非弁護人 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198652760

作品紹介・あらすじ

白熱のリーガルサスペンス!

元特捜検事・宗光彬。
高度な法律関連事案の解決を請け負う彼は、裏社会の人々から「非弁護人」と呼ばれる。

ふとした経緯で、パキスタン人少年から「いなくなったクラスメイトを捜して欲しい」という依頼を受けた。

失踪した少女とその家族の行方を追ううちに、底辺の元ヤクザ達とその家族を食い物にする男の存在を知る。おびただしい数の失踪者達の末路はあまりに悲惨なものだった――。

非道極まる〈ヤクザ喰い〉を、法曹界から追放された元検事が、法の名の下に裁く!!

著者渾身、白熱のリーガルサスペンス!

感想・レビュー・書評

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  •  著者の作品は、「欺す衆生」を読了して以来二作目。

     頭脳犯罪小説か?主人公(宗光彬)は、検察出身である。ある裁判から、弁護士が警察による違法捜査だと指摘され無罪を許してしまった。上層部の陰謀から彼は、法廷に立つことが出来なくなった。弁護士会に登録拒否される可能性があったからだ。一方篠田弁護士は、元東京地検の検事だったが、宗光と一緒にクビになってしまい、彼はその後ヤメ検になって法律事務所を開業し成功した。

     宗光は、無資格であるが故に、真っ当な仕事は出来ない。当然生きていくためには、少々裏社会の仕事もこなさなくてはならない。今回の案件の裁判は、宗光が裁判の進行を担当し、篠田弁護士が法廷に立つことになった。

     ある仕事の合間に、パキスタン人の子供(マリク)と仲が良くなり、公園のブランコで考え事をしていたところ、マリクから失踪した女の子を探して欲しいと依頼されたのだ。マリクは、ポケットに手を入れ三千三百円を差し出した。それがマリクの、全財産であることを知っていたのか、仕事の着手金として受け取った。

     依頼者の案件を深く探るうちに、一人で捌ける仕事ではないことを知ることになり、日本の暴力世界を二分する協力者を請い「蜂野」という人物が宗光の片腕となって働く。

     その蜂野のキャラが、協力者二人の次代を背負う程の人物。逆の意味で人情味もあるし、良い味付けだと思いました。

      〈ヤクザ喰い〉とは如何なるものか?
    物語の闇の部分を描く着想に興味を持った。よく練られた作品で、読了後、本書の装丁がヒントかもしれないと思ったぐらいだ。

    帯裏には『貴様は死刑だ』と!

    破壊力抜群の面白さです。

     読書は楽しい!

  • ホラーでもないのにここまで悍ましく不気味な小説は読んだことがない。いくつもの偽名を使い誰の記憶にも残らない犯人がヤクザ喰いという誰も気に留めない犯罪で詐欺と殺人を続けていく。これに在留外国人などのマイノリティを絡めることによって唯の犯罪小説に留まらず社会派小説という側面もになっていると感じた。それにしてもヤクザ喰いなんて発想できるのが素晴らしい。それだけでなく非弁護人でしか考えつかない手法で犯人を追い詰めていく様も抜群だった。殺した者のデスマスクを顔認証に用いるシーンは本当に悍ましかった。


  • 非弁護人

    社会の圧倒的な弱者の苦しい生活に付け入った
    狡猾で残忍な犯人を追う物語。

    聞き慣れない『非弁護人』というタイトルは、
    弁護士と名乗れない立場の人。

    表紙の絵は冷たくて恐ろしさがあって
    印象的でだったので、どんな風に小説内で
    関係するのか楽しみに読み進めました。

    クセが強くハッキリしたキャラクター設定の
    登場人物達ばかりなので、姿はあっさり頭に入り
    イメージしながら縦横無尽に動く姿を話の進行と
    合わせて追いかけるのは読んでいて楽しいです。

    『ヤクザ喰い』と名付けられた残忍で狡猾な犯人を
    手駒がないまま追う場面では、まるでその場に
    いるかの様に"大丈夫か!"とハラハラしました。

    一旦、主人公が冷静な法の遵守者の皮をぬいで、
    ヤクザと見まごう行動をするシーンも又、
    "大丈夫?!"とハラハラする見どころです。

    散々苦戦させられた末に、狡猾な犯人を追い詰める
    ラストは爽快です。

    • 松子さん
      yoruさん、初めまして。
      非弁護人の感想を読んで思わずコメント
      してしまいました!
      感想からストーリーの面白さとキャラクターの
      格好良さが...
      yoruさん、初めまして。
      非弁護人の感想を読んで思わずコメント
      してしまいました!
      感想からストーリーの面白さとキャラクターの
      格好良さが伝わってきて、早く読みたいなと
      ワクワクしました。yoruさんの感想、すごく伝わってくるので大好きです。
      これからも楽しみにしてます♪
      2021/12/17
  • 428ページ。駆け抜けました。面白かった。

    冒頭、少し難しいかな…と思ったのだが。

    パキスタン人の子供マリク君から、行方不明になってしまった韓国人のお友達アン・ソユンを探してほしい、という依頼。
    依頼料3,300円の切なる依頼を受けることになったわけだが、実は巨大な悪を解決する扉を開けてしまったのであった。

    ここからはスピード感あり。次々に分かっていく想像を絶する悪事に目が離せませんでした。

    主人公の宗光彬は東京地検の検事だったが、策略にはまり実刑判決を受けてしまう。
    前科抹消となる10年経過しないと、弁護士としては活動ができない。
    ゆえに、裏社会からの依頼を受け裁判を勝訴に導く『非弁護人』として活動をしている。
    弁護士として裁判に関われない為、かつての相棒、篠田(彼は弁護士)と組んで、裁判に挑む。

    事件が怖すぎ。どうなるのかドキドキ。
    表紙のデザインが不思議だったが、最後に解決!

