気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?

制作 : 杉山 大志 
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296000623

作品紹介・あらすじ

なぜ気候科学はねじ曲げられて伝えられるのか? 
■私がこの本を書いたのは、気候科学やエネルギーに関する重要な情報が歪められているからだ。純然たるデータや科学文献の記述が、政府による評価報告書、マスコミを経由して、一般市民や意思決定者へ伝えられる過程でねじ曲げられてしまう。私が望んだとおり、専門家でない読者の方々は、(米国での出版後)本書の内容が公正でわかりやすいと評価してくれた。他方、予想したとおり、一部の気候科学者は本書を批判し、私の動機や資質に疑問を投げかけた。だが、内容面の大きな誤りを見つけることはできなかった。
(「日本語版発行に寄せて」より)

■私は科学者として、科学界の実に多くの個人や組織が、情報提供ではなく説得のために気候科学を誤って伝えていることに失望している。しかし、あなたも一市民として気をつけなければならない。民主主義社会では、有権者が最終的に気候変化への対応方法を決定する。科学が言っていること(と言っていないこと)を十分知らずに下される決定、悪くするとウソの情報に基づいて下される決定が、よい結果につながることはまずない。新型コロナウイルスでもそのことをつくづく思い知らされた。気候やエネルギーでもそれは同じことだ。(第10章「誰がなぜ科学を壊したのか」より)

感想・レビュー・書評

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  • 温暖化「懐疑論」の標準教科書 – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute
    https://ieei.or.jp/2022/05/sugiyama220526/

    『気候変動の真実』私はこう読む | 日経BOOKプラス
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/060900083/

    気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか? | 日経BOOKプラス
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/22/S00620/

  • 『レフ・トルストイの1894年の哲学論文『神の国は汝らのうちにあり』には、以下のような考察が出てくる。【いかに難しい話であっても、そのことに関して先入観のない人に対しては、いかにその人の頭が悪くても説明が可能である。だが、いかに単純な話であっても、そのことをとっくに知っていると固く信じている人に対しては、いかにその人の頭がよくても説明が不可能である。】』―『PartⅠ サイエンス/第10章 誰がなぜ科学を壊したのか』

    確かにその通りかも知れない。ただし、頭が悪くても、話していることについてのリテラシーがあれば、と自分なら条件を加えるだろうけれど。科学的な思考についての無理解というのは、やはり手に負いかねるような気がしてならない。

    石油開発に直接関わる仕事をして来たものとして、近年の気候変動の社会問題化(思うのだが、気候変動が問題なのではない。何故なら気候は必ず変動するものだから。それを社会問題であるとするか否かが問題になっているのだ)に関しては見て見ぬ振りではいられなかった。それどころか問題点の真偽について技術的な見解を求められることも多かったので、議論を生んでいる要点については一応理解しているつもりだ。そもそも地質学を学んだものの視点として、地球環境の変遷はヤワな現代人が経験している変化より大きなものであると理解していたし、アル・ゴアの有名な本が指摘していることについては元々やや懐疑的な立場であったというのが正直なところではある。多くの人が温暖化の元凶と思っている二酸化炭素の大気中の濃度についても、有名なホッケースティック状のグラフばかり引き合いに出されるが、実際には地球史を通して二酸化炭素の濃度は大局的には減り続けており、大きな目で見ればその結果として地球は氷期と間氷期を繰り返すようになっている(今現在も実は定義からすれば氷河期なのだと言ったらどれだけの人が驚くことだろう)。海水準の上昇についても、今より温暖な縄文時代には汎世界的に海水準が高かった(東京も武蔵野や下総台地以外は海の中だったと、ブラタモリで毎度説明している筈だし、ノアの洪水を始めとする古代の洪水の神話が各地で語られているのもこの時期の記憶の残滓とも言われている)し、そのサイクルは周期的に繰り返し、かつ温暖な間氷期は氷期に比べて短期間で終わることも地質学的な常識として理解しているので、海水準の変動で地球環境が取り返しのつかないことになると言われてもうむと唸ってしまう。そして、これは科学的思考というより個人的な思いだが、地球上の生物の歴史の中で人類と呼ばれる生物種が如何に新参者であるかを知る身としては、自然環境保護とかサステナブルという言葉に人間の驕り(人が自然を制御できるという考え方)が潜んでいるように感じてならない。

