エル・シオン (徳間文庫 こ 41-2)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198939809

作品紹介・あらすじ

バルキスは、悪政をしく帝国ヴォワザンにたてつく盗賊神聖鳥として、その名も高き英雄だった。そのバルキスが不思議な運命にみちびかれてであったのが、封印されし神霊のフップ。その強大な力は世界を破滅させるとおそれられていたが、その正体は子どもだったのだ。この力に目をつけた、世界制服をたくらむ帝国ヴォワザンの残忍王ドオブレは、バルキスたちに襲いかかる。フップを、そして故郷オルムランデを守るため、バルキスたちは立ち上がった!

感想・レビュー・書評

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  • こってり和歌山弁のペルソナ僧がでてきて嬉しい。この前読んだ、ファンム・アレースと同じ世界で繰り広げられる別の話。これで、香月本は全て読んだが、もう新しい作品が読めないというのを改めて悲しく思う。またアパートあたりから再読しようと思う。

  • 『入手困難の名作、ついに登場!』の帯に煽られ
    買ったら児童書でビックリ(;^◇^;)ゝ
    でもこれは小中学生が読むのには凄くいい本だと思う。
    夢と希望と…
    仲間と一緒に困難に立ち向かうってのが定番というか超王道。
    義賊のバルキス(18歳)が
    偶然手に入れた"封じられた魔王"
    しかしその魔王の正体とは
    5~6歳の少年にしか見えない神霊のフップ。
    魔王が復活したのを知った残虐王・ドオブレが
    2人を狙う!!

    自分の夢や未来なと考えた事もなかったバルキスは
    様々な人達と出会いやがて大きな夢を持つ。
    バルキスとフップの成長の物語。

  • 児童向け文庫で出ていた3巻を一冊にまとめて復刊したもの。
    青年×少年の組み合わせが好きで、表紙に惹かれて読んだ(香月日輪さんって、全部の作品を読んだわけではないが、子供のキャラや年上×子供の組み合わせが好きなのかなと思う)。
    で、その観点から見ると、青年はまだ少年と呼べるような年齢で、子供の方は人外長命種で見た目通りの無邪気さと達観した聡明さを持っている。思ってたんと違ったけどまあこれはこれで…。
    あと青年の疑似妊娠展開みたいなのがある。一瞬だけ女体化もする。疑似母子っていうか、家族や故郷への愛情をバルキスがフップへ教えたんだろうと思う。

    子供向けという事でかんたんな文章、強そうで魅力的なキャラがどんどん出てくる派手な展開。ページ数の制限のためか、主人公二人を含め一人一人を深堀りしていないのがもったいない。

    フップはジーニー(アラジンの)でありドラえもん。ラストのあらすじも概ね『さようならドラえもん』。
    しかし、ドラえもんが助けてくれなくとも人間の力だけで夢を実現させていく…というのは良いんだけど、危ない力だから眠っているうちに封印しちゃおう、というのはかなりフップがかわいそう。
    人間にとって必要とか、危険とか、正体不明とか、そういうの無視して二人仲良く平和に家族として暮らして欲しかった。

    あとバルキスはイケメンだし、身軽で超強くて鼠小僧みたいな義賊だし、やはりドラえもんのストーリーの感動や説得力はだめだめなのび太君だからこそだな…ドラえもんの感想になっちゃった…。

    ドランフルとトネールには生き残って欲しかった。さまざまな種族が共存してゆく世界に、かつて圧政を敷いた亡国の人間が生きていてもよかったじゃん。

    中学生の頃、図書室にあった妖怪アパートと大江戸妖怪かわら版を、読書好きな友達から勧められて一緒に楽しく読んだのを覚えていて、その香月日輪さんが2014年に亡くなっていたのを知った。哀悼。

  • キャラ設定がよく分からん。イケメン盗賊かと思ったらコソドロの様な口調だし。大人しそうな可愛い魔王君はウーーッ!ヤァ!ってハイテンションだし。世界観も微妙。のめり込む程ではなかった。表紙にやられたかな。

