ラダックの星

著者 :
  • 潮出版社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267021367

作品紹介・あらすじ

あなたにとっての〝マイベスト〟の星空は何ですか?
北インド・ラダックへの28日間の旅――。

2014年9月、北インドの地・ラダックに降り立った。
仕事から、そして社会の喧騒から離れた、自分のためだけにある旅。
その旅にはたった一つの目的があった。
それは、、、

「人生観をその根底からひっくり返してしまうような、ものすごい星空に出会うこと」。

星空を追い歩き続ける中で度々胸をよぎる、今は亡き友人ミズキへの思い。
「生とは、死とは、死と向き合うとは――」。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者は2014年の9月7日から10月1日にかけて、北インドのラダック地方に一人旅をする。
    目的は星を見ること。
    「黙々と、山の中を歩きたかった。社会の喧騒から遠く離れて闇の中で眠りたかった。誰もいない孤独の中に身も心も委ねてしまいたかった。その旅には目的と呼べるものがひとつだけあった。人生観をその根底からひっくり返してしまうような、ものすごい星空に出会うこと。私は、ヒマラヤ山脈の中を二五日間かけて歩き回り、そこに完璧な星空を見つけ出すつもりだった。」
    そして、それが「人生観をその根底からひっくり返してしまうような、ものすごい星空」だったかどうかは別として、筆者はラダック地方で心を動かされるような星空に出会うことに成功する。

    これだけであれば、星空を見るための旅行記・紀行文であるが、本書には、もう一つのテーマがあったようである。それは、幼馴染のミズキへの想い。
    筆者とミズキは、小学校・中学校・高校で同窓生となる。筆者はライターの道へ進み、ミズキは(おそらく)翻訳家の道を進む。33歳あるいは34歳の頃、筆者はミズキのご家族からのメールにより、ミズキが亡くなったことを知る。いつ、どのように亡くなったのかは、ご家族は知らせておらず、筆者にも分からない。旅の途中で、筆者はミズキのことを考え続ける。
    上に「もう一つのテーマがあったようである」という曖昧な書き方をしたが、それは、私が最後まで、星を見に行く旅行とミズキへの想いの独白という形態を本作品がとる意味が分からなかったからである。
    読むときに少し集中力を欠いていて、何か大事なことを読み逃していたのかもしれないが、「ミズキのことを書く必然性、あるいは、逆に、ラダックへの旅を書く必然性」「ミズキについて何を書きたかったのか」について、最後までよく分からなかった。思わせぶりな書きぶりをしている部分もあり、何か最後まですっきりとしない読後感であった。

  • 「インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸 684日」で開高健ノンフィクション賞を受賞した中村安希さんが、とある理由からインドのラダックに星を見に行くことになった紀行文。

    紀行の描写もさることながら、その心理描写が大変に素晴らしい。
    動作ひとつ、視線ひとつ、心の葛藤ひとつが、締め付けられるような苦しさや、虚無感を感じさせる。


    一人の女性を巡って現在と過去が交錯していく表現がなんとも儚く、過去の美しさを知っているからこそ、それがなくなってしまった現在の虚無感が響いてくる。

    一歩づつ歩き続けたくなる一冊。
    ちなみに僕の2018年第2位にランクした本です。

  • インパラの朝が衝撃的で
    面白くて、あっという間に読み終えただけに
    旅の話と友達との昔の話が交互に行き交って
    個人的には少し入ってきにくい内容だった。

    なぜ別々に書かずに
    旅の話の所々にミヅキの話を入れたのかな。
    もしかして旅の途中途中で思い出した場面のかなぁ
    とか考えたりした。

    中村さんの書く言葉は
    詩的で儚げで美しさもあるのに
    わかりやすく、その時の情景が目に浮かぶ。

    人は悲しみや悔しさややりきれない想い、
    期待、希望、夢、いろんなものを抱えて旅に出る。

    そして癒されたり、忘れることができたり、
    希望に変わったり、新たな目標ができたりして
    いくものなのだろう。

  • とてもよかった。

    手元に置いておきたい本。

    著者の個人的な過去の体験を結びつけて、旅をする物語。
    星を追い求めにいったが、本当に出逢いたかったものは、その後の美しく輝く黄金色の世界だったのかもしれない。

    過去の棚卸し。ザックの中身を全て抜き取るようにして、本当に必要なものだけに絞る作業。
    さながら登山のように前に進む事で、今までの自分が想定していた道ではない、それを超えたものに出逢えることもある。

    振り返ることで前を向ける。

    最後の登頂シーンは、山の美しさと厳しさが荘厳に描かれており、とても美しかった。

  • "受け取る側の、聞かされる側の、来られる側の気持ちには注意を払っていなかった"

  • 最高級の星空を見上げることだけを目標にラダックを旅する作者

    過去の同級生の話がいきなり入ってきてびっくりした

    ひとり旅はしたことがないけど、自分と向き合う時間、過去と向き合う時間にもなるのかな。

    こんなに過酷そうな旅程は無理だけど、満天の星空を拝めるのは羨ましい…

  • 標高3500メートルの地ラダックにて最高の星空を見るための25日間の旅の記録。同時に私小説的な断片が現れる。亡き友人との記憶から葛藤と後悔を生み、あたかも厳しい状況下で登山を続けることが懺悔のようでもある。‬

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1979年、京都府に生まれ、三重県で育つ。高校を卒業後、渡米。カリフォルニア大学アーバイン校舞台芸術学部を卒業する。アメリカと日本で三年間の社会人生活を送ったのち、取材旅行へ。訪れた国は六十五に及ぶ。2009年、『インパラの朝』(集英社)で第七回開高健ノンフィクション賞を受賞

「2011年 『Beフラット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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