夏の庭―The Friends

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 144
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198613594

作品紹介・あらすじ

おばあさんのお葬式から帰った山下が言った。「死んだ人って、重たそうだった」すると河辺が身を乗り出した。「オレたちも、死んだ人が見たい!」ぼくたち三人は、「もうじき死ぬんじゃないか」と噂されている、ひとり暮らしのおじいさんを見張りはじめた。だけど、見られていることに気づいたおじいさんは、だんだん元気になって、家や庭の手入れを始めた。やがておじいさんと口をきくようになったぼくたちは、その夏、さまざまなことを知った…。十二歳の少年たちの忘れがたい夏を描き、世界の十数カ国で話題を呼んだ作品。児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ミルドレッド・バチェルダー賞等受賞。小学校中・高学年から。

感想・レビュー・書評

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  • 一冊の本に沢山のテーマがある。けれどそれらは上手に関係し合い違和感が無いばかりか、お話に深みを持たせている。3人の少年達の忘れられない一夏には、私達大人が長い人生の中で経験した事、見聞きした事が凝縮されていた。一気に読み終えた。

    • hibuさん
      秋桜さん、おはようございます。
      この作品は自分の子供の頃に戻るようなノスタルジックな感じがとても好きな作品でした。
      最近、成人した子供たちに...
      秋桜さん、おはようございます。
      この作品は自分の子供の頃に戻るようなノスタルジックな感じがとても好きな作品でした。
      最近、成人した子供たちに読ませたいなぁと思っています^_^
      2023/04/22
    • yhyby940さん
      こんにちは。同じ著者の「ポプラの秋」も面白かったですよ。機会があれば、是非。
      こんにちは。同じ著者の「ポプラの秋」も面白かったですよ。機会があれば、是非。
      2023/04/22
    • りりうさん
      秋桜さん、おはようございます。
      私は違う表紙の夏の庭を読んだのですが、本当に比喩でなく、最後は涙しました。ぎこちなく心を通わせていくのが感動...
      秋桜さん、おはようございます。
      私は違う表紙の夏の庭を読んだのですが、本当に比喩でなく、最後は涙しました。ぎこちなく心を通わせていくのが感動的ですよね。秋桜さんは違うところで感動したかもしれないですが。
      本棚を覗き、夏の庭が登録されていたので感想を読ませていただきました。ありがとうございます。
      2023/04/23
  • こちらもブックトークの中の一冊。
    92年の刊行以来数々の賞を受賞し、映画や演劇にもなっているし、確か夏の課題図書になったことも。
    今年の夏もまた、日本中でどれだけの数の子どもたちがこの本を読んだことだろう。
    初めて読んでからもう20年という月日が流れたことに愕然である。
    20年の間に何があった?自分。この本でもっと感動したはずなのに。
    成長と言えば良いのか鈍化と嘆くべきところなのか、まことに難しい。
    話はあらすじを読んだだけで殆ど把握できるようなもので、予想はある意味裏切られない。
    再読すると、「死」に向かっていく過程での細かな逸話を盛り込みすぎで、「あざといなぁ」と思いながらも、やはり3人の少年たちのかけがえのないひと夏には感じ入るものがある。
    まさに作者の言いたいのはこの部分だろうから、狙いは外れていない。

    死ぬとどうなるの?と、確かに私も親に質問したことがある。
    何も見えないし何も聴こえないし、何も感じなくなると教わって、じいっと目を瞑って呼吸を止めシミュレーションしたことも。。。そして、案外怖かったものだ。
    まるで氷河を渡っていくような、亡くなった後の父の手。母の手。
    だめ、まだ逝ったらだめ、と無我夢中でその手を擦ったのも確かにこの私だ。
    「死」は常に「生」の隣にある。
    「死」を問うことを恐れてはいけないと、今改めて思う。
    それは他ならぬ「生」への執着であり、ごく自然なことなのだから。
    3人の少年が、人が死ぬのを見てみたいという思いつきは不純でもなんでもなく、そこから生まれた「老人観察」がいつしか「老人との交流」になっていく流れは、何度読んでも爽やかだ。

    終盤、3人のうちのひとり(山下君)に「もうお化けは怖くなくなった。あの世に知り合いができたんだから」と言わせる場面は秀逸。
    身近な誰かの「おくりびと」となったことのある者には、まさに代弁者のようなセリフだ。
    もう何も怖くないのだから、「死」の日まで精一杯生きないとね。
    生と死のみでなく、家族のあり方まで考えさせる内容で、それもこれも思春期だからこそこんなにも悩めるものなのだ。
    そんな郷愁のような感情も味わいつつ読了。
    でもやっぱり、少し盛り込みすぎ(笑)。

