- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198645083
作品紹介・あらすじ
小さい刻の愉しい記憶をもう一度味わうために、私は誰もいない寺に帰ってきた。私が池で見つけたのは、真っ白な自称人魚の男『うお太郎』。人魚にも見えないが、人間とも思えない不思議な生物だった。うお太郎は「この寺の周辺には奇妙な石が埋っており、私にはそれを見つける力がある。石には記憶を忘れさせたり、幽霊を閉じ込めたりする力が宿っている。早く見つけろ」と言うのだが……。書評家熱賛!奇想小説の異端児が放つ待望の初長篇!
感想・レビュー・書評
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一息で読んだ。
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こうきましたか、と唸る人魚譚。妙にリアルな感じで、本当にこういう存在がいそうです。面白かった。
けど主人公、もう少し健康的な生活送ってくれ。心配してしまった。 -
いや~・・・面白かった。血で汚れた因襲に満ちた異形とのやり取り・・・どす黒成分多めの『家守綺譚』て感じで・・・好き・・・。うお太郎がユキオに懐いてたのって血が繋がってたからなんだな・・・ヒエエ・・・。最後の最後まで油断できない・・・まさに和ホラー。
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なんだろう…。
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青蛙というペンネームからはもう少し硬質の怪奇譚を勝手に期待していたが(あの円城塔のつれあいであれば尚更)、案外とナイーヴな話である。小泉八雲というよりはゲゲゲの鬼太郎(もっとも鬼太郎もオリジナルの墓場鬼太郎はおどろおどろしい)。やたらと妖(あやかし)の類が出てくるが、どれもこれもではなく、つい誰も彼もと言ってしまいそうになる程に人間臭い。不思議な能力や主人公の知らないことを知っているという情報格差でたぶらかす様も人外のものとは思えない程に幼い子供の思い着くような悪戯だ。こういうエンターテイメント系の小説は最近読んでいなかったので文章に乗り遅れながら読み切る。
終末に向けて登場する物の怪は、推理小説の様式で言えば使ってはいけない奥の手であるが、そこだけは妙に怖い。その感情の根っこにあるのは、よく知らない人が親切にしてくれるのを手放しで受け入れられない居心地の悪さと同じ類のもの。エピローグは至極当選の帰結としてそうなるよね、と思った所に落ち着く。最初からここを狙って書いていたのなら相当にひねくれた作家と思うが、読後の感想としては連載していた連作短篇集をまとめたもののような印象。モチーフとしての「石」と「人魚」が各々の物語を縫い合わせてはいるものの個々の章は独立している。それ故に、エピローグの不気味さも少しばかり慌てて繕った印象が残る。
ふと、主人公の兄は今何処にいるのかが気になった。兄は本当に兄だったのか。物語は語らないことの方が本当は恐ろしいということをしみじみ思う。遠野物語の元になった昔話が本当にあったことを夢物語風にして人間の残忍さを中和したように、妖怪は誰かの過去のうつしみ。であれば登場する物の怪達が人間臭いのも当たり前のことなのかも知れない。 -
山中のおんぼろ寺での人魚と私の出会いから、日常が奇妙な装いを帯びてゆく。
この1冊に書かれていることが、全てではなく。何かの始まりでも、終わりでもない。私と人魚の人生は、これまでもこれからも、誰かが引いたレールをはみ出さない程度の自由を監視されながら、進んでいくんでしょうね。
読後感はよくないです。本に書かれている物語が終わっても、登場人物の人生は続いていく。けれども、そこにあるのは希望でも絶望でもなく、仮初の日常という感じだからかな。この先、人生の結末を迎えるだろうけども、私と人魚には、自分の人生というものが築いていけないのだな、と考えてしまうとね。 -
幼少期、楽しい思い出の中心にあった寺に帰ってきた主人公。荒れ果てた寺を掃除していると、庭の池から人魚が現れます。彼と共同生活をしていくうちに、奇妙な現象を起こす石、妖怪たちと出会っていきます。 幽霊の石、記憶の石など様々な能力を持つ石。それにちなんだ現象に翻弄される主人公が楽しい作品です。また人間とは違った理論で生きる妖怪とのちぐはぐさがどこかおかしく、どこか恐ろしい作品でした。ラストは主人公は妖怪側に近付くので、その主人公が接していたちぐはぐさを読者自身が感じることができ、恐ろしく楽しかったです。
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3.3
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不思議な世界を堪能しました。読み始めは人魚のキャラクタがどうも馴染めなかったが読み終わってみればそうでもなかったかな。ホラー小説でした。