『罪と罰』を読まない (文春文庫 み 36-50)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913205

作品紹介・あらすじ

読まずに読む!ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことのない四人が、果敢かつ無謀に挑んだ「読まない」読書会。単行本刊行時に大きな反響を呼んだ前代未聞の試みに、岸本佐知子の「文庫版あとがき」矢部太郎の「解説マンガ」を加え、パワーアップして文庫化!「読む」愉しさが詰まってます。目次読まずに読む 吉田篤弘読まない! 未読座談会・其の一読むのかな… 未読座談会・其の二読んだりして… 未読座談会・其の三『罪と罰』登場人物紹介 三浦しをん記憶の謎と謎の影絵 吉田浩美『罪と罰』あらすじ 三浦しをん読んだ! 読後座談会読むのはじまり 三浦しをん読まないを読む、何度でも 岸本佐知子解説マンガ 矢部太郎

感想・レビュー・書評

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  • 『罪と罰』ね?誰もが聞いたことがある作品名だ。
    そういえば「〇と△」と言う題名の本って結構あるなと思った。
    海外の作品だと「罪と罰」のほかに、トルストイの「戦争と平和」、スタンダールの「赤と黒」、ヘミングウェイの「老人と海」などが有名だ。
    有名だけれども、読んだ人はあまりいないのではないかとも思う。
    私もこれらは読んでいないし、今でも読みたいと思わない。
    何故かと言うと、登場人物のカタカナの名前が覚えられず誰が誰だかわからなくなってしまうのだ。

    まあ、それは置いといて、この本を読みたいと思ったのは、4人の著者に尽きる。
    特に岸本佐知子さんと三浦しをんさんが会話するとどんな展開になるのかが楽しみで「罪と罰」なんて正直どうでもいい。

    ですが、岸本さんは最初と最後の部分を英語訳版を読んで翻訳しているし、吉田浩美さんは子供向けに作られた15分ほどの影絵作品を見ておおよそのあらすじを知っている。
    きちんと読んではいなくても、この4人なら何となくどんな物語かを何処かで耳にしている。

    座談会は、三浦しをんさんが暴走しがちで、吉田篤弘さんがその暴走の軌道修正する感じになっている。
    岸本さんはと言えば、三浦さんの妄想の火に油を注ぐ感じで進行係的な役回りになっている。

    それにしても登場人物のほとんどがデブだと決めつけたり、「きっと、こうに違いない」と次から次へとよく想像できるものだ。

    そして実際に「罪と罰」を読んだ後、三浦さんと岸本さんが2人そろって「出てくる人、みんな頭がおかしい」と言って共感しあっている。
    だから「超面白い!」となる所がこの2人の人柄を表しているようで微笑ましい。
    「罪と罰」を読んだ後の4人の「あーだこーだ」の座談会(というか雑談)のパートの方が面白かった。

    「『罪と罰』を読まない」を読んで、「罪と罰」を読んだ気分になりました。

  • 内外ともに、いわゆる「名作」がとにかく苦手だ。
    今から40数年前は、『罪と罰』『車輪の下』を最初の1〜2ページから先へ読み進めることがどうしてもできなかった。

    太宰治は3作品くらいは読んだはず。

    『坊ちゃん』『智恵子抄』『塩狩峠』は読んだ。
    我ながら「名作」のくくりがいまいちいい加減だ。
    他にも読んだ作品はあるかもしれないが、大昔のことなので覚えていない。
    苦手意識だけははっきりしている。

    今から約10年前には、『カラマーゾフの妹』(高野史緒著)という小説を読んだが、そもそもの『カラマーゾフの兄弟』を読んだことはない。
    また、日本人に生まれたからにはと『源氏物語』(瀬戸内寂聴著)を読破しようとして1巻だけで挫けた。

    『老人と海』は日本語と英語の両方、長年所持しているが、何度も何度もトライするも、やはり最初の数ページ以降に進めず。
    あんなに薄いのに。

    近年では芦田愛菜ちゃんの『まなの本棚』を読んで『あしながおじさん』にトライするもすぐに挫折。
    もう一生読まなくていいやと決めた。

    齋藤孝氏の『読書する人だけがたどり着ける場所』を読んで『オイディプス王』(ソポクレス著)というものをなんとか読んだ。(これも薄い)

