グローバル経済に殺される韓国 打ち勝つ日本

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198634063

作品紹介・あらすじ

韓国のグローバル化を礼賛する日本の財界、マスコミに騙されるな。格差拡大、失業率20%超、自殺の急増…「植民地化する韓国」。日本は韓国経済に学んではいけない。

感想・レビュー・書評

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  • 米韓FTAを受け入れ、グローバル化を更に進める韓国の置かれた悲観的な状況を分かりやすく説明してくれる。また、それを反面教師として、日本が進むべき方向性を示す。デフレ化での無条件貿易関税自由化は危険。それは、当然、その通り。国防を重視し、インフレに舵を切り、TPPに踏み込もうとする現政権も、聖域を設けながらと言っている。本著の良さは、日本と他国が人口や市場においてモデルを共有できず、日本にはとりわけ使いこなしの文化が根付き、ガラパゴス化そのものが日本の競争力の根源であるという視点だ。その上で、労働分配率を下げ、配当金を引き上げる外資の一部特権階級に有利な新自由主義を、21世紀の植民地政策として、批判する。

    見た目が怪しくて抵抗があったが、論拠がしっかりしている。新自由主義批判を、通貨危機以降の韓国を切り口に解説しているのは、非常に分かりやすい。

  • ・構造改革というのは、
    「公営、国営企業を民営化し、競争激化で供給能力を引き上げる」
    「規制緩和による競争激化で供給能力を引き上げる」
    「外資系企業を国内市場に参入させ、競争激化で供給能力を引き上げる」
    などなど、ことごとくが供給能力を引き上げるインフレ対策である。
    (TPPも規制緩和なので、デフレ化する影響を与える施策)

    ・李明博政権の通貨安政策により、韓国の経済成長の主役は、完全にサムスン電子や現代自動車に移った。正確には、李明博が彼らに主役の座を委ねたのだ。
    その結果、韓国の貿易依存度は2011年にはなんと96%に達したというわけである。何度もいうようだが、貿易依存度とは、輸出と輸入を合わせた額とGDPを比べたものだ。韓国こそが完全なる貿易立国だ。貿易なくして成り立たない国なのである。
    日本の貿易依存度は27%、アメリカが25%、中国が40%、ドイツが60%である。

  • 数年前に三橋氏が執筆を始めた頃に出版した本が韓国関連のものだったと記憶していますが、久しぶりに韓国と日本の経済を比較した本を書いてくれました。本書にあるように、韓国ウォン安というのは、最近まで年に何回か韓国に仕事で行っていた私の経験からしても身に沁みました。

    また、最後に韓国出張したのが、この本でも触れられている「米韓FTA」をどうするかを世に問う大事な選挙期間だったのを覚えています。三橋氏によれば、韓国はそこで重大な決断をしたと書いてありますが、日本でも一時期TPPの議論が盛んにされたことがありましたね。

    韓国のビジネスマンと付き合っていて感じたのは、彼らは「面子」をとても重要視して、中国と同様に、男性社会です。数十年前(私の父が中堅サラリーマンだった頃)の日本そっくりです。

    韓国のトップ企業が日本企業以上に利益のあげているのは事実ですが、三橋氏が指摘しているように、オリンピックではないのだから、企業が好成績をあげるよりも、そこで生活する国民が幸せになるように政治家は考えてほしいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・NAFTAでは、ISD条項によって勝利した企業は、アメリカ企業のみ、カナダやメキシコの企業もアメリカ政府を訴えているものの、一度も勝ったことは無い(p20)

    ・日本が韓国を見習った場合、一部のグローバル企業のみが勝ち残り、格差が広がり、一般人はますます不幸になる、肥え太るのは、一部の富裕層と外国資本だけ(p25)

    ・韓国の3大輸出企業である、サムスン電子、現代自動車、ポスコ製鉄会社の合計売上高は、約357兆ウォンで、韓国GDPの30%を占める、3社ともに50%弱の株主が外国人、日本のトヨタの売上はGDPの4%(p26)

    ・韓国の農協や漁協の共済、郵便局が提供する保険(簡保)は、米韓FTAにより民営化(廃止)となった、共済の法律が、アメリカ企業が韓国進出にあたり邪魔になるため(p27)

