とは---。
交通サービス分野のパラダイムシフトにとどまらず、
MaaSで実現する近未来のまちづくり、エネルギー業界から不動産・住宅、保険、観光、
小売り・コンビニまで、MaaSの「先」にある全産業のビジネス変革を読み解く、
日本で初めての本格的なMaaS解説書!
本書のポイント
●MaaSの「本質」が分かる
●MaaSの「ビジネス・インパクト」が分かる>
●MaaS時代の「アクションプラン」が分かる
●MaaSによる「他産業のビジネスチャンス」が分かる
●MaaS時代の「アクションプラン」が分かる
感想・レビュー・書評
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MaaS (Mobility as a Service)が近年注目を集めている。特にフィンランドのヘルシンキのWhimがマルチモーダルの月額制の交通サービスの開始を先行事例として、多くのMaaSと呼べるサービスが開始されており、いよいよMaaSが現実的なものとして捉えられている。
本書は2018年11月に出版されたものだが、MaaSに関する現時点の国内外の状況を非常によくまとめた本で、この分野について検討をするには必須の本であるように思われる。調査だけでなく、先行者であるWhimを運用するMaaSグローバルのサンポ・ヒータネンCEOへのインタビューも掲載されている。ここで、「現時点」という留保を付けたのは、あっという間にここで書かれた状況が過去のものになっていくことが容易に想像できるからである。本書でも欧州(イタリア、フランス、オランダ、ドイツ、スイス)を中心に様々なMaaS実現していることが見てとれるが、すべてがそのまま成功するわけではなく、いろいろなチャレンジと失敗がこれから起きてくるだろう。
特に自動車業界では「CASE (Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)」を提唱したダイムラーの戦略に注目をするべきだ。2014年にはタクシー配車サービスの「MyTaxi」も買収している。もちろん、ソフトバンクと提携を発表し、eパレットなどを提唱しているトヨタ含めて多くの自動車メーカーが新しいエコシステムの覇権を目指してフォローアップしてくることだろう。特にトヨタはすでにJapan Taxiやパーク24と乗合サービスやカーシェアの実証実験を進めており、彼らが提唱するプラットフォーム(MSPF)の構築を目指している。中でもトヨタと西日本鉄道が福岡で開始したMaaSサービス「myroute」は、鉄道、地下鉄、バス、自動車、レンタカー、タクシー(Japan Taxi)、自転車シェア(メルチャリ)、駐車場予約、など多くの事業者を巻き込んで実施しており、意欲的な実証実験である。
また、日本では、SuicaをPF基盤として有し、「モビリティ変革コンソーシアム」を立ち上げているJR東日本もMaaSに取り組みを進めている企業のひとつとして挙げることができる。鉄道会社では小田急電鉄も中長期戦略の中で取り上げるなど積極的である。沿線価値の向上にもつながると見込んでいるが、その事実は他の私鉄にも当てはまるため、成功することとなれば他の鉄道会社も右へ倣えで取り組みを始めることになるのだろう。
著者らは、「「MaaSの本質」を語りつくすのが、本書の役割」であるとし、一番の動機を「モビリティの世界に閉じるのではなく、日本再興を期する全産業のチャンスとして捉え、MaaSのその先にある「Beyond MaaS」の答えを、本書をきっかけとして読者の皆様と創り上げる」ことだと宣言する。端的にはMaaSの本質とは、「MaaSを構築していくことで集まる膨大な移動ビッグデータ、およびそれを統べるプラットフォーム」であり、現状はそのプラットフォームをめぐる世界的な戦いにあるのである。
