推しエコノミー 「仮想一等地」が変えるエンタメの未来

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296000357

作品紹介・あらすじ

「すべてのエンタメプロデューサーが、今を知るためにまずは読むべき、唯一の教科書」
――佐渡島庸平氏

「メガヒットのルールが変わった。新しいリテラシーを得た者が、地殻変動後の覇権を握る」
――尾原和啓氏

鬼滅、ウマ娘、Fortnite、荒野行動、半沢…
ゲーム、アニメ、動画の経済圏を支配するのは、
世界が絶賛する日本の「オタク経済圏」か、
攻勢を強める米中の「ハリウッド経済圏」か?

◎目次
第1章 メガヒットの裏側で進む地殻変動
『鬼滅』が「日本の時代錯誤」に突きつけた刃
フォートナイトが見せつけたゲーム空間によるエンタメ市場の侵食
半沢「劇場」が見せたテレビ業界の未来
オンラインキャバクラが物語るライブエンタメの「むき出しの価値」
産業カテゴリーの大変革

第2章 「萌え」から「推し」へ、ファンの変化からみる「風の時代」
しがらみなく夢中になれる共体験がエンタメになる
タムパ重視で動くユーザーにとっての価値最大化
なぜ必死になってコンテンツを見るのか?
なぜバトルロワイヤルゲームだけが流行るのか?
『ウマ娘』ブーム大爆発が物語る美少女キャラの新ステージ
受信リテラシーから発信リテラシーへ
コナンとシンエヴァ、100億円を創り出す物語

第3章 エンタメの地政学
米中エンタメ覇権競争と日本唯一の挑戦者ソニー
宮崎駿の新作なしで成長するジブリを支える中国の驚異
ハリウッド経済圏とオタク経済圏
戦いの終着点

第4章 推しエコノミーの確立へ
キャラクターと貨幣の類似性
世界観の欧米と、キャラクターの日本
日本のエンタメは誰が救うのか?

「推す」は希少な時間資源の投下によって行われる。基本的には、未来永劫それが続く前提で、有限な時間資源を投じていきたい。『推しが武道館いってくれたら死ぬ』というアニメもあるが、実は推しが武道館にいくことを避けたいと思うファン心理も同時に存在する。(中略)安パイなコンテンツを求める人が増えると、新奇なものが展開されづらくなる。ある程度ブランドがあり、約束されたコンテンツに人々は群がるようになる。大ヒットがさらに大ヒットするという現象は今後さらに強くなるだろう。(中略)浮動ユーザーを味方につけるためにファンが必要であり、インフルエンサーが必要になる。「このコンテンツは安パイだよ。時間を費やしても、その体験は無駄にはならないよ」という信号をブランドとして送る必要がある。(第2章より)

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、自称エンタメ社会学者の著者が、「エンターテイメント業界全体の未来の方向性を、ファンの変化や日米中の地政学も含めて眺めようと」著した本。2021年10月発行。

    テレビの凋落に関して、「テレビは貴重な映像の初出しプラットフォームではなく、ツイッターを片手にライブを楽しむアーカイブプラットフォームになっていくのでは」、「テレビの未来は、お茶の間を使ったライブコンサートである」という著者の見方、なかなか面白かった。自分もすっかりテレビを見なくなったが(しかも全録があるので、スポーツ中継を除けばライブ感を意識することは以前からなかった)、テレビという媒体にこんなん価値があるとはなあ。

    内的体験である「萌え」から外的体験である「推し」へ変化し、その趣味活動がソーシャル化している「21世紀型のオタク経済圏のファンビジネスの要諦」=「日本が生みだした推しエコノミーの真髄」は、「自分が100%生み出したものを「リーチ」で見せるものではなく、「リール」して関与を引き出す。熱量を上げていきながら、「運営」していくことによってサービスとしての質を高め続ける」ことだと言う。ここで、「リール」とは、ユーザーが積極的に情報発信して注目度を高めたり、ディープなコミュニティを作ったりして、ヒットが創出されていくようなことらしい。このようなファンの動きを上手く誘発していくことがエンタメビジネスの要諦ってことかな。

    日米のアニメ産業は、「米国は巨大スタジオでアニメを生産し、日本は町工場で職人が手作り」、「大量に人を投入し、いかに世界にそれを浸透させるかという構想の「ハリウッド経済圏」と、特定のユーザーを想起しながら特定のクリエイターが限られた工芸仲間と一蓮托生に作り上げる「オタク経済圏」」、という風に対極的だという。日本のコンテンツのクオリティの高さや味わい深さは、この町工場的なもの作りから生み出されていたんだな。なお、中国はアメリカ型を指向している。

