法の雨 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.64
  • (10)
  • (65)
  • (35)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 301
感想 : 47
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198650759

作品紹介・あらすじ

無罪乱発
判事が下した判決が
裁判官、検察官、弁護士、被害者、加害者
それぞれの正義を狂わせていく…

厳格な法の運用ゆえに「無罪病判事」と呼ばれた嘉瀬清一は、結審直後に法廷で倒れてしまう。
宣告されていたために有効とされた判決は、逆転無罪。
無罪判決は死も同然である検察界。
担当検事の大神護は打ちひしがれる。
有罪率99.7%の日本でなぜ今!
その後、この事件で無罪放免となった看護師が殺されたと知り、大神は嘉瀬のもとを訪れるが、嘉瀬は老人ホームにおり、会話もままならない状態となっていて……。
あの判決に何があったのか。

“法”は救いか縛りか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 下村敦史4冊目。ハードボイルド系の検察官・大神が松金組組長刺殺事件の裁判に関わる。当然被疑者の水島看護師の有罪状況を固めたが、逆転無罪判決。裁判長の嘉瀬は判決を言い渡した直後に倒れ、脳血管性の認知症になる。この話しは複数が入り乱れるが、最後にはスッキリした。①水島看護師は有罪なのか?②成年後見制度の闇、③松金組の跡取り問題、④被害者から裁判官への賄賂、色々盛りだくさん。法では裁けない闇の部分は確かにあるが、それを裁かなくてはならないか?ということは別問題である。司法においてのバランスが所謂、闇深だった。

  • 話に裏の裏があって、最後の方はえ?どっち?いい人なん?悪い人なん?と悩まされるが、それぞれの正義を貫こうとしてる姿はかっこいい。

  • 一審の有罪判決を高裁で何度もひっくり返している"無罪病判事"がいた。
    三度の逆転無罪を出されている検察官の大神が次に無罪病判事の法廷に立ったのは、入院中の暴力団組長を看護師の水島が殺害したとされる事件だった。
    裁判の結果、逆転無罪の判決を受けた水島看護師は、その後組員に銃で撃たれて死亡した。
    法とは、真実とは、正義とは…を深く掘り下げる内容ではないが、この他に成年後見人制度も大きなテーマの一つとなっており、色々な知識を元にうまくまとまっているな、という感じ。
    主人公に感情移入しにくかったが、どうなるのか先が気になり一気に読めました。

  • 私が読む、著者の作品2作目。

    先に読んだ『同姓同名』(←出版はこちらの方が後)とは随分と毛色が違うし、本書の主人公は小説の主人公としてはものすごく地味〜な感じがするのだが、引き込まれた。

    フィクション、ノンフィクション、ひっくるめて「検察」絡みの書物は色々読んでいるので色々と思うところはあるが、「法」は本物の法曹関係の人やらその道の学者さんやら同士で語らせたって意見は千差万別なんだろうと思うので、一般市民の私には何も語れない。

    成年後見制度については、本書の内容とは色々と異なる経験をしたので、こういう「制度」というものも(それが改善か改悪かはわからないが)、運用しながら見直されて変化しているということなのだろう。

    ストーリーとしては、細かい部分で多少は「ああ、そういうことだったのか」と思う部分も有ったが、中心軸となっているそもそもの組長殺人事件の真相は想像がついていたし、どんでん返しだと思うような意外な事案も特に無かった。

    実際に、ある事件の裁判で被告人が無罪となった時、じゃあ真犯人は他にいる!と警察や検察は事件を洗い直すなんてことをしているんだろうか?
    とてもそんなことしているとは思えない。

    また、私が読んだのは初版本で、単なる脱字だとは思うが、エピローグでいきなり「母」という単語が出てきてびっくりした。
    ちょっと待って待ってよ、エピローグの段で出てきた「母」(本当は幸彦が幼い頃に亡くなっている)って誰よ?
    たぶん祖母の間違いなんだけど、話の本筋がここで「実は…」と変わってしまうのかと焦った。
    こういう誤字脱字、勘弁して…。

    それと、定年前の裁判官と大学受験の孫の設定ありきだから、祖父63歳・孫18歳。
    もちろん無理ではないが、ちょっと違和感。

  • 気をつけよう成年後見人制度

  • 異様なほどの無罪判決を宣告する「無罪病判事」。しかし彼が無罪判決を下した被告人が、釈放後に殺害されてしまう。彼が本当に無実だったのか、そして無実であったとすれば、彼が殺された責任は誰にあるのか。その一方で病に倒れた判事の後見人制度を巡って苦悩する家族。どちらのパートも先が見通せず、はらはらさせられるミステリです。
    法が万能ではないというのは、そうだろうなと思えます。正義だって絶対に正しいものはないし。ただ、だとすれば法は人を守るためのものなのか、それとも縛るためのものなのか。法の存在意義に悩まされることになりました。もちろん正しく使えばいいのだろうけれど。どこにでも悪用する輩はいるし、そうでなくとも使いこなせないこともあるだろうし。とても難しい問題。
    その中で自分の職務に真摯に取り組もうとする人たちの姿が非常に頼もしく感じられました。特に、最初は悪印象しか湧かなかったあの人。実にかっこいいぞ。

  • どーいう展開になるんやろと思いながら読んだ。弁護士さんがいい味だな

  • フォローしている、あくらさんの感想を見て
    読みたくなってしまいましたー。
    いっきに読める本だったよー!!

    検察官とか弁護士、裁判官とか、詳しいことは
    よくわからない私ですが、おもしろく読めましたー。

    さまざまな事件で有罪、無罪などが判定されるけど、
    「もはや犯罪報道は娯楽と化してしまった」
    と書かれていたように、
    納得できることが多々あったよー。

    事実は事実として、司法の制度がどのように判断するのか、
    検察官や弁護士とか考えて裁判してるんだなぁー
    なんて考えてしまったー。
    (実際はどうかわからないけどさぁー)

    成年後見人の藤本弁護士は、最初嫌いだったけど、
    事実が分かってから、なんていい人なのー!!と
    感動しちゃった。
    藤本弁護士が後見人でよかったと思ったよー。

    • あくらさん
      いつもいいね!をありがとうございます。下村さんの作品好きなので、読んでいただけて嬉しいです^^
      いつもいいね!をありがとうございます。下村さんの作品好きなので、読んでいただけて嬉しいです^^
      2021/09/10
    • ほくほくあーちゃんさん
      いえいえー。
      あくらさんの感想を読んでると、自分まで読みたくなる作品がたくさんなんです。
      下村さんも、今までの自分なら読んでなかった作品です...
      いえいえー。
      あくらさんの感想を読んでると、自分まで読みたくなる作品がたくさんなんです。
      下村さんも、今までの自分なら読んでなかった作品ですけど、はまっちゃいましたー!!
      2021/09/10
  • 法定後見人の闇を題材にした社会派ドラマかと思ったが、やくざの内紛絡みの犯罪ミステリだった。

    「正義とは」と文字にすると青臭くなるが、テーマとしてそつなくまとめられている。

  • めちゃくちゃ面白くて中盤以降はページをめくる手が止まらなかった。
    それぞれの立場での正義、葛藤、思惑。
    一冊読み終える間に登場人物たちの印象ががらりと変わっていく。
    物語のメインは無罪放免となった看護師が殺される事件。
    それと同時に発覚した“とある問題”。
    この組み合わせは面白い。

全47件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

下村敦史の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×