コーダの世界―手話の文化と声の文化 (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260009539

作品紹介・あらすじ

こんな世界、知らなかった!親が振り向いてから泣く赤ちゃん。声を出さずに口のかたちで話す子ども。親への苦情電話を親に通訳しなければならなかった小学生。目をじっと見すぎて「オレに気があるのか」と誤解されてしまった若い女性。手話が「言語」であり「文化」であることが心から納得できる、刮目のコミュニケーション論。

感想・レビュー・書評

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  • コミュニケーションとは何か、を考えさせられた。

  • 【感想】
    聴覚障害を持つ親は手話を用いる一方、聴覚障害を持たない子供は手話と(フツウの)音声言語の二つを行き来している。

    ・コーダ = CODA = “Children Of Deaf Adults”
    ・言語についての社会学(?)と言っていいんでしょうか。なお公共図書館での分類は「NDC:369」だった。
    ・どれも面白かったので、「シリーズ ケアをひらく」の一覧を作ろうかなと思っている(全部読んでから)。
    ・そういえば、川端康成は子供時代に、目の見えない祖父と暮していたそうな。


    【書誌情報】
    『コーダの世界 ――手話の文化と声の文化』
    著者:澁谷智子(1974-)
    判型 A5
    頁数 248
    出版:医学書院
    発行 2009年10月
    定価 2,160円 (本体2,000円+税8%)
    ISBN978-4-260-00953-9

    生まれながらのバイリンガル?
    コーダとは、聞こえない親をもつ子どもたち。「ろう文化」と「聴文化」のハイブリッドである彼らの日常は、驚きに満ちている。親が振り向いてから泣く赤ちゃん? 目をじっと見すぎて誤解されてしまう若い女性?――コーダの日常を生き生きと描き“異文化交流”の核心に迫る、刮目のコミュニケーション論!
    https://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=62828

    【目次】
    はじめに 

    プロローグ 
      「ろう文化」って何?
      ろう者の表現の魅力
      「コーダ」という言葉について

    1 コーダが戸惑うカルチャーショック 
      どこ行くの?
      「見る」と「見つめる」
      見えるもの、気になるもの
      動画の思考
      会話の方法

    2 コーダがしていること 
      小学生のコーダがいるお母さんの話
      コーダが通訳するということ
      電話通訳
      通訳ときょうだい関係
      まわりの人からのまなざし
      ろう者と貧困
      祖父母世代、親世代、コーダ世代、そして時代
      文章の説明
      ある帰国子女から見たコーダ

    3 「ろうの声」とコーダ 
      聴者にとっての「ろうの声」
      コーダにとっての「ろうの声」
      Kさんの場合

    4 思春期のコーダはなぜイライラするのか 
      聞こえない親の不安
      親をバカにされたくない
      外食が嫌い
      言ってもわからないだろう
      「物語」が変わるとき

    5 コーダが語る親 
      「CODAとしての私の生い立ち」北田美千代さん
      「親父が残してくれたもの」阿部卓也さん

    6 コーダのつながり 
      「コーダの会」
      親を通じたつきあいからの離脱
      アメリカのコーダの語りと日本のコーダの語り
      セルフヘルプ・グループとしての「コーダの会」
      コーダがコーダであることを意識する時期
      Thank You Deaf Day

    おわりに 
    謝辞 

  • 聴覚障害の親を持つ子ども(コーダ)に対してインタビューや
    アンケートをした結果、得ることができた当事者の声を
    読みものとして提示した本書。
    内容はわかりやすく、驚きがあったり、ウルッとしたり。

    障害を持つ親を持つ劣等感、義務感、葛藤から、聴文化とろう文化の
    2つの文化を持つ生きている人として自分をとられる受容、喜び、
    自信までコーダの生の声が分かり、等身大のコーダがどんな存在なのか具体的に捉えられる一冊となっている。

  • 小説『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』でコーダに関心を持ち、こちらの本も読んでみました。

