環境問題の噓 令和版 (MdN新書)

著者 :
  • エムディエヌコーポレーション
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784295200352

感想・レビュー・書評

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  • CO2増加は地球温暖化に繋がるり、それが人類に悪影響を及ぼすということで多くの議論がなされてきました。しかし都市部分のヒートアイランド現象はあるものの、太陽の黒点の活動が弱まってきていて現在は寒冷化しているとの報告もあります。

    この数年、地球温暖化はあまり言われなくなり、その代わりとして、より大きな概念の「気候変動」というフレーズが使われるようになってきました。これはCO2増加が原因なのだろうか、と思っていた私にとって、この本はとても興味を惹かれるものでした。

    悲しいことですが、利権の絡まない(既成することで誰かが得をしない)環境規制は無視される、という内容には納得してしまいました。

    以下は気になったポイントです。

    ・一度システムが出来上がり、それに依存して儲かる企業がたくさん現れると、システムの合理性を支える証拠が間違っていたとわかっていても、システムは潰れないで存続する。その好例はダイオキシン規制である(P7)

    ・多くの人はもう忘れているかもしれないが、かつて環境問題と言えば、自然保護と公害のことだった(P18)

    ・最近では、フロンガスがオゾン層を破壊する主たる原因なのかどうも怪しくなってきた、南極の温度が下がるとその上空のオゾン層が破壊されるという説が有力になってきているらしい。つまりオゾン層の増大は、太陽活動に関連した南極の冬の気温の低下が主因だったということである(P26)

    ・カラスは有機物のゴミ処理という点から見ればとても良いことをしている。カラスがいるおかげで東京湾の富栄養化をかなり防ぐことができている面は間違いなくある。カラスは昼間、海辺で有機物のゴミをあさり、夕方になると郊外の森や林を集まって、糞をする。つまり海の栄養物を内陸に運ぶという役割を果たしている(P29)

    ・CO2は確かに増えているが、その増え方は窒素などに比べればたいしたことはない。CO2は約0.03が0,04%に増えたが、窒素の2倍に比べれば少ないと言える(P33)

    ・一時話題になった環境ホルモンは動物の生殖機能に影響を与え、オスがメス化するとして67の物質をリストアップしたが結局はガセネタだとわかり、環境省はリストを取り下げた。この騒ぎで得をしたのは、研究費をもらった学者だけであり、幸いなことにこれをネタにした税金収奪システムは立ち上がらなかった(P36)1960年代後半から1980年代の初めあで気象学者たちは地球寒冷化を警告していた、1940-70年の30年間で0.2度ほど下がった。しかし寒冷化を人類はコントロールするわけにはいかないので、寒冷化を防ぐ手立てはなく寒冷化予防が利権になることはなかった(P36)

    ・炭素の排出権取引という制度が作られ、炭素税を課し、CO2の旗のもとににエコカー、自然エネルギー開発や利用に莫大な税金が使われ始めた。確かに100年で地球の平均気温は0.7度上昇したが、21世紀に入っては全く上昇していない、 CO2の排出量は21世紀になっても増え続けているので、CO2が温暖化の主たる原因であるとはおかしいのは素人でもわかる(P37)

    ・持続可能な開発目標(SDGS)が最近流行っている、昔はSDのみであったが、経済発展を止めないで世界のシステムを安定化させようとする目論見なのだろう。そもそもSDGSは矛盾した言葉で、ディベロップメントが続く限りゴールは来ないし、ゴールが来たらディベロップメントは終了する(p49)

    ・人口が少なっても一人当たりのエネルギーや食べ物が多くなる、そういうシステムを考えた方がいいと思うがそうとは考えられていない。人口が激減すると資本主義がつぶれてしまうから、資本主義とは人口もエネルギー消費も右肩上がりを前提として成り立っているシステムだから。日本の人口も6000万人程度であればあまり無茶苦茶なことをせずにエネルギーは足りる(p50)

    ・地球の温度変動は太陽の活動のほうがCO2よりもはるかに重要な要素だが太陽の活動は人間がコントロールできないので、環境問題とは言わない)p67)

    ・1990年代の多くの未来予想がみな外れたということはパラメータ(気温上昇のパラメータを過大評価、その逆のパラメータを過小評価)が間違っていたということ、今までの予測が外れた検証はなにもしないで未来のシミュレーションばかりやっている、信じろをいうほうが無理である(p72)

    ・石油はまだ相当ある、実はピークアウトはせずに少なくともあと200年はなんとかなりそうである。シェールオイル、シェールガスを含めれば400年はもつだろう。ウランはあと100年でなくなる(p91)

