新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 (文春文庫 お 71-1)

著者 :
  • 文藝春秋
3.82
  • (14)
  • (20)
  • (18)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 324
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167909161

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 尼崎連続変死事件。
    2011年、角田美代子が企んだ残虐非道な事件の真相である。
    彼女が自殺した為に真相が掴めず、よく知らなかったのだが、今回このノンフィクションを読んで驚愕した。
    人物の相関図が複雑であるが、これを見ても家族喰いと表しているのがわかる。
    ここまでになるまで警察が何もしなかったことにも問題があるのでは…と思ってしまう。
    家族だから、身内の喧嘩だから…と民事不介入。
    こういうことを防ぐにはどうしたらよかったのか?と思ってしまった。


  • 尼崎連続変死事件の真相。
    登場人物が多すぎてとっつきにくいが、読んでいるうちにわかってくる。
    文章が読みやすく、誠実に事件を追っていく過程がわかる。ところどころに小野さんのややセンチメンタルな感想が入るのが味。
    ただ事件については本当にわからない。作者のせいではなくて。

    遠縁のおばさんが、礼節がなってないとかいちゃもんをつけてやってくる。うしろに乱暴そうな男たちを引き連れて。
    面倒そうだから、相手の言うことをある程度訊いて、お金で解決できそうならして、帰ってもらおうとする。普通の人ならそうするよね。
    それがなぜ数か月後に、全財産を差し出した上で、全員で正座をして殴り合ったり、子どもを殴ったり、子どもの前で性行為したり、裸でずっと廊下で立ったりするようになっちゃうの?
    もう意味がわからん。従う人たちの意味がわからん。

    しばらくたつとみんな無抵抗になり、逃げ出した先で助けに入ろうとした人がいても、「無理だから」といって、口を割らない。
    逃げたら必ず連れ戻されるし、友人や家族まで崩壊させられるから。
    死ねと命令されて自殺するとか何だよ。
    学習性無気力。美代子に従うか、死ぬか、どっちかしかない。

    警察は「面倒な家族の内輪もめ」として不介入。むしろ不介入にするために、美代子はけして攻撃は自分でせず、家族や親戚にさせる。
    北九州と肩を並べるサイコパス殺人だが、北九州の、仲間内のヒエラルキー作りの部分を強化した事件だと思う。

    わずかな救いになったのは、彼らにも助ける友人たちがいたこと。

    皆吉敏二さんをかくまった会社社長の話は良かった。
    おまえら、それが人にものを頼む態度か。親戚だっていうなら親戚だって証拠をみせろ。誰を連れてきてもかまわない、相手になってやる。ってタンカ。後輩も口が堅く、皆吉さんをかくまって守る。
    この人もきっと柄が悪いんだろうけど、ガテン系の社長の良いほうの見本。
    こういう人でも、美代子に、「気に入った、あんたは見所がある」とか言って飲まされれば懐柔されちゃうんかな。
    茉莉子の水商売の仲間にもほろりとした。友達を救おうとして頑張った。茉莉子、連れ去られている間に、「もしもあんたが来ないなら、あの子たちに働いて貰う」とでも言われたのに違いない。

    あと警察は親族同士の争いと言われると不介入なんだけど、警察ダメなら弁護士に頼るって手があるんだね
    警察ダメそうだったら、弁護士。お金巻き上げられて返してくれなかったら、弁護士。覚えておこう

    巻末に人物紹介と系図があるのが便利です。

  • 未曾有の怪事件「尼崎連続変死事件」の真相を追うノンフィクション。事件現場に密着した執念の取材により、新たに発覚した真実を文庫化にあたり追加編集。
    期待したほど新しい事実はなかった。真実が解明できないのは、やっぱり主犯の角田美代子の自殺であり、なぜ自殺したのか、本当に自殺なのかが最も重要な部分である。おそらくだが、それは破り捨てられた彼女の日記に真相が記されていたのだと思う。ほとんどその事に触れられていないのが残念である。

  • 小野一光『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』文春文庫。

    日本中を震撼させた尼崎連続変死事件の闇に迫るノンフィクションらしい。単行本を加筆修正、『文庫版補章 その後の「家族喰い」』を追録。

    元々、関係者が余りにも多く、人間関係も複雑な事件なのだが、テレビのワイドショーと同様に主犯格の角田美代子の関係者や知人のインタビューを主に構成しているせいか、全く事件の真相は見えて来ない。

    帯の『事件ノンフィクションの最高峰!』の惹句が虚しい。

  • NHKスペシャルの再放送を見て読書。
    おぞましい事件を事細かにルポされている良書。事件の特殊性による取材のしづらさ、関係者の多さを何とかまとめている感じ。
    このような事件が現代日本で起きたことが恐ろしい。

  • 今月1冊目
    ★★★
    ようやく読んだ。にしてもほんとにとんでもない事件、かつ複雑。
    北九州の松永もだけど角田のばばあも洗脳の達人。
    日本を震撼させた二代事件だよな。
    全貌の把握が難しすぎる。角田自殺したし

  • 尼崎連続変死事件のノンフィクション。
    複数の家族が長期間監禁、虐待、資産を奪われるなどして殺害された事件。死者・行方不明者は10人以上に及ぶ。

    主犯・角田美代子による、家族同士で暴力を振るうよう仕向けて分断させる手法は北九州の事件を連想させる。が、あの事件の主犯のようなサイコパスな印象は本書を読んだ限りではない。親族間のトラブルなら民事不介入を理由に警察の手が及ばないと味を占めた無法者という印象。実際には交際のない暴力団の大物の影をちらつかせて相手を脅しながら、逆に本物が出てきたらビビって平身低頭して謝罪する小物感。自分だけさっさと獄中で自殺した点から考えても本性は人間性が卑劣なだけの小心者だろう。著者も書いているが「決してモンスターではない」。ここまで角田をのさばらせ大勢の被害者が出る大事件にしてしまったのは、何度も相談を受けながら民事不介入の一点張りできちんと角田周辺を捜査しなかった兵庫県警や香川県警の失態による部分も大きい(被害者の一人は逃亡後、最寄りの兵庫県警ではなく大阪府警に助けを求めて駆け込んでいる)。それでも桶川の事件のときの埼玉県警上尾署みたいにもみ消ししないだけまだマシか。