    地球温暖化に人類がどれ位影響を与えているかという議論は生業としている事業の将来像を予測する上でも避けて通れない議論だ。その問題に関して個人的な感傷はあるものの、技術評価を長年してきてものとして要点を問われた際には出来るだけ中立的に色々な情報を集めて議論の材料としたつもり。その際、確実な気候変動の予測が如何に困難なことであるのかも併せていわゆるマネジメントに説明するのだが、その時の経験から言うと、ことは科学的な確からしさを問う段階から宗教裁判のどちら側に就くかを問う段階に移行してしまった感がある。それ故、本書の出版には気付いていたもののどうせ読んでも意味は無いという思いもあり、更にこの本がトンデモ科学者による強引な主張の本であるかも知れないという先入観も手伝って、中々手を出すに至らなかった。それでも今更ながらに読んでみたのは、自分自身がそういう不毛とも思える論議から少し離れた立場になったことが一番の理由だ。

    著者のスティーブン・E・クーニンは、英国の石油会社BP--余計な話だが、BPは元々前身が旧セブンシスターズの一つであるアングロ・ペルシャ石油であったBritish Petroleumという会社が、ロックフェラーのスタンダード石油から分割された会社の一つであるAMOCOを(BP Amocoと改称)、更に独立系石油会社のARCO(Atlantic Richfield)を買収した後改名した会社の名前で、元の会社の略ではなくBP(plc.)という社名。当時は「Beyond Petroleum」(本書279頁参照)という意味だとも宣伝していた。そんなスローガンもあってか、BPは大手石油会社(いわゆる一つのスーパー・メジャー)の中でも環境問題に人一倍真面目に取り組んでいる(ロゴの色含めて)「グリーンな」会社として業界では知られている--の技術者でもあったことから、米国の某社程ではないにしろ、右派的(反環境派的)な著者の書いたものなのかと思いながら恐る恐る読み進める。しかし図らずも本書が事実を良くまとめた真面目な一冊であることを確認する。特に、パートⅠのサイエンスと題された本書の主要部分を読めば、必ずしも科学一般についてのリテラシーが高くなくとも注意深く論旨を追えば、何が事実で何が誇大広告的な話なのかが理解出来る筈だ。

    一方、この問題に多少真面目に取り組んだものとして新たに気付かされたことはほとんどなくて、少し真面目に文献調査をすれば気候変動の社会問題化の問題点については理解が可能であることも再確認される。ほぼ唯一目から鱗的だったのは、地球の黒体放射に与える二酸化炭素の熱収支の影響が1%程度であるのに気温の上昇が10%近くなるのを漠然と辻褄が合わないと思っていたことについて。温度を摂氏ではなくケルビンで考えなければならない、と指摘されて「そりゃそうだよね、ガッテン承知の介です」となった。それと気候モデルのアンサンブル表示は何度も見ていた筈なのに、1905年からの約40年間の気温上昇がどのモデルも実際の上昇傾向を再現できていないというのもグラフの混雑の中で見落としていた。これはモデルの適合性、特に人類の社会活動の拡大と二酸化炭素の排出の温暖化への感度を問うのに重要な点だというのに(その後の寒冷化の傾向がどのモデルで再現されていないのは有名な話だ)。

