- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198644352
作品紹介・あらすじ
「祝言は挙げられない」簪職人のおりよは、突然許婚の新之助にそう告げられた。理由はなんとなく思い当たる。新之助は形がよく、おりよは目が見えないから。二人で歩いていると耳の後ろが熱くなる。女たちの視線が痛い。どうして私だけこんなことに――。悔しさを押し殺し、手に残る感覚を頼りに仕事に没頭するおりよだったが……(「闇に咲く」)。遊女、船問屋、紙問屋、簪職人、花火師、旅籠屋……市井の人情を掬い取る、珠玉の時代小説。
感想・レビュー・書評
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『耳がきいんと鳴っている。
煙が切れて、源兵衛の目に夜空が映った。
片瀬さま、ごらんいただけましたか。
訊ねかける声は、そのまま天へ吸い込まれていく。
深い闇が、ただ広がっている。
返ってくる声がなくても、己はこれからも声を送り続けることだろうと源兵衛は思った。
そうやって、この先も歩いていくのだ。胸に生きる、友とともに。
文 安政二年(1855)』
花火に纏わる時代小説短編集。
冒頭の一編からぐるっと最後につながっていく。
東北大震災の被災者への思いが書かせたのだろう。泣けた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
じんわりと心にしみる作品の数々。
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短編の時代小説集。女性の描写が絶妙で、どの作品にも花火がキーアイテムとして出てくる。
楽しく読めた。 -
1971年、島根県生まれ、志川節子さん「煌(きらり)」、2017.7発行です。天地一転、椀の底、山の灯(ひ)、闇に咲く、雪の花道、文 の短編6話。江戸時代の人間模様を、著者がしっとりと描いています。雨の日とか、深夜に読むと一層心に響きそうな作品です。今後の活躍を大いに期待しています。
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「花火で織りなす人間模様」(帯より)