誤作動する脳 (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260042062

作品紹介・あらすじ

「時間という一本のロープにたくさんの写真がぶら下がっている。それをたぐり寄せて思い出をつかもうとしても、私にはそのロープがない」――たとえば〈記憶障害〉という術語にこのリアリティはありません。ケアの拠り所となるのは、体験した世界を正確に表現したこうした言葉ではないでしょうか。本書は、「レビー小体型認知症」と診断された女性が、幻視、幻臭、幻聴など五感の変調を抱えながら達成した圧倒的な当事者研究です。

感想・レビュー・書評

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  • 認知症(レビー小体型認知症)の概念が覆された本。
    聡明な著者がわかりやすい言葉で綴ってくれます。
    本を書けるほどの当事者の方もなかなかいないと思うので、貴重な本だと思いました。

  • 前に読んだ「認知症世界の歩き方」という作品に、認知症の当事者が手掛けた作品として紹介されていたのが、この作品です。樋口直美さんは、30歳台の頃から身体の不調を抱え、40歳台でうつと言われ、50歳台でレビー小体型認知症との診断を受けられています。レビー小体型認知症とは、認知症の1つに分類され主にパーキンソン、幻覚や幻視などの症状が見られます。

    ご自身がどのような経過をたどって、どんな場面で困ったのか…赤裸々に描かれています。そのうえで下記のように分析しています。
    ・認知症の人が感情をコントロールできないと言われているが、実は追い詰められていて余裕がないことがそうさせている。
    ・認知症診断は「早期発見・早期絶望」で片づけることなく、診断は変わっていく可能性がある、それでいいのではないか…。

     ある講演会で、「樋口さんはどんな介護を受けたいですか?」との参加者からの質問に、「考えたくありません」と答えた樋口直美さん…誰だって、自分が介護されるようになるとは思いたくはないですよね!
     
     そして、体調が悪いながら仕事に奮闘していた際にかけられた言葉…「仕事に向いてないよ、家で主婦でもやっていた方がいい」には、なんだか憤りを感じました。「誰もがヘンなままで苦しむことなく、そのまま生きられたらいいな」と樋口直美さんの言葉…共感できました。だって、私だってどこかヘンな人だもん!みんなが少しずつ優しい気持ちを持てることが、生きやすい社会につながるんじゃないかと思いました。

    • つくねさん
      かなさん、レビュー待ってましたw

      レビー小体型認知症のご本人が書かれた本って事で興味ありました。
      母も本は書けませんが同じレビー小対...
      かなさん、レビュー待ってましたw

      レビー小体型認知症のご本人が書かれた本って事で興味ありました。
      母も本は書けませんが同じレビー小対型なのでどんな気持ちでいるのか知りたくって・・
      かなさんはやっぱり優しい人なんですね。私はなかなか理解できなくってイライラしたりなんですけど優しくなれたらって思いました。
      2023/05/12
    • かなさん
      しじみさん、こんばんは!
      お母様がレビー小体型認知症なんですね…
      ウチも母がアルツハイマー型認知症でした。

      家族が認知症だとなかな...
      しじみさん、こんばんは!
      お母様がレビー小体型認知症なんですね…
      ウチも母がアルツハイマー型認知症でした。

      家族が認知症だとなかなか受け入れがたいですよね…
      私もそうで、常にイライラしてましたもん…。
      でもね、何かの講演だったか、
      それともテレビか本だったか、定かではないけれど
      「家族は立派な介護者にはなれない」と知り楽になりましたよ。
      立派な介護は介護職に任せて
      そんなに気をはりつめることはないんだって…
      何でも気楽に、いい加減くらいがちょうどいいんです(^_^;)

