東京千夜 (一般書)

著者 :
  • 徳間書店
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本棚登録 : 116
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198636449

作品紹介・あらすじ

過酷な運命にさられたとき、人が最後に渇望するものとは一体何なのか?
 
『遺体』で東日本大震災の知られざる極限状態を描き喝采を得た石井光太氏、初となる短編エッセイ集。

HIVに感染した夫婦が葛藤の末に下した苦渋の決断とは。自ら命を絶つことを選んだ自殺者が、樹海の中で最期に求めるものとは。どこまでも鋭く、深く、そして優しく人間を見つめてきた著者だからこそ描ける、衝撃と感涙の傑作短編16編を収録!

感想・レビュー・書評

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  • 私は大好きな大好きな人の手を手放そうとしていた。
    でも、今作のラストに収録された東日本大震災の津波で妻を失った男性の妻へのメッセージを読んで、考えが変わった。
    今作では東日本大震災だけでなく、自分を傷つけてしまう人、HIVと闘う人、いろんな事情から普通の恋愛が出来ない人など、人生を上手に生きられない人たちの苦悩が描かれている。
    自分も他人の愛情を素直に受け止められなくて、他人との関係が上手くいかない、いわゆるこじらせ人間。
    大好きな人がいるのに、愛情をどうしても信じられなくて、まさに手放そうとしていた時、この本に出会った。
    この本に出て来る人達より、ずっとずっと恵まれているのに、何故、自分は上手に生きられないのだろう?
    他にもパワハラ、モラハラにも悩んでいたが、この作品のラストの達也さんのブログにすごく救われた。
    辛いこともある。でも、いつ何があっても後悔しないように愛する人には正直にいよう。
    単純だけど、見失ってたものを教えてくれた。
    ずっと行けなかった仕事にも行ける勇気をもらえた。

  • 現在ノンフィクション界トップクラスの売れっ子です。テーマが重いので一般受けがいいわけではないと思うのですが、その冷静で温かな視点と文章の信頼度は絶大です。
    この本はいつものような一つのテーマを深く掘り下げるというより、過去に体験したことを断片的にエッセイのように書いている本です。
    マイノリティーとのやり取りのエピソードなのですが、一つ一つがなかなか強烈で、さすが小ネタでも色々と持っているなあと感心します。
    とても悲惨な話ばかりなのですが、不思議な世界を垣間見ているようで重くなく読めてしまうのが若干の罪悪感があります。
    いつもの重厚さが無いだけに、石井光太入門としてはいいのかもしれない。

  • 石井さんの著作は『鬼畜の家』を読んで以来でしたが、あちらの読後感のとてつもない重苦しさとくらべると、こちらは切なさはあれど微かな希望や優しさを感じられる部分もありました。

    各人の思いに寄り添う圧倒的な筆力がより一層共感性を高め、亡くなったという事実以外「この人はその後こうなりました」というくだりがほぼないので「難しい状況だろうけど、どうか、どうか少しは穏やかで健やかでいてほしい」と都度他人事ながらも切に願わずにはいられなくなりました。

    あくまで勝手な感想ですが、どことなくNHK『事件の涙』を彷彿とさせるというか、テイストが似ていると感じるためか、話の終盤になるといつしかSalyuさんの『emergency sign』が勝手に脳内で流れてました。 でもそれがまたしっくりくるのです。

  • それでも人は生きてゆく
    それぞれの大切なものを胸に抱きながら

  • つらくても、苦しくても、哀しくても、さみしくても、ひたむきにひたむきに。それが、生きている、ということなんだと改めて感じた。

  • 色々な人。
    みな、懸命に生きている。

  • 辛い話や悲しい話が、多すぎる。

  • この人のエッセイと考えていいのか小説と考えていいのかわかりませんが、ほぼ事実に即したお話の短編集なのでしょう。

    東京千夜とありますが、東京ばっかりではなく色々な人達のいろいろな主人公が見聞きした話が「私」によって語られます。希望が持てる話もありますが、どちらかといえば「何だかなぁ」と思ってしまうものばかり。ですが現実はそんな美談に溢れたものではなく、みなそれぞれ様々なものを胸に秘め、今を生きていることがテーマなんだと思います。一番切ないと思ったのは「第八話の妻として」で、第七話も何ともいえぬ寂しさがありました。

