名画の謎 陰謀の歴史篇 (文春文庫 な 58-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167910402

作品紹介・あらすじ

『怖い絵』シリーズ著者の絵画エッセイ2017年に兵庫と東京で開かれ、記録的な来場者数となった「怖い絵展」。その特別監修者を務めた中野京子さんの『怖い絵』シリーズに並ぶ人気作が『名画の謎』シリーズです。シリーズ3作目となる「陰謀の歴史篇」では、フェルメール、ラファエロ、ゴヤ、ブリューゲルといった時代を代表する画家たちが残した名画の数々を読み解きます。そこには、権力へと強欲な手を伸ばし、運命に翻弄され、恋に身を焦がす人々の営みがときに鮮やかに、ときに冷酷に描かれています。中野節は、今作でも健在。画家を魅力し、世間を騒がせた人間たちのドラマに迫ります。文庫版の解説は、宮部みゆきさん。中野さんの著作の大ファンだという宮部さんが、熱い思いを綴ってくださいました。絵の中で語られている物語を知れば、絵画鑑賞は何倍も楽しくなる。そして、絵を見れば、歴史はもっともっと面白くなる!

感想・レビュー・書評

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  • 再読。こうやって絵を読み解くことが出来るのは幸せだと思う。

    今回、何度目かの再読だが、01 消えた少年たち、については子どもといろいろ話をした。ちょうど薔薇戦争を習っていたからだ。教科書では薔薇戦争終結、チューダー朝が始まる、という二言で終わってしまうことだけれど、その中でもいろいろなドラマがあり、悲劇がある。私は「戦争の終わりに両家の男女が結婚し、ピンクの薔薇になりました、めでたしめでたし」のように覚えていたので、今回しっかり読んでみて、自分がなんと浅はかな読み方をしていたかを痛感した。

    05 トロイア戦争の悲劇 はこの絵自体にはさほど興味がわかなかったが、先日行った、メトロポリタン美術館のエル・グレコの「羊飼いの礼拝」とそっくりな絵が、プラド美術館にあり、それを見比べて非常に興味深かった。グレコの光の当たり方は劇場のように見える。また人の顔の伸び方(子供の頃からソラマメ型と思っていた)がやはり独特。しかし嫌いにはなれない。フェリペ二世が「祈る気になれない」が評価していた、という気持ちが分かるような気がする。

    12 あふれかえる死 はブリューゲル「死の勝利」。プラド美術館所蔵。大きい図で解説を読みながら、骸骨の動きや人の動きを見ていた。とても楽しい。ブリューゲル展、日本でやらないかなあ。
    同様に 10 異端審問所の妖怪たち のゴヤも大きな図で見ていた。ゴヤ展、日本でやらないかなあ。13 笑うコサック レーピン「トルコのスルタンへ手紙を書くザポロージャ・コサック」も大きい図で見る。亡くなった義父が残してくれた「講談社 世界の美術館」シリーズが非常にありがたい。

    先日行った、メトロポリタン美術館に来ていたジェローム(来ていた作品は「ピグマリオン」)。こちらで解説されていたのは「仮面舞踏会後の決闘」。決闘後の虚無感がとても現れているように思う。

    ああ、見たい絵が尽きないなあ。

  • 名画に秘められた、歴史と運命に翻弄されたドラマを探る。
    01 消えた少年たち    02 産業革命とパラソル
    03 甲冑のダンディズム  04 メディチ家出身のローマ教皇
    05 トロイア戦争の悲劇  06 イタリア逃避行のゲーテ
    07 私的通信       08 大自然の脅威
    09 価値の転換      10 異端審問所の妖怪たち
    11 無敵艦隊       12 あふれかえる死
    13 笑うコサック     14 ナチス時代の恋わずらい
    15 死にゆくピエロ    16 奇蹟の瞬間
    17 凶暴な選挙戦
    カラー画像、家系図、その年代の主な出来事の年表が適宜有り。
    コラム有り。
    絵画を描く画家、絵画に描かれた人物。その時代は?
    絵画の中に秘められた歴史と欲望、運命に翻弄された人々を探る。
    実際の陰謀自体は少なめです。が、描かれた何かに込められた
    意図を図れば、意味深長でミステリー。陰謀の香りが漂います。
    人物の表情のみならず、衣服や装身具、手に持つもの、しぐさ、
    人物の配置等にも、絵に秘められた何かが秘められています。
    これらを読み解くことで得られる情報は、当時の情勢を知るにも
    有益で、絵画の見方が変容します。
    加えて、画家や描かれた人物の運命・・・欲望に絶望、恋愛等の
    エピソードが、分かり易く簡潔で語られるのが、良かったです。
    ゲーテがイタリアに逃避行した理由。
    異端審問の事実を描かずにいられなかったゴヤの心情。
    美麗な甲冑にはとんでもない事実が・・・汚物まみれでも脱げない!

