- Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167914035
作品紹介・あらすじ
その男は、たった一人の井伊家再興の希望だった──。お前の“主君”はだれだ?人は何のために人に仕えるのか。家康に寵愛され、その苛烈さから「赤鬼」と呼ばれた井伊家第17代当主・井伊直政の生涯を、家臣・木俣守勝の目を通して描く。EXILE/三代目J SOUL BROTHERSの小林直己さんによる前代未聞、怒濤の1万字解説「苛烈で、繊細で、孤独で、その瞬間、一人だけ共にいた」を掲載。「『忠義とは何か。お前は誰に仕えているのか。そして天命とは』本書から投げかけられたこの問いに対し、現代を生きる我々と、僕自身のバックグラウンドであるEXILEを比較対象とし、答えを模索していきたい」(解説より)たった一人の井伊家再興の希望として、直虎はじめ一族の願いを一身に背負い、徳川幕府譜代筆頭にまで登りつめた直政。戦になれば大将自ら一番槍で突っ込んでいき、命を惜しまない直政に終始振り回されながらも生涯支え続けた守勝。対照的な性格から、守勝は直政に反発に似た感情を抱きながらも、我が身を守ることを知らぬ苛烈さに惹かれていく。その二人の今生の別れは、苦い悔いに満ちたものだった。数多くの作品が映像化、漫画化されている著者の初めての歴史小説が、大河ドラマに先駆けて井伊直虎を描いた『剣と紅』。これに続き、井伊家第17代当主・井伊直政を描いた歴史小説二作目。
感想・レビュー・書評
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家老目線というのが面白い。
剣と紅(同作者・養母直虎の作品)を読んでから読んだ。
徳川四天王は特に魅力ある面子でロマンがあるが、直政のことは更に好きになった。 -
井伊直政伝。
徳川四天王の一人、井伊家の祖。関が原で負傷し、家康が自ら薬を塗ったとか。井伊の赤備とか。
その程度の知識しかありませんでしたが、直政の腹心か朋友か、その中間か、単なる巻き込まれ役か、の木俣守勝の視線から描かれる直政や家康がなんとも面白い。
冴え渡る頭脳の持ち主でありながら、戦となると大将のはずが軍配をほったらかして最前線へ駆け出していく直政のせいで、事態の収拾に追われざるをえない守勝の、振り回されっぷりを感じるたびに、こっそり笑いたくなります。
超頭脳派の猪突猛進の武将って、理解不能。だけど、長い歳月のうちに、守勝は、何事かを感じるようになっていく。本能寺の変から関が原に至るまで、ひたすらに駆け抜けた直政に対する、守勝(と家康)の思いを感じてみる。 -
木俣守勝の目線から描く、井伊直政の生涯と、主君とは何か忠義とは何かを解く。
直政の生き様は、清々しくもあり、危うくもあり、とても熱いものもある。
後半の関ヶ原への件からは、ハラハラしながら読み進めた。 -
井伊の赤鬼と恐れられた有能な戦国武将、井伊直政の生きざまを、彼に反発しながらも付き従った木俣守勝の視点で描いた一冊だ。
同じ著者の作による、直政の育ての母であり女だてらに地頭を務めた井伊直虎の物語を読んでいたため、なんだか直政に親近感を抱いて読み始めたが、語りである守勝により一層親しみを感じ、楽しく読んだ。
直政はこの時代だからこそ許された暴君に近い人物だったのではないかと感じるエピソードも多いが、コミカルに描かれているやりとりがちらほらと出てきて、重苦しさは感じない。
戦国時代の人たちの生きざまは、現代から見ると破天荒で、理解できないような美学もあったりするのだけれど、それが魅力的なんだなと改めて思う。 -
井伊直政に仕えた木俣森勝が主人公の小説。武士の奉公を通じて、主君とはどういう存在なのかを主人公が考えていくのが面白い。
個人的には井伊直政が徳川軍の筆頭家臣として、歴史の転換点で重要な役割を果たしたことが、興味深かった。例えば、小手長久手の戦いで豊臣軍に勝利した徳川軍は、豊臣からの和平を拒否しようとする。しかし、井伊直政はこれが豊臣政権からの挑発であることを見抜き、和平をすることで、豊臣政権と戦争せず兵力を減らさないで住むと家康に進言し、このタイミングで北条氏との同盟を強めるよう提案する。もし、この進言がなければ、家康は秀吉と再度戦争をして、大幅な戦力ダウンになり、ひいては天下統一ができなかったかも。
また、小田原合戦のときにも命令を無視して一番槍で攻撃に出る。これが結果として、北条家の動揺を生み出し、秀吉の勝利へと繋がる。
そして、なんと言っても関ヶ原の戦いで井伊直政が果した役割はデカイ。豊臣秀吉側にいた黒田官兵衛を調略し、黒田官兵衛から加藤清正など有力な家臣を家康側へ取り込んだ。関ヶ原の合戦は東軍が西軍の将軍を囲い込んだことが勝因の一つとされているが、井伊直政が居なければ、ここまでスムーズに交渉が進まなかったはずだろう。