    ・メジャー電力源で一番安上がりなのは、石炭火力と天然ガス、全体の60%を占めている。(p100)

    ・植物は動物に食われないように毒を持っているものが多い、理由は植物には排泄器官がないから。動物には排泄器官があるから、代謝終産物質を肝臓で解毒して最終的には腎臓から尿の一部として出す。植物はそればできないので、それを液胞の中に貯めておく(p135)

    ・遺伝子組み換えの一つは、昆虫を殺す物質(Btタンパク質)を発言させる遺伝子を作物に組み込む、昆虫の腸管内はアルカリ性でBtはアルカリ性の環境で有毒になる、人間の腸管の中は酸性なので大丈夫である(p136)もう一つは、除草剤耐性の薬を野菜の中に組み込むもの(p137)

    ・牛や鶏の肉も今は人工的に作れるようになった、2013年にオランダで世界初の鶏肉ビーフバーガーが作られた。筋肉細胞を作り出す体性幹細胞を取り出し、それを培養してやれば肉ができるが今のところコストが莫大にかかる。2013年の時点では100グラム3500万円だったが、現在は2000円までに下がった、これが300円くらいになれば普通の人でも買うだろう(p189)

    ・カラスは腐肉食の鶏なので美味しいわけがない、美味しいのは穀物とか昆虫をたべている鳥である、動物も同じで肉食獣の肉はまずい、ライオンやトラの肉なんてまずいだろう、草食獣の肉のほうが美味しい(p191)

    ・培養肉が一般的になると食べられる野鳥の肉が一挙に増えるだろう、魚もそうである。今は生きたものを飼って、それを殺して食べているので、飼育が大変な動物の肉は市場にでない。一番買いやすいのが鶏、次は豚と牛。なので、多様性がない。培養肉の技術が進歩すれば食べ物の文化が激変する可能性がある(p192)

    ・人工光合成ができるようになれば、培養肉の比ではない、炭水化物が人工的に作れるので、大きな湖のそばに工場をたてて、太陽光を集めてそこに炭酸ガスと水を注入すると炭水化物ができるいうこと。そうやって人類生存に必要な炭水化物をつくれば、畑がいらなくなる(p193)この技術や培養肉の技術は、食料不足になったとき、気候と関係なく人工的に食料を生産できる(p194)

    ・光合成をする独立栄養生物の中にもオイルを生成するものがある、有名なのはボトリオコッカスという緑藻である、現在は1リットルのオイルをつくるのに最低でも500円かかるのがネック。光合成は水中や空気中のCO2を固定化しているのでそれを燃やして空気中に戻るので全くのカーボンフリーである(p202)

    ・食べ物から何から何まで、お金で買わなければ入手できないようなシステムを構築するおが、差し当たってのグローバルキャピタリズムの目標である。たくさんの人々が自給し始めると成り立たなくなる、あるいは物々交換すれば、成り立たなくなる。物々交換できるシステムを構築することが、キャピタリズムに一番打撃を与える(p204)

    ・イギリスの人類学者、ロビン・ダンバーは、お互いに相手と密接な関係を築ける集団の構成員の上限は150人程度だという仮説を提唱した、これをダンバー数という。ダンバー数以下の集団では、集団の構成員を縛る明示的なルールはなくともなんとなくうまくいく(p208)日本でもっとも可能性がありそうなのは、農村に移り住んで、ダンバー数以下の物々交換コミュニティをつくって、なるべく貨幣に頼らず生活すること(p213)

    ・サステイナブルとディベロップメントは、背反している。中産階級以下の人が優雅に生きようとするならば、短期的な利潤だけを追求するラットレースから降りて、貨幣に全面依存しないで生きられるような定常システムを構築してダンバー数以下の信頼できるコミュニティの中で生活することが良い(p214)

    2020年11月14日作成

  • 環境問題の嘘 令和版
    池田清彦

    ∞----------------------∞

    -環境問題の嘘-
    環境問題には流行があり、ウケるものだけが取り上げられる。そもそもSDGs(持続可能な開発目標)というのは矛盾した言葉。ディべロップメントが続く限りゴールは来ないし、ゴールが来たらディべロップメントは終了する。

    -地球温暖化の嘘-
    ここ100年の「点」で捉えたデータで温暖化と言っている。もっと長いスパンで見るべき。例え地球が温暖化してたとしてもそれは宇宙規模の話で、太陽の黒点がどうしたって人間に何か出来るわけでもない。

