どこからも彼方にある国 (YA Step!)

  • あかね書房
3.79
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本棚登録 : 156
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784251066725

作品紹介・あらすじ

人とのコミュニケーションが苦手なオーウェン。作曲家を目指す少女ナタリーには、悩みや進路のことをじっくり話すことができた…。友達であるナタリーをひとりの女性として急に意識しはじめて、二人の友情の歯車が噛み合わなくなり…。

感想・レビュー・書評

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  • こんな青春を送ってみたかった。

  • オーウェンのなじめなさには親近感超持つわー
    流された方が楽、ってのもわかる
    そこからどう這い上がるか、納得できる答えを見つけられるかが彼らに必要になるんだよね
    自分を殺すとあとで絶対恨むからやめたほうがいい
    挫折が傷にしかならないから、やりたいことをやって傷ついた方がきっとましだよ
    二番目の希望に挫折するよりも、一番目の希望に挫折した方がいいと思う
    もちろん納得して受け入れるのがいいと思うけど、きっと流されて納得させられることのほうが多いはず
    目的なく生きるのは辛いよ。

  • 周囲から浮かないように心を砕くこと、なるべく目立たないよう心がけて変わり者と思われないようにすること・・・・・

    なるほど、皆と“同じ”であろうと神経を使うのは、何も日本の若い人たちに限ったことではないのか。

    同じであろうとしても、消し去ることのできない違和感に悩み、
    意に染まない両親の考えに反発しようにも、その立場も思いもわかってしまうだけに、やみくもに反発できないでいる聡い子どもの苦しさが、丹念に描かれている。

    そんな聡い子であるオーウェンが心許せるようになるのが、ナタリーという少女なのだが、彼女がとても素敵。その思慮深さや率直さにおいて。

    同性であれ異性であれ、自分が大切にしている思いや、不安、心配事を心おきなく話せる相手がいるということが、どんなに心強く、心楽しいものであるか。
    そしてまた、そういう関わりあいが、思い迷ったときに一歩踏み出す勇気を与えてくれるのだということを、さりげなく教えてくれているように思う。

      Very Far Away from Anywhere Else by Ursula K. Le Guin


     

  • アーシュラ・K・ル=グィンの新作?
    と思って本屋さんで手に取ってみました。

    みんなからはみ出さないように。仲間外れにならないように。笑顔を作り、必死で自分の居場所を確保しようとしている同級生たちに違和感を持ち、他人と違うことに悩むアメリカの高校生オーウェン。
    家族を傷つけたくはないけれど、理解してくれるとは思えない。相手を思いやってのウソはなぜだかすぐにバレるし、自分だってできることならうまく立ち回りたい。
    でもそれができないんだ。

    『闇の左手』などのSF作品や、スタジオジブリで映画化もされた『ゲド戦記』などのファンタジー作品で有名なル=グィンですが、この作品は珍しい青春小説。

    オーウェンの前に作曲家志望の女の子ナタリーが現れ、二人はようやく自分の思いを打ち明けることのできる相手にめぐり合うのですが、オーウェンはまたしても「普通の男女ならこうなるはず」と世間で言われている価値観に囚われ、ナタリーの気持ちも考えずに、友情という一線を越えてナタリーを傷つけてしまいます。

    何でも私に決めさせようとしないで。
    大切なことは一緒に決めるべきじゃない?

    というナタリーの言葉に、女性と男性の関係に深い興味を持ち、かつてフェミニスト活動家とも呼ばれたル=グィンの思いが表れているように思いましたが、ちょっと最近の作風と違うので調べてみたら、この作品は1976年に発表され、日本でもコバルト文庫で『ふたり物語』として出版された作品の再版物だとわかりました。

    なんだ、そういうこと。

    たとえそうだとしても、ル=グィンの魅力は満載。
    私は楽しめました♪

    オーウェンはナタリーに、自分が幼い頃から想像の中で作り上げた自分の国、「ソーン」について語ります。
    その国は、海の上に浮かぶ小さな島にある国で、すべての国から離れているため、独自の文化と風習を持っていて、オーウェンは好きなように想像の羽を広げて思い描くことができるのです。