      ただ、少し困っている人を見かけたら
      みんなが優しい気持ちで見守ってくれたらって、
      それだけでいいと思うんです。

      しじみさん、この「誤作動する脳」おすすめです。
      お時間が出来たら、是非手にしてみてくださいね!
      2023/05/13
  • 社会派読書家のかなさんに教えていただいた一冊。
    レビー小体型認知症の著者が実体験に基づき書かれた本とゆうことで興味を持ちました。
    不眠症からうつになり50歳でレビー小体型認知症と診断されたそうで、彼女は記憶を手繰り寄せるロープがなく、幻視、幻聴に悩まされる。初期は臭いを感じなくなったそうです。
    突然、存在しないものが見えるようになったこと。
    座敷童がみえるようになったと表現されていました
    人に言っても信じて貰えないと思い一人悩んでたこと。
    それは、ゴジラの着ぐるみを着て生活してたと。
    聡明な彼女は超常現象の原因は脳の誤作動による障害だと早々に気づいて常人との温度差を埋める工夫と開き直りで着ぐるみを脱ぐことができたようです。
    彼女のように言語化できて症状が伝われば常人も理解しやすく、もっとやさしく接することができると思いました。
    1人暮らしだった母もある日突然に同じタイプの認知症になったのです。高齢もありましたが気丈でしっかり者の母がかかるとは思っていなかったのです。
    5年前のある日、母を訪ねると旦那と子供と暮らしているとか言い出したのです。夕方には旦那と子供が帰ってくるのでそろそろ帰ってほしいと言うのです。私も訳わからず彼氏でもできたのかと思ったのですが違う様子。子供は自分の子で幼稚園児だとゆうのです。父は25年前に亡くなってるし、訳がわかりません。じゃあ今、話してる私は誰かと尋ねると世話好きなご近所さんと思っている様子。母の誤認を解こうと父は他界してること、私が、あなたの子供であることを必死の思いで伝えたのですが、きょとんとして理解できないのです。
    今思えば、母の脳内は父親が生きていた昭和にタイムスリップしてたのです。私が無理やり現在に戻したから混乱したのです。
    父親と子供の幻視は、一人でいるときに現れて話しかけても返事はないそうですが、母はそこらへんは都合よく解釈してコミュニケーションしてたようなんです。
    当時は理解できなくて言い争うこともあり悩み苦しみました。介護が大変になり今は施設に入ってますが、私も認知症のことについて調べ理解できるように努めているのですが、ご本人が書かれた本があるとは驚きでした。症状には個人差もあるようですが大変参考になりました。

    • かなさん
      しじみさん、こんにちは!
      いや~社会派読書家なんて、なんだか照れますね(/ω\)
      恐れ多くて、恐縮してしまいます…!!

      まぁ、それ...
      しじみさん、こんにちは!
      いや~社会派読書家なんて、なんだか照れますね(/ω\)
      恐れ多くて、恐縮してしまいます…!!

      まぁ、それはさておき、
      早速この本、読んでくださったのですね!
      お母さまのこと、大変でしたね…。
      認知症になると、一番良かった時代に戻れるんですって!
      お母さまにとっては、最愛のご主人がいて
      娘であるしじみさんが可愛い盛りの小さなころ、
      お母さまが家事と育児と忙しくされていて、
      家族みんなに頼りにされ、
      きっと充実した毎日を送られていた頃なんでしょうね…。

      うちの母は、認知症でもアルツハイマーだったから、
      幻視や幻覚はなかったけれど、
      忘れたことを娘のせいにしたりして、ずいぶん衝突しました。
      家族であるから納得できないんですよね…
      いつもしっかりしていたから、
      それを見て過ごしてきたから、受け入れることが難しいんです。

      しじみさんのお母さまは、施設にいらっしゃるとのこと、
      施設の職員であれば認知症のこともしっかり学んだうえで
      お母さまにとって最適な介護を提供してくれると思います。
      でもしじみさんが、
      お母さまの認知症について理解したいと願うことも
      私は親孝行だと思います(^^)
      2023/05/19
    • つくねさん
      かなさん、ありがとうございます!

      認知症になると、一番良かった時代に戻るんですかww
      その言葉ですべて理解できましたww
      流石は社...
      かなさん、ありがとうございます!

      認知症になると、一番良かった時代に戻るんですかww
      その言葉ですべて理解できましたww
      流石は社会派読書家さんですね。
      母を介護できなくなって施設に預けてしまい
      罪悪感を感じたり、その選択でよかったのか悩んだりもしましたが
      母も穏やかな表情をみせるようになっていて
      施設の人には本当に頭が下がります。
      いまでも、もうじき旦那が帰ってくると言ってますが
      会話にあわせているので楽しそうに話してくれます。

      2023/05/19
  • 当たり前からの解放。

    またも「経験の先覚者」に常識を破壊してもらった。

    障害者を障害者たらしめているのは、「こうでなければならない」という社会常識なのではないか。
    本当の意味で障害者を苦しめているのは、我々"健常者"の常識なのではないか。

