黙過 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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本棚登録 : 354
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198646080

作品紹介・あらすじ

“移植手術”は誰かの死によって人を生かすのが本質だ――新米医師の葛藤からはじまる「優先順位」。生きる権利と、死ぬ権利――“安楽死”を願う父を前に逡巡する息子を描いた「詐病」。過激な動物愛護団体がつきつけたある命題――「命の天秤」など、“生命”の現場を舞台にしたミステリー。あなたは4回騙される――話題作『闇に香る嘘』を超える衝撃!注目の江戸川乱歩賞作家、渾身の書下し。一気読みをおすすめします!

感想・レビュー・書評

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  • 医療系の話くらいの前情報で読み始めました。
    5つの短編かぁ…とペラペラとめくって…
    ラストの短編前に「4つの短編を読んでからラストを読んでください」と注意書きが。
    繋がってるのね!了解です(・_・;

    パーキンソン病、肝移植、養豚場…一見バラバラな短編がいわゆる伏線的な内容です。

    倫理観を問うお話ですね。
    延命治療、安楽死、生体肝移植…なかなか答えは出ないです…

    保険証の裏にシールが貼ってあるんだけど…
    自分で何て書いたか忘れた( ̄▽ ̄)笑
    シール貼ってあると言う事は臓器提供するつもりだったんだな…
    自分は良くても家族が嫌かもしれないなぁ…
    なんて考えちゃいました。

    黙過…だまって見逃す事
    なるほど〜なタイトルでした。

  • 【ネタバレします】大学教授の柳谷が自殺する。遺書に「人間として赦されないことでした」と残す。不可解な遺書から派生する以下の3つの話しが最後に1つに繋がる。①瀕死の事故による患者が消えた。②父親がパーキンソン病を患ったふりをしていた。③養豚場から子豚が消えた。これらの真相が明らかになるにつれ、柳谷の自殺の意味が変化する。可愛そうな父親→贈収賄疑惑→最後に豚の臓器をヒトに移植する異種移植を理解する者。親が子を想いが生命倫理の一線を超えてしまった。ヒトは動物よりも優先すべきか?自分が責められているようだった。④

  • それぞれ登場人物が異なり、5作の短編を収録した短編集と思いきや、最終章の扉に「前知識が必要なので必ず他の四篇の読了後にお読みください」と、ある。
    移植医療、詐病、動物愛護、不正疑惑等、医療を巡る個々ばらばらとも思える、事件ともいえないほどの出来事の積み重ねが、最後に集約し一つの長編ミステリーとなっている。
    作者の巧みな仕掛けに脱帽せざるを得ない!
    医療最前線のテーマ(ネタバレになるので書きません)に、果敢に取り組み、読者にもその課題への選択を迫る意欲作。
    終盤、ある准教授が語る。
    「先生は一人の命でより多くの命を救おうとしています。私は、人の命を使わずにより多くの命を救おうとしています。医者として私も先生も目的は同じです。手段が違うだけです」

  • 連作短編集と思って読んだところ最後の5話目でつながっていると言う不思議な作品
    医学ミステリー、移植、安楽死、動物愛護とかたいイメージで読んでいたら、奇想天外のどんでん返しに唖然としました。
    4話の伏線の後の5話目にやられたのひと言につきます。

  • 下村作品2作目。
    これは微妙なところを突かれたと言うか、善悪で割り切れない問題だなぁ。

    始めは関連のない短編だと思ったのですが、最後の章で全てが繋がりました。
    心の内に密かに持っている後ろめたさみたいなものを、こんな風に言葉にできるって凄い。

  • 人間の命と他の動物の命、命1つの価値は同じなのかを問われる一冊。

  • 様々な観点から社会問題を取り上げたミステリを書く著者だが、今作は医療分野のミステリ。
    構成が素晴らしい。第一話から第四話までの独立した短編が、最終の第五話を読むと長編に変わる。まるっきり接点の無い短編だと思ったので、思わず唸った。
    短編の方にやや物足りなさを感じていたが、この構成の妙で全て帳消し。これは傑作。

  • 冒頭から医局内の権力争いがみえ隠れする中での人工移植、命の優先順位の話が続くと思いきや、急にベットから動けないはずの患者が病院から忽然と消えてしまう。病院でこんな事あり得ない、と思うままに第一章が終了。続いて明らかに全然違う話が続く。
    あれ?短編小説だったのか、失敗した。と思いつつ、第一章のテーマが重いだけにもっと掘り下げて欲しいと若干消化不良のまま第二章へ。第二章はパーキンソン病の話だが詐病で、家族にも嘘をつき続けている話。詐病は兎も角として、家族が進行性の病に侵され次第に身体の自由が奪われていく時に、家族はどう支え合うのか。考えさせられる。
    ここで解説を読み、実は4つの短篇が最後の究極の選択ですべて繋がる構成と知り、命の天秤、不正疑惑を読み進む。
    医療技術の進歩に伴い、その技術が人の命を救えるとしても、その技術を患者に施すかは別の話である。また、その命が自分の大切な人の命、他人の命の場合、果たして同じ選択(判断)が出来るのか。人の命を救うために人間と動物の命の軽重を人間が決めていいのか。もし動物の臓器が移植で自分や家族に使われて助かるなら、動物の臓器で生きるのか。
    一言では答えが出せないことばかりだが、医療技術が進歩し、人間が長く生きることを望めば、遠からず同種の事態に直面することはあると思うので、自分なりの判断ができるようにしたいと思いました。

  • 5篇中、最初の4篇は意外な真相に驚きつつも、明らかにならなかったり納得できない要素が残り、なんだかモヤモヤして微妙な読後感。

    けれど5篇目「究極の選択」で全てが繋がり、モヤモヤした要素の全てが明らかになる流れに驚嘆しました。

    話の結末に関しては、異種移植の治験をコソコソやらずに(どんなに困難だろうと)正攻法でやればいいのにと思ったので、不満がないわけではありません。ラストシーンの都准教授の話も患者のためではなく、自分が研究を続けたいだけの自己中心的な詭弁にしか聞こえず、彼女が裁かれずに終わってしまうことに消化不良感があったりします。

    ただ、先ほど書いたように話の流れは本当に見事で、面白いと思ったのは確か。なので、私の心の中では満場一致(?)で★5となりました。

  • 移植医療を巡る医療ミステリー。

    短編と思って読んではダメな作品。
    各章ごとにストーリーの要となる人達が、各方面から登場し、最後にそれが全て繋がります。

    5章の『究極の選択』の扉裏に*必ず他の4篇の読了後にお読みください、との注釈があり、思わず笑ってしまいました。
    親切心なんですよね。

    テーマは重いです。
    他人事としては、異種移植なんて有り得ないと思ってしまいましたが、自分の身内にその機会があり、永らえると言うのであれば望んでしまうかも。
    その場にならないと考えられない話ではあると思います。

    命のために研究を進める医学の道を極めた医師たちに救われる命もあるとは思いますが、ホントに難しい問題だと思いました。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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