月下のサクラ (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198949174

感想・レビュー・書評

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  • 柚月裕子『月下のサクラ』徳間文庫。

    『朽ちないサクラ』に次ぐシリーズ第2弾となる警察小説。

    『朽ちないサクラ』を単行本で読んだのは2017年のこと。あれから7年が過ぎたのか。

    間違い無く前作より面白くなっている。二転三転の先の読めないストーリーに加え、事件の真相にも驚かされた。また、終盤のヒロインの森口泉のあれよあれよの大活躍には目を見張るばかりだった。


    舞台は架空の東北の主要都市、米崎市。米崎県警で警察広報職員を務めていた森口泉は退職し、県警採用試験受けて合格し、警察学校を歴て、警察官となる。念願の刑事となった泉は、曲者の黒瀬警部の強い引きもあり、何とか希望していた機動分析係に配属される。

    しかし、泉の配属当日、会計課の金庫から詐欺事件で押収した9,530万円もの現金が盗まれていることが発覚する。機動分析係のメンバーが総出で捜査を開始するが、犯行は内部の者である線が濃厚であり、現金の紛失前に退職した前会計課長の保科に疑いが掛かる。

    署が混乱する中、警察がマークしていた前会計課長の保科が自宅で不審死を遂げる。そして、現場にいち早く到着していたのは何故か公安の外二課だった。

    米崎県警に一体何が起きているのか。

    本体価格820円
    ★★★★★

  •  『朽ちないサクラ』を読んでから6年、記憶はこうも薄れるかと愕然としますが、前作を再読せずとも支障なく、続編として読み進められました。

     主人公の森口泉は、県警広報課の事務方勤務から一念発起し県警を再受験、努力の末に捜査二課知能犯係の刑事へ、さらに県警捜査支援分析センターを受験し配属が決まります。決め手は、類稀なる暗記力と記憶力でした。

     読みどころは、署内金庫からの現金盗難に端を発し、事件が想像以上に大きな闇につながっていく展開の引き込みにあると感じました。
     飽きさせない登場人物のアクの強さと個性の書き分け、とんでもない黒幕の輪郭が加速度的に明瞭になる後半の展開、同じ組織内での不祥事隠蔽の悪と正義の対決など、柚月さん特有の熱い想い溢れる筆致で描かれていて読み応え充分です。

     泉の超人的な記憶とプロファイル、一人で最も危険な場面に立たされる辺りに、少々無理がある気がしないでもありませんが、許します!(は?何様?)

     警察内部の腐敗、刑事と犬猿の仲の公安(隠語で「サクラ」)の暗躍に気分も悪くなる中、泉の忠誠心と健気さに救われる思いがしました。サクラはサクラでも、やっぱり綺麗な花がいいですね。あと、偽客も嫌ですね。

     女性新人刑事・森口泉の活躍と成長譚がさらにシリーズ化(前作は一作完結の積りだったbyネット記事)となるのか、今後を見守りたいです。

  • 『朽ちないサクラ』から約5年

    森口泉が刑事として帰ってきた。

    志望配属先は、県警捜査支援分析センター 機動分析係

    筆記試験は、手応え充分も実技試験は散々 面接担当の係長(黒瀬)からもコテンパンにやられもはや不採用と諦めるも・・・

    何故かその係長(黒瀬)に引っ張られメンバー入りしてしまう。

    メンバーからは、スペカン(スペシャル捜査官 強い引きで特別扱いされた意)と呼ばれる泉だか、自分に与えられた仕事をしようと心に決める。

    そんな中 署内の会計課の金庫から現金紛失事件が起こる。

    その金額 9530万円!

    泉は、機動分析係のメンバー達と捜査を始める!

    ここから先は、私のつまらない私情ですので、気分を害される方もいらっしゃると思います。(読まれない事をおすすめします)

    柚月裕子先生のファンの方申し訳ありません。

    泉の活躍や如何に!
    物語の冒頭、掴みは充分という感じだったのですが・・・

    大好きな柚月裕子先生なので、気が合っちゃったんでしょうか?

    スジ読めちゃったって感じが否めません。
    言い方変えるとまんまじゃんって感じがしました。

    柚月裕子先生が本作で伝えたい、正義とメッセージが・・・残念です。

    又、サクラ(公安警察)をタイトルにしてるのに、公安を悪者にしすぎている感じもしました。

    確かに謎の多い不気味な組織ではありますが・・・
    刑事警察が絶対正義の味方かって言われると・・・
    45人の登場人物(人の名前覚えるのが苦手で、どの物語を読む時も、登場人物の名前と簡単な略歴をメモする癖があります)がいましたが、意外性を期待しただけで終わってしまいました。

    だからと言って、物語の全てを否定する訳ではありません。柚月裕子先生の正義感 伝えたいメッセージ とても大好きです。
    人間に善性を求める姿に共感しています。

    森口泉の今後の活躍も楽しみです。

  • 本作との出会いはブクログ!
    フォロワーさんのレビューを読んで惹かれました。
    惹かれたポイント
    ・東北地方の架空の都市で会計課の金庫から約1億円が無くなった!

    私自身、宮城県に住んでいるのですが、これを見た時に1年半前に宮城県で起きた未解決の事件を思い出しました!
    実際の事件
    ・宮城県の大崎市役所の納税課の金庫から102万円が消失!?金曜日に金庫に入れて月曜日に金庫を確認した時に無くなっていた???1年半以上経過した今でも事件の真相は藪の中!!!

