- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784267020070
作品紹介・あらすじ
戊辰戦争を二本松藩士として戦った父・朝河正澄。太平洋戦争へと突き進む祖国に警鐘を鳴らし続けた子・朝河貫一。現代日本の病根を朝河父子の生き様から探る、直木賞作家渾身の歴史小説。
感想・レビュー・書評
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「隆慶一郎の衣鉢を継ぐ者」とも目される歴史作家の最新作。
日本人として初めて米イェール大学教授となった世界的な歴史学者・朝河貫一と、「戊辰戦争」を二本松藩士として戦ったその父・朝河正澄の物語だ。
戦争へと突き進む昭和の日本を米国の地で憂える貫一と、明治維新から戊辰戦争に至る激動の日々を生きる正澄の姿が、交互に描かれる。
貫一は、父が書き遺した維新期の手記を元に小説を書こうとしており、その作業を通じて亡き父と改めて向き合う。そして、その小説にはやがて『維新の肖像』というタイトルがつけられる。
つまり、貫一の「いま」と並行して、小説内小説の形で若き日の父の闘いが描かれていくのだ。この凝った構成が十分に成功しており、重層的な魅力をもつ小説になっている。
貫一は、歴史学者として明治維新を肯定する立場をとっていた。また、厳格すぎる父には生前しばしば反発した。だが、父の手記を精読するうちに、維新への見方が少しずつ変わっていく。
これは、明治維新肯定史観に疑問符を突きつけ、時代の転換に殉じた東北諸藩の武士たちの「思い」に光を当てた小説である。そして、父亡き後に息子の心中で起きた、父との和解の物語でもある。
貫一は、戦争へなだれ込んでいった昭和期日本の病根が、じつは明治維新にあったことを見出していく。
文中には明示されないものの、維新期の薩長の横暴と昭和期の軍部の暴走が、現在の安倍政権の暴走と二重写しになるように書かれている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦国時代モノが好きなのは、混乱から太平に向かう時代だからなのか、勝者でも敗者でも、ある種の清々しさがあるわけだけど、幕末は完全に救いのない敗者と英雄というには胡散臭い勝者が残るだけという、身も蓋もなさが、あまり好きになれない理由だったりする。
しかし、この「維新の肖像」は維新を大東亜戦争に向かう日本と重ね合わせて、維新から続く理不尽がその後日本を戦争に向かわせたのではないか、という今まで自分の概念になかった切り口で、面白く最後まで読ませてくれた。
その内容は納得度が高く、大河の「西郷どん」も、なんかそういう目線で見てしまいそうだ。 -
兵器でも兵数でも格段に上回る新政府軍から二本松藩を守るため、負けることが分かってても戦わなければならなかった藩兵たちの気持ちは、どんなものだったのだろうか。
これを美しく儚いと表現してもいいものだろうか。
現代人の奢りなのか。
だが、そう思わざるを得ない筆力。
そして、巧みに明治維新と満州事変、上海事変をリンクさせ娯楽性も高めている。
ただ、だらだらと続く時代考証には辟易とさせられた。 -
単純に面白く読めました。イエール大の朝河氏を
多分モチーフにした話だと思いますが。
戊辰戦争の二本松戦の話を中心として、
明治維新と昭和の戦争とが対比の構造が
それなりに面白く読めました。 -
初めて聞く人物を通しての斬新な歴史解釈、ただ記述がだらだとしてもどかしい。