    他人の家庭は破壊しておきながら自分は血のつながらないファミリーを形成して悦に入っていた美代子。子供の頃から両親に放置され、十代にして実の母親から売春して稼げと言われてやらされる。荒み切った家庭・生育環境ゆえグレたのだろうし普通に暮らしている普通の家族を、自身の生い立ちと比較して憎む気持ちもあったのかな、と思った。「かわいい妹」と口では言いながら共犯の妹(もとはいとこ)に50歳前後まで売春させて金を稼がせていたり、戸籍を動かすことに関しての感覚が軽かったり倫理観の欠如は窺える。

    こういう手合いに絡まれた場合はまず警察に相談、警察がダメなら弁護士に相談。決して折れず開き直って「来るなら来い」の姿勢。反抗してきた相手に対しては手を出さなくなるのは北九州の事件も同じで、この手の輩は自分より弱い者を獲物に選ぶ。

  • 恐ろしかった・・・。

  • 凄惨な事件、目を逸らしたくなる様な残酷な内容に思わず本書を途中で置きたくなった。被害者が分かっているだけで11人、加害者、関係者も合わせるとゆうに20〜30人は登場し、しかもそれが養子縁組や結婚離婚などで途中名字や戸籍が変わったりするから最初は相関関係を理解することさえ難しかった。だが著者の丁寧な取材のおかげで段々と整理されて来るとこの事件がたった1人の女の支配者とそれ以外の被支配者に分かれる構図なんだと理解出来た。極悪非道で自分勝手な犯人は奇しくも筆者が取材をしていた北九州で起きた事件と酷似するものがあり、被害者の人たちも同様に優しいいい人たちが多い気がする。犯人から執拗に責められることによって、自分が我慢すれば済む問題だからと良心につけ込んだり身内の他の人間を置いて自分だけ行けないという感情を利用したり、暴力団の存在を匂わせて脅したり、身内同士で密告をさせ、暴力を振るわせるなど類似点は枚挙に暇がない。こうならない為にはとにかく先ずは自分が逃げる、何をおいても自分自身の身の安全を確保することが大事かと思う。どれだけ卑怯だと言われたとしてもまずは自分が逃げる。身内を助けるのは外に出てから図るしかないと思う。あとは民事不介入の原則に組織の論理丸出しで応対する警察にはかなりきついお灸を添えなければならない、昨今家庭内暴力や子供への虐待などはだいぶ不介入の原則が変わりつつあるのだから、二度とこういう陰惨な事件を起こさない為にも抜本的な改革をして欲しい。飲酒運転は殆ど減らすことが出来たのだから(これも遅い改革ではあったが)現状では未成年保護法も考え直す時期に来ていると思う。やられ損などは一番平等の感覚から遠い、人の生きる希望を奪う行為だ。だからやらな損とばかりに法を破る人間が出てくる。あとは防犯対策としてカメラで超監視社会を敷く以外にないと思う。それでも防げない事もあるとは思うが少しでも犯罪の検挙率を上げる為に断固やる必要があると思う。というかもうCIAにはプライバシーを覗かれてる現状があるらしいし。それが可視化されるに過ぎないと思えばいいのではないか。それくらい急進的な意見を言いたくなるくらい人生を蹂躙されることへの怒りがある。何人も他人の人生の上に自分の幸せを打ち立てることは間違っている。解説でまだ著者がこの事件を追いかけていることが明かされた。今後もこの著者の活動を追いかけ作品を購入することで微力ながら応援したいと思う。

  • 凄まじき洗脳。
    この場所ならではの独特な地域性がありそう。
    被害者たちはたまたま罠にスポッとはまってしまった人たちなのだろうなと思う。

    登場人物が多すぎて39頁やその近辺の頁の相関図を何度も見た。(が、読み終わってから気付いたが366頁に一覧があった)

    全体に、事件の大きな動きが分かってよい内容だったけれど、ところどころ「俺アゲ」的な自惚れた文章だったり、カッコつけた変なシメの一文があったり...あれはなんなのだろう。
    週刊誌だからかな...。
    大変な時間と労力のかかった本なのだろうけれどそういうのがなければよかったな。

    後半の追加された部分はちょっといい話風というか...
    更生話がメインで結局谷本さんとルイの話だけ。

    相当やばいのか、あまり関係はなかったのか...集団Xやその中心人物とされるZの話はどこへ行っちゃったのでしょうか。。。

    まあでも
    逮捕後のルイの洗脳とそれが解ける間にいるような心境の手紙が一番心に残った。
    「私には実感があるから本物だという感覚が残っていますが」
    強い洗脳をされたことがある人にしか語れない言葉だろうなと思った。

全35件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

一九六六年、福岡県生まれ。「戦場から風俗まで」をテーマに数々の殺人事件、アフガニスタン内戦、東日本大震災などを取材し、週刊誌や月刊誌を中心に執筆。『冷酷座間9人殺害事件』『全告白後妻業の女筧千佐子の正体』『新版家族喰い尼崎連続変死事件の真相』『限界風俗嬢』など著書多数。

「2022年 『昭和の凶悪殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小野一光の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
ピエール ルメー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×