武士道ジェネレーション (文春文庫 ほ 15-8)

著者 :
  • 文藝春秋
4.06
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感想 : 108
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911324

作品紹介・あらすじ

エッ、結婚? エエッ、道場閉鎖!?宮本武蔵を心の師と仰ぐ磯山香織と、日舞から剣道に転進した変り種の甲本(西荻)早苗。高校を卒業後、早苗は一浪ののち、大学の文学部で日本文化を専攻。卒業後は浪人時代から付き合い始めた充也とすぐに籍を入れ、桐谷道場裏手のマンションに新居を構える。一方、香織は、剣道で大学に進学して、数々のタイトルを獲得。桐谷道場では、玄明の代理で小中学生の指導もしていた。そんななか、道場の師範である桐谷玄明が倒れた。身体に不安を覚えた玄明は、江戸時代から続く歴史ある道場を閉鎖しようと決意。充也に伝えるが、桐谷の血を引く充也は、警官を辞めてでも道場を継ごうとする。しかし、玄明に警官としての職務を全うするよう諭され、充也は、道場の後継者となることを断念させられてしまう。就職も決まらず、師範代見習のような立場の道場にいた香織は、これ幸いと「だったら自分が道場を継ぎます」と申し出る。ところが充也によれば、香織には桐谷道場の後継者になる資格が、そもそもないのだという。後継者には、桐谷道場に密かに伝わる「シカケ」と「オサメ」と呼ばれる形を習得する必要があった。どうしても道場をなくしたくない、充也と香織は、誰にも告げず、血の滲むような特訓の日々を始めるが……。香織と早苗、それぞれの方法で道場を守ろうと奮闘する姿を描く「武士道」サーガ第四弾。はたして、この勝負、如何に──。ボーナストラックとして短編「美酒道コンペティション」と書店員座談会を収録!

感想・レビュー・書評

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  • R1.6.12 読了。

     やっぱり武士道シリーズは、香織さんと早苗さんのやりとりが良いですね。高校卒業から6年。香織さんには桐谷道場を守るための試練が、次々訪れる。沢谷さんとの秘密の特訓、吉野先生との試合、ジェフとの試合などなど手に汗握る場面が多かった。早苗さんも自分のできることで桐谷道場を支えていく。そのような日常が2人を人間的に成長させていく。あらためて日本には武士道という素晴らしい考え方や剣道、柔道などの後世に残していきたいものがあることにも気づかされた。スポコン作品も良いなあとしみじみ思いました。
     剣道を通じて、人生のかけがえのない友人を得られた2人がうらやましい。

    ・「悲しいかな、守りたいという気持ちだけで何かが守れるほど、この世界は綺麗事では成り立っていない…人が何かを守ろうとするとき、必ず必要となるのは、力だ。圧倒的な力。それでいて暴走しない、抑制的な、禁欲的な、どこまでも制御され、研ぎ澄まされた、力だ。それを持ち得ない者は…奪い合いの渦に呑まれることになる。」
    ・「武士道と云うは、死ぬ事と見付けたり。」
    ・「大切なのはこれを覚えることではない。すべてを体に取り込み、染み付かせ、使いこなすこと。」
    ・「俺、磯山先生がしてくれた武士道の話、すごい好きで…武士道には、礼とか、誠とか、名誉とか、忠義とか…ほんとはもっといっぱい、あるんだけど、でも短く、3つにまとめるから、よく覚えとけって…世のためを思い、他人を敬い、精進を怠らない。人はこの3つを守っていれば、どこででも、どんな時代でも、生きていけるって。」
    ・「そもそも剣は暴力だ。他人を傷つけ、死に至らしめる、そういう力だ。しかし、その暴力を封じようとしたら、それを上回る力が必要なんだ。その暴力を凌駕する力を以て、相手を傷つけることなく、暴力のみを封じる。それこそが武道だと、あたしは信じている。」
    ・「勝つことより、守り抜くことの方が、よほど重要なのだと。」
    ・「なぜ生きるのかではなく、どう生きるのか、誰のために生きるのか」

  • 前作(3)では本作の前振りの話題が幾つもあったのに、出版されたのは6年後と随分間が空いていた。冒頭から結婚式のシーン、まさか香織がと思ったら早苗だった。きっちりと6年後の時間が経っていて、早苗は香織の行っている道場の師範代と付き合っていて、香織も道場主も知らなかったとか。道場主が体調を崩し道場の継続が問題となるが、この道場には大きな秘密があった。前作で明かされた秘密を師範代と香織が対応していくが、今まで「お気楽不動心」の早苗が心配して強く反対を続ける。早苗の恩師も現れて過去と向き合う。初めての香織の恋愛話しも飛び出し、この恋愛の行く末も気になるが、これでシリーズ最終話とは寂しい。

  • 作者買い。

    てか、3~4年寝かせておいた一冊。
    読みたくて読みたくて・・でも、読んでしまうのが勿体なくて…(このシリーズを読み終えてしまうのが寂しくて)。


    ついに読み始めたら、やっぱり期待通りに面白くて。
    時おりクスリと笑わされつつ、先が気になりぐんぐん読み進められた。

    前作でサイドストーリー的に語られた、桐谷道場の過去エピソードが、こんなにも濃密に関わってくるとは思いもよらなんだ(苦笑)。(『・・・エイティーン』、再読せねば!)