    ミランコビッチ周期という概念こそ出てこないものの、気候変動が天体としての振る舞いや海水温の長期変動周期に影響される話などの主要な物理的因子については網羅的にきちんと整理され、太陽光の熱収支、各温室効果ガスの影響度と特に水蒸気の影響度の大きさとそのモデル上での扱われ方に潜む不確実性の話などのモデリング上の問題点を含めて核心をついて指摘されており、議論に必要な要素は網羅されているという印象。しかもいわゆる孫引きではなく可能な限り元のデータに遡って調べているし、その引用元も参照できるのは、この問題に真面目に取り組む人にとってはありがたい本。何より気候というものは定義からして最低でも数十年単位の傾向を捉えるものであるのに、多くの人がそれを数年単位の気象現象の変化と混同しているとの指摘は正鵠を射るもの。その結果の不確実性故に、IPCCでも多くの気候モデルを並列に扱っているというのに、まして気候モデルでは海水準の変化や降雨降雪量の推定や台風やハリケーンの発生などの長期的な予測は出来ないにも拘らず、これらの短期的な現象に一喜一憂しては気候変動の影響と結びつける風潮に著者は警鐘を鳴らす。もちろん著者も地球が温暖化の周期にあることは認識し、その傾向に人類の活動が何らかの影響を与えていることは認めている。ただし、それが人為的な二酸化炭素の削減を行わなければ取り返しがつかない事態になる、あるいは制御可能であるかのような短絡的な結論を急ぐ「科学」を否定しているだけなのだ。

    パートⅠの最終章「誰がなぜ科学を壊したのか」からパートⅡ「レンポンス」に関しては、それまでの章とは異なり著者の個人的な解釈が多く含まれる。ここでは人間の経済活動やその影響度の経済価値など気候モデルとは異なるタイプの不確実性が含まれる故に自然現象の予測以上に前提条件の確からしさに疑義が残ると自分は考えているのだが、著者は案外単純にシンクタンクが説明するようなシナリオを軸に価値を判断しているようにも思う。特に最後の章「プランB」では、気候変動の実態を知るパートとは異なり人類がこの問題にどう対応出来るのかが語られるのだが、その説明は慎重に聴いておく必要があるだろう。ただし、不確実性の高い気候変動の予測を前にして、不可知である(結局、自然現象はカオス的に振る舞うのだというローレンツの教えの通り)が故に何をしても無駄であると投げ出すのではなく、科学者として何が言えるのかを絞り出してみたという主旨の章であり、その主張の土台となっている考え方そのものは有効であるとも思う。

    『「説得」のための誇張やウソに惑わされないために私は科学者として、科学界の実に多くの個人や組織が、情報提供ではなく説得のために気候科学を誤って伝えていることに失望している。しかし、あなたも一市民として気をつけなければならない。民主主義社会では、有権者が最終的に気候変化への対応方法を決定する。科学が言っていること(と言っていないこと)を十分知らずに下される決定、悪くするとウソの情報に基づいて下される決定が、よい結果につながることはまずない。新型コロナウイルスでもそのことをつくづく思い知らされた。気候やエネルギーでもそれは同じことだ』―『PartⅠ サイエンス/第10章 誰がなぜ科学を壊したのか』

    企業の経営者たちは一度冷静に本書を読んでみるべきだと思う。

  • 詳細は本文で正に詳細に解説、議論されているが、本書の主張は巻末のあとがきや解説にあるように、
    ・そもそも気候に自然変動は大きく、人間活動が与える影響は限定的
    ・長期間(50-100年)の視点でみるとハリケーン等による災害の激甚化、頻発化の事実はない
    ・IPCC等が議論の前提にしている数値モデルの信頼性は低い。現在の科学技術水準で長期間の気候予測は不可能
    ・COPが唱えるようなCO2削減は現実的に不可能で、実現しても温暖化は防げない
    ・人類はその歴史の中でさまざまな気候変動を生き抜いてきた。CO2削減しなくても気温上昇は限定的で個別に対応できる(著者のいう「適応戦略」)
    ・CO2削減に巨額の費用と労力をかけるより、適応力に劣る途上国の経済発展と制度充実を促すべき
    ・気候変動に携わるマスコミ、政治家、事業家は科学的理解に欠けており、科学者は不誠実。事実を虚心坦懐にみれば結論は明らか