  • 【感想】中二っぽくもあり、紋切り型の設定とキャラクタと、ひねりなくストレートであっさりな展開。唐突なところも多いけどむしろ読みやすさにつながってるかも。けっこう厚いけど三時間くらいで読めるでしょう。関係ないけどパターンはマンガの「マギ」に近いかも。

    【内容】誰も封印を解くことができなかった魔王である少年の姿をした神霊フップの封印を盗賊バルキスが解いてしまったらしい。四次元バッグからそのものの名前を唱えながら取り出すアイテムであらゆる願いを叶えるどこかの青いタヌキのようだが無邪気で善悪の境界も持ち合わせていないフップを教育せねばならないと誓うバルキスなのだったが当然ながらそういう便利な存在は狙われるのだった。

    【一行目】ドン!! ――そのひと太刀でロエヴ王の首がはねとばされた。教会の床が王の血に染まる。

    ▼簡単なメモ

    【アーチェ】シクパナの子ども。路上生活を四年続けている。
    【アリエト】バルキスの母。腕のいい薬師。
    【ヴァール】ペルソナ僧。
    【ヴォワザン】ドオブレの支配する戦闘国家。オルムランデ占領後六十余年で帝国と呼ばれ東のメソド、西のエレアザールに次ぐ勢力となった。
    【エル・シオン】「幻の都」という意味らしい。ここではまず滅ぼされる前のオルムランデのことだと思われる。そして新しくできた国の。
    【オク】マグダレの狼メンバー。十四、五歳の猫目族の少女。
    【オストラム】ペルソナ僧。
    【薬師】薬を調合し魔術で効果を高める魔道士。
    【凶鳥/ケライノ】ルックスのおぞましい鳥。
    【狼王】「マグダレの狼」とも呼ばれるゲリラ。オルムランデを占領するヴォワザンの輸送品を狙う。
    【オフィエル】マグダレの狼メンバー。蛇面人身種(ウパナンダ)。
    【オラージュ】マグダレの狼のとこにいる牝馬。バルキスと対決する。
    【オルムランデ】ヴォワザンに滅ぼされ占領された。
    【ガルニエ】獣人。ドオブレの配下。
    【クプクプ】アーチェの相棒の犬。
    【グライエヴォ】ヴォワザンの帝都。
    【サーガラ】獣人。ドオブレの配下。蛇面人身種(ウパナンダ)。
    【サヴェリ】町の修理屋。裏の顔はバルキスが盗んできたものをさばく「裏の仕事人(ネゴシオン)」。
    【サラサ】バルキスの愛馬。
    【サンニ】ドオブレの息子。脆弱にして無能。
    【ジーヴェリア国】ヴォワザンが挙兵し狙っていると思われる。
    【ジード】マグダレの狼のメンバーと思われる。
    【ジェガード】オルムランデのヴォワザン総督。
    【シクパナ】エキゾチックな港町。重要な地点であり帝国圧政下でも活気に満ちている。さまざまな種族が暮らしている。
    【シグマ】魔道士。もしかしたらバルキスの父? 少なくともなんらかの関係者ではあるらしい。
    【シバの小枝】噛むと刺激があるらしい。たばこみたいな感じか。
    【ジャーマイ】サンニ皇帝つきの第一秘書。
    【精霊】四大精霊は、火、水、土、風。
    【セディール】オルムランデ、メルヴェイユ寺院の大主教。ドオブレに殺された。どうやらある人物の祖父だったようだ。
    【宝】《お宝なんてものは、この手にしっかりとにぎれるもののことさ。》p.32
    【鳥人族/ちょうじんぞく】風に乗って空を飛ぶことができる妖精族。
    【ドオブレ】ヴォワザンの王。世界征服を狙う。「奇襲の天才」と呼ばれた兵法者でもある。
    【ドランフル】ドオブレの孫、サンニの息子。父親よりはマシな武将。勇猛だが政治的な技量は持ち合わせていない。
    【ナリー】フップの五百年前のマスター。三歳の女の子。たぶんいまはいない。
    【妖精族/ニンフェウム】自然の「気」にそって暮らしている「森のひと」。見た目は人族と変わらないが四大精霊と引き合う。
    【ハギス】マグダレの狼メンバー。元船乗りで力持ち。歌声もしぶい。
    【パツク族】植物を育てる力に秀で森とともに暮らす妖精族。
    【ハトゥール】魔剣士。もしかしたらバルキスの父。
    【バビロン】偉大なる白魔道士。六百年生きている。その気になれば神にもなれるらしいが人間でいる。
    【パルーシア】失われた超古代国家。住民は他の星に移住した。
    【バルキス】神聖鳥(シモルグ・アンカ)と呼ばれる盗賊。美声で歌が上手い。青灰色の瞳は父ゆずりらしい。
    【人面鳥/ハルビュア】メルヴェイユ寺院にたくさんいる。魔物としての脅威は小さい。
    【ファビュラ】ロンバルドの女性だけの部族カリーシュ族の族長。
    【ファレグ】マグダレの狼の軍師。
    【フォン】正体不明、放浪魔道士(トルヴァドーレ)の男。名前は「風」という意味で偽名っぽい。アリエトと情を交わした。バルキスの父。
    【フップ】神霊(ジンニー)。子どもの姿をしている。メルヴェイユ寺院に五百年封じられていた。魔王との関係は不明だがたぶん本人。表紙カバー絵の印象とは異なりなかなか利かん坊な感じ。性格も小さな子ども。悪の手に落ちたらえらいことになりそうではある。肩から下げたがま口バッグ(四次元バッグ)からさまざまなものを取り出し願いをかなえる。いちいちアイテム名を叫ぶしどこかの青いタヌキみたいだ。
    【獣人/ベート】妖精族のひとつ。多くは魔界や仙界からの流民。長命。
    【ベトール】マグダレの狼のメンバーと思われる。半獣人。
    【ベルゼブル】黄金(ルビオ)のベルゼブル。魔界の女。ドオブレの師匠。
    【ペルソナ僧】ウロボロス僧会の最高位の僧。
    【魔王】封印されている。
    【ミスパル】シクパナの高官。
    【めぐむ】《どんなに過酷であろうと、自力でのりこえることこそが、ひとの生きる証であり、力となるのだ。けっして他人が「高み」から手をさしのべてはいけないのだ。》p.149
    【メッシナ人】大地の気を身体に取り入れ身体能力を強化できる妖精族。
    【メルヴェイユ寺院】魔法が封印されているという噂。今では誰も興味を抱いていない。
    【半獣人/モルフォーラ】普段は人間の姿をしていて状況によって変身できる。
    【霊剣】バルキスが母のアリエトからもらった。アリエトはその父からもらったようだ。