    -エネルギー問題の嘘-
    原子力は1番安いと言われているが事故処理や廃炉の費用は多大にかかる。火力発電が良いのだが、本当は問題のないCO2排出量が障害に。日本は海に囲まれているので波力発電が向いているのではないか。

    -ゴミ問題の嘘-
    ペットボトルの再利用はムダ。焼却炉は生ゴミだけでは燃えないため重油をかけているが、ペットボトルやレジ袋を足せば燃えやすくなる。排出されると言われるダイオキシンは問題ない。

    -食料問題の嘘-
    農薬は減農薬の方が回数は少ないが強いものを使用している。農薬に関して、日本ではEUと逆行して基準を緩和している。

    -人口問題の嘘-
    AIが進み、人口が増えても働く場所がなくなる。いずれベーシックインカムが取り入れられるだろう。

    -未来をつくる問題解決策-
    培養肉の技術は完成し、現実のものとなりつつある。希少な動物も食べられるようになるし、人肉すら口にすることが可能になるかもしれない。
    江戸時代は糞尿は農場に、有機ゴミは川に捨てられ、野菜や魚が育っていくリサイクルの仕組みが出来ていた。それに比べ、今はとてももったいないことをしている。
    オーランチオキトリウムやボトリオコッカスの藻類の培養で石油に代わるエネルギー源を研究している。
    過疎地でも自分の得意なものを作ってコミュニティの中で物々交換をしていけば生きていける。
    相手と密接な関係を築ける集団の上限は150人程度。

    結局は世間は地球のことを考えているようで人間中心でしかないし、あわよくば自分たちだけが得をするために、色んな嘘が飛び交ってるんだなと思った。
    全てが池田先生と同じ意見ではないけど、普段疑問に思ってることも取り上げられていて参考になった。

    2022/08/08 読了(図書館)

  • 有効利用されている食べ物は7割。自給率よりこちらのほうが問題。
    ゴミで東京湾が富栄養化。
    窒素が増えれば収量が増える。ハーバーボッシュ法で窒素肥料をたくさん固定化できるようになった。
    ダイオキシンは家庭用の焼却炉ではさほど量がでないがのちに明らかになったが、高級焼却炉の利権につながっている。
    環境ホルモンはガセネタだとわかり、環境省はリストを取り下げた。利権にはつながらなかった。
    1940~70年のころは地球寒冷化が心配されていた。利権につながらなかった。
    CO2犯人説は利権につながっている。
    エネルギーを増やさないためには人口を減らさなければならない。30年くらいは可能だが、300年は不可能。
    セシウムは、野菜や果物に入って内部被ばくするほうが怖い。
    バッタは、幼生密度が高いと、体が黒く細くなり群生相となる。幼生密度が低いときは孤独相。群生相になると飛蝗が始まる。バッタの大量発生は温暖化のせいではない。
    温暖化で台風が増える、は事実に反する。今は毎年数は減っている。
    唯一、人間の活動が気候に影響を与えているのはヒートアイランド現象。
    CO2温暖化説はシュミレーションによるもの。パラメータを少し変えれば違う予測も可能。
    マイケル・マンの敗訴=ホッケースティックグラフはでっち上げ。『地球温暖化の不都合な真実』最近は温暖化が怪しいと考える学者が増えてきた。
    アメリカの食料自給率は200%くらい。中国に売らないとどうにもならない。
    南海トラフにはメタンハイグレードがあるが地震の可能性があり、コストが高く掘り出せない。
    自然エネルギーは高くつく。安いのは石炭火力と天然ガス。
    ペットボトルは燃やしてしまったほうがいい。生ごみは熱量が低いから重油をかけて燃やさないと燃えない。
    スーパーのレジ袋は、廃油から作られるから、それに変えて高いゴミ袋を使うのは本末転倒。
    ダイオキシンは危険物質、というのは嘘。現在のハイテク焼却炉は止められないからゴミがないと困る。家庭用焼却炉が普及するとゴミがでない。ダイオキシンの話から家庭での焼却ができなくなった。
    集中型のものより分散型のほうが効率がいい。
    『ダイオキシン』より。
    農薬より怖い減農薬=強い農薬を少量使う。
    チリ産サーモンは、抗生物質のスープで泳いでいる。
    養殖で抗生物質を使用するのは、病気を防ぐためにはやむを得ない。車エビも同じ。
    ベーシックインカムの世界では、人口が少ない方がシステムに適合的。
    遺伝病の多くは劣性。比較的若年で死ぬので、子孫が残ることはまれ。ヘテロ結合体が昔流行していた感染症に抵抗性があると、生き残る。マラリア、チフス、結核などでそういう病原体があるので、一部の遺伝病が残っている。
    培養肉バーガーは100グラム3500万円だった。まだ高い。今は100グラム2000円くらい。
    家畜で一番多いのは鶏。動物や昆虫を食べている鳥は美味しい。ライオンや虎の肉はまずそう。草食獣のほうが旨い。
    培養肉が一般的になると、今まで食べていない動物の肉が食べられる。
    野菜は地面で作ったほうが安い。
    太陽の黒点が消えると地球は寒冷化する。
    フグの毒は、餌に含まれているモノ。養殖すれば無毒になる。フグの調理人の仕事がなくなるので、無毒のフグはとっくに認可されなかった。
    葛飾村(江戸川区)の大奥の糞尿を扱う商人は名字帯刀を許された。
    江戸には神田上水、玉川上水など6つの上水道があった。
    食べ物から何から何まで、お金で買わなければならないシステムが資本主義。自給自足を始めると成り立たなくなる。
    村おこしがだめなのは、特産品や観光など、現金収入を増やすことを目的にしているから。現金収入を増やすことは、資本主義の末端になるだけ。
    ダンバー数150人程度で暮らすコミュニティーを作って自給自足の村おこしをするのはどうか。