現在、様々な製品がサブスクリプションモデルで提供されるようになっているが、MaaSはモビリティのサブスクリプションサービスとして、その流れに乗っているものであり、環境保護や所有から利用へという大きな傾向に沿うものと言える。さらに将来の運転の自動化・無人化、有人ドローンなどの技術革新を考えると将来性にも大きなものがある。また、日本の大きな問題である高齢化社会の進展による交通弱者を救済するという観点でも大きなニーズがある。
MaaSのプレイヤーには、鉄道事業者、バス会社、タクシー会社、カーシェア、レンタカー事業者、ライドシェア事業者、シェアバイク事業者、自治体、行政府、不動産事業者、通信事業者、ルート検索アプリ、保険事業者、決済事業者、など多くの産業が関わりを求めている。ポイントは、統合された優れたUIによる利便性向上にあるといえるかもしれない。MaaSサービスを利用することで、自家用車にかかっているコストをなしにできるのであれば経済的にもユーザメリットが出てくる可能性がある。駐車場などの土地利用や公共交通の利用による環境保護や混雑緩和といった利点も得られる。
また、MaaSの範囲を広げるのであれば、自治体や行政府のサポートは必須になるだろう。ニーズやサービスレベルについては各地方(過疎地、中核都市、大都市圏、など)で大きく異なり、本書にも書かれているように自治体のサポートも重要になってくる。MaaS自体が新しい町づくりという観点で地域経済の活性化につながる可能性もあり、今後各所で進められていく話になるのではないだろうか。多くの事例で、MaaSはモビリティ革命による地域経済の振興を目指すものとして位置づけられている。Whim ヒータネンCEOは、先方から声を掛けてもらった展開しやすい地域のから始めると答えている。また、実際に住宅業界との連携も考えているとし、スマートシティのコンセプトにも近づいて行っているのではないだろうか。日本政府も「未来投資戦略2018」の中で次世代モビリティシステムの構築を大きな目標に掲げている。
先行する人口63万人のヘルシンキ市のWhimでは、登録者が6万人で10~20%が定額料金の加入者だという。ユーザのマイカー利用数は半分になり、公共交通機関の利用がぐっとっ増えたという。Whimを運用するMaaSグローバルにはトヨタファイナンシャルサービス、あいおいニッセイ同和損保、デンソー、が2017年に出資を決めている。
通信事業者では、NTTドコモが中期戦略「beyond宣言」の中でモビリティサービスを取り上げており、実際にバイクシェア、dカーシェア(カーシェア、マイカーシェア、レンタカー)、ヴァル研究所と連携した「mixway」、ナビタイムからバイクシェアのポートを検索可能とするサービスの提供などを行っている。AIタクシーでの需要予測や、AI運行バスでの乗合サービスなど積極的にMaaSに必要な要素についてのサービス化や実証実験を進めている。そもそもMaaSのコンセプトは、通信業界からヒントを得て生み出されたものだという。
本書の内容には上記のような市場や業界分析だけでなくMaaSに必要なAPIのタイプをまとめるなど、非常に網羅的だ。筆者らは、MaaSによる変化のポイントとして次の三つを挙げている。
①移動のパーソナライズ化
②都市・交通の全体最適化
③都市や場所の再定義
結果として、MaaSは交通だけでなく、エネルギー、保険、金融、不動産、観光、小売り・コンビニ、エンタメ、医療、介護、保育など多くの分野に大きな影響を与えることになるという。
終章において「私たちの抱いているMaaSの価値や未来へのワクワク感が届いてくれることを期待し、最後まで読んでいただいた読者の皆様への感謝の言葉とする。また、今後MaaSの世界で活躍されるであろうプレーヤーの方々へのエールとしても受け取ってもらいたい」と語る。気持ちが届いてくる本。2018年においてMaaSに少しでも興味があるのであれば必読ではなかろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自動車関連の仕事をしており、MaaS(Mobility as a Service)と言う言葉を聞かない日がない昨今、課題意識を持って、本書を読了。
★何に気づき・何を学んだか?
