愚かな薔薇 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198653477

作品紹介・あらすじ

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萩尾望都さん、絶賛!
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これは21世紀の「地球幼年期の終わり」だ。
山間の夏祭りの中で少年や少女が変化していく。
進化なのか? 人類はどこへ向かうのか?
巡る星々。過去と未来。
愛、愛はどこへ行くのか?

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萩尾望都さん描き下ろし、
期間限定カバーで展開!
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※萩尾望都版カバーは期間限定です
※2022年3月までを予定。在庫がなくなり次第、通常カバーで販売します

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著者より
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吸血鬼ってなんなんだろう、
と子供の頃からずっと考えていた。
人類の進化の記憶の発露なんじゃないか、
とどこかで感じていた。
一方で、うんと狭いところで
うんと大きい話を書いてみたいと思っていた。
昨今言われる「グローカル」というのが
念頭にあったのかもしれない。
またしても、
ものすごく時間が掛かってしまったが、
この二つの課題をやり遂げられたのかどうかは、
今はまだ自分でもよく分からない。             恩田陸

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【あらすじ】

14歳の少女高田奈智は、
4年ぶりに磐座の地を訪れた。

これから2カ月の間、
親戚が経営する旅館で世話になりながら、
昼間は磐座城周辺で行われる、
あるキャンプに参加することになっている。

事情をよく知らぬまま
この地を訪れた奈智であったが、
到着の翌朝、体の変調を感じ、
激しく多量に吐血してしまう。
やがて奈智は、親戚の美影深志や
同じキャンプに参加する天知雅樹らから、
磐座でのキャンプの目的を聞くことになる。

それは、星々の世界――
外海に旅立つ「虚ろ舟乗り」を育てる
ことであった。
虚ろ舟の聖地である磐座に集められた
少年少女たちは、徐々に体が変質し、
やがて、歳をとらない体となる。
食べ物もほとんどいらなくなり、
心臓に銀の杭を打たない限り、
死ぬことはない。

そのかわり変質体となると、
一定期間、他人の血を飲まないと、
死んでしまうという。

変質の過程で初めて他人の血を飲むことを、
「血切り」と呼ぶ。

深志は奈智の血切りの相手は
自分だと昔から決めていたと言うが、
奈智は、他人の血を飲むなどという
化け物じみた行為は嫌だと、思い悩む。

そんなことなら、虚ろ舟乗りなんかに、
なりたくない……と。

感想・レビュー・書評

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  • 高田奈智14歳は伯父夫婦の家で暮らしていますが、亡くなった母の故郷である磐座という特別な地域であるキャンプに参加するために、従兄の深志のいる美影旅館にやってきます。

    奈智の母の奈津は「虚ろ舟乗り」でしたが、そこで父の古城忠之に殺されて、父の忠之は行方不明になっているという噂になっていますが真偽はわかっていません。

    キャンプに参加するのは少年少女で「虚ろ舟乗り」になるという目標を参加者たちは持っています。
    キャンプに参加したり「虚ろ舟乗り」になればその家は国から支度金がもらえます。

    奈智の伯父夫婦の高田夫妻が「虚ろ舟乗り」やキャンプのことをよく思っていなかったせいで、奈智もキャンプには積極的ではありません。

    従兄の深志は、奈智に好意を抱いていて奈智の「血切り」は自分がするからと奈智にこっそりといいます。

    「虚ろ舟乗り」のトワは、「賢いバラは枯れるけど、愚かなバラは決して枯れない」「この世界が滅びかけているから地球を捨てて新たな場所を見つけなければならない」と奈智に教えてくれます。

    キャンプ生たちが皆、変質していく中、奈智は自分が「バケモノ」になることの葛藤に苦しみます。



    以下ネタバレしています。これから読まれる方はお気をつけください。



    このお話は吸血鬼になって地球ではない星を見つけてみんなで移住しようという青春SFです。
    奈智の死んだ両親の謎も最後には解き明かされます。

    体の衰えた大臣が磐座にやってきて、お金を積んで、「血切り」によって体を治そうとして失敗してしまうところなどは面白かったです。

    600ページ近くある大作ですが、とても読みやすいので一気に読めます。

  • 読み始めから、すーっと不思議な世界に連れて行かれる。

    磐座(いわくら)という小さな町で行われる奇妙な行事。
    子どもたちだけが参加する二か月間にわたるキャンプ。
    隧道を進むと、しめ縄が渡された山の斜面に舟の彫刻があり…。
    隧道(ずいどう)とは トンネルを指す古い言葉なのだそうですが、
    [棺を埋めるために、地中を掘り下げて墓穴へ通じる道]
    という意味もあって、なんだか暗示的でもあります。

    磐座には空から船が降りてくる。(え~っ?)
    キャンプはその舟乗りの適性を見極めるためのもので、
    適性のある者は「変質」していき、その過程で人の血が必要になる。
    (え? ええ~っ!! なんか、おどろおどろしい)
    584ページもあるけど、読み切れるのかな、と不安になる。
    ところが、恩田陸さんの本は、いつも読み始めたら辞められない。
    (どういうこと? どうなるの?)の連続で、中休みがないのです。

    題名から、理瀬シリーズかなと勝手に思い込んでいました。
    でもこれは、「常野物語」シリーズに近い気がします。
    ある土地とその土地にまつわる不思議なお話。
    ただ、今回はスケールが大きい。
    地球と人類の、宇宙規模での未来が語られます。
    読み終えて、ふっと宇宙から見た地球を想像すると…。
    うふっ。こういうの、嫌いじゃないな。

  • 1.この本を選んだ理由 
    恩田陸さんが好きというのと、ブクログ評価で選びました。
    長編作品 584ページで、分厚い本です!!
    改行は多いですが、文字が小さめ。