  • 表紙買いです(^◇^;)
    だって、美形の盗賊と可愛すぎる魔王だなんて
    見ただけでテンションあがるでしょ!
    王道のファンタジーではあるけど、これはどうなんだろう・・・

    可愛すぎる魔王はドラえもんのポケットをたすき掛けで装備
    ( ̄△ ̄;)エッ・・?
    あちらこちらで、どこかで見たような聞いたような設定が
    チラチラと見える。
    どうしたんだ?としか思えない内容。
    困った。マジで困った。
    世界観と話の流れはいいんですよ。
    問題は文章と進め方です。全くもってらしくない。
    ステキな世界観とお話を猛ダッシュで駆け抜けたから
    期待度満点で読んだこちらは置き去り感半端ない。
    別の本で口直しをしたいと思います。

  • 久々の香月さん。
    やっぱり大好き。
    バルキスとフップの絆に何度胸を熱くしたことか。
    サヴェリとの関係も素敵。
    そして、アーチェ。
    たった12歳で犬のクプクプを相棒にひたむきに生きる少年。
    復讐さえすれば幸せになれるものではないと分かっていたけれど、でも、アーチェが幸せに、無邪気に笑う日を願っていたのに。
    あのタイトルに恐れていた。そうでなければいいと、考えすぎであればいいと。
    最終決戦の展開にはドキドキが止まらない。
    負けるわけがないと思っていても、どう切り抜けるのかと。
    ラスト、バルキスの決意。ああ。
    それでも、あれは希望。そこへ向かうのは苦難の道であっても、きっとみんなの顔は明るい。