1. MaaSの概念
本書ではMaaSの概念を下記の通り定義。
改めて言語化してもらえたのはありがたい。
「MaaSとはマイカーと言う魅力的な移動手段と同等か、それ以上に魅力的な交通サービスを提供し、持続可能な社会を構築していこうという全く新しい価値観やライフスタイルを創出していく概念」
上記にある通り、MaaSの発展は移動手段の改善に留まらず、より住みやすい街・社会を構築し、新たなライフスタイルを提供することまでを包括する。
2. モビリティプラットフォーマーの座を誰が勝ち取るかが重要
MaaS等のことを考える際はUberや自動運転等のサービスを思い浮かべがちだが、重要なのはそれらの一つ一つのサービスではなく、そのサービスをまとめるプラットフォームである。
「あそこに行きたい。」となった場合に、プラットフォーム(アプリ)に目的地を入力する。そして、そのプラットフォームが目的地に移動する場合の最適ルートを提示してくれる。その最適ルートの中に鉄道やバス、Uberなどのタクシー配車や自転車シェア、自動運転サービス等が含まれる。
その全ての予約や支払いは全てそのプラットフォーム上で行われるので、キャッシュレスである。
上記のようにモビリティーサービスを統括するプラットフォーマーが今後のMaaSが発展する上での最重要プレーヤーであり、誰もがこの座を狙っている。
3. 結局は顧客のニーズをどのように満たすかを考え、サービスに落とし込むことが重要
誰もがMaaSが発展することによる明確な未来を読めない状態ではあるが、大切なのはやはり顧客のニーズを満たすサービスを提供できるかどうか。
これはどれだけ時代が進んでも、技術が進歩しても、ブレてはいけない部分。
顧客のニーズを満たし、幸せにしたプレーヤーが生き残るはず。
それに改めて気付かされた。
私個人としては車の販売店が今後どのような役割を担っていくのかを考えながら、プレーヤーとしての生き残り戦略を模索していきたい。 -
有識者4名によるMaaS解説本。おそらく現時点での最高峰。
特定の事業者からのまなざしに偏らず、都市・地方部の課題や技術革新とともに欧米でどのような地殻変動が起こっているか、日本との違いは何か、などMaaS周辺の知見が満載されている。
民間の公共交通が多数存在する特殊性、
自動車産業の強さ。
翻って、地方部は自動車中心のまちづくりから公共交通の衰退が発生し、高齢化社会を迎えた今問題を抱え、課題先進国となった日本。
欧米の物真似ではなく自分たちの課題と向き合い、個別事業者に閉じず連携していくことでBeyond MaaSの世界が見えてくるという点は説得力があり、またこの国の将来に希望を感じさせてくれるものだった。 -
★MaaSとは経路検索ができて予約・決済までできる便利なアプリ、ではない。渋滞、事故、温暖化、駐車場だらけの都市、公共交通の乏しい地域、高齢者や障がい者の移動手段、住宅問題等々、マイカー依存社会の課題を解決し、まちをリ・デザインするものである。
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MaaSが進んだらわたしの就職先、やばくない…?という気持ち。
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24.02.22
Maasとはなんたるかを知るために読了。
まさに、Maasの全貌を知るには最適な一冊。
Maasの概要では、5段階のレベルがあることや日本の位置付けがまだレベル1、つまり予約決済の統合ができていない状況であることを知る。
Maasのコンセプトの出自や世界のモビリティ事業者や行政の取り組みが端的にまとめられていて、様々な事例を知ることができた。
後半はプラットフォームやAPIなどの技術開発の道程が示され、仕組みから理解できる。
最後には展望としてどのようなスマートシティが実現されるか、各交通事業者のアクションプランやその先の他分野の連携についてまとめられている。
非常にわかりやすかった。
これを読むとすぐにでも実現しそうなのに、実際には実現していない。
現在の観光マースもラインから入るようなもので、完成度の高いアプリになっていない。
法規制や既存事業者のしがらみなどいろいろあるのだろうなと思う。 -
MaaSのコンセプト・世界事情・技術動向・社会的インパクトが概括で分かる書籍(ただしコロナ前の景色)。MaaS先進国であるフィンランドの自治体やMaaSグローバルの取組みといった事例が豊富で興味深い。日本ではちJRを代表とする超一流の交通システムやトヨタ自動車を始めとした自動車メーカーを有しているが、車両がモノではなくサービスとして扱われる時代にどうゲームチェンジしていくかが楽しみである。
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面白いね。Maasの未来にワクワクした。
旅行などあまり慣れていない土地に行くとき不便に感じていた。
理想論ではなく、本当に実現してほしいと感じた。 -
MaaSはスマホの画面(アプリ)から一括でDoor to Door のルート検索,移動モードの選択,予約,決済
までを提供するサービス。
MaaSはDoor to Doorの移動を提供するサービスなので交通事業者単独(鉄道,タクシー,ライドシェア 等)では運営が難しく,複数の交通事業者が連携して取組む必要があるサービスです。
MaaSについて詳しく書いてあるので、
MaaSについて知りたい方にお勧めです。
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