最愛の子ども (文春文庫 ま 20-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167914882

作品紹介・あらすじ

どれだけ賢ければ波風立てずに生きて行けるのだろう。どれだけ美しければ世間にだいじにされるのだろう。どれだけまっすぐに育てばすこやかな性欲が宿るのだろう。どれだけ性格がよければ今のわたしが全く愛せない人たちを愛せるのだろう。〈パパ〉日夏、〈ママ〉真汐、〈王子〉空穂それぞれのかかえる孤独ゆえに、家族のように親密な三人の女子高校生。同級生の「わたしたち」の見守る中、愛も性も手探りの三人の関係はしだいにゆらぎ、変容してゆく。家族、少女、友愛といった言葉の意味を新たにする、時代を切り開く作家・松浦理英子が到達しえた傑作。泉鏡花文学賞受賞圧倒的感動を呼んだ名作、待望の文庫化。解説・村田沙耶香

感想・レビュー・書評

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  • こんな友達たちがいたら面白かったんだろうなと思う。学生時代って一つ一つが大ごとで友達同士とごちゃごちゃと言い合うのが楽しかったんだよなあ〜。
    表現がいい意味で生々しく、秀逸で、世の中に疑問を持ちつつもまだちょっと未熟で、でもとても賢い女子高生たちの学生時代を覗いてる気分になった。

    200ページちょっとだけど中身はとっても濃い作品でした。

  • 書評を読んで面白そうと思い購入した本。思春期の女の子たちの家族ごっこ…言葉にすると何とも幼稚っぽい行動のだけど、その「家族」に付随する当事者たちや「目撃者」たちの感情や欲望が淡々と描かれ、それがこの小説に不思議な魅力を与えている。

  • 制覇はしていないものの、読んできた松浦理英子作品では一番好きだった。私もこの学園で過ごしたかった。あらゆるタグに囚われることなく友達を愛したかった。真汐と日夏には『ナチュラル・ウーマン』の容子と花世の面影があったけれど、彼女たちへの眼差しは温かく柔らかかった。

    それなりに物事の分別もつき、且つ社会に出る直前、教室の中で世界が完結する微妙な未分化を表すのに女子高生を主人公に据えること、真汐、日夏、空穂の関係性を見守るクラスメイトたちの距離感と「わたしたち」という主語、単語と関係性の再定義、全てが、上手いな〜とうっとりしてしまったのだった。

    とにかく真汐がいとおしくてしかたがない。

  • 『コンビニ人間』の村田紗耶香さんが解説で
    「家族」の中での肉体というものについて考えた、と書き、

    「大切な、信頼できる相手の前で、心地よく筋肉が弛緩すること。・・誰かの体温の中を安堵しながら漂うこと・・・
    身体が相手を家族だと認識し、そうした反応をするなら、現実での関係性の名前がどうであるかなど関係なく、肉体にとってその人は『家族』なのではないかと思う。」

    と書いている。

    夫の日夏、妻の真汐、王子様=最愛の子どもに空穂という三人の女子高生を中心に、家族関係を妄想する周りの友だちたち。

    どう定義できるのか分からなかった「家族」が、
    三人の肉体の反応を通して、村田氏が指摘するように
    とても鮮やかに浮かび上がったのには、本当に驚いた。
    しかも、とても清々しい。
    とても新鮮。

  • 2024/03/18-03/22

  • 懐かしい感じ
    女子校時代まさにこんな日々を過ごしていた。

  • 久し振りに”自意識の強い女子高生”視点ものを読んだ…
    そうそう、定期手に一定数こういうの出会うよね

  • 男女別学の私立高校の女子クラス。
    クラスメイトたちに〈わたしたちのファミリー〉と名付けられた3人と、彼らを囲む「わたしたち」の日常は、敵意や悪意のない(男子に対してはあるが)慕わしさに満ちた人間関係に彩られているが、その期限を意識しながら少しずつ関係性は変化していく。
    自分が共学育ちだからか、どこかファンタジックであり刹那的に感じた。

  • 中高一貫で男子と女子に分かれたクラス、女子クラスでは<パパ>日夏、<ママ>真汐、<王子>空穂の擬似家族が形成され、<わたしたち>は観察から得られた真実と空想の中から彼らを物語として語り継ぐ。
    奇妙な妄想めいた物語の語り口は演劇のようにも思える。
    ごっこ遊びの中から生まれる親密すぎるが故の危うい関係性、教室の中で完結する社会のあまく息苦しい密室感、<完璧な家族>を揺らがせる、『本物の母親』の介入を経て、やがて楽園は閉ざされていく。
    卒業=楽園からの追放 によって物語は終わる、と分かっていても、だからこそゆっくりと落下するかのように加速していく彼女たちの物語から目が離せなかった。
    誰しもにあった子どもであった頃のこと、<わたしたち>が彼らに投影した物語、彼女たちの中にあった愛や慈しみ。そのすべてを想うほどに甘く息苦しい。

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00604341

    どれだけ賢ければ波風立てずに生きて行けるのだろう。
    どれだけ美しければ世間にだいじにされるのだろう。
    どれだけまっすぐに育てばすこやかな性欲が宿るのだろう。
    どれだけ性格がよければ
    今のわたしが全く愛せない人たちを愛せるのだろう。

    〈パパ〉日夏、
    〈ママ〉真汐、
    〈王子〉空穂
    それぞれのかかえる孤独ゆえに、家族のように親密な三人の女子高校生。
    同級生の「わたしたち」の見守る中、愛も性も手探りの三人の関係はしだいに
    ゆらぎ、変容してゆく。
    家族、少女、友愛といった言葉の意味を新たにする、
    時代を切り開く作家・松浦理英子が到達しえた傑作。

    泉鏡花文学賞受賞
    圧倒的感動を呼んだ名作、待望の文庫化。

    解説・村田沙耶香(出版社HPより)

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著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松浦理英子の作品

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