辛夷の花 (徳間文庫 は 40-3 徳間時代小説文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198944421

作品紹介・あらすじ

九州豊前の小藩、小竹藩の勘定奉行・澤井家の志桜里は近習の船曳栄之進に嫁いで三年、子供が出来ず、実家に戻されている。近頃、藩士の不審死が続いていた。現藩主の小竹頼近は養子として迎えられていたが、藩主と家老三家の間に藩政の主導権争いの暗闘が火を噴きつつあった。藩主が襲われた時、命を救った木暮半五郎が志桜里の隣家に越してきた。剣を紐で縛り”抜かずの半五郎”と呼ばれてきた男が剣を抜く時! 小藩の藩政を巡る攻防と志桜里の思い。

感想・レビュー・書評

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  • 豊前 小竹藩、勘定奉行・澤井庄兵衛の長女・志桜里は、近習・船曳栄之進に嫁したが、三年経っても子ができないとの理由で離縁され、実家に戻っていた。
    そんな折、隣屋敷に、小暮半五郎という藩士が、越してきた。
    彼は「抜かずの半五郎」と仇名されていた。
    太刀の鍔と栗形を浅黄色の紐で固く結んでいるからだ。

    ある朝、志桜里は、庭に出て辛夷の蕾を見ていると、半五郎が声をかけてきた。
    第一印象は、最悪だったが、次第に、半五郎の事が気になり始めた。

    藩主以上に力を持つ、重臣三家の使徒不明金を明らかにするため、庄兵衛は、勘定奉行に据えられた。

    庄兵衛一家の危機に、大切な人を守るため、半五郎は、抜かずの太刀を抜く!

    面白かった。
    葉室作品に、ハズレなし。

  • 自作品に和歌を効果的に取り入れる著者は、この小説でもその手法を用い主人公たちの心情を表出する。
    子供が出来ず離縁され実家に戻った志桜里が主人公。
    隣家に越してきた半五郎と、辛夷の花を介し、互いの心が通うようになる。
      時しあればこぶしの花もひらきけり
       君がにぎれる手のかかれかし
    志桜里に婚家への出戻りの話が起き、半五郎との間で思いが揺れ動く。現代では陳腐ともいえる彼女の躊躇は、その家を守るという嫁の役割を第一とする、今とは違う結婚観ゆえだろう。
    自分の気持ちを二の次で、嫁としてなすべきことを重視する彼女に、婚家の姑鈴代が教え諭す。
    「わたしは生きていくうえでの苦難は、ともに生きていくひとを知るためのものではないかと思うのですよ」
    「何を守るかは女子自身がきめることなのです」
    心を決めた志桜里が、自分の信じた道を守るため戦うクライマックスは、カタルシスが一挙に解放される。
    藩内では、藩主と家老三家との抗争が激化し、藩主側の志桜里の父親を抹殺せんと、三家が襲いかかる。
    「ひとへの思い深き者は勝つ」との言葉を胸に、志桜里とその家族を助けんとする家の子郎党と半五郎が、獅子奮迅の活躍をする。
    著者の小説は、読者のこうなってほしいという思いがそのままに叶う、珠玉のエンターテイメントといっていい。

  • 面白かった
    ハッピーエンドで終わる勧善懲悪の鉄板ストーリ

    ストーリとしては、
    九州豊前の小竹藩の勘定奉行澤井家の長女志桜里と隣家に引っ越してきた「抜かずの半五郎」との物語。
    志桜里は嫁ぐも子供ができず、実家に戻されたある日、隣家に半五郎が引っ越してきます。二人の心は惹かれあいながらも微妙な距離感。そんな中、藩主頼近と家老三家の間で主導権争いが激化していきます。
    三家に対抗する頼近と澤井庄兵衛、半五郎は表から、裏から澤井家を助けていくことになります。

    そして、いよいよ上意討ちとして、澤井家に三家が押し入ってきます。
    澤井家はどうなるのか?
    抜かずの半五郎は太刀を抜きます。
    それぞれが信じるもののため、守るために闘います。
    そして、そこに至るまでの、当時の女子としての覚悟。
    半五郎と志桜里の関係はどうなる?

    澤井家での戦闘シーンは熱くなります。
    清廉な男、凛とした女といういつものパターンですが、武家での女の覚悟が伝わってきます。
    とても格好いい!

    ということでとてもお勧め!

  • 葉室麟の女性を主人公に描いた傑作の一つだと思う。面白い。
    離縁された志桜里が迷い惑いながらも自分の信じる道を歩んでいく姿が本流にあるのだが、物語の展開は昭和の時代劇ドラマのよう。悪家老たちに追い詰められる殿様、殿様の命を受け悪家老たちの過去の不正を探る勘定奉行の志桜里の父 澤井庄兵衛、澤井家の隣に越してきて志桜里と澤井家を助ける「抜かずの半五郎」と呼ばれる剣の達人、などなど善も悪も多彩な人物が登場して息をつかせぬ展開が続く。
    志桜里と半五郎の煮え切らない関係もヤキモキさせる。
    解説に、「清廉な男と凛とした女、葉室麟が描き続けた理想の人々がここにいる」とあったが、まさにそんな作品だと思う。

  • 志桜里と半五郎の距離が、近付くようでなかなか縮まらないのがもどかしく、まさに“辛夷の花”のような似た者同士の二人ですね。
    理不尽で横暴な家老三家に立ち向かう、澤井家の人々とそれを支援する、半五郎や幸四郎の姿がカッコいいです。

  • こんなひどい家臣がいるのかと思いましたが、最後は人の絆、意地をみせ、この世の中も、捨てたものじゃないなという本でした。

  • ザ・ハッピーエンド!ジャジャーン!

  • 7月-18。3.5点。
    武士の娘、嫁ぎ先から離縁され、出戻り。
    隣に独身の武士が引っ越してくる。何か密命を帯びた風の隣人。
    面白い。いつもの葉室節で最後はホロリとさせる。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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