    著者は米国科学界を代表する科学者(物理学者)の一人で、その提言の意味は軽くない。

    この問題についての主流の議論が、人間が自然をコントロールできるという、大自然に対する人間の傲慢さを反映していると感じるのは思い違いだろうか。

  • 非常に良かった
    著者は温暖化懐疑派だが、感情論ではなくエビデンスをベースとして、今の人間活動原因説を明確言えないことを述べている
    そもそもスタートが人間活動が原因ということを決めつけられ、それに合うような結果、シュミレーションを見せるようになってしまっている
    結局は客観的か科学的根拠から判断するのではなく、科学が上手いように悪用さらてプロパガンダとなってしまってる
    政治が絡むと科学的に正しい事ではなく、目先の利益や国益が優先されてしまう
    科学者がその一端を担ってはいけないと思う。だが、そもそも頭のいい政府の役人達はそれを承知の上でやっているのではないか?そこまでバカなのか?

    気候の観測、解析技術を向上させることが重要で、そこにお金と時間を使うべきだと感じた

  • 気候変動、とりわけ地球の温暖化は人間の活動によるものが大部分を占めると思っていた。
    ただ本書の全体の内容では人間が影響する部分はほんの数%しかなくその他のバランスによって変わってくることがわかる。

    そのため政府やマスコミのからの情報を鵜呑みにしてしまうと我々の行動が悪のように感じてしまうがそれは冷静に受け止めなければいけない。

    では人間の活動が気候変動に影響を与えていないのかと言えばそうではない。
    パリ協定の内容も根拠は乏しいが活動すること自体は重要である。
    そのため本書の内容から「じゃぁ気候変動のために活動活動をしなくても良い。」となるわけではなくまず自分や周り、そして地域や国、地球全体で取り組まなければいけない活動でもある。

    要は正しい知識を持ち、情報に踊らされることなく、できる活動を粛々としていくことが大切と捉えた。

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    ジャンル:グローバル トレンド
    出版社:日経BP 出版社ページへ
    定価:2,420円(税込)
    出版日:2022年03月23日

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    スティーブン・E・クーニン
    米国の科学政策におけるリーダーのひとり。オバマ大統領の下で米国エネルギー省の科学担当次官を務め、同省の戦略計画と初の「4年ごとの技術レビュー(2011年)の主執筆者となった。物理学、天体物理学、科学計算、エネルギー技術・政策、気候科学などの分野で200以上の査読付き論文を発表している。カリフォルニア工科大学の理論物理学の教授を務め、約10年間にわたりカリフォルニア工科大学の筆頭副学長(プロボスト)を務めた。現在は、ニューヨーク大学の大学教授として、スターンビジネススクール、タンドンスクールオブエンジニアリング、物理学科に籍を置く。米国科学アカデミー、米国芸術科学アカデミー、米国政府のために技術的な問題を解決する科学者のグループであるJASONなどに所属。2014年からは国防分析研究所の理事を、2014年から2019年まで全米アカデミーズの工学・物理科学委員会の委員長を務めた。現在、ローレンス・リバモア国立研究所の独立理事を務めるほか、ロスアラモス、サンディア、ブルックヘブン、アルゴンヌの各国立研究所でも同様の役割を担う。

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    flier要約
    https://www.flierinc.com/summary/3174

  • 気候変動について現代の科学でわかっていることと、わかっていないことを区別して書いている。
    わかっていること:
    1.11世紀くらいから19世紀前半まで気温は下がってきており、その後長期的に気温は上昇している。人間によるCO2の排出が増えだす前から。
    2.人間の排出するCO2は、地球上のCO2の濃度を増やしており、それが気候に何がしかの影響を与えている。
    3.長期的に見て台風や山火事などは、増えていない。
    4.人間が出すCO2をピークアウトさせたり、減らすのは極めて困難。
    わかっていないこと:
    人間の出すCO2が気候に対してどの程度の影響を与えてきたのか、これからどの程度の影響を与えるのか。