    ・韓国最強のサムスン電子は、世界中の企業から訴えられていて訴訟数は3800以上、米国は英語のわかる韓国人を雇って弁護士業務をする(p29)

    ・韓国内で問題視された米韓FTAの中身は、ISD条項、ネガティブリスト(新たに出現した分野は初めから自由化)、ラチェット規定、内国民待遇(p32)

    ・韓国証券取引所に上場している10大企業の売上が全上場企業の52%を占めている、その殆どが輸出企業で、株主の過半数は外国人(p38)

    ・韓国の実質賃金がこれほど下がり続ける理由は日本と異なり、国内の寡占化とグローバル化による(p46)

    ・韓国での経済活動参加率は、15-24歳までが25.4%であり、OECD諸国加盟国平均(48.5%=日本も同様)比較で低い(p49)

    ・韓国ではIMFの指導により、ビックディール(企業の大規模事業交換)が行われ、利益が最大化しやすい企業環境を実現した、サムスン電子は家電と半導体、現代は自動車に特化した(p71)

    ・韓国はIMFのワシントンコンセンサスにより貿易の自由化、投資の受け入れを強制させられたが、その時に手つかずに残ったのが、弁護士・通信・知的財産権・公的保険といったサービス分野であった(p75)

    ・韓国の貿易依存度(輸出と輸入を合わせた額をGDPと比較したもの)は96%@2011となった、日本:27,米国:25,中国:40,ドイツ:60%(p76)

    ・韓国の所得収支は4月前後に赤字となる、外国への配当金が支払われるから(p85)

    ・韓国の所得水準は日本の3分の1であるが、燃費の悪い高級車を買い、不動産も買うので家計負債が増える(p92)

    ・資本主義の健全な発展とは、家計は借金ではなく貯蓄を増やし、企業がその家計の貯蓄を銀行から借りて投資に回して成長する(p92)

    ・韓国では、大学卒の半分が就職できない(28万人中14万人)、日本は93.6%(p97)

    ・インフレとは供給能力を超えた需要がある状態、このような時は規制緩和や自由貿易で供給能力を高めることで国民経済を成長させられる、だがデフレの場合はデフレを悪化させる(p114)

    ・韓国、ロシア、ドイツは日本よりも早いペースで人口が減っているが経済成長している、ロシアは10%を超えるインフレで苦しんでいる、少子化と経済成長は関係ない(p118)

    ・1997のアジア通貨危機において、マレーシア(マハティール首相)のみIMFの管理下に入ることを拒否した、受け入れた韓国、タイ、フィリピン、インドネシアのうち、フィリピンは国民経済を外資に乗っ取られた(p131)

    ・現在の植民地経営は、過去と異なり、誰が儲かるかという点で異なっている、昔は宗主国の国民や労働者も潤っていたが、今は投資家や資本家のみが潤う(p133)

    ・ガラパゴス携帯が世界で売れなかったのは、1)円高、2)世界の消費者が日本の消費者についてこれなかったから(p139)

    ・音楽、ネット、漫画、プログラムなど、さまざまなスキルを使いこなし、商品を二重三重に楽しむことができるのは、世界中に日本人しかいない(p141)

    ・2009末に韓国はフランス、アメリカ、日本という強豪を退けてUAEでの原発建設を受注したが、韓国政府が100億ドルの融資(UAEプロジェクト)に約束していることが判明したが、韓国の原発技術は殆どは日本のパテント(p146)

    ・オバマ大統領は「自国の行き過ぎた新自由主義、グローバリズムを改める」と主張していたが、ウォール街から献金を受けてしまい、手を付けられなかった(p159)

    ・ウォルマートは時給を4-5ドルに抑えるが従業員は文句を言えない、多くはすでに廃業した地域の小売店の元店員だから(p167)

    ・日本は1965年に韓国と締結した日韓基本条約において、無償金:3億ドル、有償金:2億ドル、民間借款:3億ドル以上(当時の韓国予算:3.5億ドル)を提供した(p188)

    ・韓国の軍事指揮権は、朝鮮戦争以来アメリカが握っている、2009年にアメリカが返還を政府に打診したところ拒否された、結局、2015年に返還されることになっている、現時点でも韓国軍はアメリカの指揮のもと、国連軍の指揮下にある(p191)

