注文の多い料理店 (フォア文庫)

著者 :
  • 岩崎書店
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本棚登録 : 74
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265010400

感想・レビュー・書評

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  • 子供の日本語の勉強のために購入。字が大きく、挿絵も入っているので高学年、中学生によい本。もちろん、大人の自分のためにも。

    中でも、「土神ときつね」は、最後に物語が「わあっ」と展開する作品で、童話ながら感嘆してしまう。美しいカバの木に恋するキツネと土神の三角関係のお話である。自己顕示欲が強いあまり、紳士と博学を装う嘘までついてカバの木の関心を得ようとするキツネ。キツネの上品な紳士ぶりを妬ましく思いつつ、神としてのプライドが高いがゆえに不器用になってしまう土神。キツネの嘘もすっかり信用して心酔してしまうカバの木。
    動物、植物、神を主人公に仕立てる技もすごいが、臨場感もすごい。
    キツネとカバの仲睦まじい様子を目撃した土神が、やっと嫉妬をやりすごして、二人の幸せを願って話は終わり・・・ではなかった。キツネの自慢げで自信に満ちた様子を見た土神は、怒りと嫉妬に駆られてわれを忘れ、キツネを殺してしまう。しかし、息の根を止めてしまってから明らかになったのは、キツネの態度はすべて虚勢と嘘だったこと。「まがりなりにも神」である土神は、オイオイと泣くのである。
    このような展開になるまで、たったの1ページである。静かな草原にいきなり突風が吹いたような感じ。見事としか言いようが無い。気がついたら我を忘れて呆然としてしまった。
    土神のように、力のある者は、自分を律することが必要なのだ。妬みそねみを乗り越えなければ、その黒い力に自分が負けてしまう。負けたときに直面するのは、大きな喪失である。自分だけではなく、他者も損なってしまう。キツネのように不正直で、外面ばかりに気を使うのも、愚かしいことだ。でも、ついついやってしまうのも、また心の弱さ。カバの木は純真だけど、外面に惑わされるような単純なところがる。
    深い話だ。わが身を振り替えり、反省・・・

  • 全8話が収録。

    題名は注文の多い料理店であるが、
    他で見るべきものは多い様に思う。

    茨海学校というきつねの学校に農学校の講師が訪れる話。
    主人公が毎回茨海学校の高い教育水準に触れつつも、
    最高のうそは正直なりなどと、人間ですら紡がない言葉を生徒(狐)に教えているのは何やら滑稽ですらあるというか。

    そもそも太陰暦の話をする狐の学校とは。
    実は、この農学校の講師自体、狐につままれているのではないか。

    と思う話ではあるのだが、
    彼は確かにそこにお土産を置いてきたのであったという点で
    信憑性を帯びる書き方になっている。
    冒頭で石を置いてきたので手元にないという描写から始まるのは、
    そういう意味合いも考えてのことだろうか。

    それにしてもお土産が鉱物とは相変わらずの
    鉱物趣味であるといわざるを得ない。

    他、よくきく薬とえらい薬という、
    わかりやすい勧善懲悪を描く作品など、短めの作品もぽろぽろ。

  • 宮沢賢治の童話集なんですが、「注文の多い料理店」をのぞいてかなりマニアックなラインナップ。賢治ワールドはいたって全開なので、有名作品を読んだことある人にも、初めてのひとにもおすすめ。

    「よくきく薬とえらい薬」
     病気のおかあさんのためにばらの実を摘みにゆく少年の話。「銀河鉄道の夜」のジョバンニのプロトタイプ。

    「車」
    貧しいけれどもしょうじきで朴訥なわかものハーシュのおはなし。賢治がもっと健康で長命であれば、手をいれ膨らませるはずだったのかなあ、未完だったのかなあ、と思うとせつない。賢治の作品は外国の空想の土地を舞台にしてあるのが多く、本作もそのひとつ。

    「タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった」
    ホロタイタネリっていう少年の名がまずファンタジー全開でたまらない。やっぱり日本じゃないみたいなんだけど、、、どこか岩手の風景とかぶる。

    「注文の多い料理店」・・・・<菜っ葉ももうよく塩でもんでおきました>
    怪異にユーモアと風刺を織り交ぜて、なかなかに上手い。
    「土(つち)神(がみ)ときつね」・・・<べらべらしたももいろの火でからだじゅう燃やされて>
    嫉妬、見栄、浅はかさ。闇におちる人のこころの描写のすさまじさよ。もはや童話ではない。

    「チュウリップの幻術」・・・<どうです。チュウリップの光の酒。ほめてください>
    白昼夢かな。それ以外、なにがあるだろう、とでもいうような幻想ぶりがすばらしい。

    「茨海(ばらうみ)小学校」・・・<ご参観でいらっしゃいますか>
    子ぎつねのかよう茨海(ばらうみ)小学校って設定がかわいい。が、ところどころ毒が(笑)。賢治の教職の経験がいきてるのかなあ。

    「ガドルフの百合」・・・<おれの恋は、いまあの百合の花なのだ。くだけるなよ>
    解説によれば、賢治の18歳のときの恋の懊悩がこの短編に表れているとのこと。モノクロの夢を見ているような、精神分析にかけたいような、鮮烈なイメージが連続。

  • 2019' 旅本
    芭蕉旅の再開に、今回は岩手県!

    注文の多い料理店のみ読んでみた
    出発前に返却(笑)

    美味しいお料理やさんの話かと思っていたら
    美味しくお料理されるお話だった!

    初めてのまともに宮沢賢治を読んでみたけど好きかも

    岩手で銀河鉄道読むの楽しみ❤︎

  • 注文の多い料理店他、何編かの物語が入っている。
    注文の多い料理店は読んだ。擬音の使い方がいい。

  • 小学校5年生の時に初めて買った宮沢賢治の本。

    収録作品は
    「よくきく薬とえらい薬」
    「車」
    「タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった」
    「注文の多い料理店」
    「土神ときつね」
    「チュウリップの幻術」
    「茨海小学校」
    「ガドルフの百合」
    の8作品。

    味戸ケイコさんの挿絵も幻想的で宮沢賢治の世界に静かな色を添えている。
    わたしは「よくきく薬とえらい薬」「土神ときつね」がものすごく印象的で、ある意味、この作品は今のわたしへ大きな影響を与えてくれたのではないかと思う。
    フォア文庫の「注文の多い料理店」は小学生向けの本だが、内容の濃さは大人でも充分に楽しめるものではないだろうか。

    ※新潮社さんから出版されている文庫本にこれらの作品が揃って掲載されていないのであえて原点のフォア文庫さんのレビューを書かせていただきました

  • 宮沢賢治らしく独特の物語で、先が読めなくて面白かったです。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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