漣のゆくえ とむらい屋颯太 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198651022

作品紹介・あらすじ

生きていてほしかった。
死者が残した未練や無念
生者が抱えた哀惜や苦悩を描く。
とむらいの物語、第二弾!

第一章 泣く女
材木商木島屋の若旦那が亡くなった。
葬儀のとき、颯太は昔馴染みの女に
声をかけられる。お艶が来たということは、
賑やかな葬式になる――。 

第二章 穢れ
見ず知らずの男の弔いをお願いしに来たおきよ。
今朝「お前さんの父親だ」と亡骸を
置いていかれたばかりだという。 

第三章 冷たい手
あたしが眠っている傍で、母親が自ら命を絶った。
割り切れぬ想いを抱えながら
お吉は生きるために身体を売る。 

第四章 お節介長屋
終の住処として越した長屋は、
五十もの世帯がありうるさい。
ひとり静かに死にたい福助の事情とは? 

第五章 たぶらかし
ある処から亡骸を引き取りすぐに
荼毘に付してほしいと言われる。
奇妙な依頼に違和感を覚えながらも
颯太は引き受けるが――。 

第六章 漣の行方
母を死なせた侍をついに見つけた。
浮足立つおちえを颯太はたしなめる。
二人の前に当の侍が現れ――。

<とむらい屋で働く人々と仲間たち>
颯太:新鳥越町二丁目の弔いを扱う葬儀屋の店主。十一歳で葬儀屋になると決意する
おちえ:母を颯太に弔ってもらって以降
居座るおせっかい
勝蔵:早桶職人。はじめてつくった棺桶は
妻のものだった
正平:勝蔵の弟子で同じ長屋に住む
寛次郎:筆が得意な雑用がかり
道俊:寺に属さない、渡りの坊主
巧重三郎:水死体を見るのが苦手な医者
韮崎宗十郎:北町奉行所の定町廻り同心

第一章 泣く女
第二章 穢れ
第三章 冷たい手
第四章 お節介長屋
第五章 たぶらかし
第六章 漣の行方

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ第二作。
    弔いに必要な道具の貸し出しから葬儀一切の取り仕切りまで、弔いに関することなら何でも取り扱う弔い屋を営む颯太が出会う、様々な弔いとそこに関わる人々の話。

    前作でも感じたが、一話をもう少し長くして良いのでもう少し掘り下げて描いて欲しい。
    中途半端だったり、ここぞというところをサラッと説明書きで流されたりというのが勿体ない。

    ただ今回はおちえが長年抱えてきたわだかまりが少し晴れたようで良かった。その相手も同じくわだかまりとして抱えてきたことが分かって、だからと言って亡くなった人が甦るわけではないが、それでも少しは納得出来たのではないか。

    そして今回から弔い屋メンバーに加わったお吉。彼女もまた幼い頃に母親が自殺するという辛い過去を負っている。
    そのせいで自棄になって敢えて自分を貶めるような生き方をしてきた彼女だが、かつて母親の弔いを担った颯太に再会し新たな一歩を踏み出した。ここが新たな居場所になれば良いと思う。

    今回は出合茶屋や、その手の店で亡くなった人の話が多かった。
    自業自得とは言え、その弔いはぞんざいでかわいそうな気もする。しかしどこで死のうが、死人が金持ちだろうが貧乏人だろうが、周囲に愛された人だろうが孤独な人だろうが変わらず手を抜かない颯太の死人と仕事に対する姿勢が格好良い。
    もちろん弔いの豪華さや慎ましさの違いはあるが、弔う側の人間が出来る範囲で最大限のことをする。

    『お節介長屋』の話が良かった。自分が卑屈だと周囲まで歪んで見えるが、そこが逆になれば違う景色が見える。

    相変わらず颯太に悪態を付く韮崎同心の、意外と優しい部分も見えて嬉しい。

  • 感情の内部の表現というのだろうか、モノローグ的な文章がなく、行動と風景の描写でストーリーが進む。淡々とした印象。
    しかしながら十分に感情は伝わる。表現力が大変に上手いなあと思う。