  • 昨今のメディアで取り沙汰されている気候変動の事柄の多くは、過剰であり、偽りであるのがほとんどであると、データから説明された一冊。
    1950年以後急速に人口が増えていることに起因する"トレンド'と、ビッグバンから今までに至る中で繰り返されてきた"周期"を、混合して捉えないことの大切さ。
    まだまだ近代科学が地球史のスケールに追いついていない、明らかなことが限りなく少ないということが明らかである。
    うそとまことが複雑に交差する現代だからこそ、データを冷静に読める力がより必要になってくると感じさせられた。

  • 途中までしか読んでないけど。
    当たり前だけど定義や議論の前提、エラーをおさえないと騙されると感じる。

    地球の反射率をアルベドというが、古き良き測定方法として月の影に写る地球の反射を測定する、というのがある話は面白い。

    気象と気候は異なる。気候システムを流れるエネルギーのうち、人間の影響は1%に過ぎない。つまり99%を1%以下の精度で観測、理解しなければならない。

    平衡気候感度ECSは仮にCO2が産業革命前(280ppm)から倍増した時に平均地上気温の偏差がどれくらい増加するかを表す。
    気候シミュレーションはあまり良くなく、パラメータチューンも怪しい。中にはECS3度を目指してチューンしたと公言するモデルもある。

    データの見せ方で酷く見えるとかそういう話が延々と続くので途中でお腹いっぱいになるが勉強になる。

  • 気候危機説は捏造だ!
    温暖化の科学は決着していない!もともと気候は自然変動が大きい!
    ハリケーンなどの災害の激甚化、頻発化などは起きていない!
    数値モデルによる温暖化の将来予測は不確かだ!
    大規模なCO2削減は現実的ではなく、自然災害への適応が効果的だ!

    足元、一方向の議論になりがちな「気候変動」。
    全てが人間によるもののように報道されているが、気候変動の要因には様々なものがあり、過去のデータを紐解けば、ここ数十年の温暖化のような事象は、数万年、数十万年まえの地球においても、発生していた。

    質の悪い石灰を燃やした時に出るエアロゾル微粒子が太陽光を反射するので、冷却効果を持つ。
    気候システムを流れるエネルギーのうち、人間の影響は1%に過ぎない!

    「モデリングは不確実」ならば、気候変動における人間の影響を計測、予測するのも不確実なはずだ!少なくとも、人間のせいだと決めつけるのはおかしい!

    米国における竜巻の発生件数は、1950年の2倍!しかし、以前は検知できなかった、弱い竜巻の数を数えられるようになったからに過ぎない。
    レベル1以上の竜巻の数は、1950年となんら変わらない。

    気候は長期、気象は短期。でも、みんな、数日暑い日が続くと、その気象動向をもって「気候変動!」と呼ぶ。。

  • 米国の熱波の頻度は1900年と変わらない。
    また米国の最高気温は50年間全く上昇していない。
    過去100年間、人間はハリケーンに明確な影響を及ぼしていない。
    グリーンランドの氷床の縮小スピードは80年前と変わらない
    人間が引き起こす引き起こす気候変動の最終的な経済的影響は、少なくとも今世紀末までは最小限にとどまる

    地球は1940年から1980年の間に少し冷えていた。
    最低気温(夜間、夜など)最高気温より速く上昇している。

    比較的暖かい期間が何世紀も続いた後、1000年ごろから少しずつ冷えてゆき、1450年ごろから1850年ごろにかけての小氷期に至っている。

    ここ30年が過去1400年で最も暑い30年だったことは中程度の確信度がある。

    地球は2万年前から約5℃暖かくなったことがわかる。

    物体が放射する赤外線の量は温度ともに増加する(シュテファン•ボルツマン法則)

    太陽光によって地球の温度が上がると、赤外線の放射による冷却も増加し、加熱量と等しくなる。

    地球がエネルギーを獲得も喪失もせず、温度が一定であるこの状態を「放射平衡」という。
    このバランスが達成される「平衡温度」は地球の太陽からの距離に左右される。

