ウクライナ「情報」戦争 ロシア発のシグナルはなぜ見落とされるのか

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198655211

作品紹介・あらすじ

長期化するウクライナ戦争は
アメリカによって「管理された戦争」だ。
侵略戦争を停めるには、侵略する側の狙いと論理を
知る必要がある。

西側諸国経由の情報だけで実態はわからない。
アジテーションではないロシア発のシグナルを
日本のメディアは完全に見落としている。
日本で最もロシアとプーチンを知る
最強外交インテリジェンスオフィサーが喝破する
これが攻撃から半年を経てのウクライナ戦争の深層だ。

現地政治系放送からロシア要人の肉声を著者自ら全翻訳。
◎安倍元首相殺害
◎西側追従の対ロシア制裁
◎北方領土交渉の暗礁…
今のロシアは日本をどのように見ているのか。
そして長期化する戦争をどこで終わらせるつもりなのか。
ロシア政治エリートの発言からわかった戦争の行方。

残虐、戦慄、惨たらしい情勢など
感情を刺激させられる報道ばかりに目を向けるのではない。
戦時中は敵対する国家同士が煽情的な情報を主体に流す。
つとめて冷静に事態を見るために、
第三次世界大戦を回避するためにも、全国民必読の書。

<目次>
第1章 クレムリンから見たウクライナ戦争の週末
「宣伝」と「煽動」に分かれたロシアメディア/アメリカにとって「ウクライナ侵攻」の優先順位は低い/殺害された安倍元首相が狙った強いロシアと組むこと…他

第2章 ウクライナ侵攻2022:時系列分析
「外交の主体性」を自ら放棄した日本への辛辣/戦禍拡大と第三次世界大戦の罠/ロシアとNATOが直接大家するXデー/ロウクライナ政府の軋みとロシアの戦略変更…他

第3章 再検証:2014年「クリミア併合」
ロシアとの戦争を挑発していた8年前のウクライナ/「ミンスク合意」はロシア側に有利に働いていた/ウクライナの歴史認識見直しとネオナチ傾斜の危険/プーチンはすでに「核兵器のカード」を切っていた…他

第4章 日露の変化を北方領土交渉から見る
対ロシア制裁に至るまでの日露関係の変遷/北方領土極秘文書をロシアが否定しなかった理由/ロシアが宮古島空港「対中軍事化」に注目する理由/岸田首相の対露方針に安倍路線からの転換を仕組んだ者/プーチンによる安倍元首相への異例な哀悼…他

感想・レビュー・書評

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  • 巷ではウクライナ寄りの情報が溢れており、正しいロシアの情報が知りたかったので良書であった。
    佐藤優さんの知識力には毎回感嘆し、こうしてよく本も買っている。端的に言うとファンである。
    しかし、佐藤氏の「この戦争はロシアが勝つだろう」という予言だけは外れて欲しいと願っている。
    私は世界情勢に精通している訳ではないので、ウクライナとロシアどちらが正しいかを判断するには情報に限界がある。
    本書を読むと、通り一遍の「ウクライナは正義、ロシアは悪」ではないのだろうとは思うが、「ロシアは正義、ウクライナは悪」が正しいとも思えない。
    報道の影響で、自分がウクライナに肩入れしている部分は認める。
    しかし、やはりこのような強硬な武力手段が許される世界であって欲しくないと思う。
    今のウクライナが、将来の日本に重なって見えて仕方ない。

    あと、「プーチン」が「ブーチン」となっている誤記が2箇所ほどあり、対象が対象で、誤記が誤記なだけにちょっと笑った。

  • ウクライナ侵攻が始まってから、たくさんの情報が入ってきましたが
    多くを消化できない自分としては佐藤優さんのこういう本を心待ちにしていました。

    第一章のみ書き下ろしで、他は『週刊アサヒ芸能』連載「ニッポン有事!」から抜粋、大幅な加筆と再構成したものです。

    時系列で分析しています。
    こういう本を待っていたのです。
    今年の8月までものなので
    その続きが知りたいです。

    〈一般論として、どんな戦争にも終わりは来る。
    長期化は避けられないが、ウクライナにおける戦争にもいずれは終結の日がやってくる。
    その際には必ず停戦がある。
    来るべき停戦において少しでも自国を有利にするために、
    両国は激しい戦闘を展開する〉