    これと同じ古典新訳文庫シリーズなら読めるのではないかとシェークスピア(割と薄い)を図書館の本棚で手に取ってペラペラとめくってみたが、借りる気にならず。

    思い返すも、情けない遍歴である。

    で、本書。
    作家という職業に就いていらっしゃる方々は「名作」の数々を、作家になるより前の、人生の早い時期に当然読破している側の人達なんだろうと勝手に思い込んでいたのだが、どうやら違ったようだ。

    本書の最初のうちは面白い趣向だなと読んでいたが、途中から飽きてきた。
    「立会人」である編集者の方から少しヒントをもらうというルールだけなら良かったのだが、吉田浩美氏がちょいちょい、いきなりのネタバレをぶっ込んでくるのがなんとも心情的に受け付けられず。
    そしてヒントとして挟まれる『罪と罰』の本文もやっぱり苦手。
    座談会を、ものすごく読み飛ばした。

    後半の『罪と罰』の登場人物紹介、全内容、読後座談会は、少し飛ばしながらも読んだ。

    私にあらためて【『罪と罰』を読まない】と強く決意させてくれた本書には、ある意味感謝。

  • 『罪と罰』の主人公、青年ラスコーリニコフをつかまえてのっけから訳者の岸本佐和子さん、
    「主人公が超ニート野郎なんですよ」
    きゃはは~さすがのドストエフスキーも真っ青だな。

    『罪と罰』を読んだことがないという作家・翻訳家4人に、作品の目次と全体のページ数、そして小説の冒頭や中途の章で好きなページをちょっとだけお披露目(朗読)する。4人にヒントの飴玉を与え、それをなめながら犯人ならぬ、小説の全体像を解明していくという、それほんと?? と言いたくなるような、まさに舐めた座談会で遊んでいるからおもしろい。

    もちろん『罪と罰』の表題は知っていても、実際に読んだことはないという読者をターゲットにしているのだろうけど、そもそも読んだことすら忘れるほど前に眺めたわたしのような人も射程に入っている。おそらく学生時代あたりに読んだきりの記憶は、脳内のどこか深淵に沈殿したまま埋もれ、あるいは別の記憶と絡まってクラゲのようにどこぞを浮遊していて、読んだことがない人とさほど変わりはない。だから読んでいて、「うぎゃ~そうきたか!」という可笑しさなのだ。

    とはいえ、4人ともさすが作家だ、と思わせる奇天烈なイマジネーションに感心する。しかも作品の分量と配分へのこだわりは尋常ではない。作品全体のページ数、章ごとのページ数、このあたりに起・承・転・結のどの部分がくるはずで……といった、ある種の職業病というか、プロの勘どころのようなものが炸裂して興味深い。まるで患者から病状をきいた医者が因果関係を慮り、犯罪事実から弁護士が量刑相場を推し量るような感覚なのかも……みょうちきりんな想像をしながら楽しんだ。

    このところ、学生時代に読み散らかしたドストエフスキー作品、無残に途中放棄したもの、結局読んでない作品世界を散策している。時の試練に耐えてきただけに、滋味に溢れていて、若いころでも大人でも、おそらくどの歳になってながめても、まるで初めて読むようなわくわくとした感覚やみずみずしさがある。これこそ古典の不思議なたたずまい。

    ただロシア小説の頭痛の種は、どの歳で読もうと、作中人物の呆れるほど長たらしい名称のほかに、愛称や尊称、卑称などがこんがらがってしまうことだ。なので冒頭20ページほどの間に登場した人物の名前を付箋にメモして表紙裏にでも貼っておけば、長編のさなかに「これは誰なん?」というときも心強い。
    ということで、次なるむちゃぶり企画を期待している。「高等遊民」超ニート男が登場する夏目漱石なんてどうだろか♬(2021.10.23)

  • 読まない、というか…部分読みしつつ、推理する。
    新しい読書会みたいなもの、かな?