  • 週刊アサヒ芸能2020年1月16日号〜12月31日・2021年1月7日号に掲載されたものに加筆修正を加えて2021年4月徳間書店刊。非弁護人というタイトルが良い。主人公が8歳の子供から3,300円で請け負った行方不明の同級生の消息調査というのも面白いし、悪い奴を裁きの場に引き出す闇社会で活躍するダークヒーローなヤメ検のお話は、ハラハラドキドキ感いっぱいで気分爽快です。やくざに便宜をはかるというところが悩ましいですが、それでも正義を志向する態度に惹かれます。

  • 元東京地検の検事の宗光は、法曹界を追われ裏の世界の「非弁護人」として生きている。
    ある日、たまたま知り合ったパキスタン人の少年マリクから頼まれて、行方不明の同級生アン・ソユンを捜すことになる。
    すると、様々な人が行方不明になり、それが社会の中で見過ごされている事件であることに気付き、謎を追い始める。
    前半は、なかなか宗光に感情移入できないので受け入れにくかったが、後半は引き込まれた。
    無関心、偏見、不寛容。現代の社会問題を、裏の世界側から描いた作品で面白かった。

  • 読書備忘録616号。
    ★★★★★。
    毎度ですが、文句なし!
    今回の社会の闇は、元ヤクザが堅気として生きていくことの難しさに付け込んだ非人道的犯罪。

    暴対法により暴力団、ヤクザの活動が大幅に制限されて30年あまり。団体に所属する人数は激減。
    特に底辺のヤクザ(所謂使えない人材)は、組織から切られる。世間に放り出された彼らは、そう簡単には普通の生活は送れない。銀行口座すら作れないことで、子供の学校の給食費すら払えない。現金を持っていくことで元ヤクザであることがばれる。
    真っ当に生活していこうと藻掻く元ヤクザを食い物にする男がいた。元ヤクザの家族も含めて夥しい数の失踪者。その先は国際的な人身売買であった・・・。

    元特捜検事宗光彬。検事時代、触れてはいけない闇をつついたことで贈収罪をでっち上げられ実刑を食らい、検察を追われた。出所した彼は、弁護士資格を持ちながら、弁護士にならず、裏社会のエセ弁護士、非弁護人となった。
    ふとした経緯で、パキスタン料理店の少年マリクから、居なくなったクラスメイトのアンを探してほしいと依頼を受ける。
    少女を探すうち、有機農業詐欺、振り込め詐欺、国内外リゾート物件不動産詐欺などを通じて、元ヤクザが家族諸共失踪している事実を掴む。
    それぞれの詐欺の裏に、共通して存在の薄い男が見え隠れしていることに気づく宗光。
    名前も違えば年齢も違う男は同一人物なのか?
    そして、この男、蜷川が元ヤクザを食い物にして私腹を肥やす"ヤクザ喰い"であることを確信した宗光は、検事時代の同僚でヤメ検弁護士の篠田と組み、蜷川に法の裁きを受けさせるべく動き出した。
    非弁護士であるから出来るあらゆる非合法の手段を駆使した戦い!そして、舞台は法廷に。後半は息つく暇もない怒涛のリーガルサスペンス!いやいや面白過ぎです。

    この作者、最後に想いを必ず読者に投げかける。考えるのはお前だ!と。
    奈落で踊れの時は、公文書改竄という犯罪が常態化してしまったこの国を憂う言葉だった。
    今回、新宿のホームレスを、見ちゃダメよ!と言って通り過ぎる母娘を見た宗光は、都合の悪い現実から目を背けるこの国の一般大衆もまた蜷川であると。この国は蜷川で溢れ返っていると。
    最後に、本のカバー絵。そういうことか!笑

  • 元特捜検事だった男が、今は闇で法を駆使する非弁護人として活躍する。
    裏社会のヒーローとも言えるだろうか。

    始まりは、あるきっかけでパキスタン人の少年から
    失踪したクラスメイトとその家族を探して欲しいとの依頼。
    その行方を追ううちにある男の存在を掴む。

    日に日に底なしの貧困へと滑り落ちていく日本。
    日本という国は欧米人以外の外国人に対して冷淡で、失踪しても騒ぎにならないような、元ヤクザ、不法入国者、多重債務者、いわゆる社会に居場所のないマイノリティを食い物する男とは…

    圧倒される展開で、まさに白熱のリーガルサスペンスだった。

  • なかなか面白い。非弁護人という職制が秀逸。全部読み終わってから表紙を見るとなかなか怖いです。

  • 始めはヤクザ小説かと思った。非弁護人とはいえ半分はヤクザ絡みの探偵もの。裁判場面も凄くありきたりで、新人作家ならともかくベテランの作家さんが?あくまで私の感想だが、消化不良気味な作品だった。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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