  • 環境問題の噓 令和版。池田 清彦先生の著書。環境問題の噓、地球温暖化の噓、エネルギー問題の噓、ゴミ問題の噓、食料問題の噓、人口問題の噓。メディアが報道する内容の中には、環境問題の噓、地球温暖化の噓、エネルギー問題の噓、ゴミ問題の噓、食料問題の噓、人口問題の噓が少しは混じってしまっているのかもしれない。でも、全部が環境問題の噓、地球温暖化の噓、エネルギー問題の噓、ゴミ問題の噓、食料問題の噓、人口問題の噓であるというはいくらなんでも言い過ぎだし現実逃避。現実逃避しても環境問題は解決しないから。

  • 環境問題を考えることを切り口に、これからの経済システムがどうあるべきかを考えることができる本です。
    SDGsに注目が高まる中で、環境問題を解決することの必要性が説かれることも多くなった気がします。
    ただ、その解決策が社会システムとバッティングして現実的に不可能となると取組が進まず、「儲かる」対策にばかり力が注がれるのも現実です。
    現在、政策レベルで重点的に取り組まれていることが、対策として効果的なのかを疑い、本来取り組むべきことは何かを提言している1冊です。
    時代の変化に対応するには、常識を疑い、事実(データ)を把握し、どうあるべきかを考えることが重要ですが、その具体例を学べる本だと感じました。

    【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】
    「原理的には環境問題を解決する方法があるが、解決策があまねく行き渡っている社会システムとバッティングして、現実的には不可能な場合、これが環境問題だと認識する人はほぼいなくなる。行政が一番熱心に進める環境問題への対応は、気候変動対策をはじめとする資本が儲かる対策。」
    「一度始めてしまった政策が、ある政策を遂行するために複雑なシステムが構築されると、それにディペンドして生計を立てる企業や役所や人が出てくる。システムが崩壊すると困る人が多いほど、新たに判明した科学的事実に整合的でないと分かったとしても、その政策はなかなか廃絶されない。」
    →政策以外にも、企業においても同じことはたびたび起こると思います。組織や事業の存続が目的化し、環境変化に対応できず、結果として業績が悪化していることが多いです。
    「環境問題のほとんどは、人口が右肩上がりで、エネルギー供給力も右肩上がりを前提条件とするグローバル・キャピタリズムの副産物。キャリング・キャパシティ(環境収容力)が有限な世界では、いずれ破綻せざるを得ない。生産する場所を世界規模に拡散し、その場所その場所でもっとも安く作れるものを大量に作り、高く売れるところに運ぶため、生産地の環境の均一化と大量のエネルギーを必要とし、これが環境問題を引き起こした。」
    →環境問題を考えるには、そもそもそれを引き起こしている要因の1つである資本主義とグローバル化のしくみを理解する必要があるようです。現在の経済システム(儲かるしくみ)を理解しておくことは、経営を考える上で役に立ちますが、しくみをわかりやすく説明してくれています。

