人の樹

著者 :
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267020537

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  • 樹木の寿命は人からしたら気が遠くなるほど長い。その長い時間を動くことなく、来るものを受け入れ、自らを与えて立ち尽くしている。そんな樹木たちは何を感じているのだろうといつも思う。
    それらを村田喜代子さんらしい独自の視点で描いてくれる。樹木の孤独、悲哀、おおらかさや優しさを染々と感じた。

    人は樹木からたくさんのものを貰ってきた。
    短編のひとつ『女たちのオークの木』では樹木婚によって樹木から力を得ようしている。
    木の一族になることで魔除けの効果が得られると信じられていた。オークに嫁入りするとは食料貯蔵庫の鍵を預かるようなものだという。

    『生の森、死の森』では、病んだ者を森へ連れて行く。人の力で救えない命を森へ最後の望みを託すのだ。森が吐き出す様々な木のフィトンチッドの力。それだけじゃない森が持つ調和、健全性が人を健やかにするのかもしれない。著者の絵本『もりへぞろぞろ』もこの視点で描かれていた。

    『みちのくの仏たち』では、地蔵菩薩に彫られた木の自慢話に対して「春先の林のクスの木なんかの葉がキラキラキラキラ光ってるだろう。あのキラキラが成仏だよなあ。わざわざ彫らなくっても、そのままの木が仏だよ」という。その感覚いいなぁ。

    『逢いに来る男』や『深い夜の森に』に描かれる「人も木も輪廻転生を繰り返しなから一つの命」という考え方がしっくりくる。
    村田喜代子さん、やっぱりいい。

  • 楽しかった!夢周辺、現実周辺がグラデーションになってるけど抽象的ではなく分かりやすい物語。村田喜代子さんの本は好きなのです

  • 特に前半は「木の気持ちを自由に想像してみましょう」なんていうテーマで教科書に載っていそうだと思った。
    つまり木が好きで普段からその性格など想像しがちな人は、読むのに少し注意が要ると思う。

    『みちのくの仏たち』が好きでした。



  • 木を主題にした寓話的、お伽噺的な趣きの18の掌篇集。
    サハラに孤独に立つサバンナ・アカシア、雲南の山に生えるニーム、マダガスカルのバオバブ、シベリアのカラマツ、様々な木々が語り、かつて人間の女だったシマサルスベリ、かつてシラカシだったと打ち明ける夫、バラエティに富んだ物語が紡がれる。
    民芸館の一室で、木から加工された木工品達が語り合う「みちのくの仏たち」、森の治癒力で病の治療に訪れる人間たちの「生の森、死の森」、恩義のある老人のお通夜に人の姿になって出掛けるお伽噺的な「とむらいの木」、他に「女たちのオークの木」「ザワ、ザワ、ワサ、ワサ」「リラの娘」などがよかった。
    村田さんの作品は、近代以降の社会が、周縁へ更には迷信へと追いやったアニミズム的な世界を喚起してくれる。
    「ナミブの奇想天外」は、ウェルウィッチア・ミラビリスに最初から嫌悪感を露にしていた妹よりも、初めは好感を示していた筈の姉が、一転して激しい攻撃性を見せるのが印象的だった。異質なもの、見慣れないもの、自分の文化的規範から逸脱するものに対しても、ひとまずは理解を示そうとする身振りを見せながら、一旦その異質性を目の当たりにして、潜在していた敵意や害意、排除しようとする心性が剥き出しになる、そんな人間の有り様を、この姉は象徴しているように思えた。

  • 1945年生まれ村田喜代子 著「人の樹」、2016.9発行。昔人間だったアカシヤ、ハーブ、杉、ナラなどの色々な木の思いや人間たちとの会話を短編にした18話が収録されています。私としては、著者のテーマ、構想についていけない感じでした。

  • 木と人にまつわる連作短編。
    間違いなく今年のナンバーワン。
    この作品を読むことができてよかった。

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著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村田喜代子の作品

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