  • この本以外にもロシアウクライナ関連の本は読んでますが、今なぜこんなことになってるのか理解するにも一度読んでみてもいいと思います。
    この国ではウクライナを批判すると問答無用で叩かれるので、そういう西側のみの情報に踊らされてる人には一番良いでしょう。
    正しいのはウクライナなのかロシアなのか、という二元論ではなく、何が事実なのか見極める力が求められるのだと思います。

  • ゼレンスキー政権内でも内乱があるとは知りませんでした。内情は時事刻々と変化しているようです。

  • スゴイ本だ。佐藤氏の分析はいつもながら勉強になるが、同時進行のウクライナ戦争を確りと理解できる本。テレビや新聞や中途半端な情報番組でウクライナ戦争を理解しているつもりでロシアを一方的に非難する方々に是非読んでもらいたい。特に3章のクリミア併合は大変勉強になった。これを読めばロシアが言ってることが噓八百ばかりとは思わなくなるし、ウクライナ:善、ロシア:悪なんていう一方的な近視眼に陥ることもなくなる。

  • 強い興味を覚えて入手し、素早く読了に至った一冊だ。出逢って善かったと思う一冊となった。
    ロシア側で「特定軍事行動」というような呼び方をしているウクライナへの“侵攻”が惹起して以来、著者は色々と情報収集、研究を続けていて、随時色々な原稿を発表しているという。本書はそれらを集めて、推敲して加筆修正もしながら纏めた一冊であるという。
    或る程度の「長期化」が免れ悪いと見受けられる“侵攻”関連の情勢であるが、惹起して以来、既に半年を経た。他方、この事態は8年も前の状況を引き摺ってもいる。またこの半年の間に様々なことが方々で論じられている訳だが、日本国内では必ずしも取り上げられていないと見受けられる事柄も多い。そして世界の様々な国々が「外交」ということで、或いは事態に巻き込まれていて、日本も例に漏れない。故に考えるべきことが色々と在る筈だ。
    そういうような問題意識、加えて「ロシアと名が付けば何でもダメ」というような、些か「危険?」という空気感も在るかもしれないような中、「一区切りの纏め」を世に問いたいということが著者の思いであるようだ。本書を通読して、問題意識等に共感も覚えた。
    また、軍事紛争という状況下では「相手陣営がこんなに酷いことを!!」という「宣伝合戦」のようなことは間違いなく起こる。「本当は如何だったか?」というようなことは、後から調査して検証するのでもなければ判り悪い。それを踏まえて、本書ではその種の“虐殺”というような事案には敢えて踏み込んでいない。
    本書では、ロシアのテレビ放送に見受けられる「識者の対論」というような内容の中で見受けられた、「特定軍事行動」というような呼び方をしている事態を巡る論が多く紹介されている。何れも、変な「煽り」というような内容では断じて無い。米国等も関わっている中での、事態の「落としどころ」の展望や、「近年の米国?」というような観方、ロシアの主張の内容を補うような話題という中身であると思う。
    こうした内容の後、2月から8月までの半年に関して、月毎に主な出来事を挙げ、その中から幾つかを論じる章が在る。更に次章では2014年のクリミアの事態を振り返る内容が入る。最終章は日ロ外交を論じている。
    何らかの行動や声明やその他が在って、それを受け止めるということが在り、受け止めた上での何らかの行動や声明やその他が生じる。軍事行動のようなモノが在ろうと無かろうと、国と国との関係にはそういう要素が在る。著者はそういうのを「シグナル」と称している。
    ロシアは日本に対して「非友好国」と称し、殊更に強く当たっているようにも見受けられる。これに関しては、“制裁”の中で「大統領を含めた要人の個人資産凍結」と言い出したことに起因するのではないかという話題が本書に在る。「実質的影響が然程無い」ということを挙げたのかもしれないが、「日本国内等に在りもしない個人資産を云々するのは言いがかりも甚だしい」と激怒して嫌悪感を露にし始めたと見受けられるのだという。
    “虐殺”と宣伝されるような忌むべき事態が起こっている軍事紛争である。一日も早く落ち着いて欲しい。徒に損なわれて構わない生命は無い筈だ。遠い国に在って、事態を冷静に見詰め続けなければなるまい。長期化するに連れて事態の「落としどころ」の展望は開け悪いようになっているかもしれない。だからこそ、広く様々な情報に触れて考えることを続けなければならない訳だ。
    本書は間違いなく参考になると思った。御薦めしたい。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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