- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784276212589
作品紹介・あらすじ
「バイエル」は、日本のピアノ文化にもっとも影響を与えた教則本。なぜバイエルなのか?バイエルとはなにものか?本当に実在したのか?100年以上も「バイエル」を弾き続けてきた日本人と日本の音楽史にとって、画期的な発見。19世紀の「謎の音楽家」バイエルを追って、著者は、アメリカ、ウィーン、ドイツを旅した。バイエルを日本に輸入した人、チェルニー&バイエル同一人物説からバイエル偽名説、初版の存在や、ついに見つけた戸籍簿まで、謎解きはスリリングに展開する。読み応えあるノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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音楽之友社のHPに、本書の続編コラム『バイエルの謎 その後』が連載中のようです。
こちらも今から読んでみようと思います。
終盤、何かの箍が外れたように一気に謎が解けていくのは興奮しました。
やはり地道な探究には、幸運とか偶然とか何か見えない力が働いているのでは?と思ってしまいます。
でもgooglebookの威力はすごい笑詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ピアノを習い始めた子供がバイエルなんて使っているのは日本だけ」「バイエルなどという二流三流の作曲家の、芸術性のかけらもない音楽を学ぶのは意味がない」「バイエルは子供の手で弾くのに向いていない」などと、散々な言われ方をしたのは1980年代だそうだ。その頃から「バイエル離れ」が起こり始めて、ほぼ100%だったシェアはみるみる激減したらしい。子供のころ、バイエルでピアノを習い始めた(厳密には違うけれど)私にしてみれば「えっ、そうなの?私が2年余り掛かってやり終えたあれは無駄だったの?」という気にさせられたものだが、そんな思いをした人は少なくないはずだ。今は若干復権しているらしく、私の知り合いのピアノの先生は「バイエルいいわよ~。素敵な曲あるわよ。理にもかなってるし」とおっしゃっているので、まんざられもないのかな、と安心していた。そこで、以前から気になっていたこの本である。あの噂の真偽はどうだったのだ。
まず驚いたのは、バイエルがそも何者なのか、誰も知らなかったということ。なぜ、日本人が明治以来100年以上もバイエルをありがたがって初歩の教則本として使い続けていたのか、誰も検証してこなかったことだ。「なんとなく」「これまでがそうだったから」という理由で、私たちはバイエルを(たいして面白くもない、と言っては身も蓋もないが。そりゃハノンやピアノのテクニックに比べりゃはるかに「音楽」ですが)習っていたのか、と思うと、そりゃ「バイエルなんて意味がない」と権威がありそうな方面から言われると、ぐらつくのも致し方なし。でも、安心してください。この本を読めば、失いかけていた誇りを取り戻すことができます。バイエルさん、ありがとう、と言いたくなります。そして、著者の安田先生が、幾度もくじけそうになりながらも、まるで運命の糸に導かれるように、日本人とバイエルの関係、そして謎に包まれていたバイエルの人物像に迫っていく過程を、私たちは読み進めるにつれ知ることになるのです。
そして、読み終わった後、もう一度バイエルの1番を弾いてみたくなりました。バイエルでピアノを習い始めたという人、バイエルでピアノを教えているという人にはぜひお薦めしたい。もう一度バイエルと出会う旅が、ここにあります。 -
バイエルを使っていたので読んでみた。けど、もっとワクワクさせてくれると良かったなぁ。もともとそれほどの思い入れがあるわけではないので(ほとんどの読者がそうだと思う)、読んでいく中でぐいぐい引きこむぐらいの勢いがほしかったのだけど、そのあたりが構成力不足というか。■著者があちこち行って頑張って推理したのに、後からひょっこり、その証拠となる楽譜や文献がでてくるのはどういうことか。読んでいる方も拍子抜け…というか、なんだかなぁ。
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ピアノを弾かない人でも聞いたことがある「バイエルのピアノ教則本」。160年にわたっての大ベストセラー(確かにそうとも言える)。近年、この本でピアノを習い始めることの弊害なども取り上げれていますが、それだけ定着していると言う事でしょう。しかし、その「バイエル」本人については全く謎に包まれています。そのバイエル本人の人生を調査しその本人像を浮かび上がらせる作品。その結果、バイエルのピアノ教則本に隠されている意味を見出している点も素晴らしい。