    文庫の方はすごいレビュー数で、いささか怖気づいてしまった。それだけ人気の作品なのね。

    • nejidonさん
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      なるほど、言われてみれば確かにそのとおりですね。
      誰もが疑問に思うことのはずな...
      だいさん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      なるほど、言われてみれば確かにそのとおりですね。
      誰もが疑問に思うことのはずなのに、正面から答えようとしている作品がないのかもしれません。
      少年たちの目を通して考えさせたというのも、新鮮だったのでしょう。
      小学6年生と言う年齢もいいですね。

      ちなみに先日のブックトークの場では、誰も読んだことのある子がいませんでした。
      読むきっかけになれたかどうか、微妙です。。
      2014/10/02
    • だいさん
      nejidonさん
      こんにちは

      死とは、
      身近な話題じゃなくなってしまったのかもしれませんね。
      nejidonさん
      こんにちは

      死とは、
      身近な話題じゃなくなってしまったのかもしれませんね。
      2014/10/05
    • nejidonさん
      だいさん、こちらにもコメントをいただいてありがとうございます!
      子どもたちが実に簡単に「死ね!」と罵りあったりするのですが、
      それもまた...
      だいさん、こちらにもコメントをいただいてありがとうございます!
      子どもたちが実に簡単に「死ね!」と罵りあったりするのですが、
      それもまた「死」について考えたことも無い証拠かもしれませんね。
      (あ、我が家の子の話ではありませんからね・笑)
      なんたって「いのちの大切さ」について学校で教えなければならない時代です。
      歪んでますよね。。。
      2014/10/06
  • 同級生のおばあちゃんが死んだ。
    小学6年生の夏のこと、山下と河辺、そして僕、僕たちは人が死ぬということ〝死んだ人〟に抑えられない好奇心を抱いてしまった。だから近所の〝もうすぐ死にそうなおじいさん〟の「観察」をすることにしたんだ。
    だけど少年らの期待に反して、日に日に死にそうじゃなくなるおじいさん。
    どうでもいいことに熱くなったり、喧嘩したり、叱られたり、幼い思考であれこれ考えたりと、少年らの日常が普通過ぎて実話かなと思うほど。
    始まりだけですでに終わりも見えてはいるのだけど、それまでの描写がとても丁寧かつ暖かい。
    風にそよぐコスモスが脳裏に揺れる。
    人はできればたくさんの人と関わって生きていったほうがいい。
    今年の26冊目
    2020.9.5

  • 小学6年生であるぼく(木山)と河辺と山下の三人組は、山下の祖母の葬式をきっかけに「死んだ人」を見てみたいと思うようになる。
    三人は、「もうじき死ぬんじゃないか」と噂されている、一人暮らしの近所のおじいさんを見張り始めるが…。


    高校生の時、学校の図書館で初めて借りた本がこれだったと思うのだが、全く読後の記憶がないため、当時さほど面白いとは思わなかったのだと思われる。四半世紀を経て読み直してみると、まあまあ面白かった。

    気になったところをざっくり四つ。

    一つは、欧米における(アメリカだけ?)ポリティカル・コレクトネスを指摘する人みたいな視点に度々なったこと。気になったのは人種差別的なことではなく、主に体罰的なことだが、教室で先生のチョークが飛んできたり、テストの点が悪かったからといって、母親からベランダのさんにくくりつけられてしまったり、サッカーの合宿で、ケンカをした罰として夜通し清掃を強いられたりという描写にいちいち引っかかってしまう自分がいた。
    子供の頃、授業中にサボっていて先生からチョークが飛んでくるという描写は漫画的な描写としてはよくあった気がするが(実際にそんな先生が存在したかはともかくとして)、それが事実として描かれると違和感しかない世界になっているのだな現代は、と改めて思う。
    母親のベランダのさんは児相案件だろうし、合宿での寝させないというのも虐待だろうなぁと思ってしまう。
    話の本筋はそんなところではないということはもちろんわかっているのだけれども、そういった細かいところに違和感を感じてしまう世の中に今はなっているということと、普遍に続いていると思っている世の中でも結構身近なレベルで変化しているのだなということを思った。(なんせ四半世紀経っているわけだし。)
    市の図書館でこの本が閉架に置かれていたことを、なんとなく納得してしまった。