    地球は真っ黒ではないので、届いた太陽光の70%しか吸収しない。
    残りの30%は宇宙へ反射し、地球の加温には寄与しない。
    地球の反射率に相当するこの30%という数字は「アルベド」と呼ばれる。
    アルベドが高いと地球は太陽光をたくさん放射するので冷たくなり、低いと太陽光をたくさん吸収するので暖まる。
    地球のアルベドの平均値は0.30だが地球のどの部分が太陽に面しているかによって値は変わる。
    (3月は大きく、6〜7月は小さい)

    地球の平衡温度を求めると平均地上気温はマイナス18℃になる。しかしこれは間違いで大気中の温室効果ガスの断熱効果が考慮されていない。
    この効果により地球の地上気温は観測値まで上昇する。

    地球のエネルギーバランスを保つため、すべての熱は最終的には宇宙に放出され、放出される熱は吸収される太陽光エネルギーと0.5%以下の精度で釣り合わなければならない。
    さもないと地球は今以上のスピードで温暖化または冷却化する。

    地球の大気を構成する気体のうち窒素(78%)と酸素(21%)、
    残る1%は「水蒸気、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、オゾン」。これらは量が少ないのにも関わらず、地球表面から放出される熱の平均83%を捕まえてしまう。

    最も重要な温室効果ガスである水蒸気は一部の色しか捕まえないが、捕まえる色のほぼ100%を遮るので大気中の水蒸気を増やしても断熱材は厚くならない。
    既に黒い窓にペンキの層を塗り足すようなもの。
    だが二酸化炭素はそうではない。
    CO2分子は水蒸気が捕まえられない色を一部捕まえることができる。
    つまりCO2分子数個でもっと大きな影響を及ぼせる。

    CO2濃度が産業革命前の水準から倍増すると(その結果、捕まえられる熱が1%増加すると)平均地上気温は約3℃上昇すると予測する。
    人間の影響としてはCO2の他にメタンの大気への排出(化石燃料によるもの、さらに重要なのは農業からの排出)、ほかの微量な気体が組み合わさって、気体が人間が原因のCO2に劣らぬ温暖化効果を及ぼすこともある。(火山による太陽光の変化による冷却効果、エアロゾルの冷却効果)

    CO2をはじめとする温室効果ガスの温暖化効果は20%以内であることが知られている。
    人間が原因のエアロゾルの冷却効果はもっと大きく、人間が原因の強制力を50%不確かなものにする。

    気候システムを流れるエネルギーのうち、人間の影響は1%にすぎない。

    米国の場合記録的な低温はあまり見られなくなっているが、記録的な高温日の頻度は100年前と変わらない。

    世界平均海面水位は現在年間3ミリの上昇。


    1930年および1990年に先立つ30年間の年平均は2ミリ。
    1955年および2015年に先立つ30年間の年平均は5ミリ。
    大体60年周期
    したがって、次なる数十年は上昇スピードが再び低下すると考えるのが合理的

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著者プロフィール

米国の科学政策におけるリーダーのひとり。オバマ大統領の下で米国エネルギー省の科学担当次官を務め、同省の戦略計画と初の「4年ごとの技術レビュー」(2011年)の主執筆者となった。物理学、天体物理学、科学計算、エネルギー技術・政策、気候科学などの分野で200以上の査読付き論文を発表している。カリフォルニア工科大学の理論物理学の教授を務め、約10年間にわたりカリフォルニア工科大学の筆頭副学長(プロボスト)を務めた。現在は、ニューヨーク大学の大学教授として、スターンビジネススクール、タンドンスクールオブエンジニアリング、物理学科に籍を置く。米国科学アカデミー、米国芸術科学アカデミー、米国政府のために技術的な問題を解決する科学者のグループであるJASONなどに所属。2014年からは国防分析研究所の理事を、2014年から2019年まで全米アカデミーズの工学・物理科学委員会の委員長を務めた。現在、ローレンス・リバモア国立研究所の独立理事を務めるほか、ロスアラモス、サンディア、ブルックヘブン、アルゴンヌの各国立研究所でも同様の役割を担う。

「2022年 『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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