  • 香月日輪さん特有の超スピード展開。でもこの人の超スピード展開は急激すぎてついていけないというようなものではなく、面白い。バルキスがフップと共に大きく成長していく姿は勇気に満ち溢れていた。復刻させたとの旨が最後に書かれており、そうしてもらえてよかったと思える作品だった。ただ、シグマの正体とバルキスの父親だけははっきり分からず。そこの伏線回収だけはしてもらいたかったかなぁ。

  • 帝国ヴォワザンに滅ぼされたオルムランデ。その地で盗賊神聖鳥として活躍するバルキスが、偶然出逢った神霊フップ。幼子に見えるフップは世界を滅ぼす力を持つ魔王だったのだ。

    元々3巻に分かれて刊行されていたものが1冊にまとまったもので、一気に物語を楽しめました。
    異世界ファンタジーの醍醐味はその世界観にあります。主人公の活躍部分のみだと、主人公の背景が書割りのような奥行きのないものになってしまいます。主人公のいるその向こう側、時間も空間も越えた向こう側を如何に見せることができるのか。それが異世界ものの面白味でしょう。
    この『エル・シオン』でも様々な造語が飛び交い様々な設定が出てきて、大きな世界があることを感じさせられます。しかしあくまで物語は主人公バルキスに焦点は合わされ、世界の全体像は見え隠れするだけなのです。だから読者はバルキスの冒険に追随して、一気に物語を楽しむことができます。

    3部構成になっており、バルキスの成長が描かれています。はじめは盗賊としてひとりで動いていたのが、仲間というものを意識するようになり、最終的には大きな軍隊を率いるまでになります。そしてその上で最後に決意することも。
    フップという何でもできる力を得てもその力のみで解決するのではなく、バルキスは自らの頭で考え自らの行動で示していきます。
    フップの力は物語を潤滑に動かすために使われているような節もあります。それは物語の展開がご都合主義とならないための装置なのかもしれないと思ったりもします。(まあ物語終盤に神の如き力をもった者が仲間に加わったりもするのですが、それはバルキスが動いたからこそ引き寄せた幸運という見方もできますし。)短いページ数の中で最大限の動きを伝えるための物語上のテクニックなのかなという気もします。もちろんフップの魅力はそんな役割を越えたものがあるのですが。

    ひとりの少年が自らの夢を見出しそれに向かって猪突猛進する姿は爽快感があります。異世界ファンタジーの醍醐味がギュッと詰まった作品でした。

  • 香月さんの作品+完全ファンタジーを図書館で見かけたので思わず手に取る。

    めっちゃ王道だ!と思ったら、
    元は児童書だったのかー。
    世界征服を企む残虐な帝国の王と立ち向かう英雄の神鳥と、魔王(精霊?)フップの冒険。
    魔人やら仙人やら途中から出てきて、伏線というか、番外編がまだまだ書けそうな壮大な背景。

    ストーリー自体は王道なので、アーチェの復讐への覚悟のシーンや、バルキスやジークの活躍にもわくわくしながら、安心しながら読めた。

    個人的には筆者の後書きが一番グッときた。
    ファンタジーを書くにあたってのアレコレ注意した事や、フップになるべく頼らずに、人間の手で夢を成し遂げることの意味と大事さ。

    周りの情報や他人に、自分の価値を求めるな、委ねるなと訴える香月さんの思いが真摯に伝わってくる。
    なんでこんなにわかりやすく、若者に寄り添ったメッセージ性のある物語が書けるんだろう?
    スゴい。

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著者プロフィール

和歌山県生まれ。本シリーズの第1作目で産経児童出版文化賞フジテレビ賞受賞。「ファンム・アレース」シリーズ(講談社)「大江戸妖怪かわら版」シリーズ(理論社)など、YA(ヤングアダルト)小説の作家。

「2023年 『妖怪アパートの幽雅な日常(26)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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