    人の死と遺された人の気持ちの折り合い。
    葬いはそういうもの。
    今回も多種多様な葬いが描かれている。
    人情ものにもなり、ミステリーにもなる、秀逸な題材だなと、葬い屋を主役に据えたことの巧みさに感心する。

    おちえの気持ちに一つの区切りがついただろうか。まあまあ割り切れないが、少しだけ救いのある内容で良かった。

  • 『とむらい屋颯太』続編。

    颯太を主とした葬儀屋“とむらい屋”の面々が様々な死と関わっていく、連作六編が収録されています。

    個人的に、今回は“女性の業”がテーマのような印象を受けました。
    第三章「冷たい手」に登場した、母親に自殺されて人生諦めモードになっていたお吉が、“とむらい屋”メンバーに加わる展開になり、タイプは違いますがやはり母親を亡くしているおちえとのバランスが興味深いです。
    そのおちえですが、第六章「漣の行方」で母を馬で蹴り飛ばして死なせた(ひき逃げみたいなものですね・・)武家と対峙することになり、謝罪されたことで完全にではないですがわだかまりが軽減できたのかな、と思います。
    勝手に今後も続くと思っているのですが、この先新メンバー・お吉の心境や、皆の関係性に変化が訪れるのか見守りたいですね。

  • 「とむらい屋颯太」シリーズ第2弾。「泣く女」「穢れ」「冷たい手」「お節介長屋」「たぶらかし」「漣の行方」 の6篇収録。人の死を向かい合うとむらい屋の面々。新たに、母親の首吊りというトラウマを抱えた元岡場所勤めのお吉がとむらい屋に加わった。

    日常的に起きる人の死を、残された人々はどう受け止めていくべきか。特別な事件は起きても起きなくても、死と向き合う日常が描き出されていく。前作よりもシリーズの焦点がより明確になったような気がする。

    「ここに集まった者は、なにかを抱え持っている。それは苦しみであり、胸が張り裂けるほどの悲しみである。だからこそ、生きる辛さと、生かされている意味を問いながら日々を暮らしている。様々な死と向き合いながら――。」

    「ここは、ひとりぼっちの奴らの集まりだ。だからといって傷を舐め合いたいわけじゃない。仲良しこよしでできる商売じゃねえのだ。」

  • 100人、人がいれば100通りの人生があって、そして当たり前のように100通りの死がある。人は生をうけた時点で、早かれ遅かれ死ぬ。わかってはいても訪れてほしいものではないけど。

    前作より"命"の重みを感じたものになっているなと思いました。
    そして、1人の死によってその人の生き様が明かされていくこの物語で、改めて、どの時代にも何通りもの生き方があり、それぞろに大切な人生があったのだと、これからも自分の人生について考えさせられる物語だなと、感じました。

  • 読楽2018年8〜12月号、2019年2、4、6、10、12月号掲載のものに加筆修正して2020年6月徳間書店から刊行。シリーズ2作目。6つの連作短編。2作目もあっさりした展開でした。少し物足りなさが残ります。

  • なぜ、第一弾は読めなかったのだろう?と思うくらいスラスラ読めた。第一弾を読み直したい!

  • 死者に心を砕くとむらいやだから死者に優しい。
    生者の生き方に納得いかない部分もあるけど、それはとむらいやの領分では無いということなんだろうな。色々な形の生と死が語られる柔らかく優しい物語。

  • シリーズものだが2作目から読んでしまった。
    さらっと読める連作。
    もうちょっと1話が長くてもいいかなーとおもうが。

    江戸の弔いについていろいろ書いてあっておもしろい。

  • 弔い屋からみる人情話。舞台は昔でも話の中身は今に通じる。

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著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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