    二つ目は、時折ひどくきれいだったり心をぐっと掴むフレーズが訪れるということ。
    これは単に感性の問題なのだが、好きだなぁと思うフレーズが度々あった。
    割とどうでもいいところで言うと、
    「山下は、一見いつものとおりだった。つまり、体育の時間はさか上がりが最後までできなかったし、国語の時間には漢字が読めなかったし、理科の実験ではプレパラートを割った。」というところ。(p10)
    山下のいつもどおりを表すのにプレパラートをチョイスするセンスが絶妙すぎてしばらくツボった。学生あるあるだし(むしろ中学生かも)、この一文で山下くんのキャラが強く印象付けられる上に、懐かしい小学校の校舎の雰囲気すら思い出させる。
    続いて、独居老人の孤独死についてぼくが思いを馳せるシーン。
    「どうなるんだろう。友達も家族もなく、もし何か最後の言葉を言ったとしても、だれにも聞かれることがなかったら。その言葉は部屋の空気の中をさまよって、やがて消えてしまうのだろうか。何も言わなかったのと同じように。「死にたくない」「苦しい」「痛い」「くやしい」「しあわせだった」そんなどんな言葉も。」(p19)

    以下、引っかかったところ列挙。
    「花が終わったあと、種をとっておいたはずだったことをぼくは急に思い出した。黒いつやつやした種の中に、赤や白や紫の花が眠っている。ぼくはこぼしてしまった種もひとつひとつていねいに拾うと、封筒の中に入れた。あの封筒は、どこに行ったんだろう。」(p92)
    「ずっと昔、ぼくがまだ小さい頃、死ぬ、ということは息をしなくなるということだと教えてくれたおじさんがいた。そして長い間、ぼくはそうだと思っていた。でも、それは違う。だって生きているのは、息をしているってことだけじゃない。それは絶対に、違うはずだ。」
    (p103)
    「時々、初めての場所なのに、なぜか来たことがあると感じたりするのは、遠い昔のだれかの思い出のいたずらなのだ。そう考えて、ぼくはなんだかうれしくなった。」(p162)
    印象的であったであろう箇所を列挙したが、箇条書きにした時の「これじゃない」感よ。きっと、作品中に収まっているのでなければ、列挙する意味など乏しいのだろう。
    この作者の言葉のチョイスが結構好みだ、という話。

    三つ目は、河辺くんのキャラの効果と有用さ。
    ぼくである木山と山下と河辺。三人ともそれぞれキャラがそこそこ立っていて存在感はあるのだが、特に河辺くんのキャラが突出していると思う。仲の良い友人である「ぼく」からすら「ちょっとおかしなやつ」と思われている兆しのある河辺くん。その根底にあるであろう彼の育ちや思い。エキセントリックな言動の中で、時折見せる彼の心の叫びに胸を突かれる。
    私にはとても魅力的に感じた。彼はどんな大人になっただろうか。

    最後に、物語の収束について考える。
    物語の途中まで、とても良い話だなぁと単純にワクワクしながら読んでいるのだが、最後はどうしてもこうなるよな、という幕切れで、その事実は仕方がないにしても、あるいは三年後、彼らの高校進学くらいのタイミングにしたらだめだったのかなぁなどと考えてみた。
    自分的には、それくらいの時間進行の方が落ち着け、救われるし、あるいは現実味もあるかもしれないと思ったのだが、その答えは14章の最後の一文に書き示されていた。
    「やがて乾いた音がして(略)、ぼくたちの夏休みが終わった。」(p208)
    一応ネタバレ防止のために中略としたのだが、この一文がなんとも秀逸だ。この一文の説得力の限りに於いて、この出来事が、小6の一夏の出来事でなければならないような必然性を妙に感じてしまうのだ。
    …そう考えて再度本を手にとって見ると、果たしてこの作品のタイトルは『夏の庭』であった。
    必然は普通にタイトルになっていたわけだ。

    実を言うと、命について考える、というおそらく向けられた(誰から?)テーマについては、あまり思いが及ばなかった。戦争の描写ももちろん心に残る場面ではあるが、あまりにもおあつらえ向きな気がしてしまうからだろうか。
    生と死という大仰なテーマであるよりは、ある小学生の回顧録的な読み方をする方が楽しめる気がした。ちょうどこの年頃であった頃の、今はもう存在しない様々な思い出が湧き上がってきて切ない。