    4人の想像が当たったり当たらなかったりで面白い!この本が楽しかったのと、『罪と罰』を読むか読まないかという問題は別なので…私はきっと読まないと思う。やはり本編は陰鬱とした面倒くさい類のロシア文学なのだろうなぁという予想。

  • 読んでないのに、推理してどうするんだ。
    と思いながら、読む。
    もうねえ、『島耕作』とか『slam dunk』式とか、なぞらえ方から笑えるんですよ。
    (と思ったら私のレビューも『デスノート』になぞらえてんじゃん、怖!)

    ラスコーリニコフはきっとこういう理由で、お婆さんを殺したんだとか、ソーニャのことは単に見た目で選んだんだとか、小説のページをランダムに朗読しながら、わちゃわちゃしてるのが楽しい。
    あー。こういう会、ありだなー。

    で、結局のところは読むのですよ!(笑)

    その後、もう一度集まってわちゃわちゃするんだけど、ほぼ満場一致でスヴィドリガイロフ推しに変わってるところが笑える。
    最後に矢部太郎のあとがき漫画が挟まれていることも、訳分からんテイストに仕上がっている。
    (個人的には、吉田浩美が影絵影絵言うのを、影絵原理主義と言い表わした一コマが、非常に気に入っています)

    ただ、これが一冊として成立するのは、『罪と罰』が想像の斜め上を突っ切る作品だからなんじゃないかなと思う。
    一見、読んでたら格好よさげに見られ本で損してる所はあると思うけど、読んだら「ある意味」すげぇ本読んだな、ってなんか達成感があると思う。
    でも大人が読むより、中高生の方がきっと味わえる。

    そんなわけで、この本を『罪と罰』の横に配置して欲しい。
    相手は新潮と光文社だけど。
    この機会に文春でも新訳だしたら良いのでは、ちょっとライトな訳にしても面白いと思う。

  • 未読座談会という、(立会人以外の)出席者全員が本を読まずに参加するという、『読んでない本について堂々と語る方法』をやってみたという記録本。

    実際には、冒頭と結末を数ページずつ読んでからでありましたが、想像力が膨らんでどんどん空想の話が進んでいって面白い。小説家と自分の距離感を感じざるを得ませんでした。

    ときどき、想像力に置いてけぼりにされながらも、実際に自分も本で読んだことがないので、こういう話なのかな、と何度か振り回されました。

    読んでは忘れを繰り返しながら、新しい本を読み続ける自分にとっての、「読む」という行為は一体どんな意味があるのだろう。

    忘れてしまうのでは、むしろ無駄なのではないだろうか、とすら思えるけれど、読むことの意味についてのなんとなくのヒントが、巻末の三浦しをんさんのあとがきに書かれていて、深いなぁと思いました。

    『もしかしたら、「読む」は「読まない」うちから、すでにはじまっているのかもしれない。 世の中には私がまだ手に取ったことのない小説が無数にあります。…それらはいったい、どんな小説どんな物語なのか。愛と期待を胸に思いめぐらせるとき、私たちはもう、「読む」をはじめているのです(P290)』

    読書は終わりなき旅といいますが、それは色んな本を渡り歩く意味だと思っていました。
    しかし、それだけでなく、一冊の本のことを何度も思い出しながら、これからの人生を生きていくことも意味するのではないでしょうか。

  • 本書はネタバレNGな本だと思うのでさわりだけ。

    『罪と罰』を読んだことがない4人( 岸本佐知子 三浦しをん 吉田篤弘 吉田浩美(敬称略))が、「読まずに推理」「少し読んで推理」「読んでから感想を語る」という順で『罪と罰』に迫っていく座談会を開催する。

    岸本さんの「主人公が超ニート野郎なんですよ。」(P15)という切れるナイフのような一言で始まり、「捨てキャラ」や「ばばあ」などかつてロシア文学を語るときにおおよそ使われたことがないであろう言葉が飛び交う。
    再読するときは爆笑しちゃうだろうなぁ、これは。