楽器など何も習ったことがなかったのに今年からピアノを習い始めた時に、何を弾きたいですかと聞かれて、特に弾きたい曲などないことがよくわかり、一から練習したくて何も知らずに「バイエル」と言って7か月。ようやく70番まで来たけど、今まで私自身も不思議に思っていたのが、バイエルの最初の2曲は変奏曲であること、そして何曲か弾いていると「あれ、このメロディ知っている」と妙に懐かしく思えるところがあること、、それが、教会のオルガン奏者であった母方の血によるもの母と子、教会、讃美歌、などのキーワードで解いていき推論し、前半は変奏曲集であるという発想などからなるほどと納得した次第です。これは面白い本でした。 -
バイエルさんってどんな人か、
なんて考えたことも無く、バイエルでピアノを習いました。
最後に光が差すようにモヤモヤが解決していく様は、作者の粘り強い研究結果なんだなぁ、と感心しました。
ワタシは、バイエルが批判されていた時代にはバイエルはとうの昔にやり終えていたので、へぇーそうだったんだぁと思い読ませてもらいました。 -
読み終わったあと、久しぶりにバイエルを取り出してみた。確かに、12曲の変奏がある1番と8曲の変奏がある2番から始まっている。フェルディナント バイエルは自分の教則本の「はじめに」で、「音楽に理解がある両親が、子どもがまだほんの幼いとき、本格的な先生につける前に、まず自分で教えるときの手引きとしても役立ててほしい」と書いているそうだ。バイエルの母方の祖父がプロテスタントのオルガニストであったことなどがわかっていくうちに、母親と一緒に連弾しているバイエルが想像できる。
それにしても、これほどまでに日本で長く使われた「バイエル」についての手がかりが、これまでまるで無かったという驚きと、著者の研究魂に脱帽。もう一度バイエルを見直してみたくなった。 -
ピアノを習ったことがあればだれもが練習した「バイエル」。
「バイエル」は何故日本でこれほど普及し、ピアノを学ぶ上での定番となったのか?
そもそも、この教則本を書いた「フェルディナント・バイエル」という人物はどんな人物なのか?
F.バイエルという人物自体の謎を追う旅が興味深い。
多くの日本人が知っている教則本を書いた人物なのに、どんな生涯を送ったのか、という情報があまりにも少ない。
長い年月をかけ、ようやくたどり着いたバイエルのルーツが明らかになる場面は、すばらしかった。 -
ピアノは弾けませんが楽器店で勤務だったので
「バイエルなんて」という時期を現場で経験しました。
今まで何の問題もなく使っていたのに
手のひらを返すように貶すのはナゼ?と
当時、説明されても腑に落ちないでいた事が
これを読んで、ようやく、すっきり解決されました。
面白かった。 -
日本で長く親しまれているバイエル。案外知られていないその人物像や教則本制作の経緯、日本にどう広まったのか。赤から黄色バイエルになったとき嬉しかった記憶、ありませんか(。'▽'。)
The secret of "Beyer basic piano course" which is kind of a bible for piano beginners in Japan. -
日本でピアノを習ったことがある人なら、例え使ったことはなくとも、きっと耳にしたことがあるはずのバイエルの教則本。
しかし、バイエル本人についての情報は他の有名な作曲家に比べると少ない。
たしかに、どんな人だったのか全く知らない。過去には伝記漫画シリーズで有名なのに情報が少ないということで、苦肉の策で創作伝記まで書かれていたとか…。
この本では著者が執拗とまで言える研究を重ね、バイエル個人についての情報を探し出して行く。
時系列で書かれているので、謎を解き明かして行く過程を追体験できる。最初のうちは冗長で退屈に感じていたが、中盤以降、情報が増えて行くとテンポも良く面白い。夜中に一気に読み終えてしまった。
バイエルの原著の構成の謎、バイエルが教本に込めた母からの愛、日本人がバイエルに与えた新たな意味付け、などなど過去にバイエル教則本にお世話になった人なら興味深く読めるはず。
あの親しみやすいメロディーのルーツが何なのか、著者なりの回答が示されており、その部分だけでも読む価値があった。
また、バイエルを指導に使うピアノ講師の方には強くオススメ。バイエル批判の背景についても触れられています。