  • 懐かしさがあり、自分の12歳のときのことを思い出した。
    庭の手入れをしたこと、スイカを丸ごと切って食べたこと、近所にはボロな家があったこと。今となっては遠いとおい思い出である。あらためて自分の過去を見て、懐かしさに胸が熱くなること少しアリ。
    物語自体は現代風に思える。(そうでもないか?今は2012年、子どもが老人に関心を示すことはないか?)
    記憶と記録を考えた。デジャヴのことではない。幽霊の名前でもない。分からないから、怖さを感じる、それは一理ある。記憶は、残せない。自分の知った事体験したことを、後世に残すことは出来ない、一代限りで消えていってしまう。思い出は美化される。自分の都合がよいように、変わっていく。また、変えてしまう。忘れてしまうことは、人の特権である。
    それを永く残すために、記録する、文学、音楽、美術、時代を越えて残る。時の流れと共に、時代に合わないものも出てくるが。
    本書で取り上げたのは、少年と老人の友情なのかな?高齢になれば子どもに還るといわれることもある。老人の生活の質が変わったことが、内容より読み取れたので、とても良いことであると考えた。今後の福祉や公共事業に伝えていきたいことである。

  • おじいさんが死ぬところを見たいという、児童書にしては突拍子もない出だしから始まりますが、少年たちの心の成長、おじいさんの生きがい見つけなど、見事に描かれた作品でした。

    現代の社会問題ともつながる地域の関係の希薄化を、少年たちが、お節介しながら周りの大人たちを支えているように感じました。

    子どもたちはもちろん成長しますが、大人も成長するんだと感じることができる1冊でした。

  • 一夏の出会い、思い出って感じの話。
    主人公は小学6年生の子たち。
    どうして夏って、こんなスペシャルな感じなんだろう?!
    なんだか懐かしい気持ちやら、素敵なおじいさんとの出会い・思い出が羨ましいなと。

    お好み焼き屋さんのシーンがなんだか素敵で印象的。
    予測通りおじいさんは亡くなってしまったけど、最後の最後できっと幸せになれたんだなと。
    それまではきっと孤独で生きる意味を見出せなかったのではないかと。

    ラスト3人は別々の道を行くけど、とっても清々しい!
    あー、夏・青春って素晴らしい!!

  • 3人の小学6年生の男の子達が、「死んだ人を見たい」という好奇心から、
    「死にそう」だと噂の(失礼な)、一人暮らしの老人を観察する話。

    しかし、観察されていることに気づいた老人は、逆に生き生きとし出し、少年達に庭の草むしりをさせ、スイカを切らせ、交流が始まる。
    子供って、こんな事を感じて成長するんだ、と新鮮だった。

    「だってオレたち、あの世に知り合いがいるんだ。それってすごい心強くないか!」

    名作だった。

  • 12歳の少年3人とおじいさんの交流。

    死んだ人を見てみたいという好奇心から、少年3人は近所に住むもうじき死にそうな、1人暮らしのおじいさんを見張ることにした。

    不摂生な生活をしていたおじいさんだったのに、少年たちが見張るようになってから、人が変わったように生活に張りを持たせるようになってきた。

    死んだ人を見てみたいという最初の気持ちとは別に、
    いつしか彼らの交流が始まり、少年と老人は親しくなっていった。

    おじいさんの戦争での体験、かつて奥さんだった人の捜索、自分たちの将来のこと、いつか終わる命。

    仲良くなった矢先の、おじいさんの死。
    1人の人が生まれてから、その命を終えるのを目の前にして、少年たちが思ったこと。

    ずっと読みたいと思っていたんだ〜、
    でもなかなか図書館で出会わなくて、結局偶然見つけたんだけど、児童書コーナーにあった。

    じいさんもっと長生きしてほしかったな。
    そしてもっと少年たちに色々教えてやってほしかった。
    河辺のキャラがうちの長男ぽかった。

  • これって昔映画であったなぁと
    映画は見てないので内容は知らなかったのですが

    3人の男の子(小学6年生)とおじいさんのお話

    死んだ人が見たい。3人はそろそろ死ぬんじゃないかと噂のおじいさんを見張ることに・・・
    張り込みがばれた子ども達とおじいさんの忘れられない夏休みが始まる

    6年生にも,大人にも読んで欲しい1冊でした

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著者プロフィール

1959年東京都生まれ。作家。著書に、小説『夏の庭 ――The Friends――』『岸辺の旅』、絵本『くまとやまねこ』(絵:酒井駒子)『あなたがおとなになったとき』(絵:はたこうしろう)など。

「2022年 『橋の上で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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