    そして我々もまた、自分たちの常識に苦しめられているのだ。障害のある方々を知ることは、その常識を破壊し、生きやすさを手に入れることに繋がる。

    作者が抱える症状の一つに、時間感覚なさ、がある。
    これは、我々に時間とは何かを考えるヒントをくれる。時間感覚がないからこそ、死者ともつながり得るし、自分が死んだ後も世界とつながっていられるという考え方は、羨ましくさえある。

    土井善晴さんの言葉「味噌汁は、濃くてもおいしい、薄くてもおいしい」は、秀逸だ。

    障害のある人に限らず、「こうでなければならない」という幻想に縛られている人みんなに届けばいいと思う。

  • 樋口直美さんの書籍『誤作動する脳』発売 | 認知症ねっと(2020年4月16日)
    https://info.ninchisho.net/archives/35948

    「誤作動する脳」 自らを観察 「できる」を取り戻す 朝日新聞書評から|好書好日
    https://book.asahi.com/article/13325239

    樋口 直美*『誤作動する脳』医学書院|note
    https://note.com/hiiguchinaomi

    誤作動する脳 | 書籍詳細 | 書籍 | 医学書院
    https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/108712

  • レビー小体型認知症の当事者が日常を語る本。医学書院ウェブマガジン「かんかん!」での2年半にわたる連載に加筆したものです。

     なんと美しい装丁。そして著者の文章のなんと美しく文学的で、知的さの滲むことか。
     まず感嘆したのはそこでした。カバー折り返しの[本文より]の引用箇所だけで、私はぐっと引き込まれていました。

     レビー小体型認知症というのは、「認知症」というと良く想起される「アルツハイマー型認知症」とは少し違っていて、レビー小体型ならではの困難さと言いますか、病態があるようです。本書では「幻覚」や「幻聴」「幻臭」について著者の目から見た症状が具体的に示されています。

     文章が小説のように、鮮やかで主観的な症状を語るので、私も樋口さんの目を通して同じ事象を見ているような気分にさえなりました。自分の病気について熱心にリサーチしたり(MT野ニューロンのこととか)、困ったことが起こるとそれに判断を下して少しずつ着実に前へ進んでいこうと努力されている描写からも、樋口さんはとても知的な方なんだなあ、という印象を抱くのですが、それにも増して魅力的な人物像を持った方で、本当に感性が鋭いんだろうなと感じました。

     本書の中で特に印象的だったのは、「人災」という言葉で、何の病気にも共通して言えることなのだろうと思うのですが、イメージや世間一般に知られている患者像が邪魔をしてしまい、治癒を遅らせてしまっているということに(そうかなと薄々思ってはいたけれど、やっぱりそうなのか……)と衝撃を覚えました。
     うつ病と診断された日々のエピソードにて、心配した知人からの電話が樋口さんを追い詰め、電話に出られなくなった、とありました。
     「良かれとおもって」が人を追い詰める話には枚挙に暇がありません。叱咤激励のつもり、アドバイスのつもり、寄り添ったつもり……。そういうことが、ただでさえ苦しい日常を送っている人を追い詰めるという現実。
     かといって、全ての対人関係を避けて生きるということが正しいとも思えないから、どうしたらいいのか分からなくなります。

     ――自分だけではなく、同じ病気と闘う人たちに降りかかる誤解を解きたい
     樋口さんの文章からは、そんな気持ちを感じます。世間で知られていることだけが真実ではないし、同じ事柄が万人に共通、唯一の解決策ではない。
     当事者ではない私には、何が出来るだろうか、と様々なことに想いを巡らせた一冊でした。

     迷いながら、苦しみながら、それでも前に進む姿が美しいのだ、と哲学書か何かで読んだ気がするのですが、まさに樋口さんのような方のことを言うのかも、と思い当たりました。
     本書の出版にあたって、当事者である著者が自身の体験を差し出すだけに留まらず、思わぬところでトラウマケアをする機会に出会ったり、ご自身も愛読されていた「ケアをひらく」シリーズに加われたという喜びを得られたことが本当に良かったなと思いました。
     本書の出版後、『「できる」と「できない」の間の人』という本が出版されているようですので、そちらも読んでみたいです。

