【現代語訳】呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況

著者 :
  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260016643

作品紹介・あらすじ

近代精神医療の原点、九十年の時を経て、待望の現代語訳。

感想・レビュー・書評

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  • 精神医療の歴史
    写真図版の資料が豊富である
    現代では同様の研究は無理
    とても貴重な本である

  •  これはPSW業界では名高い割に読んだ人はあまりいなかった本代表だったが、現代語訳版が出たので読んだ人も多いかも。
     原典重視で表現もそのままで当時の雰囲気がわかっていいんだけど、尺貫法に括弧でメートル法を書き添える文体は読みづらいので勘弁してほしい。
     業界的には「国家の悪行を告発!」みたいなイデオロギー的文脈で語られているけど、読んでみると、理解もお金もない中で割とどうしようもなかったことは窺える。現代から私宅監置あるまじき!と言うのは勿論そうなんだけど、虐待されたりいないことにされたりされていた人が大多数だった時代から見たら、私宅監置合法化というファクターをどう捉えるかは一概には言えないかもという感じ。
     現代の精神保健福祉の理念のベースに関わる事柄が散りばめられているので、精神科に関わる人は読むことを勧める。

  • 医学部分館2階書架 : WM011/KUR : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410170220

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/59464

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99457124

  • この調査が行われた大正7年当時は精神病者に対して必要な精神病院は圧倒的に少なく、精神病者監護法に基づき、患者は個人宅で監置することになっていた。これは犯罪者のように逃がさないことを目的にするわけではないので「監禁」ではなく、家族が治療をするわけでもないので「保護」でもないので、「監置」という言葉が使われたらしい。
    1坪ほどの座敷牢に、ろくな世話もされず閉じ込められる患者も悲惨だし、その世話をする家族も大変だ。現代の犬や猫の方がましかもしれない。
    患者に同情的な家族は、治療のため山伏を呼んで祈祷させたり、精神病に効くと信じられていた、墓から持ち帰った人骨を食べさせたりして治療を試みたという、当時の風習も生々しく記録されている。
    手塚治虫の「奇子」を思い出した。

  • 実地での調査だけあって、文章から当時の私宅監置風景がありありと想像出来ます。

    現代日本では精神障害者の人権を守る動きは盛んですが、当時は人扱いされていなかったことが分かります。

    本書を読めば精神障害者への価値観も変わります。

    歴史的にも価値が高い本だと思います。

  • 歴史
    病気
    ノンフィクション

  • 明治~昭和にかけて、精神病患者を私宅で監置することができるとした「精神病者監護法」により、多くの患者が自宅の監置室(座敷牢)に住まわされていた。この本の著者である、東京帝国大学医科大学精神病学教室教授だった呉秀三は、この法律を廃止し、精神病患者を設備の整った病院で看る環境を整えようと、私宅監置の状況を助手15人を全国に派遣して調査させ、報告書を作成した。それが、この本の元になっている。

    百例以上の実態調査報告では、写真や間取りのほかに、その家が裕福かどうか、監置した経過、理由、監置室の状況、家族の待遇、医療を受けているかなどが生々しく報告されている。後半は、民間療法の状況や、患者の統計などを含め、その後、私的監置、民間療法、精神病者看護法への批判がなされている。

    呉はこのように意見を書いている。「衣食の提供の希薄さ、看護のおろそかにされている様はむごたらしさを極め、同情の念を到底抑えきれない。」「現在の私宅監置には、『ただ被監置者の監禁のみで、これに対する治療がない』と言うことができる」「このような収容室の存在を見るのはまさに博愛の道に反するものであり、実に国家の恥辱である。」

    元々は法律を変えるため、政治家に配布する目的でまとめられたものであるが、明治時代の精神病者の状況、回りの人々の生活を知ることができる、貴重な資料である。現代語訳、解説付きで読みやすい。

    また、この本の制作こぼれ話も面白い。
    http://igs-kankan.com/article/2012/09/000666/

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著者プロフィール

1953年生まれ。1980年3月、昭和大学医学部卒業、84年3月、昭和大学大学院医学研究科博士課程修了。昭和大学附属烏山病院、昭和大学医学部助手を経て、93年10月から東京武蔵野病院、2013年4月から横須賀市立うわまち病院、15年4月から関東労災病院勤務、18年7月から国立病院機構埼玉病院に勤務、19年4月に精神科外来を立ち上げ、現在、精神科部長。2002年3月に慶應義塾大学文学部卒業、帝京平成大学客員教授を経て、13年7月から昭和大学精神神経科教室客員教授。医学博士、精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医。著書に『三浦半島の医療史――国公立病院の源流をたどる』『日本の精神医療史――明治から昭和初期まで』、共著に『精神病院の社会史』(いずれも青弓社)、翻訳・解説に『[現代語訳]呉秀三・樫田五郎 精神病者私宅監置の実況』(医学書院)、『[現代語訳]わが国における精神病に関する最近の施設』(青弓社)など。

「2020年 『感染症と隔離の社会史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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