殿様の食卓: 将軍の献立から饗応料理まで (徳間文庫カレッジ や 3-1)
- 徳間書店 (2016年12月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
- / ISBN・EAN: 9784199070716
作品紹介・あらすじ
「質実剛健!? 質素で淡白な将軍の献立」「ランク上位は鯨、鯉、鯛。鮪は食べ物にあらず」「グルメNO.1は光圀、胃弱なのに肉好き慶喜」「ずんだもち、鶏卵素麺……殿様が愛した名物」「和食の形式を作った饗応料理」
感想・レビュー・書評
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戦国時代からの、戦乱時の食事を彷彿と思い出させる、
質素な料理は、普段の殿様の食卓に。
室町時代からの、饗応料理はおもてなしの豪華さ。
江戸時代の将軍家や大名の殿様たちの食生活を詳細に解説。
第一章 食材にもランクがある
一 粗食だった江戸のお殿様
二 偉い人の気まぐれで獣肉は闇の中
三 食べ物のランク
第二章 基本は将軍家
一 将軍の食卓 二 仕入れ先 三 大名の献立
四 我が道を行く殿様たち 五 郷土食を楽しむ
六 殿様の愛した名物
第三章 饗応料理が和食の形式をつくった
一 饗応料理 二 京料理
参考文献有り。
遥か昔の食から始まり、宗教と肉食の関係、「美物」と「粗物」、
政や行事での食材の序列など、基本的な食の知識が紹介される。
続いて将軍家の日常の食事。
戦国時代の戦いの合間での食は、平穏を迎えた江戸時代でも
受け継がれ、日常は食事も食類も質素。
将軍、御台所の食事、御膳所の役人について。
料理が出来てから御膳に運ばれるまでの手続きの多いこと。
食材仕入れの問屋、献上品、行事の食べ物、台所役人の役得等の
知識が並び、将軍の食や酒でのエピソードへ。
続いて大名家の殿様の食卓の様子。
大名家の献立は将軍家を手本とした質素なもの。
だが、水戸徳川家の光圀や斉昭、島津家の重豪や
隠居した柳沢信鴻など、食いしん坊の殿様もいる。
おかげで郷土料理が誕生した地域もある。
最後に饗応料理について。その意義と作法。
武将の実施した接待での本膳料理の内容。
おもてなしのハレの料理、その中心が京都にあった理由。
お殿様の食事のエピソードで綴るのかと思ったら、
かなり深く食に関する知識が満載で楽しめました。
それでも多くの史料や文献からの料理の記録は面白い。
肉食嗜好のお殿様、結構いたのですね~。
残念なのは、江戸時代の本当のおもてなしの料理、
旅先での料理や家庭でのおばんさいとは異なる
京料理の記述が少なかったことです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
徳川時代に将軍がどのようなものを食べていたかを詳細に述べている.意外に質素な感じだ.今と比較して,栽培方法も稚拙であったことも事実だろうし,流通も盛んでなかったことから,自給自足に近い食生活だったと推測される.後半の京料理の話は面白かった.p273の”京料理はあくまでも饗応料理,つまり「おもてなし」をするためのプロの料理であり...だから,京都では主婦手作りの料理で客をもてなさない”は重要な指摘だと思う.さらに最後の文,”カミサンの煮物の類までが京料理を名乗り出すと,折角ブランドとして食べ物屋の利益に繋がりだした京料理は,やがてブランド力を失うだろう”も大事だ.