    ※結局、早苗の競技復帰がなされぬままだったのが、少々寂しいかな。

    ★4つ、8ポイント半。
    2021.01.25.古。

  • 物語はいよいよ武士道の佳境へ。

    日本の伝統的な精神を大切にすることは大切だと思う。誤った自虐史観にとらわれてはいけないこと、それぞれの国が国益に応じて歴史を捏造しているという現状を訴えたいこともわかる。が、それ故に、一人の主人公が自国の文化を大切にするがゆえに、海外の人に苦手意識というか敵意まで持ってしまうのは、いささか視野狭窄な偏屈さを覚えてしまう。歴史について議論することは良いことだが、自国の伝統を重んじてるのは良いけど、反省の上に基づき、相互尊重していく冷静な姿勢が必要なのだと思った。

    そう、奇しくも、剣道におけるオサメで香織が学ぶ「守るためには、圧倒的な力と争いの渦に巻き込まれない禁欲的などこまでもいっても暴走しない冷静さが必要」ということは、剣道だけでなく、社会問題の解決にも必要なのだと思う。その意味で、武士道とは、単なる剣道や体術、だけでなく、政治や倫理にも生かすことができる思想・哲学なのだと思う。自然を守りたいという、私自身の思いを実現させたいのだが、自身の力の不足と冷静さが足りていないことに改めて気づかされる。

    そして、桐谷先生の言葉。「何故生きるかではなく、どう生きるか。誰のために生きるのか」。何故という問いではたどり着けない解に、どうするかと問いかけることで、背筋を伸ばして先に進める解が得られることもあるということに気が付かされる。「人生このままでいいの?」という本でも、質問を「何故」から「どうしたら」に切り替えることで前に進めるという紹介がされていることと符合する。考え方として、過去や原因を振り返る思考と、現時点・今ここからこれからどうするかという未来を見据える思考との違いに気づかされる。人生、何故生きるかでは、苦しいが、どう生きたいかを考え、在りたい自分で生きることは、とっても前向きであると思った。
    「武士道とは、死ぬことと見つけたり」。小説の中では誤った理解がいじめの原因になっていたが、本来は、死を見つめることで、最大限の生を享受し、前を向いて誰かのために、在りたい姿で生きていくことに精進していくという意味の言葉だ。
    後ろ向きになりがちで、一歩も踏み出すこともできず身動きの取れなくなっている自分だが、これから新たに、「武士道」を胸に、どう在りたいかを考え、これからを生きていきたいと思う。

  • ずっと温めていた武士道シリーズ完結編。
    凄く良かった~!
    シリーズを読み返しながら。
    二人の出会い、切磋琢磨しながらの成長。
    青春っていいなぁー、戻りたいなぁー、好きなことをもっと頑張れば良かったなぁーと、思いを巡らせてしまいました(*´-`)

    何かに熱くなれるってカッコイイ!
    両極端な性格の二人だけど、友情はこれからもずっと続くんだろうな。

    誉田先生の振り幅にはいつも驚かされます(笑)

  • 全巻制覇‼︎やった‼︎
    ほんとに面白かった。
    高校生の時に出会った香織と早苗。
    今回のジェネレーションでは早苗の子供も産まれてもう4歳。
    いったい何年経ったのだろうか?と計算はしないけれど、それぞれの年代にそれぞれの武士道があり、みんながいい方向に向かっている。
    一緒に成長してきた様な錯覚を感じさせてもらい、楽しく過ごして来れたな。
    武士道 しっかりと伝承して繋いで行って欲しい。

  • 二人は無事(?)大学を卒業。香織は桐谷道場の師範代として相変わらずの剣道三昧。早苗は母校、東松学園高校の事務局に就職し、その直後に桐谷道場の内弟子の沢谷充也と結婚。桐谷道場を中心として二人の交流が続いていく。

    本作のクライマックスは、香織が桐谷流の奥義「シカケとオサメ」を習得するため沢谷から秘密の猛特訓を受け、その成果を桐谷先生に認めて貰うため、元海兵隊員のジェフとの無規則試合(ノールール・マッチ)を行う場面。

    「どんな技を仕掛けてもいい『シカケ』と、それを剣道技だけで捌かなければいけない『オサメ』」。「『シカケ』が五十本、『オサメ』が五十本の……計百本」の形。要するに何でもありの総合格闘技ということのようだ。

    「シカケとオサメ」の特訓を通じてどんどん技が研ぎ澄まされ、凄みを増していく香織が結構カッコいい。香織の男っぽさにも磨きがかかっていくのも面白い。香織には、最後まで異性を意識した女らしさが芽生えることはなかったな。

  • 剣道のルールが分からなくても、なんとなく場面場面のビジュアルが想像できてしまう瑞々しさ!
    日本人として産まれて、◯◯道と道のつくものを修練した人だけが感じられる空気感も気持ちよく感じました。

    他人との戦いから自分自身との戦いに切り替わっていく人の包容力も学ばせていただきました。

  • 香織が奥義を身につけるみたいな話を柱に周りの人が繋がっていくシリーズ完結編。
    優しい空気が漂うとても安心できる傑作シリーズでした。

  • あー。
    香織の物語としては面白いです。香織の武士道の深堀。
    シカケとオサメの話はお見事。すばらしい。

    早苗の物語としては微妙。
    歴史観とか国家観の話はここではいらないとおもう。星半分ぐらい減点。

    2018/09/30

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著者プロフィール

誉田哲也
1969年東京都生まれ。2002年『妖の華』で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞、03年『アクセス』で第4回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞。主なシリーズとして、『ジウⅠ・Ⅱ・Ⅲ』に始まり『国境事変』『ハング』『歌舞伎町セブン』『歌舞伎町ダムド』『ノワール 硝子の太陽』と続く〈ジウ〉サーガ、『ストロベリーナイト』から『ルージュ 硝子の太陽』まで続く〈姫川玲子〉シリーズ、『武士道シックスティーン』などの〈武士道〉シリーズ、『ドルチェ』など〈魚住久江〉シリーズ等があり、映像化作品も多い。

「2023年 『ジウX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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