    ファンタジーとか、SFは、ほとんど読みません。
    どちらかというと嫌いという認識を持っています。
    ですが、スターウォーズとか、バックトゥザフューチャーとか大好きだったから、きっと、いい作品に巡り合うとハマるのではないかという想いもあり、SF、ファンタジーだとわかっていながら、この作品を手にしました。

     
    2.あらすじ 
    虚ろ舟乗りになるためのキャンプが毎年行われており、14歳の女の子奈智がそのキャンプに参加することになった。
    虚ろ舟乗りになるためには、その適正が厳しく見定められ、限られた子供だけが盤座のキャンプに参加し、更に特殊な訓練を受けてごく少数のみが虚ろ舟に乗ることができる。
    奈智はもともと磐座で育った子どもだった。虚ろ舟乗りについては、特に説明なくキャンプに参加させられ、虚ろ舟乗りの謎や、自分を取り巻く様々な謎と向き合っていく。


    3.感想
    先が気になり、どんどんハマっていく感じでした。
    読み終えて、なかなか面白かったというのが感想です。

    終わりは中途半端な感じですが、モヤっとしたまま終わる感じで、作品的にはよかったと思います。

    最近、考えることを、ものすごい意識させられていたので、そういう面でも面白かったのかもしれないです。
    なにか、こう、自分の意識が、読書中の電車の屋根を通り越して、空から自分をみるような瞬間があって、読書から脱線することがしばしばありました ^_^

    これからは、もっとSFとか、ファンタジーを読もうかなという気持ちになりました。


    4.心に残ったこと
    意識が人をつくる。
    クリティカルシンキングのもう一人の自分や、
    ジョジョのスタンドのような、
    そんなものを実在するように感じることは、
    とても楽しい。


    5.登場人物  
     
    高田奈智 14歳
    美影奈津 奈智母
    古城忠之 奈智父

    美影健吉
    美影深志 高3
    美影久緒 深志母

    (クラスメイト)
    天知雅樹
    三上結衣

    (その他)
    城田英子
    城田浩司

    (キャンプ)
    飯田 校長
    富沢
    真鍋 保健師兼務
    沼倉 住職

    (警察)
    玉置署長


    6.言葉
    ・隧道 ずいどう
    棺を埋めるために地上から斜めに掘った、墓穴に通じる道。はかみち。

    ・磐座 いわくら
    古神道における岩に対する信仰のこと。 あるいは、信仰の対象となる岩そのもののこと。

    ・心張り棒(しんばりぼう)
    戸や窓が開かないように押さえておく「つっかい棒」のことである。

    ・だらなばら
    だら、が方言で、バカとかアホという意味

    ・シニカル
    皮肉な態度をとるさま。冷笑的。

  • 宇宙規模のSF✖️耽美的な少女の成長小説という、独特な掛け合わせの1冊。
    「血切り」の儀式が完全に性行為のメタファーに思えてドギマギ。奈智と深志の初恋の関係性が、気恥ずかしくむずがゆく、自分の初恋を思い出した。

  •  吸血鬼SF? 「愚かな薔薇」とは、いつまでも美しいまま枯れることのない薔薇のことを指す。不老不死→吸血鬼=虚ろ船乗り(宇宙船)

     萩尾望都氏の期間限定の表紙カバーがついている、そこに冒頭に書いた「吸血鬼SF」とあるのだが、ちょっと違うだろう。人間の血を吸うことには違いはないが。「鬼」ではない。人に死に至らしめるわけではないし、吸血鬼に変えてしまうわけでもないからだ。さらに21世紀の「幼年期の終わり」とあるが、エヴァンゲリオンの人類補完計画が想起された。

     500頁を超える長編であるが、一気に読むことができた。状況説明はないが、架空の、ifの世界だと理解できれば、すんなりと読めるだろう。

  • 吸血鬼って何? 恩田陸の答え 新著「愚かな薔薇」:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/156022?rct=book

    恩田陸が14年の連載を経て紡ぐ、美しくもおぞましい吸血鬼SF『愚かな薔薇』発売! - 徳間書店
    https://www.tokuma.jp/news/n44927.html

    愚かな薔薇 - 徳間書店
    https://www.tokuma.jp/book/b597790.html

  • ある地方で行われるキャンプに参加した奈智
    そのキャンプに参加すると身体に変質が起こりある者に変わっていく
    不思議な体験をしつつ奈智に起こる様々な異変

    読了はしたが、長すぎる
    ラストもよくわからない

  • 両親の死後、伯父夫婦の元で暮らす14歳の奈智は、選抜されて、母方の故郷・磐座で行われるキャンプに参加することになる。それは、遠い将来滅びる地球からの脱出先を捜す舟の乗組員(虚ろ舟乗り)としての適性を見極めるための長期キャンプだった。子どもたちはそれぞれ覚醒を待つが、それは人外になることを意味していた。

    なんとも壮大なスケールの話だが、『月の裏側』の延長線上にあるような読後感。(『月の裏側』は遙か昔に読んだので怪しいけれど、なんとなく似たような印象を受けた。)

  • 山間の集落を舞台にした吸血鬼ものということで、「屍鬼」のような世界観を期待していたが…全然違った。「幼年期の終り」っぽい雰囲気もあると言えばあったけれど…SFとしても中途半端な印象は拭えず。ダークマターを絡ませたところまではよかったのに…ラストが唐突で、尻すぼみの感があって残念。

  • 恩田さんの描く壮大でファンタジックで不思議なSFワールド。
    帯とかPopとか出版元とかのサイトは見ずに読むとワクワク感は半端ないと思います。
    懐かしい感じがするのにちょっと怖い。このあたりは恩田さんの得意な分野かな。
    謎が解けてくると「ああっそうだったのか」としか言えない面白さです。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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