    ・デフレの最終局面は、需要が供給能力に追いつかなった結果としての悪性インフレである(p205)

    ・ギリシアはユーロ加盟前までは、長い間インフレ率が20%を超えていたが、ユーロに入ってからは通貨発行権がなくなり沈静化、その代り貿易赤字が増えた(p210)

    ・明治政府が「明治通宝」などの通貨発行で富国強兵を進めていた時代も、せいぜい4%程度のインフレ、理由は日本人の「使いこなし」により生産性が高まり、需要を満たす供給能力が拡大したから(p250)

    2012年7月21日作成

  • 本当に送りたい幸せな生活とは何か?方法は何か?と考えさせられる本。

  • グローバル化、株主至上主義、外国人投資家、寡占状態の大企業などに舵を切った韓国。その反面で、非正社員や潜在的な失業率・大卒無業者の増大、拡がる格差など国民生活の実態。韓国のグローバル化に関する日本のマスコミ報道のあり方への問題点など。

  • グローバル資本主義の傲慢さを感じる。
    やはりTPPはISD条項がねぇー。

  • 妙に説得力のある本でした。そしてこの本の内容が本当なら数年後に面白い展開になっているに違いないと思います。

  • 日本の企業は、日本の市場にもまれてこそ海外での競争力が身に付く。
    デフレから脱却すれば、日本は成長する。少子化などは関係ない。
    日本のモデルになりえる国は、ない。
    日本市場のガラパゴス化こそが、世界進出のカギ。

    デフレにはデフレ用の政策を、インフレにはインフレ用の政策を、するのが当然のこと。

    TPPは、インフレ用の政策である。

  • 今まで読んでみた経済関連の本とは真っ向から対立する立場で書かれた本。いかにも極論が書いて有りそうなタイトルだったので、別の立場を知る意味で読んでみた。

    グローバル資本主義に乗っ取る形で経済政策を進めてきた韓国の実態についてデータを見ることができる。ただ、データの見せ方とかタイトルに合うように不自然な比較でごまかしているところも多い。気をつけて読めば、グローバル資本主義の先端で何が起きてるか手っ取り早く知る良書なのかも。

    一方で日本についてケインズ主義に則った政策をとってこなかったから駄目なんだ、という。なぜかこちらについては避けられない資本のグローバル化について無視した観点で議論されている。基本的な論調としてはケインズ流に税金で公共事業、大きな政府、貿易への介入強化、などなど。

    経済については分析はできても、政策を考えるのはずっと難しい。

  • 韓国国内で生きることが不幸だからだ。韓国はグローバル化によって国内の賃金格差が広がり、ウォン安政策による輸出競争力は高まったものの、輸入価格が上昇したため、資源、食料などが高騰し多くの国民を苦しめている。

    韓国経済が抱えている問題はグローバル化した大手企業の利益と国民の利益が一致していないことに尽きる。

    かつてのソニーはなによりもまず国内市場に目を向けていた。国内の使いこなしスキルの高い消費者を相手にすることによって、極めて高品質な製品をるくる技術力を鍛え上げたのである。それこそが海外での競争力の源泉となった。

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著者プロフィール

東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒業。外資系IT企業、NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立、09年に株式会社三橋貴明事務所を設立した。
2007年、インターネット上の公表データから韓国経済の実態を分析し、内容をまとめた『本当はヤバい!韓国経済』(彩図社)がベストセラーとなる。その後も意欲的に新著を発表している。単行本執筆と同時に、雑誌への連載・寄稿、テレビ・ラジオ番組への出演、全国各地での講演などに活躍している。また、 当人のブログ「新世紀のビッグブラザーへ」の1日のアクセスユーザー数は7万人、推定ユーザー数は21万人に達している。2012年1月現在、人気ブログランキングの「政治部門」1位、総合ランキング2位(参加ブログ総数は約90万件)である。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/
主な著書に『国民の教養』(扶桑社)、『疑惑の報道』(飛鳥新社)、『2012年大恐慌に沈む世界 蘇る日本』(徳間書店)、『増税のウソ』(青春出版社)、
『三橋貴明の「日本経済」の真実がよく分かる本』(PHP研究所)などがある。

「2012年 『ユーロ崩壊!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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