    日本のアニメコンテンツには、「原作者と制作者の権利が入り繰り、複雑な権利関係が構築されているため、「新しいメディア展開には関係者全員の新しい合意が必要になる」デメリットがあるという。これが実写ドラマだったら、出演者の肖像権等も絡んできてなおさら大変だろうなあ。権利関係が整理できずにもう見られなくなってしまったドラマも多いはず。もったいない。

    自分は実態をほとんど知らないが、2次元や2.5次元世界の経済規模がこれだけ大きくなってきているということは、コンテンツ産業も金に群がる資本家たちの草刈り場になっちゃうのかな(既になってしまっているのかも)。日本の良質なアニメやゲームコンテンツ作りの伝統が失われないことを祈るのみ。

    本書、文章はあまりいけてなかった。

  • タイトルから勝手に「推し活」についての本かと思い手に取ったが、まじめにアニメや漫画を中心に映画や音楽ビジネスなども含めた「エンタメビジネス」について書かれていた。著者はそこを伝えたかったわけではないと思うが、現代において「売上を立てる」ためにどんな工夫が行われているか、ぼんやりとしていたものがハッキリして、自分の仕事にも役立ちそうだ。

  • 最近のヒットコンテンツをもとにエンタメの消費、流通などの変化を解説の上グローバルなエンタメの歴史、日本の特徴等、幅広くエンタメ業界の今が分かる本。社会学や経営学の視座からの補助線もあり、素人(消費者)でも楽しめる。
    読者の私はギリギリZ世代に分類される人間として推し概念やJOMO概念、サブカルを介したコミュニケーション(受信→発信)など、実感として腹落ちする説明が多い。また、消費者がコンテンツを選ぶ基準なんかも痛いほど共感できた…。
    参考文献も随所に引かれており読みを広げたい人も楽しめる。
    グイグイと読めて楽しかった。

  • 推しの話も少し。
    海外の考えや日本の独自性をさまざまな歴史構造から読み解く。
    著者の6冊目であるが前に読んだ本が構成は好み。
    ここでは、より作品群に対してに潮流を具体名やうっすらあれのことだなとわかる話抜け絞り気味なのが特徴的。
    ただ、すでにこのエンタメを知っている人向けよりなコアな箇所が多め。

  • これからのエンタメに希望を持てるような本だった

  • 所々難しいところもありつつ、最も印象的なのは
    「萌え」→「推し」に世の中が変わっているということ
    昔は
    恋愛→結婚→性愛→出産の流れがあった中で、
    現代は約束された流れが破綻し
    恋愛/性愛/結婚/出産と分断されている。
    自分のためにお金を使うようになり、
    恋愛、性愛、結婚、出産に内包されるしがらみや自分の自我から、代わりに頑張っている「推し」を応援することで、理想の人生を「生き直し」しているという論理展開が印象的だった。

  • 何かを、推す心理的な物を期待して読んだか、エンタメの歴史や全体感が書いてありめちゃくちゃ勉強になった。

  •  タイトルに惹かれて手にしたが、エンタメ業界の構造変化から日本の目指すべき方向性への示唆などに富み、非常に面白かった。解説のみならず、文化圏や社会観と紐付けてエンタメを掘り下げていく内容であり、一冊を通おして楽しめた。
     日本のアニメコンテンツは、放送・配信を収益化ポイントとしてではなくユーザ認知のための手段として捉え、放送局や流通にこだわらない「脱テレビ化」の傾向にあり、版権ビジネスによるキャラクター経済圏として確立させることが成功の鍵となっている。また、ユーザー側のコンテンツへの関わり方としては、内的な感情による「萌え」から、「推し」という外的体験による表現へ変化し、ユーザーにとって趣味趣向は「消費財」ではなく「表現財」としていかに自分を「関与させていくか」という対象になった。インターネットにより地理的な距離がゼロになった現代において、キャラクターの死とは人々の間で共有されなくなることであり、キャラクターは思考(言語・文化・概念)の距離を埋める「交換財」としての機能を果たす。

  • エンタメを切り口にから、日本がこれからどう戦っていくべきか分かる本
    日本らしさを残して、変わるべきことを変えていこう!

  • クリエイターエコノミー、ブロックチェーン、Web3、メタバースなどバズワードがあるものの、これらをつなげる思想が欲しかったので、ちょうどよかった。色々気づきがあった。

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著者プロフィール

ブシロード執行役員、早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師1980年栃木県生まれ。東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでバンクーバー、マレーシアにて新規事業会社を立ち上げる。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、モバイルゲーム、イベント、プロレス)を海外展開。著書に『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)、『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない? 』(PHPビジネス新書)、『ボランティア社会の誕生』(三重大学出版会、日本修士論文賞受賞作)がある。

「2019年 『オタク経済圏創世記 GAFAの次は2.5次元コミュニティが世界の主役になる件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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