    【もう少し詳しい内容の覚え書き】

    ・原理的には環境問題を解決する方法があるが、解決策があまねく行き渡っている社会システムとバッティングして、現実的には不可能な場合、これが環境問題だと認識する人はほぼいなくなる。行政が一番熱心に進める環境問題への対応は、気候変動対策をはじめとする資本が儲かる対策。

    ○「環境」の「問題」とは
    ・人間でなく自然そのものに価値があると考えて自然保護を行おうとする人も多いが、自然環境を人間が生存できないほど変えてはいけないのは、自然のためではなく、人間のため。生態系は大きく分けて、生産者(植物)と消費者(動物)と分解者(菌類)からなり、人間は消費者の一員であるにすぎない。生態系を人間が生存できないほどに改変してしまえば、人類は絶滅するが、後に残った生物たちがそれなりの生態系を構成し進化していき、地球の中に人間抜きの新しい自然ができる。別に地球が壊れるわけではない。
    ・環境問題にはある種の「流行」のようなものがある。逆に言えば、それ以外は別に大した問題ではないというような感じになる。現在であれば「地球温暖化」だが、あと20年もしたら、過去のフロンガスや環境ホルモンのように、CO2の削減もたいした問題ではなくなるかもしれない。
    ・一度始めてしまった政策が、ある政策を遂行するために複雑なシステムが構築されると、それにディペンドして生計を立てる企業や役所や人が出てくる。システムが崩壊すると困る人が多いほど、新たに判明した科学的事実に整合的でないと分かったとしても、その政策はなかなか廃絶されない。

    ○環境問題の嘘
    ・地震など、人間の活動と無関係に生じる不都合な出来事は天災であり、環境問題ではない。人為的なものであれば、人為によって解決(コントロール)可能と思い込めて、それにお金とエネルギーをつぎ込む。場合によってはそれで儲かる人が出てくるが、誰がどういうふうに儲かるかになると、話が途端にややこしくなる。食べ物とエネルギーはメジャーになったが、生物多様性を守っても儲からないので、メジャーな運動になりにくい。
    ・CO2は増え続けており、自然エネルギーもエコカーも、それほどコントロールが効かなかったことになるが、CO2削減というコンセプトのもとに始まったいろいろな商売は、今でも非常に儲かっている。
    ・日本は、今必要なものは何かまず短絡的に考えて、とりあえず今こうしたいという時には、いいものを作るのが得意だが、それが終わったらどうなるかまでは考えていない。しばらくするとその騒ぎは収まってその時のシステムは重荷になるが、システム自体は潰れないことが多い。50年先にどうなるかを見据えてシステムを構築しないと、50年後にみんなが困ってしまう。

    ○地球温暖化の嘘
    ・地球の気候変動は自然現象で、人間の活動で左右されるものではない。唯一、人間の活動が気温に影響を与えているのは、大都会のヒートアイランド現象。1990年頃に出された2020年にもっと暑くなるという未来予測は全部外れたが、予測した人は責任を取らなくていいから検証も反省もしない。しかし、その予測に従って政策を進めてしまうと、それで儲かる人が出てきて、その政策は止められなくなったしまう。
    ・シミュレーションはパラメータをちょっと変えるだけで、さまざまな異なる予測が可能。1990年代の多くの未来予測が外れたのは、パラメータが間違っていたのではないか。そのことはあまり言わず、今度は2050年の温度上昇の厳しさを言っても、信じられなくなる。CO2だけ過大に評価して、別の原因を過小に評価しても、予測は外れ続ける。

    ○エネルギー問題の嘘
    ・エネルギー問題は、いろいろな条件を考えた多様化が必要。どれが一番いい、それでなければいけない、ということではない。

    ○ゴミ問題の嘘
    ・集中型のものを作るより、分散型にしたほうがよい。ひとつがダメになっても、別のものに切り替えやすく、リスクが少ない。ダイオキシン法以前では家庭や学校で小分けしてゴミを燃やせばよかったが、ハイテクの高級焼却炉を数億円もかけてひとたび造ってしまうと、廃炉にするのがもったいないとなり、小回りがなかなかきかなくなった。

    ○食糧問題の嘘
    ・グローバル・キャピタリズムの世の中では「もったいない」は「資本主義」に勝てない。食べずに捨ててもあまり非難されず、当たり前のような世の中になってきたのは、捨てても消費したことに変わりはなく、農業資本はたくさん捨てるほうが儲かるから。

