- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167908935
作品紹介・あらすじ
星野道夫が遺した、魂の旅の記録。「ぼくは、深い森と氷河に覆われた太古の昔と何も変わらぬこの世界を、神話の時代に生きた人々と同じ視線で旅をしてみたかった」――アラスカに伝わる〝ワタリガラスの神話〟に惹かれて始まった旅は、1人のインディアンとの出会いによって、思いもよらない方向へ導かれ、それはやがてアラスカからアジアへの、遠大な帰郷の航海となる。未完に終わった雑誌連載に、2回のシベリア取材の際に記された著者の日誌を加え、1冊にまとめたものが、没後21年を経て、初めての文庫化。カラー写真満載。 解説・池澤夏樹
感想・レビュー・書評
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『〝クジラ〟強調月間始めました!』15
第15回は、星野道夫さんの『森と氷河と鯨』です。
1995年刊行の名著『旅をする木』の翌年(逝去された年)に刊行されています。
星野さんは、アラスカを中心に、手つかずの大自然の厳しさ・美しさを追い続けました。写真家として数々の写真集を出版する傍ら、著作も多くあります。その文章には、自然や動植物、そこに暮らす人々の営みなどが美しく静謐に描かれ、とても惹かれます。
『旅をする木』は、私が再読を繰り返す、数少ない本の一つでもあります。
さて、本書にもふんだんに写真が入っており、「鯨の神話は宇宙を漂う」の章を中心に、鯨に太古の気配を感じながら、神聖なものとして写し描かれます。P.76の夕景の写真は余りにも美しく、P.240の遺跡の様にそびえ立つ鯨の骨は神々しく感じます。個人的には、若干スピリチュアルな雰囲気が強い気はするのですが…。
星野さんの著作を読むと、現代俗世の人間世界のしがらみ・物欲など、そんな些細なことに悩む自分が、随分見すぼらしく、つまらない者に思えてきます。無人島に持参する本は、星野道夫さんで決まりですね。
43歳の若さで悲劇の死を遂げた星野さん。最後の記録となった本書は、刊行(死後)26年経ても色褪せません。
意図したわけではなく、偶然なのですが、解説は池澤夏樹さん(本企画第14回著者)です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実際、カメラを構えて自然と向き合うと、写しているものとは別に、自分の中に入ってくるものがある。それは人によって言い方がちがうけれど、「何かが在る」という感覚で、そういうものを言い表すためにインディアンの叡智を借りたのではないだろうか。
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7/27 cloudy windy[曇って風あり]
northern creek[北の沢」で待つが
1頭のクマしか現れなかった。
very skiddish[とても足元がフラついている]
我々を見てすぐ逃げてしまう。
夜 1頭のクマがbase canpに現れ悩まされる
ちっとも逃げないのだ。
イクラをspawning salmon[卵を抱いたサケ]からたくさんとる。すごいうまさ。
目に見えるものに価値を置く社会と
見えないものに価値を置くことができる社会
「見えないものに価値を置くことができる社会」の側へ
彼は行ってしまった。残されたぼくたちにできるのは彼が撮った写真を見て、彼が書いた文章を読んで 彼のことをいつまでも覚えていることだ。
岸辺を離れていこう
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むかーし今はなき、名古屋市千種のメルヘンハウスで買ってもらった本。引越しも何度もしたけど変わらず手元にずっとある本。
最初に読んだ時、見えない世界の豊かさが衝撃だったな。 -
星野道夫になりたい。
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クリンギッド族エスター・シェイ「クリンギッド語を心の中にしまい、しっかりと鍵をかけてから40年が経った。自分の口からクリンギッド語が出てくるか心配だった。」
ワタリガラスの神話を抱いてアジアから新大陸、アラスカへ。
アサバスカンインディアンの古老ピーター・ジョン「チョウツィン」=愛する
「人生とは何かを計画しているとき、起きてしまう別の出来事のこと」(シリア・ハンター) -
すごく良い本だった
自分がどこかにワープして浮いてるような感覚になる
遠く遠くに飛ばされるというか
いかに自分のいまの生活が、機械的で整然としていて、生命というものから離れていて、人間として鈍くなっているかを感じた
土地に関すること歴史的な部分の補足情報はあまりなかったので、理解が追いつかないなという部分もあったけど -
まだ途中までしか読めていないのだけれど、本当に心の奥底にまで言葉が響いてくる。何故だろう?星野さんの言葉には、太古の空気感とか、苔むした森の霧とか、氷の上で生きるものたちの息づかいとかが、含まれているように感じる。仕事や人間関係で疲れ切った私にも、まだこんな風に感じられる部分があったんだ、と思えるくらい、感性にじんわり染み込んでくる。写真のよさは言うまでもない。これだけ言葉を連ねても、この本の良さは全く伝えきれない。きっと何度も読み返して救われると思う。
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3月から4月にかけて公私ともにイベント続きで、読書の時間をまともに取ることができず、心が乾いてざらついたような感覚に陥った。こんな時に効くのはこの人の本しかないだろう、ということで手にした星野道夫のエッセイ。
大自然のように広い心と優しい文章、そして美しい写真に包み込まれて、心のざらつきが消えて潤いが戻ってきた。この本の中で「深い森の中にいると川の流れをじっと見つめているような、不思議な心の安定が得られるのはなぜだろう」という一節があるが、今のワタシに言わせれば「星野道夫の文章に触れると何か大きく温かいものに優しく抱かれているような、不思議な心の安定が得られるのはなぜだろう」ということになる。
本書は、雑誌『家庭画報』への連載を中心にまとめたものなのだが、その連載中に星野はヒグマに襲われ、帰らぬ人となった。池澤夏樹が寄稿した巻末の文章が、重く胸に迫る。(実は、ワタシは池澤夏樹の文章はあまり好みではないのだけれど、この寄稿文は名文だと思う。) -
星野道夫。憧れ。
どうしてもアラスカをこの目で見てみたい。行ける時に、間に合ううちに。必ず。