希望荘 (文春文庫 み 17-14)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911676

作品紹介・あらすじ

今多コンツェルン会長の娘である妻と離婚した杉村三郎は、愛娘とも別れ、仕事も失い、東京都北区に私立探偵事務所を開設する。ある日、亡き父が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調べてほしいという依頼が舞い込む。依頼人によれば、父親は妻の不倫による離婚後、息子との再会までに30年の空白があったという。はたして本当に人殺しはあったのか――。表題作の「希望荘」をはじめ計4篇を収録。新たなスタートを切った2011年の3.11前後の杉村三郎を描くシリーズ最新作。『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』に続く人気シリーズ第4弾。

感想・レビュー・書評

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  • 杉村三郎シリーズの第4弾。ドラマで小泉孝太郎が演じていて、すっかりファンになっている杉村三郎シリーズ。
    第4弾は短編集で、時系列がちょっとややこしくて、
    「聖域」「希望荘」は、実家から東京に帰って古家で探偵事務所をしている時の話で、「砂男」は離婚して実家に帰っている時の話、そして「ニ重身」は3.11の震災で、古家が危険になったので、新しく大家さんの竹中宅に間借りしてからのお話、になっています。
    今回、とても思ったのは、杉村さんが底なしのお人好しなので、周りでフォローしてくれる人たちがどんどん増えて、とても人間関係が面白く、魅力的になって来てるなぁということです。
    オフィス蠣殻の所長さん、ネットに強い木田ちゃんをはじめ、ビッグマムの竹中夫人、その息子のトニーこと冬馬くん、依頼者の息子の相沢幹生くん、私が気になっているのはオフィス蠣殻の調査員で折り紙マイスターの南さん。その他たくさんの人が杉村さんを支えてくれている。あ、「侘助」のマスターもいますね〜
    割り切れないお話もあるけど、そういう魅力的な人たちが、少し癒してくれるように思います。
    次の第5弾も楽しみです♪♪

  • 杉村三郎シリーズ4弾。連作の4話収録…100ページ、150ページの中編。お人好しで賢明な常識人である杉村三郎の人生を一緒に歩むこのシリーズのすっかり虜♡

    【以下、シリーズ未読の方※ネタバレ※】 
    人生次のSTEPに進むことになった三郎は、探偵事務所を構え、そこへ事件が舞い込んでくる。

    勘当同然だった実家に帰った時の家族のありがたみ、杉村家の人達の人物像も膨らみ愉しめた。

    その反面、事件には人のエゴや人生の哀しみを含ませ、読まされる。東日本大地震にまつわる事件もあり、必ず社会と繋がる話に終始する。さすが!

  • 杉村三郎シリーズ 第4
    しまった順番まちがえてしまったらしい。
    離婚してることにびっくり。

    ○聖域
    死んだと聞かされていたアパートの住人を見かけたご近所さんからの依頼。
    そのおばあちゃんの消息をさぐる。
    娘が本当にイヤな感じ。モヤモヤいらっとする。

    ○希望荘
    老人ホームの入居者が死んだ。
    死ぬ前に昔、殺人事件を起こしたことがあるかのような発言をしていたことを気にした息子からの依頼。
    おじいちゃんも、息子さんも、家族がみんないい人でした。
    次男の相沢幹生は他のはなしでもちょっと名前だけ登場する。

    ○砂男
    離婚していて一時実家に帰っていた頃のお話。
    近所の蕎麦屋の仲良し夫婦の夫が
    不倫で駆け落ちした。
    その真相は…。
    これが探偵になるきっかけなのかな。

    ○二重身
    東日本震災時、行方不明になったカジュアル骨董屋の店長を、付き合っていた母子家庭の娘からの依頼で行方をさがす。
    震災は関係なかった。隠れ蓑となっていただけだった。
    幹生から紹介された。
    幹生の交友関係どうなっとるん?と心配になっちゃうなぁ。
    いいこなのに。

  • 「誰か Somebody」「名もなき毒」「ペテロの葬列」に続く、杉村三郎シリーズの4作目。短編というには長い中編4作で構成されている。中では、「二重身(ドッペルゲンガー)」が、私は一番好きだった。ミステリーとしても、一番よく出来ていると思った。
    前作「ペテロの葬列」で離婚した主人公の杉村三郎は、しばらく、郷里の山梨県で過ごすが、あるきっかけで上京し、私立探偵となる。新米私立探偵に多くの依頼がある訳ではなく、依頼は知り合い、知り合いの知り合いといった人たちからのもの。しかし、それらのうち、いくつかは思わぬ大きな事件に発展してしまう。
    杉村三郎シリーズは、次作の「昨日がなけらば明日もない」が最後だと思う。早く読みたいような、読むのを先延ばししたいような。

