- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784255010977
作品紹介・あらすじ
「できない」ままで生きてもいい。
自分の欠点ではなく「世の中が押し付けてくるまともな生きかた」と戦う術。
親の年金でキャバクラに通い、そのたび落ち込んで引きこもっていた増田さん、何をやっても自信が持てない、一応「健常」な施設スタッフ沼田君、毎夕、意味不明なワン切りを必ずしてくるひーちゃん、「足が腐った」とか「定期をトイレに流した」とか、まばゆいばかりの屁理屈で仕事をサボろうとするQさん……。
本書は、知的・精神・身体の障害を持つ人、障害を持たない人合わせて30 名が通い働く障害福祉NPO法人「スウィング」に集う人々の「できる」にこだわらないエピソードと、そんな彼らが生み出す、心の栓を抜くような、脱力しきった詩で構成されています。
頑張り続けないと後ろめたい。「できません」なんて口が裂けても言えない。
学校でも会社でも、達成できそうもない目標を追い続けなきゃならないのはなぜなのでしょう。なんだかずっと失敗しにくい、弱音を吐きにくいムードです。
頑張ってみてできないなら、他のできることを探せばいい。足りないところを頼り合うからこそ、人は繋がれる。スウィングのエピソードは多かれ少なかれ、あなたにも関係のあることではないでしょうか。
固定化された「まとも」を見つめ直しゆらしたりずらしたりすることで、それぞれの生きづらさを緩め、一息つきながら生きていくためのヒントとなる一冊。
感想・レビュー・書評
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常識なんて所詮はひとときのもの、という事を再度実感させてもらいました。世界にはもっとバラエティがあっていい。
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生きづらさを生み出すのは、「まとも」という感覚・価値観の強制だ。同調圧力の強い日本社会では、規格外のユニークさを持った人を「まとも」という枠から外れている、という理由で排除しようとする。そうして、「障害者」が増えていく。しかし、ロボットみたいに、社会の暗黙のルールにただただ従って生きていくことのほうが、本当は生きづらいのではないか?みんなどこかしら弱さや苦手な部分があって、「健常者」なんて本当はいないのではないか?自由に満ちたスイングでの笑いの絶えない毎日は、本当の人間らしい価値観とは何かを教えてくれる。
これまではうっかり、自分だけで頑張っちゃったり、悩んじゃったりしていたことを、恐れず他人に開示し、迷惑をかけ慣れていくこと。人1人の力など高が知れているし、自分の足だけでは立てないことだってある。そんなときには誰かの肩を借りればいいのだという回路と安心感を、辛抱強く自分の中に育てていくこと。弱さ。それはほとんど強さと同義である。 -
失敗しても、ダメな事があっても全然ok!何がスタンダードなのか?人間はどんな人でも必ず弱さを持っている。できないことも、弱い所あって私の個性。
曖昧さがあることが人間臭いんだろうな! -
息苦しい浮世を
自分と違った角度で眺めさせてくれる。
変なおっさんの本でした。
おもしろい活動あれこれ。詩が掲載
されていて、どれも笑っちゃった。
楽しい本でした。
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新年一発目にしてめちゃくちゃ良い本を読んだ。
おもしろい。
「〜しなければならない」「〜してはいけない」ということに溢れた世の中に生きている私たち。
アホな政治家が生産性がないとか、どうこうとか言ってさ。
生産性とか効率とかそんなんばっかり。
もちろん大事なことであるけれど。
私たちは効率のために生きているんだろうか。
「〜したり」「〜しなかったり」
「〜してもいいし」「〜しなくてもいいし」
そんなスウィングはとても素敵なところだなあと思った。
なんにもしなくたっていいし、迷惑かけてもいいし、失敗したっていい、できないことがあったって、本当はいい。できないことがあるのなんてそんなの当たり前。
本来はそうであるはず。
効率ばかりを求める、人に迷惑かけないことを迫る、そういう社会ってどうなん?と。
このままではどんどん息苦しくなっていくばかりで。
そういう社会はとても脆いんではないかと思う今日このごろ。
「こうあるべきまともな姿」というものに押し込められて窒息しそうな人がたくさんいる。
自分の弱さを受け入れる。だめなところがあったって、できないことがあったっていい。
他者の弱さも受け入れる。違いも認める。
そうすると、できることが見えてくる。
当たり前でないことを、ちょっとずつ続けていく。
そうすればそれも当たり前になっていく。自分にも、他人にも応用していく。
なんとなく息苦しい世の中で。
楽に息をするためのヒントがいっぱい詰まっていたと思う。
なかなかむずかしくもあるけれど。実際自分が実践(実験)できるだろうか。心の持ち様で変わることもあるのかな。
みんなが生きやすい世の中に。 -
武田砂鉄さんの「わかりやすさの罪」
で紹介されていた一冊
世の中の「常識」って
あらためて
なになのだろう
と 深く、面白く
かんがえさせてもらうます
「こうすべき」
「こうあるべき」
「ねばならない」
に対して
「?」と
思うことが多い方、
一度でも思った方、
ぜひぜひ
おすすめです。 -
今まで、「(周囲の人と同じように)できない」ということで自分自身が苦しみ、周囲からは「(自分たちと同じように)できない」ということで、その「できない」ことを指摘され続けてきた。その期間があまりにも長かったせいか、何をするにも自信がなく、「これならできる」と思ってやり始めたことも、うまく自分から発信できず、結局失敗に終わってしまう。自分自身が少しずつ縮んでいくのが手に取るようにわかった。そんな中、オンラインで著者・木ノ戸昌幸氏の話を聴き、この本を手にしたのだった。
この本を読んで、これまで自分の中にあったモヤモヤとしたものの正体が、「できない」ということによる悲しさや悔しさや虚しさや怒りといった感情が混じり合ったものであったことに気づいた。気づいたからどうこうというわけではないが、マイナスの感情ばかりだとはいえ、モヤモヤの正体がわかったことで私はホッとした。
で、そのマイナスの感情から始めても何かができそうな気分になった。
そんな気にさせてくれるのがこの本の魅力だと思う。
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武田砂鉄氏の書籍から興味をもって読了。なんと昨年に出版されているし、アサヒの書評でも紹介されていた。完全に抜け落ちていた。今年最後のヒット本。著者は我が同郷の出身。同郷だからこそわかる、「まとも」への圧力。前半は利用者の詩とともに事業所での自由な様子と、おそらくその人らしさが前面に発揮されるのを見守るスタッフの温かさが背景に見える。後半に著者がこの事業所、名前が良い、スゥイングを作ったいきさつが語られる。そして、今、「ギリギリアウトをセーフに、どうしようもない弱さを強さに、そして、たまらん生きづらさをユーモアに」、施設が進んでいる姿を見せてくれる。最後にアフロの元アサヒの記者が寄稿をしているのがオチなのかどうなのか分からないが、爽やかな読後感であった。
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障害者施設スウィング。
ここには、世の〝まとも〟が通用しない。
おかしな〝まとも〟が大腕をふって歩く世の中。
スウィングの皆さんは、それをふわりとこえていく。
こんなに明るく、こんなに面白く、こんなに心が震えて、こんなに考えさせられる本は、他に無い。
すごくすごく、いい本。