病んだ家族、散乱した室内: 援助者にとっての不全感と困惑について (シリーズケアをひらく)
- 医学書院 (2001年8月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260331548
感想・レビュー・書評
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精神保健福祉センターにて訪問医療をしていた精神科医の方が書かれた本です。
「訪問記録から見た、家庭内の精神疾患」がメインテーマでしょうか。
「病んだ家族、散乱した室内」という題名から、ごみ屋敷とかそういう類のことなのかな? と想像していましたが、少し違って、「家族とはグロテスクである」ということから始まり、家族の閉鎖的性質に精神疾患が絡んだとき、家族は他人の介入を阻んだグロテスクな共同体となりうる、というような主旨で書かれています。
主に読者対象としては同業の、福祉関係者や訪問ヘルパー、訪問看護の方などを想定しておられるようで、「読者諸氏にはおわかりのことだろうが~」というような表現がありますが、素人が呼んでも理解できる内容になっています(専門用語が沢山ありすぎてわからない、というわけではないです)。
全くの素人が読んでみての収穫と言いますか、私が個人的に良かったなと思ったのは、本書では「分裂病」と書かれている精神疾患「統合失調症」についてです。
精神科の病気というのは素人にはとても分かりづらく、区別もできないものが沢山ありますが、名前だけはテレビやネットで見聞きすることが沢山あります。
その中でも「うつ病」「統合失調症」「パニック障害」などは頻出の語句ではないでしょうか。
私自身、統合失調症と聞いたことはあるけれど、どういう病気であるのか全くきちんと理解できていませんでしたが、この本には医学書から引いた説明をまず提示して、その後に実際の著者の思うところが記述されています。なるほど、そういう感じなのか、と思いました。
世間では憂鬱な感じ、抑うつ状態を総じて「うつ病」と呼んでいるような気がしますが、違うんだなということに気づけました。
プロでも「こわい」と感じるのは当たり前、という記述を見て、この本の言っていることにより一層、納得できました。怖い気持ちを否定するわけではなくて、次にどうしたらいいのか、選択肢を広げていき、そこから改善へと繋げる。プロってこういうことなんですね。
医学に携わる者ではなくても、こういった本を読むことで理解を深めることができて、それがゆくゆくは、精神病患者への差別をしないことであったり、患者の方を余計に刺激しないことであったり、そういった小さなプラスに転じるかもしれないな、と感じました。 -
精神障害を持つ人々の援助者は必読。
自分もこんなふうに当事者に接しているつもりではあるが、それでいいんだよ、とお墨付きをもらったような気分。
やっぱり、そっとずっと人に関われるのって素敵だ。 -
精神状態や家庭の状況が、片付けられないことと関係があるのかという興味から手に取ったのだったか…
断捨離の本ではなかった。笑
精神科の医師によるくだけた表現の医学的な論文に近い。
2001年に書かれた本。20年で世の中は大きく変化した。本の中で、分裂病、痴呆症など今では使用されない言葉がこれでもかと出てくる。筆者は医学的な興味から向き合った様々な事例について書いているが、診る側と診られる側には決定的なラインが引かれている。よもや自分がそちら側に行くことは絶対にないかのごとくだ。
ネット上の感想では概ね高評価だったし、古くても参考になるというような印象だったが、患者のことを普通ではないと断言する言い方や、グロテスクという表現は現代には合わないのではないか?現代は多様性の時代で、何が常識でもないし、世間に合わせることが良しという時代でもない。精神的な不調は今や誰もが抱えるものだし特別なものではない。
好意的に読もうと思ったが疲れてしまった。ちなみに散らかった室内の話は冒頭のみで、あとは家族と患者の話が多くなる。
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病んだ人も健康な人も、援助する側もされる側も、人間って面倒くさいんだなと思った。
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病んだ家族、散乱した室内―援助者にとっての不全感と困惑について。春日 武彦先生の著書。病んだ家族、散乱した室内と向き合うすべての援助者を社会全体でやさしくサポートする制度を確立しなくてはいけない。病んだ家族、散乱した室内と向き合うすべての援助者を社会全体でやさしくサポートする制度がないと、援助者の身体的負担と精神的負担が増えてしまうだけで、援助する側の人が簡単に援助してもらう側の人になってしまう。精神疾患の患者さんのケアを精神疾患の患者さんの家族だけに押し付けるようなことはあってはならない。
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(2022-05-31 2.5h)
「ケアをひらく」シリーズ、2冊め。
このシリーズ、どれも面白そうなので積極的に読んでいこうと思う。
部屋は自分の内部で、デリケートな場所。
いじめ被害者の子どもが何故周囲の大人に頼らないのか、著者の考察が的を射てるように思う。自分の安地を汚したくないという気持ち。
わたしは小さな頃から部屋が汚れているという状態が常だったので、改めなきゃいけないという危機感を本書から貰った。性格を変えるよりまず環境を変えることから。忘れがちだけど、大切なこと。