    手話は一つの言語だということ、それゆえ、ろう者と聴者の思考パターン、表現の仕方が違うということがわかり、非常に興味深かったです。

    後半は、コーダの葛藤、苦悩について述べられています。その多くのことが聴者との関わりから生まれてくるのだとわかりました。

    聴者に出来ることは、コーダに対する深い理解だと思いました。

  • Children Of Deaf Adults…聞こえない親を持つ聞こえる子どもをコーダと呼ぶが、子どもが通訳者のように扱われたり、ろう文化の中で育ち、聞こえる文化とは違う経験をしてきていることが理解されにくく、常識がないと思われることもあるなど問題があるということが分かった。
    ろう文化の豊かさがとても興味深い。手話は大切な言語で、ろう者は、子どもが聞こえたとしても、手話で育てて十分に気持ちを伝え合うことが大切だと思った。

  • 最近、映画で話題になっていたりするけれど、この本を知るまでCODAと言う言葉も知らなかったし、その存在を意識したこともなかった。
    ろう者の出てくるマンガやドラマは見たことがあるはずなのに、知らないことばかりだった。ろう者と聴者は同じ国で育っても違う文化を持つこと。聴者として、日本で生活してきた私はろう者の文化には違和感を抱く。違和感になってしまうのは、日本人のろう者なら同じマナーを共有していると思い込んでいるからなのだろう。「聞こえないこと」以上にに見えにくい「文化の違い」という壁の存在。そしてその壁の影に、聞こえる子どもがいることもある。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99366881

  • 《「最近思うんです。私は親や主人がろうだから、まわりからはろう社会のことを熟知していると思われる。でも、私はそこまでろうの世界のことを知らない……というよりは、知らない世界が沢山ありすぎた……と。それがわかったら、私、とても楽になりました。色々あったけど、時が経つということはいいことと思える時があります」》(p.177)

    《それは、子どもに負担がかかっているのではという恐れでもあり、子どもには子どもの道を自由に生きてほしいという願望でもある。なおかつ、聞こえなさゆえの自分の不利な状況を子どもに愚痴ったり、この思いは聞こえる子にはわからないだろう、と思ったりしてしまうこともある。そしてまた後ろめたさを抱く。》(p.160)

  • 同僚からおすすめされた本です。
    コーダ(CODA Children of Deaf Adults)については、以前『デフ・ヴォイス』という小説を読んだことで知識として走っていました。
    その「コーダ」がどのようにこの日本社会で生活し、何を感じ、何を考えているのかを、彼らの体験談(インタビュー)をもとに明らかにしてゆきます。

    コーダと「ろう」の親子の関係も、聴者の親子関係と変わらないこと、手話も一つの言語であり「ろう文化」という文化体系を持っていることなど、パッと見ると、「ろう」とコーダも聴者と同じ人間であり、言語や「張力」などの差はあれど、意思疎通を図り互いの理解を深めることで、よりよい社会を構成できる、という結論に走りがちです。
    もちろん、これが理想なのですが、そううまくはいかないのが実際で、そこには「ろう文化」が日本社会において確固たる地位を保証されていないマイノリティ集団であることや、「聞こえない」人への一種の差別的な(劣っている(部分がある)と見る)扱いが残っていることが原因でもあります。
    そして、コーダはその「厳しい社会の目」から親を守るために早く精神的に大人になろうとしますし、過剰な期待をかけられたり(親からは「聞こえるのだから」と、また周りの大人からは「親に通訳して」と難しい”大人の会話”を小学生のころから通訳させられたり)して、自らの環境を苦痛に感じたり、周囲から「大変だね」と気遣われることに応え立ちを感じたりするようになります。
    しかし、こういったストレスを発散するための仲間(同じ環境で育ったコーダ)との交流を、すべてのコーダが持っているわけではありません。

    この本を読んで、すぐに「コーダのことがわかった」ということはできませんし、彼らと(あるいは彼らの「ろう」の親と)同じ価値観を持ったり、互いを尊重した平等な社会を作り上げたりすることも難しいのが現実だと思います。
    コーダかそうではないか、に関係なく、人はそれぞれに「背景」があり、その背景(環境)が積み重なって育ってきたこと=自分と違う行動や思考をするからといって必ずしも「劣っている」というわけではない、ということを読み取ってもらいたい、と思います。

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著者プロフィール

1974年生まれ。成蹊大学文学部現代社会学科教授。専門は社会学・比較文化研究。著書に『ヤングケアラー――介護を担う子ども・若者の現実』(中公新書)、『コーダの世界――手話の文化と声の文化』(医学書院)、編著に『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)、『女って大変。――働くことと生きることのワークライフバランス考』(医学書院)など。

「2022年 『ヤングケアラーってなんだろう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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