  • もしも認知症になったら、世界はどう見えるのか?
    本書は、50歳でレビー小体型認知症を患った著者が体験した、認知症の世界を描いた本だ。本書を読むと、外側から観察しているだけでは見えてこない、患者の内面世界について知ることができる。
    著者は、自分が体験している世界をできるだけ適切に表現しようとしている。このような行動は、不安や焦りといった負の感情から身を守るのにとても有効であると感じる。適切な言語化は、主観的な世界から自分を連れ出し、客観的に世界を見られるようにするのだろう。
    本書でもっとも印象に残った記述は次の部分だ。「心に希望があふれると世界は美しく光り輝いて見え、絶望に覆われていると美しい花すら美しいとは感じなくなる。そんなことを経験すると、脳は、世界をありのままには認識していないこともわかります。「私たちは目の前にある同じ世界を見ている」というのはただの錯覚で、世界は人の数だけ存在しているのでしょう。そしてその世界は、その人のなかでも大きく変化していきます。」私たちはつい、自分の世界の捉え方の延長に、他者の世界があると思い込んでしまう。だが、それは勘違いだ。自分が当たり前にできることができない人もいるし、心地よいと感じることが気持ち悪い人もいる。自分とはまったくちがった世界の見方をしている人間がいることに気づくことができる能力。それこそが想像力であると、私は考えている。

    印象に残ったところメモ。
    ・病気や障害の名前が違っても、この人は自分と同じ痛みを経験している。ただそう知るだけで救われる気がするのはなぜでしょう。
    ・(今も幻視があることを)一度言ってしまえば、喉につまっていた重いものは溶けるのです。恐れるようなことは起こりませんし、人はそのままに受け止めてくれると分かります。不安のほとんどに実体はないのです。(多くの人が抱える不安に対する強力な処方箋となる言葉であると感じた。不安は幻想であり、過剰な思い込みにすぎない。)
    ・全力で集中していてもミスは出ます。おかしな言動をすれば、自分では何が変なのかがわからなくても、周囲の反応から伝わります。何も言われなくても、いえ、何も言われないからコソ、よけい堪えるのです。

  • 著者はレビー小体型認知症であり、その体験を書いた本なので、この病気や認知症に興味のある、あるいはかかわりのある人は興味を持つだろうが、万人に読んでほしい本だ。
    脳に何らかのトラブルが起こっているという点で認知症だけでなく、高次脳機能障害や発達障害、双極性障害、統合失調症などとも共通点がある。それらの当事者がどう感じ、何を苦しんでいるか、それぞれ違うにせよ、この本を読んで苦しみを想像することができる。そして、これほど苦しいのか、と愕然とする。著者はじめ当事者の方々は、家族や友人といった親しい人や、医師にすら理解されず、苦しみと孤独の中に生きているのかと思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
    自分や家族、友人がこれらの脳の病気に永遠に無縁である人はほとんどいないと思う。
    まずは、この苦しみを知ることが、現在症状のない人間の務めだと思う。

    そういった病気のことは考えたくない人も、見えないものが見える体験には興味があるだろう。
    よく霊的な体験(見えるはずのないものが見えたり聞こえたりする)と言われるものや「遠野物語」に出てくる座敷童の証言が著者の経験と酷似していて、霊的な体験ではなく、脳の誤作動によるものではないかというのは説得力がある。
    幻視がたびたび起こるというのには驚くが、慣れてしまうらしい。山岸涼子の「スピンクス」を思い出した。あの少年も、施設を出たあともスピンクス(虐待した母親)を見るが、もう恐ろしくないと言っていたな、と。そして見たことは誰にも言わない。あれは確かに脳内で起こった出来事を描いた漫画だった。

    幻視も匂いがわからないこともつらいが、一番読んでいて苦しかったのは著者が「うつ病」であると誤診され、副作用の強い薬を6年間も飲み続けていたというところ。著者は何度も主治医に薬が合わない、苦しい、やめたい、と訴えているのに、医者は全く取り合わない。やめると悪くなるといって、時には薬を増やされたりする。それでますます体調もメンタルも最悪の状態に陥る。地獄、という言葉が浮かぶ。自分でレビー小体型認知症ではないかと判断して危機を脱した著者は、実は医者もよくわかっていないんだ、間違ったのは彼らのせいじゃないと言っているが、私だったらこんなやさしい言葉は嘘でも言えない。
    しかしそれほどまでに脳の病気は未知の部分が大きいということを肝に銘じたい。