    ○人口問題の嘘
    ・過去のビッグデータがAIにはたくさん入っているので、過去のデータの蓄積から統計的にもっとありそうなことを見つけることにおいて、人間は絶対にAIに勝てなくなる。普通の職業で生き残れるのは、マニュアルにない問題に直面した時に、臨機応変に対応しないといけない職業だけになるはず。
    ・多くの人は簡単にそういった職業に転職できるわけではないので、その時にベーシックインカムなどを検討せざるを得なくなるのでは。そうなると、経済システムが変わり、世界的なグローバル・キャピタリズムは潰れる。そうなると、人口が少ないほうがシステムに適合的になる。
    ・しばらくすれば、個人の遺伝子を全部解析して、「こういうタイプの人はこういう病気になって、こういう人はこういう病気になる」ということがわかるようになり、医療が「オーダーメイド」になってくる。医療はどんどん高度化し、金がかかるものになってくる。格差があると、貧しい層が高度医療の恩恵に浴せないので、グローバル・キャピタリズムより、人口が少ないほうが幸せになれる。

    ○未来をつくる問題解決策
    ・食料生産を環境問題から見ると、世界人口に見合った食料を生産できるかという問題と、生態系の生産力を人間の食料増産のために利用すると野生動物の食料が減るという問題の、2つの側面がある。
    ・牧場を増やすと、生態系が変わる。生態系に依存せず食料を作れないかという話になる。今のところコストが莫大にかかるが、テクノロジーが発展し、10年か20年経ってコストが下がれば、家畜飼育より工場でできる培養肉の方が主流になるのでは。
    ・人口が増えれば食料の増産はどうしても必要。食物が工業的に作れれば世の中が劇的に変わるが、一番大きな問題は人工光合成ができるかどうか。炭水化物を人工的に作れれば、畑が不要になり、生態系を戻せる。コストが石油を掘ったり作物を作ったりするものに拮抗すれば、未来は変わる。
    ・気候変動をコントロールすることは人間にはできないので、それに合わせて栽培する作物を変えていくことにお金を使う方が賢い。太陽の黒点がここのところ消えており、寒冷化すると思うが、その場合地球規模では作物の収穫が減少する。それまでに人工光合成や培養肉の技術を確立していないと食料不足になる。
    ・環境問題のほとんどは、人口が右肩上がりで、エネルギー供給力も右肩上がりを前提条件とするグローバル・キャピタリズムの副産物。キャリング・キャパシティ(環境収容力)が有限な世界では、いずれ破綻せざるを得ない。生産する場所を世界規模に拡散し、その場所その場所でもっとも安く作れるものを大量に作り、高く売れるところに運ぶため、生産地の環境の均一化と大量のエネルギーを必要とし、これが環境問題を引き起こした。
    ・物々交換の媒介物として貨幣は便利だが、買取価格と販売価格の差が仲買人の儲けになり、仲買人は株式会社になり、多国籍企業になり、ついにはグローバル・キャピタリズムに行き着いた。
    ・AIがすべて生産し、労働者がいらない社会が来るまでは、さまざまな製品を物々交換できるシステムを構築することが環境問題の解決に有効となる。交換がスムーズにいくコミュニティを考えてみると、ルールを厳格にすると交換がスムーズにいかない。コミュニティを小さくして、大体の共通了解のもとに複数回の交換を通じて、何となく帳尻が合うような交換が成立すると、ルールを厳格にしないで済む。

  • ●自然が人間の力より圧倒的に強かった頃は、自然保護などと言う概念はなかった。産業革命以降芽生えたのだ。
    ●最近ではフロンガスがオゾン層破壊する主たる原因なのかどうかも怪しくなってきた。どうやら、南極の温度が下がるとその上空のオゾン層が破壊されると言う説が有力になってきたらしい。つまり太陽活動に関連した南極の冬の気温の低下が主因だったのではないか、と言うことなのである。
    ●増えているのはCO2だけではない。生態系の中で1番増えているのは実は窒素である。
    ●大気中の窒素固定して工業的に窒素肥料を大量に作れるようになった。「ハーバー・ボッシュ法」
    ●確かにここ100年で地球の平均気温は0.7と上昇したが、21世紀に入り平均気温は全く上昇していないのだ。CO2の排出量は21世紀になっても増え続けているのだから、CO2が温暖化の原因だと言う説がおかしいのでは無いか?
    ● CO2温暖化説はインチキだと言っているのは、十中八九科学者である。文系の学者には少ない。
    ●本当のSDGSは少子化を進める事。

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著者プロフィール

池田清彦(いけだ・きよひこ) 1947年生まれ。生物学者。

「2020年 『ポストコロナ期を生きるきみたちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田清彦の作品

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