  • 夢中で読んでしまった。文章がリズミカルで読みやすくてワクワクします。ゴヤの素描が見たくなって素描だけ集めた画集を探してみたらものすごい値段でひっくり返った。お手頃価格の画集から読んでみます。

  • 祝文庫化

    文藝春秋のPR
    美しい絵画に秘められた歴史ドラマ
    フェルメール、ゴヤ、グレコなどが描いた絵画から読み解く時代の息吹と人々の思惑。『怖い絵』シリーズも人気の著者の絵画エッセイ。
    http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167910402

  • 怖い絵とコラボしたプラネタリウムに行ったことで、ひさしぶりに中野先生の御本が読みたくなり再読しました。

    西洋画を見るのがとても好きですが知識は殆ど0、難しい本が読めない私でも楽しめます。まるで推理小説やゴシップを見ているような気分で絵画を鑑賞することができます。

    グロスの項で「時代が求める才能というものがあり、その時どこにいるかで運命は大きく変わる」という文章が特に印象に残りました。

    他の作品の感想でも書いたのですが、怖い絵コラボの企画展をまたやってほしい!

  • 分かりやすくて面白い 初心者向けかな

  • 11月ラストの一冊はこちら。
    おなじみ、中野京子さんのアートミステリーブック。

    「名画の謎シリーズ」より、第3弾。

    中野京子さんの本は、アートガイドのようで、何だか西洋美術史ミステリーのような、ワクワクさせる味わいもあるのが良いよね。

    取り上げるアート作品の解説だけでなく、それが描かれた国やヨーロッパの当時の背景など、名画を通して神話や世界史も勉強できるという魅力の詰まった一冊。

    スーラの「グランドジャット島の日曜日の午後」、フェルメール「恋文」、エルグレコ「ラオコーン」、ブリューゲルの「死の勝利」など、国、時代を行き来して、17作品を紹介している。

    フェルメールの章での、オランダ画家のことに関しての記述が興味深かった。

    17世紀のオランダ黄金時代。オランダでは中産階級の人々が狭い部屋に飾るために絵を買い求めた。
    そのためにオランダの絵は、フェルメールのように小さい作品が多かったらしい。
    まだ、その当時のオランダ画家は兼業が多かったらしく、フェルメールは画商も務めた。
    そのためにフェルメールの作品数が非常に少なかったとも言われる。

    また、オランダは「耳の人」でなく「眼の人」という表現もなるほど、と思った。
    確かにオランダは思いつく作曲家がいない。でも、画家は、ゴッホ、モンドリアン、レンブラント、など沢山思いつく。

    逆に、ドイツ人は「耳の人」らしい。
    確かにドイツには3大Bのバッハ、ベートーヴェン、ブラームスがいる。
    でも、有名画家は少なく、未だデューラーがその座を欲しいままにしているらしい。

    巻末の宮部みゆきさんによる解説も面白かった!
    確かに教科書では冷遇されている画家も、中野さんの手にかかれば興味が湧いてくるマジックにかかってしまう。
    名画の謎シリーズ、読破してみよう。

  • はじめての中野京子さんの本
    かなり読みやすい!
    原田マハさんの小説より、エッセイという感じなので初心者の方におすすめかも
    世界史に興味がある方にもおすすめ!

  • 「怖い絵」の中野京子が解説するシリーズ。今作は歴史上の有名人だけでなく大衆にもスポットを当てている。それぞれの作品が描かれた背景が分かりやすく書かれていて、中世の人々の残酷さや力強さ、したたかさなどがリアルに伝わってくる。

  • 絵画は知識を持った眼で鑑賞すると
    こんなにも面白く
    そして心に響くものだと
    中野京子さんが教えてくれるので
    私の絵画好きは加速していきます。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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