私が愛したトマト

著者 :
  • 潮出版社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267022524

作品紹介・あらすじ

登場する作家が生まれた頃から慣れ親しみ、今も所有している一つの火鉢に、有為転変の来歴を与える ――「旅する火鉢」
「深紅よりもっと鮮やかな朱赤」と描写される椅子をモチーフにした ――「ポンペイアンレッド」
オーロラ見物と白夜体験のためにアラスカを訪ねた主人公が、「ウルフとラッパー」と名乗る謎めいた人物と出会い、極地の真実を解き明かしていく ――「夢の罠」
作家を思わせる語り手の女性が、人生の折々に鮮烈に現われたトマトとの関わりを追想する、表題作 ――「私が愛したトマト」
など、全11篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。高樹のぶ子先生の作品は何冊か持っていて今作も期待していたが…他作品よりは好みから外れる。
    祖父の持ち物であった火鉢を通して家の歴史を幻燈のように見る「旅する火鉢」
    老人と若い妻の暮らす家に呼ばれた旅人(妻と旅人は猫の擬人化?)の話「崖」
    アラスカの罠猟師との対談と冒険家達の幻想「夢の罠」
    地中から地上へ這い出す事も出来ず死んでしまう蝉と、古く蓋をされたままの記憶が交差する「散歩」
    噴き出す溶岩のような赤いソファの上で若い家具屋店員との逢瀬を夢現に見る「ポンペイアンレッド」
    青臭く硬いトマトに詰められた記憶。1人で育てる原種に近いトマトの養分は男達…老女の語る秘密は妄想か現実か「私が愛したトマト」
    妻子を持つ恋人との旅行中に購入したベネチアングラスで作られた蜜蜂とバッタ。別れたきりの男の家族から送られたバッタが語る流転の物語「蜜蜂とバッタ」
    病身の我が身と蚕の生態を重ね合わせる「蚕起食桑 かいこおきてくわをはむ」
    「タンパク」を作り売る若い男と、買う女。タンパクの原材料は2人の禁じられた記憶で…「タンパク」
    冴えないのに自信だけは過剰な男・翔と純朴な女・千枝。翔が千枝と一夜を過ごす為に賭けた夜、東日本大震災が起きて…「翔の魔法」
    スタンド・バイ・ミーを思わせる幼少の冒険の記憶。後に明かされる冒険の最後に見つけた「かぐや姫」の正体と幼馴染の痛みの記憶「かぐや姫」

    「夢の罠」に出てくる、冬眠できず被毛に氷の膜を張りシャラシャラと音を立てつつ放浪する狂妄の白熊「シャンデリアベアー」やポンペイアンレッドのドロドロと濃い赤色等、幻想への入口となる存在やアイテムの描写は秀逸。
    しかし、他の作品が頭に浮かんだり世界観にうまく入り込めない…。ある程度年齢のいった女と若く魅力的な男の組み合わせが多いのも理由の一つか。そして「翔の魔法」は最も現実的で、日常の中に突然起きた事だから翔のような男も千枝のような女もあの場にいたのかもしれなくて、ある意味「巨大災害」の幻想性を失くした作品とも言えるが…小説として面白いかと言うと…そこまでといった感じ。

  • 高樹のぶ子さんが、好きなのか?苦手なのか?わからなくなった作品です。

    ついていける⁉️まだ大丈夫?と遅々と読みました。


  • 11の短編。

    家族写真に昔から写っている火鉢。
    火鉢はどこからやって来たのか、記憶と心の冒険。

    老人の妻と老人を殺して崖に落としたこと。

    アラスカの自然と厳しい土地で、
    かつて冒険の途中で死んだ英雄たちの姿を見るとき。

    散歩で出会った蝉の幼虫にこめられた怨念。

    ポンペイの発展した街と火山灰で消えた闇。
    あの赤に染まった椅子と儀式。

    思い出にはトマトがそばにいた人生。
    一つ一つそれらを思い出しながらトマトを育てる老女。

    彼との別れで行ったベネチアリド島で買った蜜蜂とバッタの置物。
    30年を経て2つの置物の再会。

    病気で入院している少女に渡された蚕。
    繭に包まれた温かな世界とこの世の別れ。

    タンパクをもらう私と彼の関係。

    楽して生きていきたいと思い、
    下心を抱えて誘った彼女とのドライブで起きた地震と津波。

    漁村で暮らしていた時
    誠次たちと隕石を探しに行った先で見つけた白い布。
    置き去りにされた記憶と再会で知るわけ。

    不思議な世界観。
    蚕のはなんだか切なかったな。
    蝉の仕返しはビックリした。

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著者プロフィール

作家
1946年山口県生まれ。80年「その細き道」で作家デビュー。84年「光抱く友よ」で芥川賞、94年『蔦燃』で島清恋愛文学賞、95年『水脈』で女流文学賞、99年『透光の樹』で谷崎潤一郎賞、2006年『HOKKAI』で芸術選奨、10年「トモスイ」で川端康成文学賞。『小説伊勢物語 業平』で20年泉鏡花文学賞、21年毎日芸術賞。著作は多数。17年、日本芸術院会員、18年、文化功労者。

「2023年 『小町はどんな女(ひと)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

髙樹のぶ子の作品

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