世界を売った男 (文春文庫 チ 12-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911829

作品紹介・あらすじ

第二回島田荘司推理小説賞受賞作。台湾の出版社が企画し、島田荘司が選考を努める、華文(中国語)による本格推理小説の新人賞を受賞したのは、香港の新進気鋭、陳浩基(サイモン・チェン)。最先端と前近代の町並みが混在したエネルギッシュな過密都市を、「記憶を失った男」が、事件の真相を追って失踪する。秀逸な構成、驚愕の結末。アジアに新しい「新本格」ブームの幕が開いた。車の中で目覚めた刑事。つい先日起きた夫婦惨殺事件を捜査していた・・・はずが、警察署に出てみれば建物も顔ぶれも全く変わっている。そこに現れた女性記者から、事件は6年前に起きたもので、その犯人は逃走中に事故死、事件はすでに解決している、と知らされる。自分は6年間の記憶を失っている? 何故? しかし、刑事には何故か確信があった。「死んだ男は、真犯人ではない!」事件の真相を求め、女性記者とともに香港島、九龍、新界と、かつての事件関係者を訪ね回る。次々に出くわす意外な事実、そして不可思議な違和感。自分の記憶はなぜないのか、なぜ自分は「真相は別にある」と知っているのか。そして、自分は何者なのか。どんでん返しの連続、アクロバティックな謎解き。これぞ新本格ミステリーの誕生、という新鮮な感動を、我々日本人はこの一冊で思い起こすことができるだろう。そして、主人公の「アイデンティ・クライシス」は、今の香港に生きる作者の切実なテーマでもある。今年、陳浩基の新作「13・67」は大きな話題となり、ウォン・カーウァイが映画化権を取得した。返還から中国支配により激しく変化する香港の歴史を辿った連作集だ。激動を香港をリアルタイムで活写している陳浩基のメジャーデビュー作に、改めて注目が集まる。

感想・レビュー・書評

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  • 種明かしにちょっと無理目なところはあるのだけど、筆力でねじ伏せた感じ。

  • ひどい二日酔いとともに車の中で目覚めた主人公は6年間の記憶を失っていた。刑事である自分が追っていた事件と関わりがあるのか…? 何とも魅力的な謎で、かつての島田荘司作品のような疾走感。それもそのはず、第2回島田荘司賞の受賞作品なのだ。個人的には解決編が一捻りくらい多すぎるような印象だけど、まさに本格ミステリ。最後の一文には、思わずニヤリとしてしまった。実に見事!

  • こういう構造のミステリーと文章の相性がとても良くて引き込まれているうちになんとなくの結末まで予想しはじめるがそれ以上のところに決着がついて大満足。

  • 香港旅行時の記憶がよみがえる。
    個人的には硬派な作品だと思っており好きです。

  • 恩田陸さんのエッセイ集で知り読んでみた。
    舞台が台湾なので地名や街の構造がわからないのだけど、Googleマップで調べながら読み進めたりしてたのしい。
    すべてがわかったときに脳みその情報が上書きされて認識していたなにもかもが一瞬で変わるのがいい。

  •  最後の最後で駆け上がり急展開を迎え、誰が誰だか嘘をついているのか本当なのか混乱しながら読み終えました。最後の1行がわからず終えてしまったので他の方のレビューをみながら再読しようと思います。
     個人的には13・67より断然面白かったです。

  •  2年程前にYahoo!ニュースで紹介されており、気になって購入しました。再読して改めて感じましたが、一言で言うと、いやあすごいミステリ小説だ、と思います。特に後半の展開には驚きっぱなしでした。まるで映画を見ているかのよう。

     刑事の許友一は朝起きるて、気づくとなぜか記憶がない。署に戻ると丁度自分に来客で、6年前にすでに解決したはずの事件について記者の盧沁宜が取材したいという。。。なぜ記憶がないのか、そしてそもそもその事件の真相とは・・・!?あとはご自身でご確認ください笑

     今回の小説のテーマの一つが記憶、です。記憶というのはかなり重要なアイデンティティだと思います。名前や所属団体にアイデンティティを感じることも多いと思いますが、記憶は中でも最も重要なアイデンティティの一つだと思います。そのアイデンティティを失ったとしたらそのインパクトはどのようなものでしょうか。
    また、思い込みとか勘違いというは我々の日常にままあることですが、事実と異なる記憶を本物として思いこんだとすると人はどうなるのか。
     これだけで大分ネタを明かしてしまったようで申し訳ないのですが、この記憶の妙を上手に使ったのは本作の面白さだと感じました。

     また本作は筆者が日本文化に結構通じていることを思わせる部分(古畑任三郎や青島刑事等)が散見され、日本人としては筆者にちょっと親近感がわいてしまうところです。また、筆者が香港人ということであり、香港の様子が細々と記述されています。香港に行ったことのあるかた、住まわれたことのある方は懐かしみと共に楽しめると思います。

    ・・・
     
     まとめますと、非常に面白い推理小説でした。展開も良し、記憶など人間のアイデンティティにかかわる深いテーマも仕掛けられており物語に深みを与えています。香港という土地柄の描写も旅情を誘います。そして最後に大事なこと。アジアの推理小説という新しい世界に出会うことができます。題名が世界を売った男ですが、私には新しい世界がひらけました、おかげで笑

  • 同作家の大ヒット作、''13・67''よりは読み易さと楽しめる小説でしたが、最後の最後でこんな展開あり? みたいに思う。動機は、どうであれ二重人格でしたってなると何でも出来るし推理の仕様が無い。面白い内容には間違い無いです。

  • 最後の一行の意味がわからず、皆さんの感想を読み漁って、やっと納得しました。
    私のようにわからなかった方は、最初に戻って読んでみて下さい。
    全体的に映像向きな面白さでした。もう一作つんでるので、また読みます!

  • 香港の作家なので、とっつきにくいところがあるかなと思いきや 全くそんなことないばかりか、好みのタイプの小説だった。香港の街の情景が目に浮かぶ。これ読んだ勢いで、即「13•67」を入手。
    初 陳浩基。 

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著者プロフィール

●著者紹介
1975年生まれ。香港中文大学計算機学科卒。台湾推理作家協会の海外会員。2008年、短篇「ジャックと豆の木殺人事件」が台湾推理作家協会賞の最終候補となり、翌年「青髭公の密室」で同賞受賞。2011年『世界を売った男』で第2回島田荘司推理小説賞を受賞。2014年の連作中篇集『13・67』は台北国際ブックフェア大賞など複数の文学賞を受賞し、十数ヵ国で翻訳が進められ国際的な評価を受ける。2017年刊行の邦訳版(文藝春秋)も複数の賞に選ばれ、2020年刊行の邦訳の『網内人』(文藝春秋)とならび各ミステリランキングにランクインした。ほかの邦訳書に自選短篇集『ディオゲネス変奏曲』(早川書房)がある。

「2021年 『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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