    多くの場合、私もそうですが、未来とか将来とか見えぬ先のことばかり話をしますが、身近にあって一番大切なのに気付かぬものは現実という「今」なのだと思います。過去にいなくなってしまた人の心の内を想像したところで、やはり想像でしかないわけで、その想像を外に出したり誰かに理解を求めることで、別の人の今いる心の内を傷つけるかもしれない。。
    けれど、そうして話をしないと自分が保てない。
    。できれば明るい結末で、誰にでもわかる結末であってほしいと願った人によって他人の想像が捻じ曲げらてしまう……というのが第八話かなと自分でもよくわかってませんが、そう思いました。
    実際のところ、その人が何を思っているかなんて、その人にしかわからない、ということなのかなぁと思います。

  • 彼氏のDVを受け続ける女の子、ゴミ屋敷の主、HIV感染者、ハンセン病患者など悲しみやあれこれの事情を背負った人たちを追うルボ。一人ひとりに寄り添う姿勢が圧縮された文章に反映され、言葉が出てきません。


    .
    3・11の「遺体」で大きな話題を呼んだ石井光太さんですが、私はきっとあまりに辛くて読めないだろう、と未読のまま。
    ということで、初めての石井さんでした。

    同時代の社会の中で、悲しみを抱えて生きなければならない人たちを取り上げたノンフィクションは多々ありますが、石井さんの文章は、う~~ん、なんて言ったらいいのか、簡潔な中に多くの物語を含ませて、しかも冷静でありながらも優しいという“節度”が好きだなぁ、と・・・・。


    ゴミ屋敷の話はよくマスコミでも取り上げられ、その汚さ=だらしなさを、付近住民の迷惑をメインに主を非難する、あるいはその奇矯さと面白可笑しく語る方向で語られることが多いように思う。でも、石井さんのルボはなぜそんな状態になっているのか、という角度からの切り口で、主本人・たに江さんから、自分がADHDであることを聞き出してしまう。そして、ゴミを恐い、という彼女。腐臭と小蠅の家の中、ゆっくりと話を聞く姿勢とたぶん石井さんという人の持っている何かのせいで、彼女のこれまでの人生まで聞くことができたのだと思うけれど、これまでのゴミ屋敷レポートで一度も主本人が障害を持っている、とは考えなかった自分に、あんたってさ!!と思ってしまった。

    また、ハンセン病患者のかつての隔離施設では、やはりこれまで、国の非情さがメインとして語られたいたと思うのだけれど、そこに患者間の力関係、(ボスがいて、患者同士の結婚相手まで決めていたとか、男・女と分かれてはいたけれど大部屋でプライバシーのない生活を嫌い、“脱走”した人たちがどうやって生きていたか、あるいは抜け出したくても生きるすべがなく、その狭いスペースで生活を続けた人たち、のリアルな話が切なくてたまらない。

    余命何か月と宣言された少女が、私は処女のまま死ぬのだろうか、と相談メールを頻繁に発信してきたり、身体が半麻痺という障害の中、風俗で働きたい、とやはり相談を持ちかけられたり。

    ご自分では面倒見のいい人間ではない、と思われているようなのだけど、これはやはり、持っているものがある、っていうことなんだろう、と思う。

    あれもこれも発端やら顛末やらに驚かされるルボでした。
    ずっしりと重いものが残りましたが、読めてよかったと思います。

  • 914.6
    全身にタトゥーを入れた女、両性具有に生まれた男、エイズやらい病などの患者たち、震災で愛妻を亡くした男…

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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