    因みに、作品の方が先で事件発生が後のようです・・・


    前作からの主人公の泉は念願叶って警察官になっていたどころか、特殊能力に目覚め機動分析係に配属となった!
    しかし、配属当日 会計課の金庫内から1億円が消失?
    機動分析係はメンバー総出で捜査を開始するが内部の犯行である事が濃厚だった・・・

    前作に続き米崎県警ヤバいです・・・


    米崎県の位置について(前作のレビューの続き)
    ・45p東京から新幹線で2時間 都市の東に港あり→太平洋側
    ・149p登場人物が宮城に出張している
    ・218p仙台市の光のページェントのようなイベントあり
    ・447p西に朝霞連峰と一級河川の米内川あり(架空の地名)

    上記のことから宮城県=米崎県かなぁと言う気がしますが、前作朽ちないサクラ128pでは米崎市の東に小崎市があり小崎市は県境の豪雪地帯と記述がある。この記述のせいで米崎県は日本海側の県になってしまう。ちょっと矛盾が生じています。
    柚月裕子さんの他の作品にも米崎県が出てくるようなので調査の幅を広げていきたいと思います。

  • 「朽ちないサクラ」の続編。
    「サクラ」は公安の隠語です。最近は「ゼロ」とも言いますが…
    前回、親友を公安に殺された主人公の森口泉は警察の一般職員を辞め、捜査官として事件に関わっていきます。
    今回も公安が裏に潜む大きな事件。
    新人のスペカン(スペシャル捜査官)である泉が1人で動きすぎではとは思いましたが、強い正義感で、大きな事件に臆せず立ち向かう泉はかっこいい。
    元々アパレルにいたとは思えない勇気と行動力。

    機動支援分析センターの機動分析係、という職種があることは初めて知りましたが、捜査のプロ集団という感じでとてもかっこよかったです。
    上司である黒瀬や年下の里見に馬鹿にされても、めげない泉もいい。
    最後は係で一つになって事件を解決に導きます。
    信頼し合う仲間の姿に敬服。

  • タイトルに惹かれて読み始めた
    男社会の中で上司の黒瀬や癖の強いメンバーに囲まれ、次第に仕事に没頭して行く泉

    警察内部の盗難事件に端を発して以外な方向に向かっていくメンバー達

    最後は手に汗握る展開だが一件落着
    一気に読みました

  • 抜群の記憶力を持つ森口泉。
    現場情報を解析し、プロファイリングする機動分析係に配属される事になった泉。

    警察署内の会計課金庫から1億円の盗難事件が発生。内部犯行か…
    防犯カメラには自主退職した前任の会計課長。
    母親の介護施設の為の盗難か…

    独自の捜査を続けていた黒瀬。
    オレオレ詐欺の受け子リストに事件の真相が…
    謹慎処分となった黒瀬に代わり、秘密裏に捜査を進める泉…

    巨大な黒幕が…

    事件は解決したような、未解決のような…
    何かもやもや感が残る…
    何か現実離れしているんだろうか??
    何か入り込めない…
    『サクラ』は、公安の隠語といいながら、ほとんど公安の登場はなし…

    まだ続くんだろうか…

  • シリーズ二作目。
    刑事になり希望していた部署に配属された矢先に署内で窃盗が起こる。
    誰が窃盗犯なのかと思っていたら、事件はさらに深い闇があり読み応えがあった。
    あったんだけど、ちょっと泉の行動には疑問を感じる。
    公安のやり方も恐ろしいけど、なんとなく泉の行動のせいで事件が微妙な結果になった気がする。
    いや解決はしてるんだけど、やっぱり泉ひとりが本部長クラスに直談判するのは無理があるのでは?

  • 2024/4/26読了。

    「朽ちない桜」に続く二作目。

    スリルもあり、機動分析係のチームワークもだんだんと良くなっていくあたりも面白く、前作より楽しめた。

    ただ主人公、森口泉の上司、黒崎が謹慎中で監視がついているはずにもかかわらず、自由に居酒屋?に出かけることができたり、犯人グループにたどり着くまでの過程が性急で偶然に頼り過ぎていたりするあたりは、少し詰めが甘いような印象。
    え?どうしてそんなに簡単に?と感じてしまうぐらい、ご都合主義な気がする。

    それにしても前作を読んだ時も思ったけれど、この「桜」、「朽ちない」どころか、とっくに朽ち果ててますよね。
    現実が本当にこんな感じなら悲しい。

  • 一気に読み切りました。

    この春に、朽ちない桜が映画化されるということで再読しました。読み返しであるにも関わらず、初めて読んだ時以上に引きずり込まれました。柚木さんの作品はどれを読んでも、読み始めから物語の世界に一気に引きずり込む引力?吸引力?吸着力?…が凄まじく強力です。そして展開の巧みさ!先が読めそうで、でも読むと自分の想像力の陳腐さに愕然とするという…そうきましたか、と思わされるのが常です。

    朽ちない桜が映画化されるということで再読した時には、この作品をどんな脚本にするのだろう?と考えました。月花の桜もそう。これ、2時間に収めるにはかなり削ぎ落とさないと…なんて思いながら読みました(邪道かもしれませんが)。ぜひこの作品も、「桜シリーズ」として映像化されるといいなと思います。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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