漂流児童

著者 :
  • 潮出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267021503

作品紹介・あらすじ

子供の現実から目を背けるな。日本の福祉現場の実情に迫る!
ドラッグや援助交際に手を出してしまった少女、望まない妊娠によって養子に出された子供、医療少年院で絶望と格闘する職員、子供ホスピスでわが子の死を目の前に希望を見出そうとする親とスタッフ。報道では知り得ない、子供を取り巻く環境のゆがみがすぐそこに存在している。

感想・レビュー・書評

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  • 児童養護の現場を取材したルポ。
    2018年刊なので比較的新しい。

    養護施設、特別養子縁組、自立支援施設、障害児施設は「児童養護」の範疇に入るが、本書ではその他に、少年院、医療少年院、女子少年院といった、犯罪がらみの少年施設も取り上げられている。
    また、こども食堂、フリースクール、子供ホスピス、赤ちゃんポストといった、民間の篤志家による周辺事業も意欲的に取材されている。

    児童養護を勉強していると、「不良行為を成した児童」が犯した不良行為って何?という疑問が湧くのだが、その不良行為の実際がいろいろと具体的に説明されていて大変参考になる。

    家庭に恵まれないかわいそうな子供は、犯罪にさらされたり、犯罪者になってしまう可能性が高い。貧困、知的障害、若年妊娠、精神疾患、DV、家出や犯罪、拘禁と刑務所、覚醒剤、遺棄と児童虐待…あたりがガッチリ手を繋いでグルグル回っているような世界。
    その子自身に罪はないことも多いので、少しでも幸せな家庭環境や支えてくれる大人に繋いであげたい。



  • 石井光太さん、読了10冊目。

    児童福祉の世界、特に犯罪者や貧困、発達障害、自殺は、いつも思うが闇が深い。親子何代にもわたって負の連鎖が続いていることが多い。

  • 広範囲を取材対象にしていて勉強になった。

  • 最近、社会的養護という世界に触れているため読んでみた。児童養護施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、少年刑務所、医療少年院、障害児入所施設といったところをルポライターの著者が訪ねる。雑誌連載がもとになっているせいか、1回から数回訪ねた程度で書いていると思われ、ちょっと記述が薄い。この著者の本は何冊か読んでいるけど、テーマが自分の好みと似ているのだが、ものによっては口当たりがいいだけでテーマとして取り上げているものへの踏み込みがもの足りなく思うことがあるんだけど、この本もそんな感じ。
    一方で、取り上げている先が幅広く、フリースクールや沖縄の無料塾の試み、少年刑務所を出た後の少年たちを雇う職親プロジェクトや子どもホスピス、赤ちゃんポストといったものも取り上げている。それって「福祉施設」なのだろうかという点では、タイトルに偽りありなんだけど、子どもたちをサポートするいろんな仕組みや取り組みがあることを知るうえでは足しになった。
    それにしても、現代の子どもたちがおかれている環境って危うい。こういうさまざまな仕組み・取り組みをしてもすくえないものがあるし、同じようなものが縦割りの仕組みのなかでうまく使いこなされていない感じもする。かつては不良少年、非行少年向けの制度や仕組み、施設だったものが、いまでは虐待を受けた子どもたち、心を病んだ子どもたちのために当てられているという現実も悲しい。

  • レールを外された子どもは、どのような世界を生きているのか
    私たちは知らなければ知らないで、日常を過ごせるが、複雑で重たい児童福祉の問題を多くの人々が知る必要があると思う。
    知った上で、今より少しでも多くの人たちができることを行動に移せれば、この国は変わってくれるのだろうか…。
    いつも犠牲になるのは、子どもたち…。

  • 社会のレールをはずされてしまった子どもたちはどこへゆくのか?
    児童養護施設、フリースクール、女子少年院、少年刑務所などなど、児童福祉のセーフティネットを訪れその実情を取材したルポルタージュ。

    重たい内容だったが最後まで興味深く読めた。虐待のニュースは連日のように流れているが、保護された子どもたちがその後どのような場所でどのように育っていくのか、私たちがその先を知ることはあまりない。
    ここでは綺麗事ではない苦労や問題ともきちんと向き合っていて、他人事のはずのニュースがより現実のものと感じられた。親から社会のレールをはずされても、セーフティネットにひっかかった子どもたちの人生は、放送される一部分で終わるわけではない。
    私自身も小学生のときから不登校だった子たちを見ている。当時は分からなかったが、その身なりや持ち物を思い起こすと今になって分かることがある。いつのまにか姿を消していた彼らは、今どこで何をしているのだろう?
    子どもを救うことは未来につながる。子どもたちの心の光は、世の中の光になる。
    すべてを児童福祉にまかせ、ニュースを見て「可哀想ねえ」と哀れむだけでは何も変わらない。私たちも当事者としての目を持つべきなのだと思った。

  • 自分の知らなかった世界を垣間見れた気がします。これまでは障害のことや少年院のこと、赤ちゃんポストのこどなんとなくでしか考えてませんでした。それが解像度高く記載されていて、読んでいて一つ一つ考えさせられました。15歳から39歳までの死因トップが自殺なんて知らなかった。これからは接する方々とも色々な背景があるであろうことを意識して生きていこうと思います。

  • 家庭環境に恵まれない、親に虐待を受けてきた、知的障害や精神障害がある等、本人にどうすることもできない要因によって問題を起こしたり行き場がなかったりする子どもたち。彼らを受け入れ、向き合う様々な施設の人々。「子どもは社会を写す鏡」という言葉を思い出した。
    また、改めて、親の責任の重さを感じた。幼い頃に愛された幸せな記憶があるかないかが、その子が生きていく上で大きな違いになるということだ。しかしその親の方も、病気や障害を抱えていたりする、それをも含めて考えなければ、子どもは救えないのだと思った。

  • しっかり考えさせてくれる本。

  • 特養、フリースクール、発達障害、LGBTQ、少年院、子ども食堂、ホスピス等、様々な境遇にある子どもたちの実態を取材。浅く広い内容。
    日本は児童福祉に関して遅れている、という主張を筆者は他の著書でもしていた気がする。
    ボランティアに頼ってるところもいけないと思う。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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