    結論としては『罪と罰』はエンタメ!ということを知ることができて良かった。

    ************************************************************************
    『罪と罰』、なぜか14歳のときに手に取っちゃったんですよねえ。もちろん「この本意味わからない。」で終わりました。それまでは難しい本は読んでいなかったので読書というと「作者と分かり合えない=分からない」だったのに「まったく理解できない=分からない」読書が存在することを知りました。

  • ドストエフスキーの『罪と罰』を未読の4人が、『罪と罰』を読まぬまま、ストーリーを予想し、語りあう読書会の記録。

    このコンセプトを聞いたときに「なんて無謀で面白そうな…」と思い、文庫化されたのを機にいつか読むべく購入、積読。で、やっと読み終わりました!
    読みながら何度噴きだしたものか。声をあげて笑うたび、家で読んでいてよかった! 電車で読んでたら社会的にしねるわ…と思いもしました。読みだしたら止まらず、ほかの本を読んでいてもほかの作業を進めていても、気がつくとこちらに手が伸びる。何これこわい。
    『罪と罰』未読でよかった、と喜び、そしてこれは『罪と罰』をしっかり読んでからもう一度この読書会を読み直さねば…と心に誓い、『罪と罰』と同様に何度読んでも楽しめそうな本でした。

    三浦さんの推理が自由すぎて、同じ未読者であるにもかかわらず「いや待て、それはさすがにないだろ」とツッコミいれまくりました。
    その一方で名言も続出で「たいていのロシア人は太っている可能性がある」とか、何という真理。

    『罪と罰』を未読のかた、ぜひ『罪と罰』を読む前にどうぞ!
    既読のかたにも騙されたと思って読んでいただきたい。
    ひたすらに引力も重力も圧倒的な本に振り回される体験を満喫しました。

    しかし、こういった時間や体験を共有できる読書仲間がいるって素敵ですね。羨ましいです!

    ※カテゴリは「笑」かなとも思ったのですが、物語の水先案内と解釈してこちらに入れました。

  • ロシアものは自分に酔う
    こんな本読んじゃってる自分を想像するだけで満足してるかもしれない。
    何冊か読んで途中棄権してる本もあるが、罪と罰も上下巻で揃えて読むタイミングを逃している。

    そこにこの本があると知り、こちらを読んだら読む気になるのか…?なんて
    ちょっと遠回りしてみることに。

    結果、四人の読書会がエッセイのようでもあり
    とてもハマってしまった。
    作家さん達であるから、書き方や持って行き方なんかも自分と比較したりする、そんな会話もめっちゃ楽しい。
    罪と罰を普通に読んでいたらこうは思わなかったと思う。

    ロシアものは難解だ
    だって人の名前も日本人にはとっつきにくい発音(発声)
    それでいてあだ名が二つ三つ出てきたり
    例えば、太郎さんを、父は太郎兵衛と呼ぶがははあはタロちゃんと読んだりする、それが物語の中で出てくると同一人物なのかなんだかわからないまま読んでいてなんだそうか!というのがある。

    ドストエフスキーをドストと言うこの四人。
    ああ、そんな感想持っていいのか、私だけじゃなかった、などなど
    共感に溢れてこれから罪と罰わ、読むより楽しみが増した。

  • 職業柄、罪と罰を読んでないって大きな声で言いにくいけど、読んでない4人が、読まないであーでもないこーでもない、一部読んでさらにあーでもないこーでもないと。
    そして、読んでからまた集まって。
    罪と罰を読みたくなるような、というよりも、この仲間でお喋りしてるのを横で聞いてるのが面白いって感じ。

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著者プロフィール

岸本 佐知子(きしもと・さちこ):上智大学文学部英文学科卒業。翻訳家。主な訳書にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、リディア・デイヴィス『話の終わり』、スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』、ショーン・タン『セミ』、アリ・スミス『五月 その他の短篇』。編訳書に『変愛小説集』、『楽しい夜』、『コドモノセカイ』など。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』(講談社エッセイ賞)、『なんらかの事情』、『死ぬまでに行きたい海』など。

「2023年 『ひみつのしつもん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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