  • 安全、安心の杉村三郎シリーズ4作目。
    Audibleナレーター井上悟さんの声が、馴染んだ布団のように聴き心地が良い。この作品に触れている間、脳内は幸せいっぱいに満たされる。

    小説を読んでいると、ふと老後の準備をしているような気分になることがある。宮部さんの作品は特にそう。別に具体的ではなく気持ちの問題で、将来像から逆算して自分の現在地を測っているような錯覚に陥る。これはなぜだろう。

    主人公は離婚、転職と人生ステージを変え、選んだ道は私立探偵。おかげで苦手な短編仕立てにはなってしまったけど、探偵・杉村三郎という宮部さんが好き(と信じている)理想キャラを通して人との接し方を見ていると、どうしようもなく楽しくなるのだ。
    杉村は絶対に人を貶めない。相手との間にきちんと線を引き、またぐことなく同調していく。私は弱いので簡単に人を切ってしまう。コイツは嫌ってくるな、とか自己中だな、とか理由は何でもいい。自分が守れればそれでいいからだ。こうやって書いていても彼我の差には愕然となる。
    ところで公立探偵っているの。警察のことなのかしらね。

    人間臭くはあるのだが、内なる成熟、とか謙虚というのかなあ。言葉にするとごく当たり前のようでも、そこには言外の深い広がりがあることを教えている。
    そんな気がする。

  • シリーズ物だったから買った一冊。

    4作品の短編集だった。

    シリーズ物は読み始めたら好き嫌い関係なく読み続けないと気持ち悪いのでこの小説を買ったが、
    やっぱりこの主人公があまり好きになれない。

    いい人で頭も良く常識もある。
    そこまではいいが、なんとなく人生に余裕がある。
    やる事に失敗が少なく、失敗してもうまく行く。
    何かトラブルがあってもうまくいく。
    そんな感じが好きになれない所だとおもう。

    でも短編はどの作品も楽しめた
    ただ主人公が好きになれないだけ。

    まだシリーズが後一冊買ってある。
    ちょっと時間をおいて読んでみようと思った小説でした。

  • シリーズ物とは知らずにいきなりこの4作目を読んでしまったので、面白さを十分に感じることができませんでした。きっと1作目から読めば各登場人物に愛着が湧いて、もっと面白く読めるんだろうなあと少しもったいない気分です。
    この本は短編のミステリー小説なのですが、各物語のトリックは現実的な物ではなく、腑に落ちない感じでした。

  • シリーズ物だけど、初めて見た作品。
    おもしろくスラスラ読めた!

  • 杉田比呂美さんの表紙でてっきり若竹七海さんのつもりで購入…宮部さん久々に読む。すぐ話に引き込まれる語り口はさすが。ほろ苦い結末が切ないが杉村三郎シリーズを遡って読もうと思った。

  • 杉村三郎シリーズ第4作目。1〜3作目とは環境がガラッと変わる。3作目の「ペテロの葬列」のストーリー最後での離婚により今多コンツェルン会長の娘婿でもなくなり、退職により大会社の会社員という安定した地位も失っている。
    そして今作は山梨の実家や姉夫婦に世話になった後、東京で探偵事務所を設立して探偵業を生業にしていくことになったその経緯と依頼された調査4点(短編4集)を解決する話である。
    調査依頼の内容も、独立してからの依頼は「死んだはずの老女を見かけた人からの調査依頼」だったり、「過去に人を殺したと亡くなる前に告白した老父親の息子からの調査依頼」だったりする。いづれも意外な展開と結末が待っており、その解明に杉村の人間力が光る。
    そして物語の展開は遡り、探偵の仕事を職業にするきっかけとなる1つ目の事件「故郷の山梨で蕎麦屋を営む夫婦の夫の失踪事件」の調査の手伝いを探偵社の若き有能な所長から依頼されて、その所長の秀でた分析力と優秀な部下達の力を借りながら、奇々怪界な事件を解明する。その結果、その探偵社の下請調査を兼任しながら東京の古家を間借りして探偵事務所を開設することになるのだった。
    4つ目の事件は、2011年3月の東日本大震災の時に行方不明になった「アンティークショップの店主の捜索依頼」。てっきり震災に巻き込まれて失踪したと誰もが思っていたのが、意外な結末に。
    今までの今多コンツェルンの社内報編集の仕事の傍ら事件の調査に関わってきた時より2年が経過しており、故郷の姉夫婦の家に同居しながらの暮らしぶりから、東京に探偵事務所を開設したこれからの杉村三郎の活躍に期待し、やはり今後別れた家族との絆や今多会長との関係に胸が膨らむ。
    次作の「昨日がなければ明日もない」はどんな展開になっているのだろう。文庫本化が待ち遠しい。


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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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