    どこからも彼方にある国…

    オーウェンとナタリーは二人でその国の音楽を考え、ナタリーが作曲を約束してくれます。

    二人の間に、海岸でのあの事件が起こるまでは…

    思春期の男女を主人公に、他人の中の自分という存在に悩んだり、他人との違いに葛藤し、男女の関係についても描いた物語。
    面白かったです☆

  • ごくきれいな物語で、読んでいて心地よかった。



    最初は『ゲド戦記』を探したけど、なかった。代わりに同じ作者の別の作品を借りた。

    主人公は、頭のいい男の子。思春期真っ盛りで進路に悩んでいる。親の望む進路と、自分が本当に望む進路。周囲の目と、自分も同じにならなければという焦り。
    ヒロインは、しっかりと自分の世界と進路を決めていて、とても現実的。ただ、人との関わりが苦手で『音楽』を通してしか人と関われないことに気がついている。

    『親との関係』『男女の関係』が複雑に絡まり合いながら、でも物語は淡々と進む。



    大きな冒険があるわけではないけど、すごくピュアな世界が好き。



    でも、書かれた年代のせいもあるのか、男の子の方が『何で僕の言う事を聞かないんだ』という感じは古いのでは?と思ってしまった。父親の力が強いのも…今だって、そんな家庭はたくさんあるよと言われそうだけど、なんか古い感じを受けてしまった。



    主人公の心の揺れは普遍的なのかもしれないけど、価値観みたいなものは……今の家庭内の力関係って、母親もそれなりじゃないのかな。うーん。



    とにかく、その辺りを除けば二人の関係性は好き。特にヒロインの強さが好き。ただ、ヒロインの芯がしっかりしすぎてて、逆にどうやったらこんな芯の強さをこの歳でもてるのだろうか……と思ってしまった。それだけ、特化した才能があったせいなのかな。



    満足した、一冊。

  • 2018.02.14

  • the YA小説!!って感じ。
    恋と愛と友情が見事に昇華された美しい小説を読んだと思いました。

    ル・グィンはそんなに読んだことがないので、ファンタジー作家だなぁ、くらいの認識しかなかったので、普通の小説も書いているんだなぁと思いました。(不勉強なだけ。)

    少しだけ、サリンジャーの小説を思い出しました。

  • SFやファンタジーのイメージがあるル=グウィンの描く青春小説。
    人付き合い。家族との関係。将来の進路。恋愛。
    主人公が、若者なら誰もが経験する悩みに向き合う。
    男女の友情が一番のテーマだと感じました。

  • 頭はいいけれど周りに馴染めない少年と、音楽でしか自分の気持ちを伝えられない少女の物語。

    何か大事件が起きたり、びっくりするような発見があったりするわけではないけれど、でも読み応え抜群の作品でした。
    羽のように軽やかなのに、ずっしりと重い。
    いかにも青春、という感じですが、ヤングアダルトには難解なんじゃないかな…?

    主人公に、ナタリーが告げる自分の気持ち、思いがとても素敵。
    多分、私もこんな風に猪突猛進型に生きて、いろんな人を置いてきぼりにしてきたんだと思ってしまった。


    話は変わって、物語に出てくる「平等主義」
    すっごく日本的な感じがするけど、アメリアにも同じような閉塞感があるんだなぁ…と、ちょっと不思議な気持ちになりました。
    青春って、どこでもだれでもやっぱり、同じように敏感で閉塞的で、振り返ってみないと輝いてないものなんだろうなぁ。

    ハッピーエンドでよかった!
    すべてのティーンエイジャーに幸あれ!

  • 思春期の少年の悩みがとてもありありと描写されています。みんなが騒ぐものに興味を示せないとき、人それぞれに努力するんだったと思い出しました。途中の「霧」を使った表現はとてもわかりやすい表現だ。
    きっとそのようなフリはできるけど、フリを重ねているうちに、自分を霧の中に入れてしまい、自分自身を迷子にしてしまったら、自分も誰も自分自身を探せなくなってしまう。
    思春期のうちに、このことに気付けるなら本当に幸せだと思う。大人になってしまったら、そうやって自分自身を一旦迷子にさせてから見つけるようなことをしなければならないと思う。大人になって迷子になっている人におすすめです。

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