    患者と医師が、違う「常識」の上に立っていることを知り、同時に医師も不安や苦悩を抱えていることを知りました。(p233)

    認知症や認知症医療について学ぶほどに知ったのは「脳のことでわかっていることは本当に少ない」ということです。(p234)

    「早期発見・早期治療が大事」と言われ続けていますが、早期であればあるほど症状は目立たず、種類は出そろわず、画像にも認知機能検査の数値にも表れにくく、診断は困難という現実を患者や家族は知りません。(p235)

    治療とは、視界のきかないジャングルを踏み分けて進む冒険のようだと今は思います。医師にだって、先は見えないのです。そんなジャングルを、目をつぶって医師の後ろにくっついていくのは危険すぎます。それでは崖から落ちても文句は言えない。医療の限界を知るにつれて、そう考えるようになりました。
     自分の命がかかっているのです。自分の病気や飲む薬のことを知らないのは、コンパスを捨てて進むのと同じです。患者や家族が症状を観察し記録したものが、いちばん大事な地図です。その地図を医師と見ながら、どう進むのかを話し合います。(p236)

  • レビー小体型認知症を患っている樋口直美さんの本。

    webで連載していた樋口さんの記事を読んで、初めて「レビー小体型認知症」という病名を知りました。その連載は、途中までしか読んでいなかったのだけど、ふと、Twitterで流れてきた投稿でこの本を知り、読んでみました。

    この本の前に1冊出されているんですね。
    そちらの本も読んでみようと思います。


    「認知症」といってもいろいろなものがあること、同じ病名でも人それぞれ症状が違うこと、そしてそれは出会った医師や周りの環境や寄り添う人たちによっても変わってくること、そんなことがよくわかる本でした。

    患者が医療の「受け身」だけでいてはいけないこと、医師が絶対ではなく、医師にも見えないことがあること、互いの信頼関係によって情報をすり合わせて行って、やっと辿り着ける治療の方向性もあることも知ることができました。

    著者の樋口さんも、受け身の診療を受け続け、「うつ」と診断されて処方され続けた薬の副作用で辛い6年間を過ごしていたとのこと。患者も一緒になって「治療」に参加しなければならない時もあると知りました。

    うーん、うまく言えないのがもどかしい。
    とにかく、みんな読んでみて欲しい本でした。


    私がいろいろな病気の患者さんがかいた闘病記やエッセイを読んでいるのは、世の中のたくさんの人たちが、いろいろな病気や症状に悩み生きていることを知っておきたいから。身近な家族や自分自身にもいろいろな出来事が待ち受けているかもしれないから。たくさんの人たちの気持ちに寄り添えるように、いろいろなことを知りたいから。

    読んでよかった。

    ーー自分用読書メモーー
    ・遠野物語はレビー小体型認知症?
    ・嗅覚異常
    ・時間の近さ遠さがわからない
    ・家族には話せないけど、利害関係のない人には話せる。そして、気分が楽になる。
    ・人それぞれの「できる」と「できない」がある
    ・脳の状態が顔(目)に現れる
    ・脳は働き者、だけどだまされやすい
    ・料理が大変(買い物から)。蓋をして見えなくなると、存在を忘れる
    ・レビー小体型認知症では、薬剤過敏があり、抗精神薬の54%で重篤な副作用が起きる
    ・薬を増やす、やめる。医者でもわからないこともある
    ・早期発見?できないことだってある
    ・早期発見・早期絶望、にならないために
    ・診断は仮説、最後まで仮説

  • やー、病気になってしまった人の、どう世界が見えているかという本。これは、かなり励まされるとともに、認知症の人が世界をどう見ているのか(著者は認知症ではなく、レビー小体の障害)が、かなりわかりやすい。率直にお礼を申し上げたい。

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著者プロフィール

樋口直美(ひぐち・なおみ)1962年生まれ。50歳でレビー小体型認知症と診断された。多様な脳機能障害のほか、幻覚、嗅覚障害、自律神経症状等もあるが、思考力は保たれ執筆活動を続けている。著書に『私の脳で起こったこと』(ちくま文庫)、『誤作動する脳』(医学書院)、『「できる」と「できない」の間の人』(晶文社)等がある。

「2023年 『レビー小体型認知症とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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